【九日目】 鏡の自分
《5:50》。
目が覚める。
目覚まし時計の音で起きる。
だんだんと、慣れてきているのかもしれない。
昨日は、少しイレギュラーな時間で過ごしてしまったから、少し、心配だったのだが、普通に起きれたようだった。
いつものように、食堂を見る。
まだ、誰も居ないようだ。
今日は、朝のお手伝いの事は頼まれていない。
リーゼさんの食事の準備は、時間がかかる。
それは、何回か手伝いをして、理解してきていた。
食事当番の事が無いと、時間としては余裕がある。
ああ、そうだ、と思って、少し簡単に朝の支度をしてから、小テラス向かった。
そうすると、やはりユウカさんが居た。
「アカリ、おはよう」
「おはようございます、ユウカさん」
「アカリも、この時間に起きる事にしたんだ」
「ええ、食事当番の事とかありますし」
「ああ、それなら、今日は私が入るから。アカリは入らなくて良いよ」
「あ、そうなんですね」
「うん」
ユウカさんは、ゆっくりと、お茶をしている。
ユウカさんが飲んでいるのは、多分コーヒー。
「アカリも飲む? まだ、少しは時間あるし」
「あ、じゃあ」
「……あ、カップが無いかしら。アカリ持ってる?」
ユウカさんは自分の分だけ、カップを用意していた。
「あ、カップは、まだ無いかも……」
「あら、そうなの? じゃあ、メイに頼むと良いわ」
「そうですね。じゃあ、今度、お願いしてみます」
そう言って、ユウカさんは片付けを始める。
「私、普段も皆より、朝早いみたいだから。早めに来てくれれば、一緒にお茶、出来るかもね」
確かに、前にユウカさんが、朝のお茶を済ませていた時は、もう少し早かった。
「あの、私は、六時前頃に起きているんですが、ユウカさんは、何時に起きているんですか?」
「ああ、私? 私は、四時半くらいね」
とても早い。確か夜も遅かった。
ならば、ユウカさんは4時間くらいで起きている、という事だ。
「早いですね」
「そうなのかもね。でも、昔はそんな物だったし」
慣れている時間なのだろう。
「でも、ここに来てからは、ずいぶんと余裕を持って行動できるわ」
考える。
私も、前はそうだったかもしれない。
「じゃ、そろそろ行くわ」
「あ、すみません、お引止めして」
「構わないわ。ああ、もし良かったら、今度は折角だし、早めに起きたら、一緒にお茶しましょう?」
「はい」
「それじゃ」
「はい、それでは」
そして、ユウカさんは部屋に戻った。
私は、ただ、ユウカさんとお話が出来るかもしれない、と言う理由で、ここに来た。
なので、ユウカさんが行ってしまうと、特に、やる事は無い。
そう思ったのだが、白んでいる外を見ると、とても綺麗で、とても気持ちが良い。
ここは、これまでも、そうだったのだろう。
だから、ユウカさんも、この時間に、ここでお茶をしているのかもしれない。
そう思うと、次は、もっと早く起き、ここの夜明けを見ながら、お茶をするのも良いかもしれないと、感じる。
”ブルー”は黒く見えていた全体に、青と光を入れ始める。
それが、この時間帯。そして、私達の、一日が始まる時間である。
テラスで、少しその風景を見てから、私は部屋に戻った。
時間としては、まだまだ早い。
朝御飯には、まだ、時間はたっぷりある。
前に、慌ててしまい、寝癖がついたままだった事を思い出し、鏡を見に行ったが、今日は髪は、普段通りの形をしてくれていた。
(……でも、手鏡、欲しいな……)
ふと、そんな事を思ってしまう。
洗面室には、立派は鏡がある。そして、化粧台もちゃんとある。
だが、部屋で自分の髪を見れる、手鏡は無い。
昔は、ちゃんと持っていたのだが、それは、今はもう無い。
そして、先程簡単に済ませた、朝の支度を、もう一度行う。
髪を梳かし、もう一度顔を洗い、歯を磨く。
そして、自分の服を、もう一度確認する。
(……うーん。もしかしたら、朝お風呂に入れれば、もうちょっと良いかも)
そんな贅沢な事を、思ってしまう。
しかし、ここならば、出来るかもしれない。
(あ、そうだ。アンカ室長は、朝に、オンセンに入っているんだっけ?)
チュンさんは、あれは寝てしまう、と言っていた。
その気持ちも、よく分かる。確かに気持ちが良い。そして、気持ちが良くて、寝そうになる。
それに慣れた、アンカ室長が羨ましいとも、言っていた。
でも、それはそれで、朝の気持ちの切り替えには、良いのかもしれない。
機会があれば、行ってみようと考えつつ、鏡を見る。
鏡に映った、自分を見る。
前は、こうして見る事も無かった、自分。
前は、こうして考える事も無かった、自分。
一昨日に、話をした。本当の自分。
そして、それが、私なのだと、何故か、受け入れられてきている。
メモ帳には、自分の事を、書いている。
それは、自分の中で、それを受け入れ、そして、伝える為だった。
まだ、上手くまとめられていない。
だが、それが良かったのか、それとも、ここでの暮らしが良いのか、まだ、判断はつかない。
鏡を見れば、何処にでも居そうな、私が居る。
そして、そんな事を考えつつ、鏡を見ていたら、いつの間にか、時間が過ぎていた。
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