18 迫る黒い影
<パーティー視点>
俺は裏社会ではそこそこ名の知れたパーティーのリーダー、ザックだ。
汚れ仕事も報酬次第ではなんでも受ける。
そんな俺に破格の仕事が舞い降りてきた。
第二王妃からの依頼だ。
なんでも監禁された少女を拉致するだけの簡単な仕事らしい。
それでいて報酬額は普段の十倍。
王妃からの依頼だなんて最初は罠かと疑ったが、相手はあのやばい噂の多い第二王妃だ。
罠である可能性は低いだろう。
これで第二王妃との繋がりも作れるし、弱みも握れる。
このチャンスを逃す馬鹿はいない。
俺たちは第二王妃の使者だという者の案内で王城から少し離れた場所に建てられた建物に向かう。
中に入ると聞いた話の通り少女がいた。
へぇ、なかなかやばいことに関わっちまったな
その少女の肌は病的に白く、手足も細い。
だが国王のことを聞いてきたときといい、その目は聡明そうな印象を与えた。
だが俺は依頼を遂行するまでだ。
運命を恨みな。
俺らはその娘をダンジョンの下層まで置いて戻ってきた。
道中何か起こるかと思ったが、そんな事はなかった。
簡単な依頼だ。
それを使者づてに第二王妃に報告し、俺たちは破格の報酬を手に入れた。
それは俺たちが一生かかっても稼げるか怪しいほどの大金だった。
さすが王族、太っ腹だぜ。
そこからは豪遊だ。
立場上大っぴらに遊ぶことはできないが、それでも貴族のような生活を楽しむ。
だが、そんな幸せな時は長くは続かなかった。
もう一度王妃に呼び出されたのだ。
使者の話を聞いて俺は耳を疑った。
拉致した少女が生きているし、しかも魔王になっているということだった。
どこにそんなばかげた話があるんだ?
そんな作り話に引っかかるような馬鹿じゃないんだが。
だけど使者は直ちに魔王領に向かわないと依頼失敗だとか言ってくるから、俺たちはしぶしぶ確認しに行った。
贅沢の味を知った今、この生活を手放すことはできない。
魔王領にたどり着くと、そこは聞いていた魔王領とは違って驚いた。
綺麗に整備されているし、とても賑わっている。
ど、どういうことだ?
とりあえず魔王について聞き込みる。
すると皆が口をそろえて黒目黒髪の少女だという。
...まさかあの話は本当だったのか?
俺たちの疑念が徐々に驚愕へと変わっていく。
まさか、どうやって
だが、本当に魔王となると話は変わってくる。
取り巻きもいるだろうし、魔王城の罠なども気になる。
新しいプランを立てないといけない。
だがそんなことを考えていると不意に目に飛び込んでくるのは綺麗に着飾った見覚えのある少女だ。
しかも周りには二人しかいない。
まじか。
これは神によるお告げかなんかか?
運が良すぎるぜ。
どうやって魔王になったのかは知らないが、まだ戦力の整っていないうちにサラってやる。
「おう、みつけたぜ」
おれはあいつらの前にでてそう声をかけた。
...のだけは覚えている。
だがしかし、その後空の記憶が曖昧だ。
なにがあった、、?
...はっ。そうだ
あの爺さんだ。
執事服を着た爺さんが出てきたと思ったらいつの間にか吹っ飛ばされていたんだ。
あの爺さんは化け物だ。
今思い出すだけでも足ががたがたと震える。
そうだ、そして気づいたら二人も血を吹いて倒れていたんだ。
もう関わりたくねぇ
俺は逃げ出した。