表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/35

変化

翌日、私は上機嫌で学校に向かった。


みんなの反応も楽しみだし、何よりあの千里にギャフンと言わせたい。


通学中は残念ながら誰にも会えなかった。もちろん勉にも。

いつもなら、玄関辺りで見かけるのに、今日に限って姿がない。


だけどまぁ、相手はお忙しい生徒会長様だ。

きっとなんかの仕事で早く来てるんだろう程度にしか考えてなかった。


教室に行き、ドアを開けて満面の笑みで挨拶する。


「おはよう!」


私の声に気付いた香織が振り返る。


「あ、おは──み、美栄!?」


私を見た時の香織の表情は、予想以上だった。


「アンタどうしたのよ!?その髪!」


「ちょっとね。あの色に飽きたから染めてみたんだよね」


私がした事は髪を暗く染めかえる事だった。

昨日鷹瞳君に言われた言葉。

『勉は髪黒だからね。美栄ちゃんも茶色くらいにすれば、優等生と並んでてもおかしくないんじゃないかな?』


私はもともと化粧はあまりしていない。

顔の造りなら治しようがないけれど、髪の色ならどうにでもなる。


「どう?似合う?」


「見慣れないけど、変ではないよ」


前の私は金髪。だけど今はナチュラルブラウン。

真っ黒はさすがに抵抗があり、少し暗めのブラウンにしてみたのだ。


「香織ちゃん。おはよ」


鷹瞳君が教室に入って来て、笑顔で香織に手を振る。


「ちょっと、私は無視なわけ?」


睨みながら言うと、鷹瞳君は少しキョトンとしたが、すぐにハッとした顔になった。


「え?美栄ちゃん?どうしちゃったの、その髪」


「鷹瞳君が昨日言ったんじゃないの」


染めろと言ったのは鷹瞳君なのに、なんで気付かないのかな。


本当に、男って鈍い。いや、これは最早鈍い以上の問題かもしれない。


「早速実行したんだ?てっきり却下されると思っていたからさ。似合ってるよ」


「ありがとう。これなら、千里に勝てるわよね!」


「うん、大丈夫大丈夫。まぁ、なんて言うか最初から千里君には勝てない理由があるからさ」


笑いながら言う鷹瞳君を眉を寄せながら見る。勝てないのは千里の方?


「なにそれ。どういう意味?」


すると鷹瞳君は、「あれ?知らないの?」と言いながら、笑顔でとんでもない発言をしてくれた。


「千里君は男の子なんだよ。趣味かなんかであぁいう格好してるけど、普段はちゃんと学ラン着て学校に通ってるよ」


は?男の子?いや、字的には男の娘?

いや、でも普段は普通に学ランを着ているなら、男の娘ですらない?

とにかく、相手は異性!?


「う、ウソだ!」


「ウソじゃないよ。ちゃんとした男だよ。だからもともと美栄ちゃんには勝てないのにさ。アイツ意地っ張りだから」


「男相手に張り合って、髪まで染めたの私……」


言われてすぐに実行に移したが、心の中では葛藤があった。


私のこの髪色は地毛だ。今までどんなにからかわれても怒られても、決して染めなかった。


そのポリシーを棄てたのは、全てはあの生意気なガキに負けたくなかった故だ。


どうやら私は、怒りをバネにする性格らしい。


あの時千里に高らかに言い放たれ、キレたのだ。

この髪のせいで不釣り合いだと言われるなら、この顔に似合っていないなら染めればいい。

あの子を見返せるなら、今までのポリシーをかなぐり捨てても良い。

そう思ったからなのに、私の努力は無駄だったのだ。


「だ、だったらなんで最初に言わないのよ!」


「いや、だってさ。美栄ちゃん真剣だったし、前のままだったらやっぱり勉とは不釣り合いだったから。それにアドバイス求められたし──」


「それでなんで間違ったアドバイスするのよ!」


つまり私は、男相手にマジになってたわけ?

それを聞いてものすごく後悔した。


だけど、廊下で友人や先生達に会う度、その努力も無駄じゃなかった気もしてきた。

友人には意外にも好評だし、先生達にも、やっと識原が真人間になったと中々好評(?)だった。


それにしても勉は一体どこにいるんだろうか。さっき教室を覗いてみたけれど見当たらなかった。

せっかく染めたのだから、アイツの驚く顔も見てみたい。


そんな感じでウロウロしていたら、いつの間にか放課後になってしまった。


丸一日勉と会わないなんて珍しい。

会いたい時にいなくて、会いたくない時にはよく会ってしまうのに。


恐らく生徒会室に行けば居るんだろうけど、そこまでしてわざわざ見せたくはないと、また例の意地っ張りな性格が邪魔してしまう。仕方なく帰る事にして廊下に出た時だった。


「織原さん。ちょっと生徒指導室に来てもらってもいいか?」


「はい……」


先生に呼ばれ、久々に足を運んだ。

この教室は私がいつも髪の話や出欠席の事でよく説教されていた場所だ。

最近は、特に悪いことはしていないのに、何だろうか。

不思議に思いながらも、先生について行った。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ