浮気者への復讐方法~修復不可能~
私には付き合って3年になる彼氏がいる。
一般的に見ても「イケメン」と呼ばれる部類に入るだろう容貌に、お前はどこのエリート営業か!と突っ込みを入れたくなるくらい上手い話術(でも営業部所属じゃない)。
長身の体躯も相まって、かなりモテる。
一方、私は至って普通のOL。
全てにおいて平凡と言ってもいいくらいのどこにでもいるような女。
そんな二人が付き合いだしたのは、彼からの告白で。
突然何事!?な困惑と罰ゲーム!?な疑惑とこんなイケメンに告白される嬉しさに、「よろしくお願いします」と答えたのだけを覚えている。
イケメンな彼氏との交際は最初の一年は順調だった。
問題は二年目に入ってからだ。
1回目の浮気。
相手は知らない女性。
私は泣きながら怒鳴り付けた。
結果、二度としないと謝罪されて抱きしめられた。
2回目の浮気。
相手は私より若い女子大生。
私は泣きながら怒鳴り付けて、思いっきり引っぱたいてやった。
結果、もうしないと土下座して謝罪されてキスされた。
だけど、その日は突然やってきた。
いろいろ紆余曲折あったけど、交際期間も3年。
同棲話も出て、幸せなはずだったのに――
久々の週末デートをドタキャンされて、暇になったから友人達と遊ぶことにした。
ハイテンションでボーリング、その後はカラオケで歌い、おなかが空いたからいつもの居酒屋へ。
いつも以上にはしゃぐ私に友人達は嫌な顔一つせず付き合ってくれた。
それに有難いな~って思って、羽目を外して大騒ぎ。
2軒目行こうと店を出た瞬間、地獄に突き落とされたように感じた。
実際にはそんなこと絶対にないんだけど、その時はそう表現するのが一番だと思った。
いきなり固まった私を不審に感じて友人達が周りを取り囲む。
涙はなかった。
またか、と溜息一つ。
そして、怒りが込み上げる。
友人達に用事を思い出した!と嘘ついてその場から駆け出した。
3回目の浮気。
相手は、私の幼馴染。
流石にこれには怒髪天だわ。
今までの鬱憤を晴らす為、これから復讐に向かうのだ!
走って、走って、走って辿り着いた先。そこはアイツの部屋。
真っ暗な部屋。
主人がいない、こんな部屋には二人の思い出が詰まっている。
写真立ての笑顔の二人。
並んで置かれた歯ブラシ。
お揃いのマグカップ。
二人で選んだソファー。
他にもいろいろあるけど、もう全てが無駄な物。
「片付けなきゃね」
ゴミ袋片手に各部屋を回ってくる。
ちゃんと分別するのは忘れないからちょっと時間はかかるけど、部屋を移る度にゴミ袋は膨らんでいく。
この部屋に私の痕跡はいらない。
すっきりした部屋を見渡して、ウンウンと頷いた。
私の物が何もない、部屋。
アイツの物だけの部屋。
私の存在を示す物は全て消去。
玄関にゴミ袋を置き、部屋に戻る。
私の物ではないけれど、代わりのモノを残す。
それで私の気が治まるわけじゃないけど、少しだけ溜飲が下がるはず。
置いてあった鍋に水をたっぷり入れて、まずはベッドにぶちまける。
2杯目はソファー。
二つとも二人で買った物だから、半分は私にも所有権がある。
ゴミ袋には入らないから、その分だけ仕返しを。
このベッドで他の人と眠るかもしれない、無神経なアイツ。
絶対にアイツなら、誰彼構わず連れ込むだろう。
鍋をその辺にポーンと投げて、仕上げに記念日に飲もうと取っておいたワインをコポコポとかけてあげた。
むせ返るような、きつい酒精の匂いが部屋に充満した。
ふと思いついて、玄関に移動。カバンから写真を取り出した。
二人の笑顔。
もう戻らないだろう、甘い一時。
写真を取り出し、私とアイツを引き裂いてみる。
アイツの写った部分はそのまま床へ。
私の写った部分はカバンの中へ。
そして、携帯を取り出し着信もメールも拒否設定。
ちょっと重たいゴミ袋を片手に、思い出にさよならを告げる。
私の居場所は分からないだろう。
同棲予定で引っ越しする手筈になっていた。
帰り着いたら新居探しとかいろいろ面倒くさいけど、引越先が変更になるだけだ。
裏切ったのはアイツ。
二度あることは三度ある。ホントにそうだ。
信じた私が馬鹿だったんだ。
さっき見た景色は目を瞑ると鮮明に思い出せた。
可愛らしい、巨乳の幼馴染と腕を組んで楽しそうな表情のアイツ。
進む先には、ホテルが立ち並ぶ。
今頃はお楽しみ中だろう。
部屋の惨状を見たらどう思う?
憎む?恨む?それとも泣く?イヤ、アイツが泣くことはないかな~
私は泣くこともなく、ただボンヤリと家路へ進んだ。
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俺には付き合ってもうすぐ3年になる恋人がいる。
いや、いた。
そう言った方が正しいだろう。
ちょっとキツい感じのする、ちょっぴり吊り上がった目が好きで。
口を開けば、全然可愛くないけど恥ずかしそうに好きだと告げるとこが可愛くて。
浮気なんてしない!と思える相手は初めてだったはずなのに。
それなのに浮気をしてしまった。
細身な彼女と周りの女の子と比べちゃいけないのに、いつからかその柔らかそうな肉体を比べていた。
元々巨乳好きで、無類の女好きの自覚はあった。
好きなのに、傷つけたくないのに、裏切っていた。
久しぶりの週末デートをドタキャンして、巨乳な彼女の幼馴染に誘われるままに出かけた。
映画を見て、食事をして、そのままホテルへ。
やっぱり女の子の躰は柔らかいな~って堪能して、朝帰り。
扉を開けた瞬間、ワインの匂いに思わず顔をしかめた。
この部屋に入れるのは、俺とアイツくらい。
アイツが来てるのか、ってちょっとうざく感じた。
何故、うざく感じたんだろう。
あんなにも好きなのに。
その時の俺は、馬鹿だったとしか言いようがない。
『天罰』
それが一番ぴったりくる言葉だろう。
一歩踏み入れた部屋を見て愕然とした。
綺麗に片付いているのに、ベッドとソファーだけは異様な程に様変わりしていた。
一緒に住もうかとそんな話をしたのは半年くらい前で、その時にベッドとソファーだけは二人で使うためにちょっといい物に買い替えたそれらは二人の幸せの象徴でもあった。
この色がいいな~って話をして、現物を見に行って、来月にはこの部屋にアイツが毎日いるのが当たり前になるはずだった。
怒りよりも、恐れを感じた。
アイツが離れていく。
それをヒシヒシと感じて、恐怖を覚える。
慌てて携帯を取出し掛ける。が、素っ気ない音声ガイダンスが聞こえて、それが最終通告を与える。
ペタンとその場に座り込んで頭を抱えることしかできなかった。
どうして?
なんで?
こんな風になるつもりはなかったのに。
後悔しても、きっともう遅いだろう。
アイツは離れていった。
現実は、胸が張り裂けそうなくらいに痛い。
けれど、アイツの痛みはこんなもんじゃなかったはずだ。
それを複数回も、好きな相手に与えていた。
それを漸く気付いた。
全ては、終わりを告げている――時既に遅し。