彼らの喜びとは
「織原もやっと真面目な生徒になってくれたんだな。先生は嬉しいよ」
何かと思ってついて行ったら、先からそんな話ばっかりだ。
どうやら私が『改心』したんだと思っているらしい。
そんな真面目な理由じゃないのに。
だけど何はともあれ、いつもは怒られてばかりだったから、誉められるのも悪くはない。
「お前は髪の毛と出席日数さえちゃんとしていれば、服装も成績も問題ないからな」
嬉しそうにニコニコと笑っている。
そんなに私が金髪じゃなくなったのが嬉しいんだろうか。
いくら見た目が変わっても中身はそのまま。遅刻もするし、早退もするかもしれないのに。
髪の色一つ変えただけでこんなにも態度が違うだなんて。嬉しいんだか悲しいんだかわからなくなってくる。
そして散々先生に褒め称えられ、最後にはなんと校長先生まで現れた。
たかが生徒の髪色1つで大袈裟過ぎないだろうか。
「織原さん。貴方が真面目な生徒になってくれて、私達はとても喜んでいます。どうか、これからも大きな問題を起こさないように心がけて下さい」
「は、はい。わかりました」
真面目な生徒って何?
大きな問題って何?
そもそも、私の髪色は地毛だ。染めたわけでも、抜いたわけでもない。
それなのにずっと目をつけられて、染める事を強要されて。
いい加減、外見や世間体ばかりを大切にしているこの人達とは付き合っていられない。
適当に返事をして部屋から出ようとした。と、その時。背中で有り得ない言葉を聞いた。
「これで校内の問題児も減りましたな。やはり生徒会が効いたんでしょうか。ねぇ羽柴先生」
「先生!」
校長の指摘に、慌てて口を押さえたが遅い。
バッチリと聞いてしまったんだから。
生徒会が効いたって一体どういう事?
まさか、私と勉が付き合っているのを知っているんだろうか。
私は振り向くと、今までにない真剣な顔で先生を問いただした。
「今の言葉、聞き捨てなりません。生徒会が効いたって一体どういう意味なんですか?」
「いや、大した話では──」
「大した話じゃないなら教えて下さい!」
鋭い目で睨み付ける。
その様子に先生達は気まずそうに口を開いた。
「実はだね──」




