真実
「信じられない。アイツがあそこまで最低なヤツだったなんて」
話を聞いた瞬間、失望し、言葉を失った。
「いや、新堂君は悪くない。すべて私達が」
「先生達も悪いんです。だけど、1番最低なのは新堂勉ですよっ!」
これ以上ここで話を続けたら、何もかも壊したくなりそう。
そうなる前に、私は教室から飛び出した。
「待て!織原さんっ」
どうして放っておいてくれないんだろう。自分達が悪いくせに。
待てと言われて待つ馬鹿なんかいない。
先生達の制止の声を振りきり、靴を履き替えて外に飛び出した。
空からは、いつの間にか大粒の雨が降っている。
飛び出してから教室に傘があったのを思い出したけど、今更引き返したりしたくない。
そのまま猛ダッシュで自宅に向かって走った。
走っている時、先生の言葉が頭の中を廻っていた。
『実は、新堂君に君と接触するようにお願いしたのは実は私達なんだ』
『瀬戸先生が提案されてね。君はいつも遅刻や早退ばかりだったから』
『生徒会の人とでも付き合いを持てば、少しは真面目になると思って』
『幸いにも新堂君は快く了解してくれた。ただ、君達があまりにも仲良くなりすぎたから、結果的に騙すような形になって』
その言葉を聞いた瞬間、全身を何かで貫かれた様な気がした。
鷹瞳君が私と仲良くしてくれたのも、初めて生徒会に会った時、みんなが快く受け入れてくれたのも。
孝文先輩も
駿君も
鈴先輩も
高岸君も
鈴原先輩も
みんな嘘だったんだろうか。
私を友達として、先輩として、後輩として、恋人として好きでいてくれたんじゃなかったんだろうか。
いつだったか、勉に言われた言葉を思い出した。
『好きだよ、美栄ちゃん』
『一目惚れなんだ』
『だから俺と付き合って欲しい』
全部全部全部嘘だった。演技でしかなかった。
自宅に帰り、濡れた服のままベットに潜り込んだ。
せめてもう少し早く気付きたかった。私が、勉を好きになる前に。みんなと仲良くなり、信用する前に。
優等生なんか嫌いだ。生徒会は苦手だと思っていた時に。
この気持ちを誰にぶつければいいのかわからないまま、声が枯れるまで泣いた。




