13 セレナ、農村地を整備する
12話改稿しました。
よし、まず手始めに城壁を建てようか。
魔王城の周りにあった壁は削除し、その壁を囲むように点在している農村地を丸ごと囲えるほどの城壁を建設する。
もともとの城壁も戦争を意識してか結構防御力の高い良いものだったけれど、農村地も国の一部なのだから、それを守らない壁に意味はないということで削除した。
新しい城壁は耐久性を考えて石造りの高さは約10メートル程の物にする。
ぱっと本から視線を上げると、遠目に新しく設置された城壁が確認できた。
本当にあっという間に設置できちゃうんだな、建築業を営む人たちが見たら泣いていそうだ。
これ、ゲームみたいでかなり楽しい。
前世ではこういうゲームはかなりやりこんでいた記憶がある。
ウィキ頼りのプレイヤーだったからそこまでうまいわけじゃないけれど、仕事を楽しむことが出来るのはかなりでかいと思う。
あれ、私って結構魔王向いてたりして。
そんなことを考えつつ道を引いていく。
すでにあった踏み固められたタイプの道を石畳の道で舗装していく形だ。
石畳は灰色と少しオレンジがかった色の石で構成されていて、明るい印象を受ける。
これがデフォルトなのかな?
舗装した道を歩いてみると、その歩きやすさに驚く。
石畳は基本的にアスファルトとかに比べて歩く時の足の負担が大きいものだけれど、これはまるでカーペットか何かの上を歩いているみたいだ。
足音はカツカツと石畳をたたく音そのものなのに踏む時の感覚だけが違うのは地球とは違う魔法的な力が働いてたりするのかな?
そこら辺について私は門外漢だからよくわからないけど。
あとでおじじとかに聞いてみるのもいいかもしれない。
次に家を立ててみることにした。
すでにある家はアップグレードという形で一軒一軒改築していく。
するとパステルカラーの可愛らしいヨーロッパ風の一軒家がそこに現れる。
もとのぼろ屋と比べてもえらい変化だ。
試しに中に入ってみるとトイレなどが完備されいて驚く。
水道からも水が出るので、どうなっているのかと見てみるとどうやら術式が刻まれているようだった。
下水などの処理も同様に魔道具によって行われているみたいだ。
いや、今更ながらこのシステムチートでは?
普通だったら知識チートで転生者が持ち込むような技術が最初から完備されている。
この家も私が出せるものの中でもレベルがそこまで高いものだというわけでもないのにこれって、家を改築させるだけで国全体の生活水準を底上げできそうだ。
一見ごとの必要魔王ポイントはそこまで高くないし国全体のリフォームを考えてみてもいいかも。
でも、農村の人たちの家があんな手作り感あふれるぼろ屋だったってことは前任の魔王はそれすら出し渋ったってことだ。
前任者ェ…
その魔道具をセバスは興味深そうに眺めている。
他の場所に住んでいる人も移住してきたとき用に余分に家(中)を建てておく。
そして村長が住んでいるという家は集会所も兼用で家(大)を建築する。
次に畑を設置していく。
畑(中)を綺麗に升目上に規則正しく設置していく。
これならA型でも安心だ。
何を植えるかも同時に決められるっぽい。
野菜から果物まで。
なので主食となる小麦は多めに、そして野菜や果物の畑などを適当に配置していく。
私の好物であるサツマイモも魔王権限でちゃっかり植えていく。
もう食べられないと思っていた食材たちがまた食べられるようになるとは...
この能力の有能さに今さらながら気づかされる。
畑の横には農作業の道具を入れられるように小屋を建て、灌漑工事も行う。
井戸は街の中心に設置しておく。
ここでは馬などの家畜も育てているようなので、家畜小屋も設置。
炎の魔法陣によって光る街灯を設置していけばとりあえずは完成だ。
ふぅ
なかなか根気のいる作業だったけど、楽しくて時間はあっという間に過ぎてしまった。
今回の作業で大体170,000MPぐらい使ったけど、毎日のデイリーボーナスも含めて1,700,000MPぐらい溜まっていたからそこまで気にするほどでもない。
まぁ、必要経費だしね。
初手レベル50は本当に強い。
でも、しいて言うなら外壁の出費がなかなか大きかったように感じた。
これは農村地も囲むほどの大きさの外壁を建ててるからっていうのもあるんだけど、それでも城壁をできるだけ小さい範囲にとどめたいていう歴代の魔王のの考えは理解した。
すると私の作業が終わったのを見計らってか、この村の代表らしき人物が私の前に出てきた。
「おい、この村を綺麗にして何に使うつもりだ?たとえ軍用地にしようたって俺はあんたに忠誠を誓わないからな。」
え?
私は突然そんな言葉を浴びせられて呆然と立ち尽くす。
相手は言ってやったり、みたいな顔をしているけど...
あーもしかしてこれまでの冷遇の歴史もあって、私がこの街にひどい扱いをしないか疑っているのか。
あ、後ろからセバスとアンナの凄い殺気を感じる。
うーんと、ここは正直に
「普通に、この街を住みやすくしているだけだよ?これまでの町だと色々と不便だったでしょ?」
「そ、そんな訳...」
「なにがおかしいの?」
私はそう問いただす。
すると彼は言葉に詰まり、私の真意を探るように村を見渡した。
周囲では綺麗になった村に子供たちがはしゃぎまわっている。
彼の目にはそれらがどう映ったのだろうか?
「す、すまなかった!」
彼は勢いよく頭を下げた。
そ、そこまで謝る必要もないのだけど...
「気にしないで?」
男の人はその言葉に感激したようにこっちを見上げる。
「本当にありがとうございます。なんとお礼を行ったらいいか。
綺麗に整備していただいた畑は大事に管理させていただきます。」
いや、いや全然大丈夫。
喜んでもらえて何より。
もう私の頭の中は収穫時期を迎えた食べ物でいっぱいだ。
さすがに今日は疲れたので黒竜に乗せてもらって帰ることにした。




