23 小話:神獣の悩み
<フェンリル視点>
我は神獣とも崇められるフェンリルのポチじゃ。
このポチという名前は主につけてもらった。
うむ、なかなかかっこいい名前であろう!
我も気に入っている。
そんな我は魔王であるわが主に生成されてこの世に舞い降りたのだが、そんな主は我のことを犬だと思っている節がある。
その証拠にお手やお座りなどの芸をさせようとしてくる。
まぁ我は神獣なのでそれくらいはお茶の子さいさいなのだが、我はもっといろんなことができるぞということを主にも知ってもらいたい。
まずは戦闘力。
しゅばばば
俊敏な動きで素早さをアピールする。
どうだ、我の速さに圧倒されているか?
しゅばばばばばばばばっ
...ん?
隣でより大きな風を切るような音がしたので、振り向く。
するとクロムと言っただろうか、その男が我よりも早いスピードで反復横跳びをしておるではないか。
な、なんだと?
この我よりも早く動けるものがいるとは...
だ、だが魔法なら我にかなうものはいないであろう。
我は特大の氷塊を生成する。
ふむ、主も驚いているようじゃ。
そうであろう、そうであろう
これならあのクロムという男も...
『氷結!』
そこには氷山といっても差し支えない程の氷が現れていた。
...うむ、戦闘力では敵いそうにないな。
ちなみにセバスというやつにも逆らわぬほうが良いぞ
我が一度主の執務室で走り回ってこっぴどく叱られたのだ。
神話生物である我になんのためらいもなくあの殺気を向ける姿勢。
思い出すだけでも恐ろしい。
我は愛でられることに尽力しようと思う。