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お見舞い

翌朝、皆に騙されていたのが悲しくて、一晩中泣き明かした私は、とてもじゃないけど学校に行けるような顔じゃなかった。


「休むしかないよね。なんか頭痛いし」


溜め息をついて、ベットに潜り込む。

散々泣いて後悔して開き直ったはずなのに、ふとした瞬間にまた、悲しくなる。そして怒りが沸き上がる。


皆、最低最悪だ。

これでも、かなり打撃を受けている。


元々、勉なんか好きじゃなかった。世の中はすべて俺の良いなりって位、偉そうな態度だし。だけど、あんなに傲慢なのに人望は厚い。


いつもは人をからかったり、嫌な事ばかりするくせに、突然優しくなってみたり。

そんな勉を、信じ、好きになりかけた──いや、好きになった直後にこの裏切り。


アイツは今までどう思ってたんだろうか。

手中で、だんだんと落ちていく私を見て、さぞ楽しかっただろう。


なんで最初に気付かなかったんだろう。


勉は優等生。私になんか惚れるはずない。


先生のポイントアップに、ただ私を使っただけ。


「っ………!」


考えると、また涙が出てきた。考えたくないのに、頭の中は勉や、鷹瞳君達でいっぱいだ。


「寝よう。寝たら………考えなくて済むし」


布団をかぶり、また眠りに就いた。そして、何時間経っただろうか。寝惚けながら時計を見ると、午後の4時だった。


「やば。ちょっと寝過ぎたかも……」


今までこんなに眠ったのは初めてだった。

どうやら心と体は繋がっているらしく、心が傷付いた時、睡眠をとって回復しようとするみたいだ。

だけど、さすがにこれ以上眠る事はできず、ベットからおりようとした時、下の階から話し声がした。


「まぁ。わざわざありがとう。上がってちょうだい」


お客さんだろうか。


ぼんやりと考えていると、階段を上ってくる音がした。それも、足音からして数人。


香織達かな。そう言えば、何度かメッセージがくる音がしていた様な気がする。


いつも、学校をサボった時は香織に連絡していた。最近は無遅刻無欠席だったから、きっと心配して来てくれたんだろう。ドアがノックされる。


「はい、どうぞ」


相手は香織だと思い込み、返事をする。だけど、ドアを開けて現れたのは、香織ではなかった。


「美栄ちゃん、体調はどう?」


「鈴先輩……」


立っていたのは、鈴先輩と鷹瞳君、それに孝文先輩だった。


「何しに来たんですか?」


今は敵なんだ。生徒会は、私を騙したんだから。


「大丈夫かいな?風邪やって聞いて見舞いに来たんやで」


「見舞いなんていりません!今さら私に何の用ですか!?」


顔を見る事ができず、俯きながら言い捨てると、鷹瞳君は予想外に間抜けな返事をした。


「何言ってんの。今更って言われても学校だったんだから仕方ないじゃん」


「は?」


何か勘違いしてない?


「私、知ってるんですから!みんなが、勉とグルになって私の事をっ……!」


ヤバイ、泣きそうだ。顔を反らすと、鈴先輩は困ったような表情を浮かべた。


「どういう意味?私たちが新堂君とグルになってあなたを騙したって」


「えっ?」


もしかして知らないんだろうか。もしかして全て勉が──。


「と、とりあえず、入って下さい」


どうやら責める前に、ちゃんと真偽を確かめないといけないようだ。

3人を室内に迎えると、ゆっくりドアを閉めた。



先輩達を部屋に入れ、私は昨日先生から聞いた話をした。


「じゃあ、新堂君が美栄ちゃんを?」


「そういやアイツ、ちょくちょく職員室に行っとったなぁ。ははぁ、そういう理由やったんか」


どうやら、先輩達は何も知らなかったみたいだ。話を聞き、私以上に驚いている。


「せやけどなぁ、勉がそんな真似しても大して得ないで?」


話を聞いた上で、まだ勉を庇う孝文先輩を睨む。


「信じないんですか?そんなの、ポイントアップのために決まってるじゃないですか!」


「いや、信じてないわけじゃないんや。せやけど、アイツのポイントなんて、もともと100点満点やないか。今更、そんな面倒な仕事引き受けたって、しゃーないから」


「……」


それは、確かにそうかもしれない。すると、今まで黙っていた鷹瞳君が口を開いた。


「勉が先生のいいなりになるようなタマかな。アイツ、プライド高いから」


「じゃあ嘘だって言うの?先生が、なんでわざわざ勉の名前出してまで嘘つくのよ」


「まぁ、それもそうだね」


意味わからない。アイツが何を考えてるのか、何をしたいのか。


「だけど今日、勉も来ないって事は、バレたのが分かったからよね」


アイツの性格上、誰よりも先にお見舞いにくるはずだ。いや、自惚れとかではなくて。──なんとなく。すると、鷹瞳君は苦笑いしながら首を振った。


「実はね、アイツも風邪引いてて、2日ばかり休んでるんだ。だから、美栄ちゃんにバレてることは愚か、休んでる事すら知らないよ」


「風邪?」


そういや昨日もクラスにいなかった。


「勉でも風邪引くんだ」


ポツリと呟くと、鷹瞳君は声を上げて笑いだす。


「あははっ。俺もソレ思ったよ。なんかイメージじゃないよね。勉が風邪なんてさ」


みんなと話してるうちに、なんだか気分が落ち着いてきた。

勉の本心はわからない。けど、少なくともそれ以外の生徒会の人達はグルじゃなかった。

それがわかっただけで嬉しかった。


「取りあえず、明日学校に行って、勉に聞いてみようよ。俺も付き合うからさ」


「そうね」


とりあえず、今は本人に聞かないと始まらないかもしれない。

気持ちを取り直し、明日、学校に行く事を決意した。

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