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28 バル君襲来

「おい、黒竜いるんだろ。出てこい!」


そんな一言で目が覚める


窓を覗くと、ちょうどクロムと同年齢のような見た目をした男の子が浮いていた。


銀髪、赤目に鋭い歯。


その中でも一番目に付くのは体と同じほどの大きさのある蝙蝠のような羽だ。


その羽は暴虐さとともに、どこか優艶な印象も与える。


そして中世ヨーロッパの王族を彷彿とさせるような豪奢な衣装をスタイリッシュに着こなしていた。


吸血鬼、初めて見た。




「あ、バルくん」


そうクロムが隣室の窓から顔を出し喋りかける。


「ちがう!僕の名はルーク・ヴァレンシュタインだ!


そう気安くボクの名を呼ぶな!


しかも最初の文字は「ヴァ」だ!


「バ」じゃない!!


ちゃんと下唇を噛んで...」


「はいはい、バルくん、バルくん、」


「違うっ!何回言ったら君は...」


なんか朝からコントが繰り広げられてる。


騒がしいんですけどー


「まったく、そのたらたらした口調は1000年前から変わってないみたいだな」


少し落ち着きを取り戻したのか、バルくんと呼ばれる人物がそうクロムを皮肉る。


それにしても、クロムの口調は1000以上も年前からこうなのか。


『バルくんこそ、1000年前と変わらず相変わらずかっこいいよぉ』


それに対し、皮肉に気づいていないのかクロムはバル君を褒める。


「なっ...」


そういってバル君は赤面する


朝から私は一体何を見せられているんだろうか


ーーー


バルくんという吸血鬼がやってきた。


朝のやり取りを見て瞬時に理解した。


うん、ツンデレだ。


それもなかなかレベルの高い


彼は今ソファーに座って優雅に紅茶をたしなんでいる。


ちなみにクロムはその隣に座って先程からちょっかいを掛けている。


セバスによると彼も伝説級の魔物らしいけど、こう見たら普通の男子中学生だ。


「今日はどうしたの?」


私はそう問いかける


「僕は北の城に住んでいるんだが、黒竜、、クロムと呼ばれているのか?


クロムとはお互いに長寿なこともあって昔から犬猿の仲なんだ。」


『えー僕たち仲良しじゃないのー?』


「ばっ...そ、そんなわけ...」


本当に見ていて飽きないな。


「ま、まぁそれは置いておいて、クロムは契約者が暫く現れなかったとかで前回の言い争いが保留になっていたんだ。


それでクロムが復活したとかいう噂を聞いたから今日はボクの方から来てやったんだ。」


『さみしかったのー?』


そういいながらクロムはバルくんの頬をつつく


「ボ、ボクに気安くさわるな!」


クロム、さてはちょっと楽しんでるな?


「前回の対立って何なの?」


『僕なんかしたっけ?』


なんか隣にとぼけてるやついるけど


「よくぞ聞いてくれた。


実はこの前クロムが僕の城に遊びに来たんだ。


するとコイツはボクの秘蔵の魔石コレクションを勝手に持ち出した挙句「ゴメーン!3個くらい壊しちゃったけど許して!」とか抜かしてそのまま逃げていったんだ。


君が封印されていたせいで機会を逃したが今日という今日は許さないぞ。あの時破壊した魔石3つ、同価値のもので賠償して貰う!」


収集癖あるんだ、吸血鬼


そしてそれはクロムが悪い。


『別に逃げてないし~バル君がいきなりキレ初めてめんどくさくなって帰っただけだしぃ。


つまりバルくんが悪いってことだよね!』


「君って奴は…。どれだけ僕の神経を逆なですれば気が済むんだ…?返す気がないのならばこちらにも考えが…」


ついにバル君もしびれを切らしたのか、辺りに不穏な空気が漂う


『えへへ、ごめんって。


あの魔石がもろすぎたんだよぉ


また今度僕が一緒に集めに行ってあげるから、ね?』


反省してないなこれ


こんなんで許してくれるわけ、、


「い、一緒に集めに行ってくれるのか...?


そ、そんな事で僕がつられる訳が...うーん」


ちょっろ


ちょろすぎだよバルくん。


そしてクロム、そんなあからさまにちょっろみたいな顔しない


ちょっとバルくんが可哀想に見えてきた。


変な輩に絡まれないか心配だ。


手遅れかもしれないけど。




『え、それよりバルくんはこれからどうするの?』


バルくんを丸め込めたと踏んだのか、そうクロムが切り出す。


「ボ、ボクはその、キミがもうちょっと一緒に話したいっていうんだったら残ってあげてもいいよ?」


引き留めてほしいっていう気持ちが見え見えだ。


クロムと反対方向を向いたのはいいものの、チラッ、チラッとクロムの方を確認している。


どれだけ不器用なんだこの子


ほら、クロムもういいかげん引き留めてあげ...


『なに、僕ともっと話したいの?』


まだ攻める!?


あー、ほらバルくんがもうウルウルしている。


「く、クロムのわからずやぁ!もう帰る!!」


そう言い残して窓から飛び出てしまった。


あちゃー


『ばいばぁい』


そんなクロムののんびりとした声だけが最後に残った。


「クロム、行っちゃったけど良かったの?」


『大丈夫。


すぐにまた忘れ物したーとかいって会いに来ると思うよぉ。


面白いでしょ、ヴァルくん』


確信犯だこれ

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