真偽の確認
「さて、行きますか」
翌日。意を決して学校に行く事にした。
このままズルズルだなんて嫌だし、勉がどう思ってるのか、私は知らなければならない。
「もう、どうにでもなれだわ」
学校に行くと、一先ず自分の席に着いて落ち着いた。
良いのか悪いのか、まだ、勉の姿は一度も見掛けてない。
「また休みだったりして」
だったら嫌だ。先伸ばしにすると、決心が薄れる。
こんな時に限って、鷹瞳君もいない。教室を出ると、私は勉のクラスに向かった。
勉のクラスはA組だ。
このクラスには友人はいないため、今まで訪れた事はない。
「ちょっと聞きたいんだけど」
「なに?」
近くにいた生徒に話しかける。
「新堂勉いる?」
「新堂君?いるよ。鞄あるみたいだし。多分、生徒会室じゃないかな」
全く、馬鹿の一つ覚えみたいに常に生徒会室なんだから。
生徒にお礼を言うと、生徒会室に向かった。ここに来るのは、今日で最後になるのかな。
ドキドキしながらドアを開けると、真っ先に勉に会ってしまった。
「おはよう美栄ちゃん」
「お、おはよう」
あぁ、ついてない。まさか真っ先に会うだなんて。心の準備が………。
「どうしたんだい?入りなよ」
そう言われ、渋々生徒会室に入る。
「風邪はもう大丈夫かい?本当はお見舞いに行きたかったんだけど、俺も風邪引いていて行けなかったんだ」
「そう……」
この様子じゃ、勉はまだ知らないみたいだ。黙って俯いている私を見て、首を傾げる。
「どうしたんだい?まだ本調子じゃないのかな」
「勉、私………」
聞くしかない。その為に来たんだから。果してあれが真実なのか。
「私、聞いたんだ。先生に。勉は、私を真面目な生徒にするために、頼まれて私と付き合ってたって」
すると、勉の顔色が少し変わった。そしてこう呟いた。
「聞いたのか」
その言葉を聞いた瞬間、目の前が真っ暗になった。
聞いたのか。
今、そう言ったのよね?
「聞いたのかですって?何よ。随分普通じゃない」
悲しかった。
だけどそれより、怒りの感情の方が強くて、私は思わず近くにあった冷めたコーヒーを思いきりぶっかけた。
「ふざけないでよ!私は、アンタのポイントアップの道具!?何が頼まれたからよ!私は、私はっ……!」
私はアンタが好きだった。アンタが私を好きだと言ったから。
「随分楽しかったでしょうね!?自分をてこずらせてた問題児を手なずけるの!何が好きよ!?なにが一目惚れ!なにがっ………」
「美栄!」
突然肩を掴まれ、反射的に目一杯突き飛ばした。衝撃で勉の眼鏡が落ちる。
ムカツクけど、本当に殺してやりたい程だけど、コイツはカッコイイ。
だから、もっともっと早くに気付くべきだった。
私を好きになるはずがない。コイツは違う世界の人間なんだから。
「私が馬鹿だったわ。自惚れてたのよ。全校の憧れの生徒会長様が私を好きになるわけないのにね。現にアンタは私が髪を染めた事にも気付かない。そういう奴よ!」
思いきり叫ぶと、伏し目がちだった勉がゆっくりとこちらを見て呟いた。
「それは、俺と別れるって意味?」
その言葉に、思わず勉の頬を叩いた。
「別れるもなにも、私とアンタの間には元々何もないっ!」
私がただ求めていただけ。コイツは、適当に作ったモノを私に与えていただけ。
私はそれを『愛』だと思っていた。ムカつきながらも、嬉しかったんだ。
言いたいことをすべてぶちまけると、そのまま生徒会室を飛び出して自宅に帰った。
もう二度と関わりたくないし、見たくもない。名前を聞きたくもない。永久的に、記憶から抹消してやりたい。そしてまた、同じ事の繰り返しだ。覚悟していたつもりだったのに。
だけど心の奥では『全部先生の作り話』を望んでいたんだ。
溢れでる涙は、私の意地やプライドだけではどうする事もできなかった。




