15 城下町整備
次の日、私は城下町の改革に取り掛かる。
手始めに昨日同様、石畳を引き、街灯を設置して家を建てる。
中央の広場には噴水を置いてみたりと景観にも少し拘ってみる。
道のわきには街路樹や花なども植えて彩を加えてみた。
なかなか街らしくなってきたんじゃないかな?
周りを見渡してみると、活気が満ち溢れてきたようにも思える。
うん、使っているのは村セットなんだけどね
この規模になると街と呼んでも過言ではないだろう
道路整備や既存の建物のアップグレードが終わったところで、国の機関として役所のような建物も追加で設置していく。
そんな中、村セットの一つにあるものを見つけた。
銭湯 600MP
...私は迷うことなく設置した
一瞬にして目の前に瓦屋根の建物が表れる。
うん、これに関してはほぼ脊髄反射のようなものだ
王城のお風呂もいいけど、やっぱり銭湯には銭湯の良さがあって
建てないという選択肢はないのではないだろうか?
外観は銭湯の模範解答のような見た目だが、肝心の温泉はどうなっているのだろう?
足早に入ってみるとまずは受付が出迎えてくれる。
そして女湯、男湯に分かれて入ってみるとそこには典型的な銭湯の風景がひろがっていた。
種族の違いにも対応したのか、スペースは広めに作ってある。
サウナもしっかり完備されていた。
いや、魔王機能万能すぎる
「ここは何でしょうか?お風呂場のようですが」
そうセレナが問うてくる。
「公衆浴場だよ。共用のお風呂みたいな」
でもそうか、魔王領ではあまりなじみがないのかもしれない。
各家庭にお風呂がある今ここに訪れる人は少ないかも知れないけど、試験的に3か所ほど設置しておく。
管理者に関してはセバスが手配してくれるみたいだった。
きっと近所の叔母様方がうまいこと回してくれるだろう。
城壁を拡大したことによってスペースには余裕がある。
そこら辺の空きスペースはまたぼちぼち埋めていこうと思う。
ーーー
<温泉マニアの意見>
俺は魔王城周辺の城下町と呼ばれるエリアで鍛冶屋を営むドワーフだ。
前魔王が亡くなったという知らせが届いてから数日
俺たちの暮らしは一変した。
家を手始めに、石畳や街灯なども整備された。
下水道がしっかりと整備されたこともあって、異臭はほとんど気にならない。
前までは実力主義の風潮も相まって、店は武器や防具関係の者が多かったが、最近ではそれ以外のお店も増えてきた。
疲弊していた街の雰囲気も、明るい街並みにあった賑やかなものへと変わりつつある。
そんな中、俺はあるものにはまっていた。
銭湯だ。
銭湯は街の改革と同時に3か所ほどに設置された。
最初は銭湯というものに馴染みはなく、他人と一緒に風呂につかることに抵抗があったが一度行ってみて分かった
あれはいい。
奥さんとかはこれまた新しく整備された家のお風呂で十分じゃないと言う。
確かにこれまでの生活を考えると、今の家のお風呂でも十分幸せだ。
でも、銭湯と家の風呂でとは全然違う。
あの空間で入る広いお風呂は別格だ。
たまに会うご近所さんとの話にもついつい花が咲いてしまう。
そしてサウナ
あれは良い。
体の奥底からあったまる感覚がたまらない。
水風呂と永遠にループしてしまう。
この街には銭湯が3つあるわけだが、どれも近所の奥様方によって運営されている。
俺はその三つを気分によって行き分けている。
どれも室内の造りは同じで賑わっているが、立地によって客層などが変わってくる。
俺の家に一番近い銭湯は周りに鍛冶屋が多いこともあって、仕事終わりの男たちでにぎわっている。
俺としても話が弾むし楽しいのだが、時には静かに風呂につかりたいときもある。
うん、断じて俺の奥さんが湯番の時を避けているわけではないが
そういう時は少し市街地から離れた場所にある、比較的静かな銭湯に向かう。
ちなみにもう一つの銭湯は住宅街に近いため家族連れが多い。
少し細かいことをいうと、湯番をしている奥さん方によってサービスが少し変わってきたりもする。
お湯加減でいうと、湯ばばが有名だ。
彼女は数年前に夫をなくした高齢の鬼族だ。
温度は浴槽わきの魔道具で調節するのだが、彼女の少し高めだけどくせになる絶妙な温度が人気でコアなファンが存在する。
ファンからは親しみをこめて湯ばばと呼ばれている。
そんな俺もそのファンの一人だ。
また、人によってはビールとかも提供してくれたりもする。
今日はどこに行こうか?
そう仕事終わりの銭湯に思いを馳せながら、俺は今日も今日とて鉄を打つ。




