【一話】 セリカさんからの皆へのプレゼントだったはずが、何故か三倍速になった日
そこに、ドーンと大きな物。
(ナニコレ!)
皆で”ソレ”を見ていた……………………
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今日は特に”ひずみ”も起きなかった。
普段通りに朝が来て、普段通りに仕事をして、そして、普段通り、仕事を終えた。
ただ、一つだけ、朝にセリカさんに言われた。
「ねえ、ちょっと悪いけれど、今日は私が良いって言うまで、娯楽室禁止ね」
「え? なにそれー。どーゆー事ー?」
娯楽室の一番の主、ミランダさんが抗議の声を上げる。
「ふ……いいから、お楽しみよ」
セリカさんは、ニヤっと笑う。
何故だろう……何か……こう……ちょっと、セリカさんのオーラが見えた……
「ねえ……メイちゃん……どういう事?」
「うーん……なんだろ……アカリちゃんも知らない?」
「ちょ、ちょっと待ってください! 今日は……今日こそ……ミランダさんのスコアーを!」
(……あ、リーゼさん、この前からやってたゲーム。あれ、必死でミランダさんを越そうって、最近よく居た……)
「駄目よ。リリーゼ。ああ、アンカ、プラン。ほら……」
「なになにー? しつちょーと、プランさん、知ってるのぉー?」
エレナさんが聞くが、プランさんと、アンカ室長は、アイコンタクトをして、こちらを見る。
アンカ室長は「さあ、なんでしょう?」と白々しい。
プランさんはニコっと笑う。
(……はて? 何があるのか……?)
そして、何やら、セリカさんは、いつもより、かなり早く仕事を切り上げた。
(普段だと……結構遅くまでいるんだけど……?)
私が仕事が終わる頃、巡回組も帰ってきていた。
そして、そんな所に、セリカさんが大フロアーに入ってくるなり、みんなに声をかけた。
「さー! 準備できたわ。思ったより早く出来たわー。ほらー、みんなー、もう仕事終わった? ちゃっちゃと終わらせて! 娯楽室へ皆で行くわよ!」
珍しい。
セリカさんはどちらかと言うと、仕事の鬼。
そんな人が、皆の仕事を早く終わらせて、娯楽室へ行こうと言う。
(……はて?……何か今日あったっけ?)
娯楽室に向かう途中、チュンさんやミランダさんにも聞いてみるが、どちらも分からない、知らない、と言う。この二人でも知らない事は結構珍しい。
(あれ? でも……)
「ミランダさん? カメラで見れないんですか? 娯楽室ですけど……」
「いやー、そこはここじゃー、まだ電波とどかんよー?」
二階に降りても、エレベーター前から娯楽室までは、距離がある。
どちらかと言うと、上からの方が直線距離が近い。
まぁ、城の構造上、娯楽室の上は屋根しか無いんだけれど……
途中でミランダさんが気がつく。
「ありゃー? セリカっちー? なんか娯楽室のカメラ隠してるー? あれー? 見えんよー?」
「ああ、じゃあ部屋の前でちょっと待ってなさい、見えないようにしてたから。」
メイちゃんも、ユウカさんも、チュンさんも、エレナさんも「?」である。当然私も。
娯楽室に着いて、セリカさんだけ中に入り、他の人は部屋の前の通路で待たされる。
そこに、夜間の二人と、リーゼさんもやってくる。
「ん? アリス、マイヤ、ずいぶん早いな?」
「………………………………おは………………よ……ぅ…………」
「……ねむぃお」
二人ともまだ眠そう。アリスさんはもう寝そう。
リーゼさんがエスコートしてくれたおかげで、やっと辿り着いたという感じだ。
「あ、リリーゼ、あなた、何か聞いてる? 何があるの?」
「いや、ユウカさん、私も知りたいですよ。ああ、アリスさんここで寝ては……」
「わざわざ、夜間の二人も呼んだのか?」
「みたいですよ? ああ、マイヤさん、ほら……」
「……何があるんでしょうか。……あ、アリスさん」
普段はアリスさんのゆさゆさ役はマイヤさん。だがそのマイヤさんも眠そうである。
「んー!? あれー!! なんじゃー? これーーーー!!?」
「きゃ! ……ミランダさん……どうしました?」
「えー、何ー、これー……? えー? わざわざその為にー??」
「ミランダさーん、なぁにー?」
ミランダさんが驚いている。どうやら、中のカメラが見えたようだ。
その声で、寝かけていた二人も起きたみたいである……
そして、娯楽室のドアが開きセリカさんが出てくる。
「あら! 二人ともちゃんと来てくれたのね! リリーゼも来たわね。じゃあ、これで全員ね」
「「「は?」」」
「え? 全員? どういう事?」
ニヤリと笑い、セリカさんが言う。
「ふっふっ……まあ、入ってみなさいな」
「いやー、セリカっちー、見てもわからんよー」
「ミランダ、ちょ、まだ私語禁止!」
そして、全員で娯楽室に入る。すぐに気がつく。
(娯楽室……狭くなった? じゃない!)
配置が少しずつ変わっている。基本は同じ。
だが、あるスペースを確保する為、それを置く為、少しずつ変わっている。
娯楽室の奥に……なにやらここの中でも一番大きい物……
(いやいやいや! これまでこんな物ありませんでしたけど! なに……あれ……?)
そしてそこには、アンカ室長とプランさんも居る。
(あ、た、確かにこれで全員…………で…………?)
他の皆も驚いている。みんなで、そこへ行く。
……が、分からない……
(ナニコレ!!?)
「こ、これ何?」
「でかいな……で、なんだこれ?」
「……な、なんですか……?これ……?」
「……見た事が、あるような」
「おっきぃねー」
「はぅ……」
「……………………ぅん……………………おっきぃ……………………」
「あれー? なにー? これー? はれー?」
「はわー…………」
みんな口々に言うが、これが何か分からない。
いや、今リーゼさんだけ、”見た事があるような”、って言った。
「ふふふ、さぁさぁ、驚きなさい! 苦労したわよ、ここまで運ぶの!」
いや、苦労したとか、それ以前に……
どうやって持ち込んだんデスカ? コレ……???
ここのドアより、明らかに大きいと思われますが……
「ねぇー、セリカさーん、で、なにー? これぇ」
「ちょっ! エレナ! もうちょっと驚いてよ! 大変だったんだから、持ってくるの!」
「でもぉ、これ、なに?」
うん、エレナさんの気持ちもよく分かる。コレが何か……全く分からない。
他のみんなも、見ても、ヨクワカラジ……
「仕方ないわね……じゃあ! 聞いて! 驚きなさい!!」
「これはね! なんと! 巡回艇の練習が出来てしまう機械!
その名も! ”ミッドイブニングシックス改フォーアスール”!!」
-パンパカパーン-
そんな音が聞こえる気がする。今週のドッキリ……いや違う。
だが、アンカ室長、プランさん、セリカさんで、そのメカ……いや機械をそんな感じでポージングして紹介する。
(で……えーっと?)
期せずして、何故か皆で拍手する。
「ふふ! 驚いたわねっ! ね!!」
「「「「「「……………………」」」」」」
(どちらかと言うと……そんな風にコレを紹介する三人に驚きました……)
「……でー、そのー、ミッイブシクカ……なんとかー……」
「”ミッドイブニングシックス改フォーアスール”!!」
くわっとした顔で、セリカさんが、もう一度その名前を言う。
「…………えーっとー。……え! ちょ! 今なんか変な事言わんかったー!?」
「みっどいぶしかい?」
エレナさんが適当に言う。
「面倒なので、”ミックス”でいいですよ」
(……あ、アンカ室長が略した)
「ちょ! アンカ! それなんか違う意味になるわ!」
「ちょ、ちょっと、え? い、今巡回艇の練習……って……?」
ユウカさんの言葉で気がつく。
(……あ、そう。今……確かにそう言った…………え!?)
「ふ、まぁ、ミックスで良いわ……そう! これでここで! 遊びながら巡回艇の練習が出来ちゃうのよ!」
指をさし、”ソレ”を紹介する、セリカさん。
「「「「「「……………………」」」」」」
が、やはりそこに突っ込むのは、この人。
「ちょー! セリカっち! それー! ここ! 遊ぶとこ! こんな場所とっちゃ、やーーーー!!」
うん、ここの主、ミランダさん……
「何言っているの。ミランダ。聞こえなかった? 遊びながら! 練習が出来ちゃうのよ?」
「で……それはともかく……なんでそんな名前……?」
……あ、チュンさんはそっちが気になっている様子……
「ふ、それはね……これ……昔のゲームを改造したからよ! ………………それの名残………………」
「あー、そういえばそんなゲームを昔見たなー」
「そんなんー! 巡回艇でやればー!!」
「あまーーーい! ミランダ!! それにアカリ! メイ! あとアリスとマイヤ! あなたたちは特に! 巡回艇の緊急時の操作がまだまだ!
そして! 私も!!」
(………………………………じ、自分の為………………?)
「巡回艇は、まだ数が少ない! こう! 無茶して壊せない!! 高いの! あれ!! 超高級なの!!!」
(り、力説されても……………………自分の……為……?)
「けれど! これなら! 壊しても! 延々と給料から引かれ続ける事は無いわっ!!」
(に、苦い記憶があるようで…………)
「…………で…………これ……いくらしたんですか……?」
「ふ! …………しばらく…………引かれ続けるわ……………………………………」
(ああ…………このセリカさんが給料を引かれ続ける……………………コレも超高かったみたいだ)
「さあ! じゃあ早速よ! ミランダ! 文句言うならあなたからやってみなさい!」
と”ソレ”を開ける。
(……あ、そこが開くんだ……)
「えー!? 私ー!? ってこれ完全に覆われとるじゃんー! 見えんよー! これ見えんから!」
「あーんしんしなさーい! みらんだぁー。ちゃーんとそのためにぃー金かけて! 改造! したから!! ほらほらほらほらほらほら!!!」
ツンツンツンツンツンツン! とミランダさんを”ソレ”の中へ追いやる。
「ほあっちゃー! ちょ! ま!」
ガッチャーンと”ソレ”が閉まった。
中でミランダさんのくぐもった声が聞こえる。
〈ちょ! みえ! あ、あーー、見えたー………………って! な! なんで巡回艇と同じ位置にカメラー!?〉
「ふ! ミランダ! わざわざ同じ所から見えるよう! 改造したのよ!!」
(……多分、ソレは……ミランダさん仕様……)
「さあ! プラン! 発進よ!」
コクコクと頷いて、プランさんが何かのボタンをぽちっと押す。
〈へ? え? あれー!? ちょ!? 勝手に動かさんといてーーーーー!!〉
あーれー……とミランダさんの声が聞こえる。
しばらく後……ミランダさんは外に放り出された……
「むきゅー……………………………………」
「み、ミランダさん!?」
「み、ミランダ!?」
「ふにゅーー…………よ、酔った………………」
「ふ……ミランダ…………まだまだ修行が足りないわ…………じゃあ! ネクスト!!」
ギロっとセリカさんがこちらを見る。
(ひ! ひえ!!)
「んーー!? めいぃーーー!」
「……え……ぁ……う………………ひゃーーーーーー!!」
メイちゃんは逃げ出した。
「プラン! GO!!」
ビッと指を指すセリカさん。そして、シュタっと恐ろしいスピードでプランさんがメイちゃんを捕まえる。
「ひ、ひえええーーー……ぷ、プランさんお、おたすけぇぇぇーーー!」
プランさんはニコニコしながら、メイちゃんを羽交い絞めにして、セリカさんに渡した。
「めーいー!? 覚悟はできてるかしらぁーーー??」
「ひぃ!」
「さあ! GO!! メイ!! アンカ!!」
慈悲は無い。
アンカ室長がポチっとボタンを押す。
〈ひえええええええええぇぇっっ!〉
(……………………な………………中で…………何が……………………)
そして、しばらく後、扉がプシューっと開いて、中からメイちゃんがフラフラして出てきた。
「……は…………ふぁ………………」
「あら! 中々やるわね! メイ!」
コロンとメイちゃんも倒れる。
「じゃあ! ネクスト!! アリス!!!」
これまで、眠そうにフラフラしていたアリスさん。聞いた瞬間、超スピードで逃げ出した。
「あ! ちょ!! アリス!!!」
残像を残し、アリスさんは逃げ去った。
ついでにマイヤさんも居ない。いつの間にか……
「ちょ! アリス! 何よ!? その物理法則を無視したア○レち○んみたいな動きは! ちぃっ! マイヤも逃がしたか……」
そしてセリカさんがこちらを見る。
(………………へ…………?)
「じゃあぁぁー、しかたないわねぇぇぇーー、あぁぁーーかぁぁぁーりぃぃいーーーー!?」
「ひ、ひえええええええええええええ」
「三倍速だけどぉぉぉーーーー、いいわよねぇぇーーー!?」
(良くない! 全然良くない!! なに!? 三倍速っ!??)
「赤いコスチュームだったらぁぁぁーー、出来たかもねぇぇーーー」
もはや、セリカさんは、山姥か、般若か。
「わ、わたしはぁーーーせ、セリカさんのお手本がーーーー見たいですうううううーーーーーーー!」
「なぁに言っているのぉ!? あぁかぁりぃー!? あなた以外、みぃーんな、お金出しているんだからぁぁぁ」
「「「「「…………………………は?……」」」」」
「こつこつ、みんなの給料からぁー! 貯めたんだからぁ! こっそりとぉ!?」
それを聞いた、他の皆が、セリカさんを捕まえていた。
「………………へ!?」
「そうそう! 見せてくださいな!」
「うむ! 是非! そこまで言うなら! なあっ! セリカさんっ!!」
「うん! みたいねぇ!! どうなるのかぁ!!」
「ちょ、ま! わたし! あとで! いいから! あれ!? あれっ!?」
皆でポイっとその中にセリカさんを投げ入れる。で、ガッシャーンと扉を閉めた。
「し、しつちょー……出力…………MAX…………で………………はひー……」
倒れていた、ミランダさんの捨て台詞だった。
そして、そのまま、プランさんもポチッとボタンを押す。
〈あ! あれ!?!? ちょっっ!! 早すぎっっぅ!! ちょ! ま! って!! ナニコレっっ!?ちょおおおおおおおーーーー!! マッテェェェーーーーー!!!〉
――――――――――――――――――――――――――――――
その後………………その機械は…………
しばらく………………調整中…………となった。
「ああ、これ、ここで出力変えれるんだ」
”ソレ”を調整してた、リーゼさんが言っていた……
そして、”ソレは”……今でも、娯楽室に在り続ける……
(お願い………………三倍速は…………やめて…………)
アリスは残像が使えます。(嘘)




