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3 拉致られ中

拉致られてからどれぐらい経っただろう?


麻袋の中だと時間間隔も曖昧で確実なことは言えないけど、もしかしたら丸二日ぐらいは経っているのかもしれない。


いったいどこまで行くんだろうとか考えてたら、不意に馬車の止まる感覚がした。


男の声が近づいてくる。


「ふぃー。やっと着いたな。」


「おい、今からが本番なんだぞ。気を抜くなよ。」


「ああ、分かってるって。」


そんな会話が聞こえたかと思うと私の入った麻袋が持ち上げられた。


何か少しでも外の情報が得られないかと聞き耳をたてる。


「この子供道中ピクリとも動きませんでしたね。泣きもしないし、大丈夫っスかね?」


「確かに、国王のことを聞いてきたときといい少し気味が悪いがまぁ、俺たちは指定された場所に置いてくるまでだ。」


そう言って、男たちは歩き始めた。




うーん、真面目にここってどこなんだろうか?


今から本番なんて言って気合を入れなおしてるあたり、これから危険な所にでも行くのか?


王女の存在を消すとなると、表ざたにしたらヤバそうだし絶対に見つかるわけにも行かなさそうだしなぁ


周囲の音的に人通りは少なくなさそうだし


まー考えても仕方が無いか。


この数日間で開き直ったことによって緊張感は完全に消え失せた。


今の非力な幼女でしかない私がどうこうしたって何が起こるわけでも無いしね。


元々のんびりしたほうだったから緊張感を持っていたかという時点で怪しいけど。


っていうかこの歩いた際の揺れがなかなかに心地いい。


攫われている身でそんなことを考えている時点でなかなかアレな気がしないでもないが、一定のリズムで体を揺らされるこの感じはまるでお母さんにあやされているみたいな感覚だ。


そしてそんなことを考えているうちに睡魔が襲ってきた。


すぴーーーー




ーーー




ん?


定期的な揺れのリズムが収まったことで目が覚めた。


どうやら目的地に着いたみたいだ。


いてっ


麻袋が勢いよく地面におろされたことで私はお尻を強打する。


ちょっと、それがれでぃーに対する扱いですかぁ?


まぁ、今これを言ったところで焼け石に水なのだけど。


布越しに伝わる地面のひんやり、そしてごつごつした感覚。


土というよりは硬い石みたいな感触だ。まさかどこかの洞窟かなにかだろうか?




「ここでいいか。王妃によると出来るだけ深層部に置いてこいとのことだったが、ここまで深けりゃ文句もないだろう。


よし、さっさと帰るぞ。あの長い道を戻るのは面倒だが、俺たちを待っている破格の報奨金のことを考えると足取りが軽いぜ。」


「楽しみっス!取り分は当初言ってたように半分ずつってことで!」


そんな簡単な会話の後、去っていく男たち。


私は遠ざかっていく足音が聞こえなくなったのを確認すると、アンナが持たせてくれていた護身用の小さいナイフで麻袋から出る。


ふぃー、ついにでられたぜ


着ていたドレスの裏地に縫い付けてあったものだけどバレなくて本当に良かった。


流石にこの貧弱幼女ボディでこの割としっかりしたつくりの麻袋を破壊するなんてことできなかっただろうしね


よし、まずは状況確認。




うん、洞窟。


それも「深層部」っていう男の言葉からダンジョンじゃないかと予測される。


伝記によると、この世界にはダンジョンと呼ばれるものが度々見つかるらしい。


その中でも一番有名なのが、魔王領との境に位置する「始まりのダンジョン」だ。


このダンジョンはよく伝記にも出てきた。


確か見つかっているものの中では一番深く、100階層ぐらいまであると書いてあったはず。全ての階層を踏破した人が今までいないから推測に過ぎないらしいけど。


確か、深層部に行くにつれてダンジョン内に自然発生する魔物の強さも強くなるため、行ける人も限られてくる。


そしてこのダンジョンを他と一線を画すものにした最たる要因は、最深部に巣があるとされている黒竜の存在。


この黒竜は強い魔物の蔓延るこの世界でも最強と名高く、国によっては信仰の対象となっているらしい。


歴史書で黒竜討伐を目的として居た国が一夜にして灰燼に帰したなんて記述がみられることからもその恐ろしさがうかがえる。


曰くその鱗で作られた装備は壊れることを知らず、また全てを貫き通す。


この世界の矛盾の語源は、そんな黒竜の鱗で作られた矛と盾がもとになっているそうだ。


そんでもって今回私が連れてこられたのは「始まりのダンジョン」だとあたりをつける。


手練れでないと深層部には行けないが、それはつまり手練れであればあるほどより深層部という人目に触れない場所までいけるということ。


手練れに伝手があるのならば、誰か存在を消したい相手を遺棄してくるのにこれ程うってつけの場所はない。


麻袋の中で聞き耳を立てていたが、チンピラ臭い言動が目立つ奴らではあったけど、3人の男たちの動きは明らかに手練れのそれだった。


時々モンスターっぽいものの叫び声とかが外から聞こえてたけど、すぐに討伐しちゃったのかその声もすぐ聞こえなくなっちゃうし。


うーん、これは自力で地上に戻るのは無理に近いな。


下手に歩いても魔物と遭遇したら勝ち目ゼロだ。


食料も持ち合わせてないし、このひ弱なセレナの体で洞窟内を歩き回ることは難しい。


うん、いわゆる詰みってやつ。


どうしよう




暫くの間そう頭をひねっていると不意に脳裏に言葉が響いた。


『ちょっと動かないでねー』


ん?


不意に聞こえた中性的でどこか能天気さを漂わせる声に混乱する。


すると突然足元が青白く光った。


「ふぇ?」


思わず間抜けな声が出る。


急いで足元を確認すると、そこには魔法陣が広がっていた。


「え、ちょまt」


言葉を言い切る間もなく視界が光に覆われ、思わず目を瞑る。




目を開けると、目の前には真っ黒な龍が佇んでいた。

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