表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
78/135

【八日目】 本採用


 資料の確認、署名が終わり、お昼ごはんを食べて、午後は、四階フロアーに戻る。そして、改めて、その時、フロアーに居たメンバーに、歓迎された。


 そう、そこまでは。


 そして、そこから、本格的に、業務指導が始まった。


 これまで、指導員をしてくれていたのは、ミランダさん。ミランダさんは変わらず、教えてくれるのだが。


(量が! 半端なく来た! 大量の資料作成!)


そして、これまで、私の作業には、何も口を出さなかった、セリカさん。


「ちょっと! アカリ! これ間違ってるわ! ミランダ! ちゃんと見てるの!?」

「ご、ごめんなさいぃぃー!」

「あれー? あー……ほんとやー」


 大量に、作業を私にくれた、ミランダさんだが、そのミランダさんも確認漏れが、あったようだ。

 それをセリカさんに怒られる。そして、実際、さらに怒られるのは、ミランダさん。


「ミランダ! ちょ! これ、こっちも間違ってるわ!!」

「え! まじー!?」

「ご、ごめんなさいぃぃぃぃいい!」


(実際に、……それ、……やったの、……私です。……ひぇぇぇええー……)


 昨日の、セリカさんは、怖かった。しかし、今日、こうして、怒られる。いや、それはそれで怖い。だが、今は、怖いというよりは、厳しい。そして、厳しい、と言えば、そう、このお方。


「アカリ! 日報書いたのか!? あと常に、机の整理はちゃんとしておくんだ! 前に聞いたろうが!」


「は! はいぃぃ!」


(……チュンさん、……やっぱり、……厳しい)


 ただ、そんな厳しさも、やる事をやっていれば、褒められる方に変わる。

 私は、まだ、作業は下手。はっきり言って、遅い。だが、それ自体で怒られる事はないようである。


「ま、慣れるまでは、そんな物だから」


 そう、ユウカさんは言ってくれる。


 ユウカさんも厳しくなるのかと思ったが、ユウカさんはそうでは無かった。いや、ちゃんとやる事をやれば。

 仕事が終わる頃、私はへとへとになっていた。

 やる事は、これまで教えてもらった事と、さほど変わりは無い。だが量が違う。

 3倍か、いや、4倍くらいはあった気もする。


「おつかれー、アカリちゃんー。ありゃー? 疲れちったー?」

「お、おつかれさまですぅー。……すみませんー。……ミスいっぱいしちゃって……」


 机に、フテーっと、上半身を寝そべらせて、言う。


「ちゃんと、毎回、確認するんだ。そうすれば、ミスは無くなる」

「でも、私は、初め、もっと酷かったですね……」

「それは、………………私もだ」


 そんな事を言ってくれる、チュンさんと、ユウカさんも、初めは、そうだったのだろうか。


(ああ、……この二人も、…………最初は、…………こんな苦労、したのかなぁ…………)


 そして、先程まで、私やミランダさんを、叱っていた、セリカさんも入る。


「ええ、本当にね。二人とも、よくここまで、成長したもんだわ」

「セリカさん、……それ。……最初は、私やチュンさんも、相当酷かった、……って聞こえますが……」

「ええ、相当、酷かったわ」


 さらっと返す、セリカさん。


「最初は、本当、どうしたもんかと悩んだものよ……」

「「……う……」」


 チュンさんと、ユウカさんは、思い当たる節は、沢山あるのか、言葉を詰まらせる。


「ま、とは言え、今では、文句は無いわ。で、アカリ、あなたはそれより、ちょっとマシ、ってだけだから」

「………………う………………」

「これから、精進する事ね」

「が、がんばりますー……」

「…………問題は、…………あっち、かしら……」


 そう言って、セリカさんが見る先。


(………………え、エレナさん、………………め、メイちゃん…………)


 二人とも、ひぇーん、とでも言いそうな状態で、まだ作業をやっていた。


「でも、今日は、多かったですね……」

「ええ、だって、本部から、ようやく連絡もきたし」

「んー、やっとねー。来たって思ったらー、これだもんねー……」

「あのー、連絡って……」

「ほら、アカリが来た時に、起きたって言ったでしょ? あれよ。」


 私が来た、初日に起きていた、”ひずみ”。それを、本部に資料を送って、返答待ち、と言われていた物だった事に、気が付く。


「そ。やっと来たんだけれどね。……結局、再調査、……って感じなのよ」

「でもさー、セリカっちー、再調査って言われてもねー。……なーんで、今度はこっちの方調べるんー?

あんま、関係無いと思うけどー……」

「ま、結局、本部も解明出来ないからでしょ? 関係が少しでもある所を、調べておきたいんでしょ」

「とは言え、正直私も、これが役に立つとは、思えんが……」

「ま、本部でそう考えるのも仕方ないわ。ここの”ひずみ”を分かっているのは、今は誰より、私達なんだし」


 この”アスール”と呼ばれる”ブルー”。ここの事を、誰より、分かっているのは、確かに、ここで過ごす、私達なのだ。


「はあ、まぁ、そうですね。じゃあ、私は上がりますので」

「ん、お疲れ、ユウカ」

「お疲れー」

「あ、お疲れ様です」

「お疲れ様」


 そう言って、ユウカさんは仕事を終了して、出て行った。ここで、何気に、早く上がるのは、ユウカさんかもしれない。

 そして、その後に、ミランダさんが、思い出したように言う。


「あー、そうだー、アカリちゃんー」

「はい?」

「さっきの資料、……ちょっと、間違えちゃった………………」

「…………………………は?」


 それを聞いて、チュンさんが、私の肩をポンと叩く。『ご愁傷様』と、無言で伝えられる。


 そして、セリカさんは、ボンっと、ミランダさんの背中を叩いて、席に戻った。『何やってんの!』と、無言で叱っているようであった。


 ミランダさんと、私が、その資料を修正している間に、エレナさんと、メイちゃん、チュンさんも仕事を終わっていった。


 ようやく、私とミランダさんが終わった時は、既に最後のようだった。


 仕事が終わり、そのままお掃除、そして、一旦部屋に戻る。今日は少し遅くなってしまった。もう、晩御飯の時間になる。


 今日の晩御飯は、パスタ、あとサラダ。また、リーゼさんが本格的を目指したのか分からないが、パスタはこれまで食べた中で、一番美味しかった。


 それから、私は、部屋に戻った。ちょっとやりたことがあった。


 メモ帳の、一番後ろに書く。


 ここに、正式に配属された事を書く。

 今の気持ち、今の考え。

 今後の事は分からないけれど。

 それらを綴る。


 その書いた部分を切り取る。

 そして、折り畳んで、お祖母ちゃんの位牌のところに置く。


 お祖母ちゃんに報告しておきたかった。

 一度手を合わせる。


(お祖母ちゃん。…………私。…………ここで働いていくね)


 そして、目覚まし時計をセットする。

 音量は最小にする。


 深夜の《2:00》。


(これくらいなら……)


 そして、眠る。


 ちょっと、やってみたかった。


 夜の《2:00》に目が覚めた。

 そして、準備していた、お風呂セット、それを持って静かに向かう。


 オンセン。

 こう言うと、間違われそうだけれど、他の人と入りたくない訳ではない。いや、絶対にそちらの方が楽しい。


 けれど、今日だけは、そうしたかった。

 自分で、行動してみたかった。


 さすがに、この時間だと誰も居ない。


 けれども、灯りは点いている。

 誰も居ない大きなオンセン。

 そこに今、私だけ。


 昨日は、沢山の人が居た。

 みんなで入って、とても楽しかった。


 今日は、ちょっと考えたかった。

 少し、一人で。

 オンセンに入りながら考える。


(ここに来るまでは、……こう、……だったんだよね)


 大きな、大きなお風呂。

 ゆっくりとしながら、考える。


(これからは、ここで、みんなと一緒に)


 お風呂を出る。


 そのまま、大テラスに出た。


 風が吹いている。


 今日は、ここも誰も居ない。


 真っ暗な外。

 いや、違う。

 少し、青い。


 こうして、大テラスに一人で来ると、少し分かる。


 確かに、暗い。

 

 見渡す。

 水だけの、空間。

 ぼんやり、光っているように見える。

 上の入り口は見えない。


 これから、ここで暮らす。

 そして、そうすると、もう、しばらくは戻れない。


 私の故郷から、少し離れた所にある、

 海の底。


 目を閉じ、柔らかな風を、全身で受けて、そして、目を開ける。


 それから、自室にそっと戻る。


 目覚まし時計を元に戻す。


《5:50》


 それが次に起きる時間。


 さあ、これから、

 本当のここでの仕事。

 本当のここでの生活。

 

 みんなと一緒に。


お読み頂き、ありがとうございます。


これにて、一章終了! じゃない!

すみません。実は。

十日目まで、あるんです……。いえ、書きます。これから……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ