素行良好男子と素行不良女子
「おはよう、美栄ちゃん。停学明け早々に会えるなんて嬉しいよ」
やっと停学が終わった朝。
学校に行く途中、声をかけられて振り返った。
そこには、私のモロ好みのイケメン男子が立っていた。
いや、だけど見たことあるんだけど。
マジマジと見ていると、そのイケメンは困ったように笑みを漏らした。
「まさか顔を忘れたのかい?あんなに毎日連絡しあっていたのに」
その瞬間、気付いた。この偉そうな物言いは──。
「勉!?なんでアンタ……め、メガネは!?」
「あぁ、あれは邪魔だからやめたんだ。今まで優等生雰囲気だすためにかけてたけど、あんな事したしさ。もう意味ないから」
そう言いながら笑う勉はいつもの勉だけど、見た目が違うからムカつかない。
「ほ、本当に都合いい奴ね……。てゆーかその顔でこっち見ないでくれる?」
これ以上見ているのが恥ずかしくてポツリと呟いて背を向けた。
その様子が、ふてくされた様に見えたのか、勉は笑いながら私の頭を撫でた。
「冗談だよ。本当はさ、君が『メガネとったらカッコイイ』って言うから。リクエストにお答えして」
覗き込まれ、顔から火が出る。
「く、下らない事覚えてないでよっ!だからその顔でこっち見ないで!」
歩き出そうとした時、突然引き寄せられてキスされた。しかも、公衆の面前で。
「ななな………何すんのよっ」
「キス」
「んなモン分かってるッ!なんでこんな場所でっ」
「だってほら、まだ約束があるだろう?キス50回。まだまだ先は長いんだ」
それを聞き、私はがっくりと落ち込んだ。わ、忘れていた!
「さぁ、行こうか。これからはずっと一緒だ」
差し出した勉の手を見つめる。
手なんか繋ぎたくない。
だって、なんていうか……今さら恥ずかしい。
だけど、この笑みの前ではそれを振り払う事もできず、渋々握り返す。
「そうそう。その髪、似合うよ」
「あ、ありがとう」
あれ?そういえばなんで髪を染めたんだっけ?何か大事な事を忘れている様な。
「どうかしたかい?」
「まぁ、いっか。なんでもない」
付き合って2ヶ月。
キスまでした私達だけど、この日初めて手を繋いだ。
ずっと一緒に。
それはいつまでかはわからないけど、勉ならバイトからでも社長にのぼりつめれそうな程甲斐性はある気がするし、もしかしたら本当に『ずっと』一緒にいられるかもしれない。
なにはともあれ、織原美栄。
やっと、普通の学校生活が送れそうです。




