3話 宣戦布告⁉
一人気ままな生活なんてものは俺にはまだ早かったのかもしれないな。
ユキの衝撃的な発言を受け入れられないまま朝食を食べ終え、自分の理想の生活が叶いそうにないことに絶望していたらいつのまにか冒険者ギルドについていた。
「ギルドにとうちゃーーく!」
「うぅー、ギルドに入るの緊張します……」
「それではユウト様、ギルドについたのでさっそく受付に行きましょう」
「ああ、分かった」
中に入ると、数多くの冒険者たちが酒を飲んでいたり、どのクエストを受けるか談笑したりしていて、とても賑やかな雰囲気であるが伝わってきた。
そんな冒険者たちの集団をかいくぐって奥に行くと、『冒険者教育プログラム志願者』と描かれた看板があったので、そこに行ってみると受付のお姉さんが募集をかけていた。
「冒険者志願の方はこちらに来てください」
「あの、冒険者志望で来たんですが」
「はーい。それではこちらの書類に記載を……って、王子じゃないですか。なんでこんなところに?」
「……冒険者になりたくてここに来たんです」
「そ、そうですよね。失礼しました。えーと、手続きの前にいろいろ確認したいことがありますので、少々お待ちしていただいてもよろしいでしょうか?」
「はい」
返事をした瞬間、受付のお姉さんはあわてた様子で奥に行ってしまった。
「あれー?なんでお姉さん奥に行っちゃったんだろう?」
「……なんか嫌な予感がする」
「も、もしかして、私たち冒険者になれないんでしょうか?」
「いえ、そんなことはないはずです。王子が冒険者登録をしてもいいのかギルドマスターに確認しに行ったのでしょう」
ふとあたりを見回してみると、先ほどのやり取りを見ていたのかほぼすべての冒険者たちが俺たちを見ていた。
「え、うそ、あれ本物のユウト王子?」
「なんで王子がこんなところに……」
「冒険者になりたいって言ってなかったか?」
多くの冒険者たちが俺のことをみて驚いているなか、誰かが俺たちに向かって勢いよく近づいてきた。
「王子様初めまして。私はアンリ。さっそくなんだけど、私と勝負してちょうだい!」
初対面でいきなり勝負を挑んできたこの子は、キレイな藍色の大きな瞳で大きな白い翼が印象的な有翼人の女の子だった。
「いきなりなんですか?王子に対して無礼な発言は控えてください」
「うるさいなぁ。私はただ王子と勝負がしたいの。ねえ王子、勝負受けてくれるよね?」
「……ええと」
俺が変な子の対応に困っていると、ちょうどタイミングよくギルドマスターが受付の奥から出てきてこの騒動をおさめてくれた。
「まあまあ、アンリ。ちょっと落ち着きなさい」
「だって、せっかくめちゃくちゃ強いって噂の王子にであえて、しかもその王子が私と同じ冒険者になりたいって言ってるんだから戦うしかないでしょ」
「意味が分かりません。それに先ほどの発言からすると、あなたはまだ冒険者ではないんですか?」
「そうだけど、でも今回の教習で私はSクラス入りが決定しているから優秀な冒険者候補ってことになるかしら?」
「Sクラス?」
俺がふと疑問を口にしたらギルドマスターが丁寧に説明してくれた。
「王子は教習のシステムについてご存じありませか?それでは説明させていただきますと……」
なるほど。どうやらこの教習では入学前に魔力量やスキルの有無を確認して、その後に実技試験を行ってクラス分けをしているらしい。
クラスは全部で6クラスあり、上位のクラスから順にS、A、B、C、D、Eクラスとなっているらしい。Sクラスの場合は戦闘能力は十分であると判断され、ギルドやミッションに関する座学を1週間受けるだけで冒険者になれるらしい。
ちなみに今回のクラス分け試験には、およそ50人ほど参加しているらしいがSクラスは今のところアンリだけだそうだ。
「なるほど。つまり自分だけSクラス入りを果たしたことで自分の能力を過信して、おろかにも王子に勝負を挑んできたというわけですか……」
「おろかじゃないし。今回の入学者の中じゃ私が一番強いんだから勝負を挑んでもいいはずでしょ」
「そういう問題ではありません。それにあなたは一番ではありません。そうですね、私たち4人には劣っているでしょうから強さは5番目といったところですかね」
「はっ?さっきから言わせておけばあんた……」
今にも喧嘩になりそうな勢いだったので、俺は仕方なく2人の言い争いを止めることにした。
「二人とも落ち着け。アンリだったか?お前との勝負はあとで必ずやるからちょっとまってろ」
「ホントに!やったー」
面倒な勝負を引き受けてしまったがしょうがない。そんなふびんな俺をみて、ギルドマスターは俺にある提案をしてきた。
「クラス分けテストなんですが、王子たちのスキルや魔力量のデータはすでに国王様から頂いています。なのであとは実技試験になるんですが、その相手をアンリにやってもらうってのはどうでしょう。アンリに勝てればSクラス、負ければAクラス入りということで」
「なるほど、それなら実技試験と勝負を同時にやれるし良いと思う。アンリはどうだ?」
「まあ、別に私もそれでいいよ。でも私、手加減とかはしないから本気でかかってきてね」
※次は今週の日曜日午前9時40分ごろに第4話を投稿します。
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