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21 セレナ、四天王を決める

「セレナ様、領地も落ち着いてきたので四天王を決めてはいかがでしょうか?」


朝食終わりにそうおじじが切り出す。


そういえばそんな話もあったな


初めて執務室に行った際にセバスが説明してくれたんだっけ?


あんまり細かいことまでは覚えてないけど、魔王が魂を分けた四天王を倒さない限り勇者は私を完全に消滅させることはできないだとかそんな感じの話だった。


「さようでございます。


ですがもう少し詳しく説明させていただくと、四天王は必ずしも生成する必要はありません。」


ふむ。


生成する必要が無いっていうことは、つまりどういうことだ?


「代わりにすでに存在している者に任命することもできるのです。


一般的には戦力を強化できることから生成を選ぶ方が多いのですが...」


そうなんだ。


一般的には、という口ぶり的に、私は任命したほうが戦力を強化できるってことなんだろうか。


...あー、おじじの考えが分かった。


クロムを任命すればいいのか。


...いや、それ無敵じゃない?


セバスもえげつないこと考える


あれ、でもなんかクロム魔王になるの渋ってなかったっけ?


その時は世界の理云々で真面目っぽいこと言っていたのに、四天王になんてなっちゃっていいのだろうか。


「え、クロムはいいの?魔王になるのは断ってたけど。」


『うん、魔王になるとかならともかく、それぐらいならお安い御用だよぉ』


私の問いかけに対し、クロムはそう答えてくれる。


意外にも簡単に引き受けてくれるみたいだ。


その意外という気持ちが顔に出ていたのか、それを見てクロムが付け足す。


『魔王と違って、四天王は消滅させなくても戦意を挫けば体内の魔王の魂を破壊できるからね。僕を本気で消滅させられる存在なんていないわけだしある程度の手加減がきく立場にならなっても構わないのさ。』


へぇ。割とまともな理由だった。


四天王は戦う意思の喪失=撃破扱いというわけか。クロムを倒さなくてもOKなら、勇者が私のところに一人も到達しなくなる、ってことは無くなりそう。


まぁ、クロムの戦意を折るとか並大抵の相手にできるようなことじゃ無さそうだけど。


『第一、僕が魔王じゃあ誰も挑みに来なくなっちゃうだろ?そんなの、面白くもなんともないじゃないか。あっ、もちろん、世界の勢力の安定とかの理由もあるけどね!』


前言撤回。


勇者との戦いを思いっきり娯楽的な扱いしてるよこの竜。


クロムはこういう享楽主義的なところがあるから怖い。


目を離した隙に面白そうだったからという理由で何かヤバいことをやらかしそう。


けど、まぁ戦闘能力的にずば抜けてるクロムが四天王になってくれるのはありがたい。


遊び的な感覚であっても負けず嫌いなところがあるからそう勇者を通すこともないだろうし、少なくとも四天王がいなかった今までよりは生活の安全は保証されるだろう。


そうすれば、戦闘用のものじゃなくて生活水準を上げるほうにMPを割くことができる。


問題点と言えば、未来の勇者が可愛そうに思えてくる点だろうか。


でも、こちとら命が掛かってるんだしね。


そう開き直る。




じゃあひとまずクロムは決定として、あと三人はどうしようか?


クロムのおかげで戦闘面においてはほぼ懸念がなくなった。


そうなると話は早い。



「セバスお願いしてもいいかな?」


私はおじじに向かってそう問いかける。


多少はこうなることも予測していたのか、おじじは少し眉を上げるだけでそこまで大きな驚きは見受けられなかった。


おじじはなにか心の中で決意をしたかのように口を開く。


「よろしいのですか?より強い魔物を生成できないクロム様ならまだしも、わたくしに関しましては生成することでより強いものを手に入れることもできるかもしれませんが?」


「うん、セバスの働きっぷりは信用しているからね。これからもお目付け役としていて欲しいし。」


それは本心から出た言葉だった。


っていうか、人間の国の(自称)高ランクパーティを赤子の手をねじるようにひねりつぶしておいて今更何を言う


この前のコクリュウブラック並走事件においてもそうだ。


私の中でおじじは確実に最強グループに属している。


加えて、頼りがいのある人格者ときた


こんな人材放っておく企業がどこにあるだろうか?


おじじは私の言葉に感銘を受けたかのように一瞬目を潤ませたかと思うと、華麗に一礼をきめた。


「ありがたいお言葉。


その立場に恥じぬよう全力で頑張らさせていただきます。」


そうセバスは引き受けてくれる。


よかったぁ


なんだか断られたらどうしようって、頼んでいる側も多少なりとも緊張しちゃうんだよね。




そして、もう一人


「フェル、あなたにもお願いできる?」


私の言葉にフェルは心底驚いたようだった。


「セレナ様、私ではお守りできるかどうか...」


フェルはそう躊躇する。


クロムの参戦によって戦闘力過剰な今、より重視したいのは信頼度だ。


四天王として命を預ける関係性になるのであれば、やはり信頼が重要だと思うのだ。


そして長い付き合いになるのだから、これからもずっと一緒に居たいと思えるような人物のほうがいいに決まっている。


だから私はフェルを選んだ。


フェルは戦闘力を気にしているけど、私の繰り出した暴風の中で無傷だったりとなかなかの戦闘力を有していることは今までの経験から明らかだ。


「いや、フェルにはいつも助けてもらっているし、これからもずっと傍にいて欲しいんだけどだめかな?」


私はそのままの気持ちを述べる。


フェルはその言葉に感動したように返事をしてくれる。


「もちろんでございます。


セレナ様のためなら国一つでも滅ぼして見せましょう」


あ、ありがとう。


いや、フェルなら実際にやりかねないのが怖い


意気込むフェルをまぁまぁと宥めつつ、私は次の思考に移る。


剪定は終わったけれど、どうやって魂を分け与えるんだろう?


そう思っていると頭に無機質な音声が流れる。


--個体名『クロム』、『セバス』、『フェル』を四天王に任命しますか?


私は迷いなく答えた。


「はい!」




すると3人の足元に魔法陣が現れる。


それらが光るとともに何かが吸い取られるような感覚に襲われる。


セバスやフェルは魔法陣の上で感激したように佇んでいる。




ー魂の譲渡が完了しました。


そんな音声とともに、魔法陣は消えた。


なんだかこの三人との間に見えない繋がりが芽生えたような気がする。


これからもずっとこの三人でいられると思うと、なんだか感慨深い。


ーーー


「最後の一人はどうなさるのですか?」


譲渡がひと段落したことでセバスがそう問いかけてくる。


それなんだけど、四天王最後の一人はせっかくだし生成してみようと思っている。


単純に魔物の生成というものに興味があるし、何か魔王城にも新しい風が吹くかもしれないしね。


高い戦力を持ち合わしていなくてもいいから、この街の発展を一緒に見届けてくれるような人が良いな。


そんな思いを胸に生成を決意する。




ー四天王を生成しますか?


前回同様、そんな声が脳裏に響く。


うん!


私がそう宣言すると目の前に巨大な魔法陣がひろがった。


任命の時とは比べ物にならないサイズの魔法陣だ。


中では複雑な模様がうごめいている


魔物を一から生成するわけだからこれぐらい複雑になるのもうなずける。


生成される魔物の指定はできないようだけど、どんな魔物が生成されるのだろう?


やはりこれだけ魔法陣が大きいと、その分大きな魔物が生成されたりするのだろうか?


期待が膨らむ。


するとふいに魔法陣が眩く光った。


私は反射的に目を瞑る。


光がおさまったのを確認して、ゆっくりと目を開くと




...そこには白い毛におおわれた小さな塊があった。


前世で言うバスケットボール程のサイズしかない。


ん、なんだこれ?


セバスやフェルも不思議そうにそれを眺めている。


私が何だろうとしばらく見つめていると、それがぴくっと動き出す。


するとようやくその全貌が確認できた。


か、かわいい


それがまず初めに私の口から出た感想だった。


それはまるで子犬のような見た目をしていた。


私が抱えると顔をなめまわしてくる。


モフモフとした手触りがえらく心地いい。




《??、フェンリル、Lv50》


鑑定機能をオンするとそんな表記が出てくる。


フェンリル??この子が???


ゲームとかではよく聞く名前だけど、そのイメージと目の前で私にじゃれ付いてくるこの子とはまるで別物だ。


元ネタからして巨大な犬の怪物という起源を持つフェンリルという名前と目の前の白い子犬らしき生物がどうしても頭の中で結びつかない。


う〜む、それとも生成したてだから幼体ってことなのかな。


それならまだ納得できなくもないけど。


それにしても可愛い。


そのつぶらな瞳で見つめられると業務で疲れた心身が癒されていくような気がする。


アニマルセラピーって偉大だ。


あと癒やされるのもそうだけど、初手レベル50はなかなか強いんじゃないだろうか?


現時点ではセバスには届かないけど、レベルはこれから上がっていくんだろう。


鑑定で???って出ているのはまだ名前がついていないからか。


フェンリルは種族名だったらしい。


なら、早速名前を決めよう。


うーん



...ポチとかどうだろう?


ちょっと犬っぽいかなーとか思うけど、私の後ろをついて回ってくるその様子は犬にしか見えない。


「うん、じゃあ君の名前はポチで!」


私がそう言うとポチは元気よく吠えて返事をしてくれる。


うんうん、気に入ってくれたみたいで何よりだ。

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