39話 マスターになった日
「にしても、メンドウなことになったな」
結局あの後なんども交渉したが、俺の要望は一切聞いてくれず、あろうことか俺はAICⅡの国王にさせられてしまった。
そして、当面はこの国で生活することを義務づけられた。
ちなみに、元々国王だったアイスさんはどうなったのかというと、
「マスター、おはようございます。朝のコーヒーをお持ちしました」
俺の補佐役兼メイドになっていた。
いつもと違って、メイド服姿のアイスさんがお茶を持ってきてくれた。
「ああ、ありがとうございます」
「……マスター、私はもうあなたのものなのですから、敬語で話さなくても結構ですよ」
「いや、それでもやはり……」
「マスター」
ジッーとこちらをにらんでくる。
どうしても敬語でしゃべってほしくないようだな。
「……わかったよ」
「はい」
どうやら満足してくれたようだ。
今まで見たことがないほどの満面の笑みを浮かべていた。
新しいマスターが出来て、よっぽどうれしいんだろうな。
「それじゃあアイスさん、1つ聞きたいことがあるんだが」
「アイスと呼んでください」
「うっ、わかったよ。……アイス」
「はい。何でしょうか?」
「そもそも国王っていったい何をすればいいんだ?」
「そうですね……。マスターには、やっていただきたいことが一つあります」
「やってほしいこと?」
「はい。人間の住民が増えるアイディアを出していただきたいのです」
「住民が増えるアイディア? ……とはいっても、俺もこの国のことあんまり詳しく知らないし、良いアイディアなんて思いつかないぞ」
「それでしたら、街にデートしにいきましょう!」
「えっ!? なんでデートなんだ……」
「回答。デートをすればこの街の現状を知っていただければよいかと」
なるほど。そういうことだったか……
あまり納得がいく答えではないが、ここは気にしないことにしよう。
「分かった。それじゃあさっそく出かけに……」
―――ガチャ
ドアが開いた音と同時に、すごい勢いでメイド3人が俺に近づいてくる。
「ユウくん! なんで私たちのことかまってくれないの?」
「そ、そうですよ! も、もしかして私たちのこと忘れちゃったんですか?」
「……それに、デートに行くってどういうことですか?」
ユキは威圧感のある声で俺に問いただす。
「いや、それはだな……」
「疑問。私たち二人で出かけることは何か問題でしょうか?」
「大問題です!」
彼女たちの登場によって、険悪な空気が俺たちの周りを漂い始めた。
このままじゃまずい、何か打開策を考えないと。
「あっ、それじゃあ、みんなで一緒にいくってのはどうだ? ユキ、これで問題ないだろ?」
「……問題だらけですけど、それならまあいいです」
あまり納得していないようだったが、何とかなったし良しとするか。
俺たち5人は街の調査に向かった。
俺たちは王宮を出てから、街を隅々まで歩き回った。
「マスター、何かアイディアは思いつかれましたか?」
「うーん。アイディアっていうより、気になることがいくつかあって」
「いったい何でしょうか? ぜひお聞かせください」
「この街には飲食店が全く見当たらないんだが……。飲食店はこの街にはどのくらいあるんだ?」
「検索。……現在、飲食店は施設に併設されている店を除くと0店です」
やっぱりそうだったか。
「なんでこんなに飲食店が少ないんだ?」
「ロボットには食事は必要ありませんので」
「あ、あと、私も気になったことがあるんですけど、服屋さんとかもどこにもありませんよね?」
「はい。ロボットに衣服は不要ですので」
「あとあと、お花屋さんとかもないよね? それはなんで?」
「お花もロボットには必要ないので」
「……ギルドがないのも気になりますね。なぜギルドもないのでしょうか?」
「回答。ギルドを運営して得られる利益が、その他の事業よりも著しく悪いことが確認されたため、私が自主的に廃止しました」
アイスさんの説明を聞き、みんな絶句してしまった。
なんでAICⅡに人間が住まなくなってしまったのか?
なぜなら、この街は人間が生活するために必要な店をほとんど潰してしまっているからだ。
「アイス、なんでこんなに人間が住みにくい街にしてしまったんだ?」
「疑問。観光名所には飲食店が併設されていますし、ホテルもたくさんご用意しています。なので人間が暮らす分には問題ないかと思うのですが?」
「えっと、アイスは人間が普段どんな生活をしていると思っているんだ?」
「回答。一般的な人間は、昼は観光名所で一日中遊び、夜はホテルで休むという生活をしているものと想定しています」
なんだそのダメな人間像は……
これはアイスの考えを根本から改めさせないとダメだな。
俺は人間が普段どういう生活をしているのかを詳細に話した。
「……驚きました。他の国では今なお人間が働いているなんて。なんと非効率的な……。ロボットなら賃金や休憩を与えずに働かせることも可能なのに」
「アイスは効率にこだわりすぎだ」
「うっ……」
「それに、ロボットにとってはムダなことでも、人間にはすっごく重要なことも多い。ムダを完全に排除した街なんて誰も住んでくれなくて当たり前だ」
「おっしゃる通りです。……反省」
「とにかく、まずは飲食店とかの人間向けの施設を増やす。これが当面の目標だ」
「ッ! 分かりました。マスターの指示に従います」
アイスの目が輝きだした。
俺のアイディアっていうか、改善点を理解したことでやる気が出たのだろうな。
「マスター。ありがとうございます。非常に有益なデータを取れました」
「ああ、それを活かしてこの街をもっと良い街にしてくれ」
「……なぜ他人事みたいに言うのですか? マスターも一緒にやるんですよ」
……そういえばそうだったな。
うっかり自分が国王になっていたことを忘れていた。
「分かった。これからいい国にしていこうな」
「はい!」
決意を新たに、こうして俺は国王初日の仕事終えた。
※次は明日の18時20分ごろに第40話を投稿します。
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