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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
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【八日目】 署名


 次の日、私に、大量の資料が届いた。

 あれだ。

 本採用の資料。

 今、私は、アンカ室長のところで、

 必死にそれを読んだり、書いたりしている。


 昨日、あの感じだと、まさか、とは思っていたが、そうはならなかった。


 みんなで、お風呂に入って、私も、部屋に戻って、少しメモ帳に書いていたが、すぐに眠くなった。


 次の日もあるし。

 いや、きっと、あるはず。

 そう、考えて、昨日は眠りに入った。


 そうして、朝、アンカ室長に言われた。


「アカリさん、今日は、本採用の資料が届くので、そちらの方に回ってください。」


 昨日、今日の話。

 だが、決まった。

 私が、ここで働き続ける事。


 こんなにも、あっさりと。


 そうして、私は、今日、こうして、大量の資料を、室長室で確認したり、サインしたりしていた。


「あ、アカリさん、こちらも目を通しておいて下さい」

「は、はいー」


 大量。いや、本当に沢山ある。


 本採用。

 それは、とても嬉しい。

 もちろん、その為には、覚悟がいる。

 リスクがある。


 しかし、私は、もう、ここで働き続けたいと、決めていた。

 たとえ、それが、どのような事が、今後あるとしても。


 だが、この資料の山は、ちょっと、その覚悟からは、違う所にあったようだった。


「ひ、ひえーー……」

「アカリさん、まだ、他にこちらと、こちらと、あと、これと、ああ、こっちもありますね。あと……」


(……多い! こんなにも資料)


 それには、ここで働くにあたっての、決まりやら、何やら。

 ここで住まう事にあたっての手続きやら、何やら。


 既に聞いていた事、それから、普通に、この会社で働くにあたって、これこれ、しかじかの

決まりを、守るように、とか、ここで、住むにあたって、こういう事は、保障します。こういう事は、給料から、抜かれます、休みを取るときは、こういう手続きをしてから、申請するには、こういう事をやってから、こういう順番で、申請をして下さい。

 ここでは、これは守ってください。自室では、これは駄目です。

 あれは、許可を取ってください、では了承するのであれば、署名してください。


 そんな事が、事細かに分かれて、書類になっている。


(……それにしても、…………なんで、それを、全部分けてあるのー!? …………ひええぇー……)


 その為、私は、その午前中は、ほとんど、その資料やら何やらで時間を取られていた。


 ”ここの通路は走らないで下さい。”


 そんな細かい事まで、書いてある。


 もうすぐ、お昼になりそう、という時点で、ようやく、それらが終わりそうになる。


「お疲れ様。アカリさん。まあ、最初だけですので……。あ、あと最後にこちらも目を通して、署名をして下さい」


(……………………まだ、あった………………)


 そして、それを確認する。


(……え、……えーっと。……これは、……外出許可に関して……? えっと、……外出。この”アスール”から、外出する際の、……うん。……決まり。えっと……)


 『”アスール”から、外出する際は、上長、室長、部長、そして、最後に社長の承認を得て下さい。

 外出する際は、外出許可証を提出、申請して下さい――――――――』


(……あ、これかな? えーっと、……外出は、……申請日は、……一週間以上、……前には、……えっと、提出が必要、……で、承認には、……5日以上、かかる、と。……外出許可証に、……外出を希望する、……日付を記入し、……直筆の署名を、必要、なんだ。……で、外出先……え? 目的も記入……? 外出期間は、……一泊二日まで。……え? ……外出の際は、……希望同行者が、必須……? 希望同行者は、……本部の人員のみ。…………本部の人員を?)


 よくよく、その際に、提出するのであろう許可証を見る。


『外出同行者名

 外出者名

 外出者配属支社

 外出許可承認――――――』


 そして、確認するが、それがその資料には、事細かに書いてある。だが、内容としては、そういう事である。


(でも、……同行者? その人は、……本部の人員のみ? ……え? だ、誰……?)


 本部の人員、と書かれているが、私は、本部の人員等、全く知らない。


「……あのー、アンカ室長」

「はい? どうしました?」

「この外出に関して、っていう資料なんですけど……」

「ええ、それは、その資料ですね」

「そのー、ここに書かれている、希望同行者っていうのは……?」

「ええ。ここから、外出する際は、本部の人間が、必ず誰か付きます。その人の事ですよ?」

「……あのー、私、……本部の人、知りませんけれど……」


 その疑問に、アンカ室長はしっかりと、答えてくれる。


「ああ、そういうことですか。そうですね、……私や、セリカさん、プランさん、あと、ミランダやチュン、彼女達は、知っている人も、居ますから。……でも、他の方は、確かに、ほとんど知らないでしょうね。あ、大丈夫ですよ? ほら、アカリさんにも、居るじゃないですか」

「……え?」

「ほら、ワタリ部長。あの方でも、大丈夫ですよ? まぁ、その分、……少し都合が合うのは難しいですが……」

「あ、ミカさん」

「ええ。ワタリ部長には、言っておきますので」

「は、はい……」

「ただ……」

「……はい?」

「あまり、それを、申請した人は、居ないんですよね……」

「……え?」


 あまり居ない、とはどう言う事か。


「これまで、……実際に外出した人は、そうですね、今のメンバーでは、私を含めて、四人だけですね……」

「え、……じゃあ、他の皆は……?」

「ええ、基本、外出していません」

「……え」

「ああ、でも、アカリさん。そうですね。アカリさんなら、いえ……」


 今、アンカ室長は何を言おうとしたのか。


(私……なら……?)


「一泊二日。……それだけしか、無いですから……」


 何故、こんな決まりがあるのか。それは、前に聞いていた事に理由がある。それは、分かる。


「まあ、そのうち、教えてくれるかもしれません」


 どういう事なのか。

 分からないが、ともかくこの資料、外出に関しては分かった。

 そうして、資料をスライドする。


 今、私が見ている資料。それは、透明板の印刷物。紙ではない。

 その透明板が沢山積まれている。


(……何故、……一緒にしてくれないの…………? なんで、……分けてあるのー? 多いよー…………)


 そして、その資料も目を通し、最後に出てきた、書名の所に、その専用のペンでサインをする。


”蒼野 灯”


 数少ない、私が書ける漢字。

 それが、私の、本来の名前の書き方。

 しかし、今は、漢字は基本読むだけの物。

 ベーシックでも、ミドルでも、読み方だけしか教えてくれない。

 文字を書く事を、教えてくれたのは、お祖母ちゃんだった。


 そうして、私は全ての資料に目を通し、署名を書き終えた。

 もう、お昼ご飯になる。


 そして、最後に、アンカ室長に紙を渡された。


「アカリ・アオノさん。いえ、蒼野 灯さん。辞令を発表します。”カエルレウムカンパニー・アスール支社”本日付を持って、正社員を指名いたします」


 これで、ようやく、始まる。


 ここでの、正式な、仕事。そして、ここでの、生活が。


 そう、本格的に、私の業務も始まった。


お読み頂き、有難うございます。


何故、名前がそうなったのか、は、一応、構想段階から、決まっています。

そして、何故、この部分があるのか、も、今後進めていきます。

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