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4話 実技試験

 そうして俺たちはギルドの外にある試験会場に行って、アンリと勝負をすることになった。


「それでは、ユウト王子対アンリの実技試験を開始します」


 ギルドマスターが試験スタートの合図をしたと同時に、アンリは空を舞った。実技試験では特に魔法やスキルの使用制限はないため自由に戦うことが出来る。


 アンリはゆったりと空を飛んでいるからいつでも撃ち落とすことが出来るだろう。


 問題はどの属性魔法で戦うかだ。有翼人は炎属性魔法が苦手。おそらく俺の火属性魔法では致命傷を与えてしまう。


 なるべくダメージを与えない魔法はなんだろうか?こうして俺が悩んでいる間に、アンリが俺の背後に回り攻撃しようとしていた。


「油断してんじゃないわよ、王子様」


 それを俺はスルリとかわして、今度は俺がアンリの背後を取った。


「――なっ!」


 迷ったが俺は氷属性魔法を使ってアンリの翼を固めることにした。


「アイスハーデン」


 氷属性の初級魔法で翼だけ凍らせるつもりだったが、胴体すべてを凍らせてしまった。魔力調整を少し誤ったかな?

 

 こうなってしまってはアンリは何もすることが出来ず、諦めて悔しそうな顔を浮かべていた。


「勝者はユウト王子。よってSクラス入り決定です。おめでとうございます」


 ギルドマスターの宣言によって俺とアンリの戦いは終わった。


「お、お疲れさまでした。あと、Sクラス入りおめでとうございます」


「おめでとー、王子めっちゃカッコよかったよ!」


「お見事ですユウト様。初級魔法であそこまでできるとは」


 メイドの3人がSクラス入りと戦いの勝利を祝福してくれた。また、この勝負を観戦していた冒険者たちも大きなにぎわいをみせていた。ある一人をのぞいて……


「ちょっと、負けを認めるから早くこの氷とかしてください。めちゃくちゃ寒い……」


「分かった、今溶かす。――フレア」


 火力を最小限にしながらなんとか氷を溶かすことが出来た。


「すまなかった。大丈夫か? もしよかったら何か温かいものでも用意しようと思うが……」


「……別にダイジョ―ブだから」


 そう言ってすぐ、アンリは少し照れた様子で俺に感謝をしてきた。


「あとその、あの、あ、、ありがとう。戦ってくれて」


 こうして俺は、平和に冒険者ギルドに入学することが出来たと思い安心していた。しかし、


「あの、アンリさん、まだ私たち3人と戦ってもらう必要があるので、早く準備してもらっていいですか?」


「い、言われなくてもやってやるわよ! あんただけには絶対負けないから」


 そういえばユキ達もクラス分けをアンリとのバトルで決定するんだったな。3人ともメイドだけど戦闘はできるのだろうか?





 その後アンリはユキ、あまねちゃん、ミーロンとそれぞれ戦ったが、全員に惨敗した。かばうわけではないがアンリは決して弱くはなかった。むしろメイド3人が異常に魔法の扱いが上手く、戦闘技術がとんでもなく高かったことが惨敗した原因だろう。


 俺も含めて周りの冒険者たちはアンリがメイドたちにボコボコにされている光景を見てあぜんとしていた。


「なんでメイドの君たちがこんなに強いだ?」


「え、えーと、そ、それは……」


「私たち3人はユウト様のメイドとして普段は仕えていますが、いざという時のために様々な魔法や戦闘の訓練を幼いころから行っていました。なのであの程度のイキリ有翼人であれば難なく倒すことが可能です」


「だ、だれが、イ、イキリ、有翼人、です、って……」


 振り返ると、ボロボロの状態のアンリが木の棒を杖代わりにしながらなんとかこちらに近づいてきた。 ……めんどくさいが回復魔法でけがを治してやるか。


「ヒール」


「うーん。あ、あれ、体がどこもいたくない!」


「ケガが治ったようで何よりだよ。これにこりたらこれからはあんまり無茶な勝負を挑まないようにしてくれ」


「ユウト様のご慈悲に感謝してください。本来あなたは不敬罪で牢獄行になっていてもおかしくなかったのですから」


「うっさいわぁ! でも、まあ、うん。……もう勝負挑むのはこれっきりにしとく」


 勝負を挑まれた時と比べると、アンリはだいぶ落ち込んでいるように見えた。まああれだけボコボコにされたら嫌でも大人しくなるか。


 とはいえ、これがきっかけで冒険者になるのをやめたくなってしまわないだろうか?


 アンリは少し気性が荒いが、決して悪い子ではない。そんなことになっては俺としても気分が悪い。


 それに、少なくとも1週間はこの子と一緒に授業を受けることになるから、あまり気まずい関係性にもしたくない。


 ……仕方ない、ここは仲直りでもしておくか。


「あのさ、もしよかったらケガさせたお詫びに今晩夕食をごちそうさせてもらえないだろうか?同じSクラスの仲間としても仲良く話もしてみたいし」


「え? いいの? あっ、でも、あのピンク頭の女も一緒なんでしょ」


「え? まあ、そりゃユキはメイドだしそうだな」


「あっ、そう。それじゃあユキ、あんたがどうしても私と一緒に食事を取りたいってお願いしたら一緒に行ってあげてもいいわよ!」


 ――ゾワッ


 寒気がして横を振り向くと、一瞬ユキが鬼のような形相をしていた気が……


「ユウト様、今晩の夕食はフライドチキンにしましょう。ちょうど目の前に4人分の食材がいますし」


「は? 食材って私の事? ふざけんじゃないわよ!」


 また喧嘩が始まってしまった。せっかく平和に解決できそうだったのに。


「フフッ、ユッキーとアンリちゃんもう仲良しさんになってるね」


「……あれのどこが仲良しに見えるんだ」


 結局、この2人は夕食までずっと言い争いをしていた。





 こうして、長い一日がようやく終わった。

※次は15時10分ごろに第5話を投稿します。


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