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黒幕

振り向いた先にいたのは、もちろん彼。副会長の新橋鷹瞳だ。


「なんで副会長が?」


そりゃ、確かにこの人は副会長だけど。でも、なんか優男だし、タレ目だし。

教師を移動させるような、凄い力を持っている様には見えない。


「ちょっと待ってよ。同じクラスなのに『副会長』はなくない?俺の名前知らないの?」


そう言い、副会長──新橋君は不満そうに眉を寄せた。タレ目のせいか、あまり覇気はない。


「ごめん。えっと、新橋君?」


実際のところ曖昧だったりして。

苗字は多分あってるはず。下の名前は、少し自信ないけれど。

しかし新橋君は、まだ不満らしく、微妙な顔のままだ。


「新橋君てのも慣れないから嫌だなぁ。俺の名前はね、鷹瞳君って言うんだよね。鷹の瞳って書いて『たかめ』。鷹の爪みたいでカッコイイだろ?それで呼んでよ。美栄ちゃん」


鷹瞳という漢字はまだしも、鷹の爪がカッコイイかどうかは微妙だ。なんなら唐辛子とでも呼んであげたほうがいいのだろうか。

だが本人は気に入っているらしく、私自身、下の名前を呼ぶ事にも呼ばれる事にも抵抗はない。加えて、人の良さそうな笑顔と口調で、警戒心は殆ど薄れていた。


「鷹瞳君はそんなに凄い力の持ち主なの?」


言えと言われたから言ったらのに、とたんに新堂の顔つきが変わった。なんだか物凄い不機嫌そうな顔つきに。そして、わけのわからない事を聞いてきた。


「君のタイプは、コメディアン系?」


「はぁ?」


コメディアン系?誰が?眉を寄せながら呟くと、何かを察した鷹瞳君は、サッと顔色を変えた。


「やだなぁ。同じクラスのよしみだって。ねぇ、美栄ちゃん!」


「う、うん」


よくわからないけど、とりあえず肯定しておこう。小さく頷くと、新堂は表現と共に声色まで一変させた。


「きっかけは俺だけど、後片付けは全て、そこにいる奴さ。詳細は『鷹瞳君』に聞くと良いよ」


「どういう意味?」


呟くと、鷹瞳君は僅かに顔を強ばらせながら、アハハと乾いた笑いを漏らした。


「あ、安西は前々から結構暴走してたからねぇ。生徒からの苦情も多々あったし、必然と言えば必然だったんだよ」


意味がわからない。いい加減ハッキリしてもらいたい。鷹瞳君に詰め寄ると、逃げ道を塞いで問い詰めた。


「だから結局、鷹瞳君は何をどうしたの?」


「つ、つまり俺がじいちゃんに話して、安西を移動させたって、ことだよ。てか、美栄ちゃん近いから」


「じいちゃん?鷹瞳君のおじいちゃんは何者なの?」


話が進んでいるようで、進まないのはどうしてなんだろうか。なかなか煮え切らない答えに、さらにイライラしてきた。そんな私よりさらに不機嫌そうに、新堂が口添えをする。


「いい加減、気付いたらどうなんだ?この学校の名前を思い出せばわかるだろう」


「学校の名前?」


学校の名前。ここは私立新橋高等。


「あ!まさか、鷹瞳君のおじいちゃんって……」


「多分、当たりかな?」


全く気づかなかった。学校の名前――つまり、創立者の名前と鷹瞳君の名前が同じだ。と言う事はつまり──。


「ここの理事はうちのじいちゃんなんだ。新橋正時。敢えて公表はしてないけど、隠してるわけでもないから、みんな知ってると思ったんだけどな」


「言われてみれば確かにそうだけど、全然知らなかった」


そうだ。確かに鷹瞳君は、学校と同じ名前の持ち主だ。新橋という苗字も、特別珍しいわけじゃないけど、佐藤や鈴木みたいにポピュラーでもない。身内の学校だって事くらい、少し考えればわかる事だ。


「鷹瞳君って、何気にエリート組だったんだ。ただ、イケメンなだけじゃなかったのねぇ」


そりゃ、みんながこぞって鷹瞳君に取り入ろうとするはずだ。1人で納得していると、鷹瞳君は気まずそうな表情で、咳払いを1つした。


「まぁ、勉のお母さんの意見も大きかったんだよ。やっぱり、いくら教育とは言え、生徒を監禁した挙げ句、傷害はちょっとね。それに校内情報を伝えるのも、俺の役割なんだよね」


「そうなんだ。凄いわね」


ただのヘラヘラしたタレ目だと思っていたけど、意外と大きな任務を課せられているみたいだ。そのギャップに妙に感心してしまった。それに加え、彼に興味を持った。


「そういえば、鷹瞳君って同じクラスなのに、全然会話した事なかったわよね。クラスでは物静かだし。どっちが本当の鷹瞳君?」


「え……そ、そうだなぁ。クラスでは多少猫被ってるからねぇ。こっちが本当かなぁ」


言いながら、鷹瞳はしきりに新堂の様子を気にしている。しかし、私はおかまいなしに鷹瞳君に話しかけ続けた。


「そうなんだ。普段も今みたいな感じなら話し易いのに。キャラ変更してみたら?」


「あ、アハハハ。努力してみるよ」


苦手な人間より、話し易い人間が多い方が良いに決まっている。あと1年以上も同じクラスの仲間として関わるなら、なおさら。

いつの間にか私の頭の中からは、安西移動の事などすっかり抜け落ち、鷹瞳君に興味が移ってしまっていた。それに伴い、もう1つ忘れてはいけない存在があったけれど、当然ながらそれもすっかり忘れてしまっていた。


PTA会長を母に持つ、歴代きっての秀才生徒会長・新堂勉。

理事長を祖父に持つ、イケメンランキングナンバー2の副会長・新橋鷹瞳。


「なんなのよ、うちの学校は」


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