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4 契約

いや、ツッコミどころ多すぎでしょ。


気が付いたら目の前にでっかい竜がいたんですけどー


ていうか、さっきの推測が正しければ多分こいつは黒竜ってことになるのでは?黒いし。


ヤバくない?


でもなんか予想外のことが起きすぎて逆に冷静になってる自分がいる。


黒竜の身体は黒漆のような艶のある黒い鱗で覆われていて、黒竜の挙動に合わせて流れるように動くそれらは美しさも感じさせる。


そして黒竜の山のように大きく、かつ引き締まった胴体を支えるように生える大きな翼がその威圧感を強調している。


その黄色い目は私のことを見ているが、敵意は感じられない。


私が呆然として眺めていると、不意にまた脳裏に言葉が響いた。


『わぁ、契約者が来てくれるのは何千年ぶりだろう』


ん、何の声だ?さっき聞こえた能天気な声っぽいけど…


私がきょろきょろと周りを見渡していると、また声が聞こえる。


『僕だよ。君の前にいる黒竜』




…え?


なんかイメージと違うんですけどー


歴史書で語られていた黒竜の所業とか年齢とかからもっと威厳のある声を想像していたが、その声はどちらかと言えば無邪気な少年といったイメージのほうがしっくりくる。


まー話しやすいからいいんだけどさ


そう意識を切り替える。


ちょっとまず状況を把握しよう


「え、あなたが私をここまで連れてきたの?」


『そうだよー。君は契約者だからね』


けいやくしゃってなんだ?


いや、なんとなくの意味は分かるけど、それと私との関係がいまいち頭の中で繋がらなくて混乱する。


今の私とかただの幼女だし。


『契約者っていうのは、その名の通り僕の契約者だよ。


数百年に一度、王族には僕と契約を結ぶことができる黒髪黒目の子供が生まれる。


その子と一緒に世界の均衡を保っていくっていうのが僕の生涯を通しての与えられた役割なんだ。


まぁ、こんなに長いこと生きていると、多少の娯楽っていう感じでもあるんだけどね。


君のその感じだとこの話はちゃんと伝承されてないみたいだけど。』


ほぇー


なんか今サラっと心の中を読まれたような気がするけどそこはスルー


いきなりのスケールの大きい話過ぎて他人事のようになってしまう。


まぁ実際にセレナは他人であって他人で無いみたいな感じなんだけど。


確かに黒竜の言った通り、転生して数か月間、王族に生まれる黒目黒髪の子供が黒竜と契約できるなんて話は一度も聞いたことがない。


もし知っていたら不貞の子なんて噂が流れるはずもないしね。


饒舌な黒竜に多少なりとも気圧されながらも、そう納得する。


でも、そうか私は黒竜と契約を結ぶことができるのか。




『どうする?契約を結ぶ?』


黒竜がそう尋ねてくる


うーん、そう聞かれてもなぁ


正直、いきなりの話過ぎて困惑する。


だって契約って多分この感じだと一生ものでしょ?


そんなにすぐ決めれるものでは無いというか、なんというか


そもそもこんなヤバい存在の黒竜との契約とか危ない予感しかしないんですけど。


だって、この世界の黒竜は冗談抜きで魔王とかそういうレベルのラスボスみたいな存在だ。


前世のゲームでも世界の半分をくれるといったラスボスに頷いた者の末路はロクなことではなかった。


こんなに簡単に契約なんて取り返しがつかなさそうなものに了承していいのかと不安になる。




だけど、次に発せられた黒竜の言葉によって私の考えは一変することになる。


『ちなみに僕と契約を結ぶと僕の魔力_って言っても膨大すぎるからほんの一部だけど_が君に共有される。


つまり君は魔法が使えるようになるんだ。


僕の魔力は多すぎて制御が難しくなる時があるから、契約することは僕にとってもその点においては良いことなんだよね。


僕の契約者が魔力なしで生まれてくるのも、僕の魔力を受け入れる器を空にしておくためなんだ。』


ぱぁああ


ま、魔法が使えるようになるの!?


私の頭の中は一瞬にして魔法一色になった。


魔法、一度つかってみたかったんだよなぁ


空を飛ぶとか、瞬間移動とか


我ながら使用例が小学生な気がするけど、自分今七歳ですから(ドヤっ)


アンナに魔法が使えないと言われてからも、どうにか使えないものかと試行錯誤していた。


時間だけは沢山あったからね。結局何も出来なくて絶望してたんだけど。


そんなことだから出来ないはずの魔法が習得できるという格好のチャンスに期待が膨らむ


ほんと魔法使えるようになるとか、そういう大事なことは先に言っておいてほしい


まー元々行く当てもないからYES以外にありえないんだけどね!


さっきまで考えていた不安?知らん!




「契約する!!」


『なんか僕という存在よりも、魔法に価値をおいてるような気がするけど、気のせいだよね?』


そ、そんなことないよ?(冷や汗)


『ふーん。でもじゃあ、早速だけど契約するよ?「契約」』


黒竜がそう呪文を唱えると、私と黒竜の足元に巨大な魔法陣が浮かび上がる。


魔法陣には数々の複雑な記号が刻まれていて、青白く発光する様はとても神秘的だ。


うんうん、こういうThe・魔法って感じのを求めていたんだよね!


今まで見た事もないような光景にわくわくが止まらない。




<黒竜と契約を結びますか?>


そう無機質な声が頭の中に響く。


答えはもちろん「はい」だ。


そう心の中で返事をすると、魔法陣の光が徐々に強まって洞窟が青白い光で包まれていった。


自分の体の中の何かが大きな存在とつながった感触を覚える。


自分に流れ込んでくる何か大きな力はどこか懐かしく、心地よい。




<契約が完了しました>


そう聞こえたかと思うと、淡い光が収まり元の薄暗い洞窟に戻った。


『久しぶりの契約だったからどうなるかと思ったけど、無事にできて良かったよ。


もし失敗してたら君は爆散してたからね。


あーほんとに良かった良かった。』


え?


何か衝撃的な事実を聞いてしまったような気がするけど気のせいだよね?ね?


契約前後で特に何かが変わったような感じは無いけど、しいて言うなら何か体の中に流動体のエネルギーのような物を感じる。


これが魔力ってやつ?


これでずっと夢見ていた魔法が使えるとなると心がわくわくする。


「ねー、これでどうやって魔法を使うの?空とか飛んでみたい!!」


『うん、これで君は魔法が使えるはず。でも、魔法を使う前に君の適性を見ないといけない。


適性があるかかないかによって使える魔法は変わってくるからね。


空を飛ぶなら風の適性が必要かな。風を操って飛ぶっていう感じになると思う。』


はぁーん、そういうものがあるのね


未来の大魔法使い(仮)である自分の未来を想像すると心が踊る


私は何の適性があるんだろう?


そう聞こうとした時だった。



ずどおぉぉぉぉぉぉぉん



突如、凄い衝撃波に襲われる。


洞窟は震え、頭上から石のかけらがぱらぱらと落ちてくる。


軽いセレナの体ではその揺れに対抗できるはずもなく、最も容易く跳ね上げられた。


な、なに!?


叫ぶ様に問いかけた私と対照的に黒竜は平然と答える。


『んーこの感じだと魔王が勇者と戦ってるっていうところかな?』


魔王!?


なんでそんなビッグネームがこんなダンジョンの最下層にででくるワケ?


ってか凄い冷静じゃん


『あー、言ってなかったっけ?


この僕の巣は他の階層とは違って異空間にできてるんだよね。


で、その異空間っていうのが魔王城の真下。」


はい!?


なんでそんなところに巣を構えようと思ったのよ?


この騒音といい、ちょっと土地選び失敗してない?


何を基準にしたらこの場所がお勧めに出てくるのだろうか


そんな黒竜の個性的な土地センスに困惑していると、当たったら洒落にならないようなサイズの岩が視界の端をよぎる。


っていうかさっきから衝撃波が鳴りやまないっていうか、逆にひどくなってるような気さえするんですけどー!


『うーん。僕はそこまで気にならないけど、君からしたら確かに少しうるさいかもね。


ちょっと黙らせて来るよ。』


うんうん、ありがとう!




…え?黙らせて来るって言った?え、言ったよね?


それってどういう意m


黒竜は真上に向かって特大のブレスを放った



ずごおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん



先程の衝撃波とは比べ物にならないほどの大きな音を立て、そのブレスは当たったものすべてを無条理に消し去っていく。


なんでそうなるのーーー!?




気づけば空が見えていた。ぽっかりとあいた魔王城の穴越しに。

のんびりライフまであと少し。駆け足で向かいます。

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