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ねこのペロ シリーズ

ペロと肉まん屋さん

作者: リリー・ボードレール

 「あー、今日はひまだ。」

 ペロが家で寝そべりながらテレビを見ているとお母さん猫の目が三角に吊り上がりました。

 「だったら仕事に行きなさい。」

 ペロはお母さんには逆らえません。

 「はーーい」と返事をすると毛づくろいをして二足歩行で繫華街に出かけました。



 「どこで働くかな。」

 ぶらぶら歩いていると良い匂いがしてきました。これは匂いの元を確かめなければ。鼻をクンクンとひくつかせて風に運ばれる匂いをたどります。

 それはすぐに見つけることができました。肉まん屋さんです。

 奥には中華料理を出しているご飯屋さんがあり、席にはまだ数人の客しかいません。店の前に高く積み上げられたセイロからは湯気がモクモクと上がっています。



 エプロンをかけたパンダが「いらっしゃい」と声をかけてきました。

 ペロは目を丸くして上目遣いでパンダを見ました。

 「なんだよ」

 パンダはペロのあまりの可愛らしさにひるみます。 

 「今、僕はお金がありません。でもすごくお腹が空いていて・・・」

 前足の肉球を合わせてさらにパンダをじっと見つめます。



 ペロのおねだり攻撃にパンダは舌打ちをしました。

 「仕方ねえ。仕事終わりに肉まんをやるから今日はここで働きな!」

 パンダの心遣いにペロは心の中で舌打ちをしました。ペロは肉まんをただで貰って食べ歩きをしようとたくらんでいたからです。分からず屋のパンダめ!けれど今からまた移動して仕事を探すのはとても面倒だし、僕はここの肉まんが食べたいんだ。

 ペロはパンダに「はい、よろしくお願いします」と返事をしました。



 言葉は優しくないけれど心はとても優しいパンダは肉まん売りをペロに任せました。

 「俺は店の中で働くからしっかりやんな!」

 「はい」

 お店の前掛けをつけて店に立つと子連れのヒグマがやって来ました。

 「肉まん二つ、おくれ。うちの坊はここの肉まんが大好きなんだ。ねだられるとつい買ってしまうよ。」

 ペロは「ありがとうございます」とお礼を言ってパンダに言われたとおりに肉まんを白い紙に包んで渡しました。お金は店頭に置いてある箱に入れて貰いました。

 


 ペロのお腹が「グーグー」と空腹を訴えてきました。

 時計を見ると丁度お昼です。大通りもさっきより動物が増えました。

 鼻をひくひくさせた動物たちが昼ご飯を求めて歩き回ります。

 「いらっしゃい、いらっしゃい!美味しい肉まんだよ!」

 ペロは大きな声で呼びかけます。が、誰も足を止めてくれません。

 待てども客は来ません。



 空腹のあまり耐えられなくなったペロはセイロの蓋を開けて肉まんを取り出しました。白い紙に包む時間も待てません。

 「いっただっきまーす」 

 素手でアツアツの肉まんを掴んで店前で頬張りました。

 はふはふ あちち。

 ふわふわのまんじゅうから肉汁があふれます。噛むたびに玉ねぎの甘味と肉のうま味が出てきてペロの顔には思わず笑みがこぼれます。キクラゲのコリコリが良いアクセントになっていて、次の一口が待ちきれません。パクパクと次々口に入れていくとあっという間に食べ切ってしまいました。

 食べ終わると至福のため息がもれます。

 


 その様子を足を止めて見ていた街行く動物たちは店の中と店頭の分かれました。

 「あんた!美味しそうに食べるね。二つくれ。」

 「俺は三つ。」

 「私も娘たちに買って帰ろうかしら。」 

 店内は満席となり、店頭は混み合い、嵐のような忙しさとなりました。当然肉まんは飛ぶように売れ、パンダは大喜びです。



 昼の二時にはすべての商品が売り切れたので店を閉めることになりました。

 「ご苦労さん!こんなに繁盛したのは初めてだ。また明日も来てくれよ!」

 パンダは約束の肉まんを渡せないことを謝りつつ、巾着を渡しました。中を見るとお金が入っていました。

 ペロは巾着のなかのお金を見て肉まんを盗み食いしておいて良かったと心底思いました。お腹が空いているときにお金を渡されてもお腹がいっぱいになるわけじゃないからね。

 「明日はここには来られないんだ。僕は気まぐれなんだ。」

 これにはパンダは残念そうにしていたが、さようならを言うとパンダもしつこく迫ることはありませんでした。

 ペロは大きなあくびをすると昼寝をするために家に帰っていきました。


 



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