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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
74/135

【七日目】 マラソン


 仕事が終わり、セリカさんの、あの事の為か、少し遅くなっていたので、そのまま皆で、掃除に移った。

 今日は、私は二階のモニター室だった。


 ここは、掃除用具室も近い上、あまり物も無いので、一人で十分である。掃除をしながら、考える。


(一体、……セリカさんは、……何をそんなに怒っているのだろうか。知りたいけど、…………聞ける自信、無い)


 掃除が終わり、掃除用具を戻して、通路に出ると、リーゼさんとプランさんが来ていた。


「あ、アカリさん。掃除、終わった?」

「あ、はい。今、終わりました」

「じゃあ、今日の夜の食事の準備、手伝ってもらえないかな?」

「……あ、分かりました」


 そのまま三人で、食堂に向かって、調理室のところで、何を作るのか聞く。


「これから、何を作るんですか?」

「うん。今日は、これ! これを、完璧に作る!」


 リーゼさんは調理の時は、いつも持ってきているのか、印刷した、透明板。

 そこに、料理する物の内容が書かれている。そして、完成時の料理の写真も見る事が出来る。


(で、…………これは、何でしょうか……?)


 それを、よく、読んでみる。


(えーっと、……ぴ……っつあ?)


「ピザ! 完璧に! 作るよ! 本格的に!」


 そうして始まった。リーゼさんの、完璧を目指す、お料理教室。


(まず、……えっと、……これかな? 強力粉)


 すっ、と、プランさんが、材料を準備してくれる。


「薄力粉、あと、塩、ドライイーストは、こっちだね」


 それを、皆の分を計算して、と言っても、結局は、16人分だが。誰の分かは、もう分かる。


「あ、アカリさん、待って! ちゃんと計るから!」


 リーゼさんは、しっかりと、一ミリグラムも間違えないように、計量をして、それを混ぜ合わせる。


「えーっと、次は……」


すっ、とプランさんが次の物を渡してくれる。


(……これ、……なんだろ?)


「オリーブオイル。……これがそうなんだ。で、これを、………………………………量が! し、しっかり書いてくれよ!」


 ちゃんとした量が、書いてない様子である。


「あ、ここに書いてあります。えっと、……大さじ一杯、……だから、四杯ですね」

「大さじ一杯って、どれくらい? 全部!? どの大さじ!?」


 リーゼさんは、そのような感じで、料理を進めて行く。


「ぬるま湯!? 温度は!? 量は!?」


 などと、リーゼさんは言いつつも、そこらへんは、プランさんが、さくさく、と、それを入れてくれる。


(プランさん、…………計ってませんけど?)


「で、こねる。……ふ! ……は! ……ぬん!」

「あ、あの、……多分、もうちょっとこう……」


 しばらくこねつつ、リーゼさんが聞く。


「これ! いつまで!?」


 そう言っていた、リーゼさんの肩を、プランさんがポンポンと叩く。


「もう! いいんですか?」


 コクコクと、頷くプランさん。


「……で、……ん? 打ち付ける? ふむ。……こうか!?」


 リーゼさんは、ベッチーン、と、それを強く打ち付ける。


(ああ、……リーゼさん。……それ、多分、力入れすぎ…………)


「な、何回!?」


 聞きつつ、ベッチーン、ベッチーン、と叩きつける。


(いや、……打ち付けるって、……多分、ちょっと違う…………)


 結局、それも、プランさんの肩ポンポンで、終わりになる。それから、プランさんが、軽やかな手捌きで、それを練りこむ。そして、はい、っとリーゼさんに変わる。


「また、打ち付けるんですね!? ……ふん! やあっ!!」


 それを何回か繰り返した。最後に、プランさんが、それに後処理なのか、何かをしてから、それをオーブンに入れた。


「で、……この後は。……ああ、乗せる物の準備を、この間にすればいいのか」


 既にプランさんが、それの材料だろう物を、準備してくれていた。

 それをみんなで切っていく。けれど、やはり、リーゼさんは、そこも几帳面だった。


「ふむ、いや、ちょっとバランスが、こうすれば……」


 そんな事を言いつつ、切った物のサイズを測っていた。

 プランさんは、何故だかそんな事をしなくても、全部、同じくらいに見える。


 そして、先程の生地になるのであろう、オーブンに入れたものを取り出し、それを引き伸ばす作業になる。


(ああ、さっき、……いつの間にやらプランさん、分けてくれていたんだ……)


 三人とも、ほとんど、同じ分量。そして、引き伸ばすのだが、中々上手くいかない。リーゼさんも、同じのようである。


「…………っく、………………なんで、……………………丸くならない」


 私も綺麗ではないが、大体、これくらいの、厚みと直径だろうか、と自分がやった物を見る。

 そして、リーゼさんは、それを計っていた。


「厚み! 違う! 直径! あと数ミリ!」


 プランさんは、いつの間にか、あっと言う間に、綺麗に引き伸ばし作業も、終えていた。

 そんな訳で、いつの間にか終わっていた、プランさん。大体、これくらいで良いかな、と私。そして、リーゼさん。


(……………………あ、…………切ってる、…………わざわざ)


 それから、材料を、上に載せていく。それもプランさんはさくさくと進めてしまう。

 私は、そのプランさんがやっているのを見て、これくらいなのかな、と似た感じでやってみた。

 リーゼさんは、しっかりと、乗せる位置も決めているのだろうか。


(って、…………ああ、そんな、…………ほんのちょっとズレただけ。…………あ、…………納得いかなかったみたい。…………乗せなおしてる……)


 そして、ようやく終わる。

 一番早く終わったのに、一番綺麗に出来ているプランさんの物。

 時間と手間をかけつつも、しっかりと、形や、材料の配置にこだわった、綺麗なリーゼさんの物。

 そして、私も自分のやった物を見る。


(……うーん、…………比べると、…………ちょっと雑だったかなぁ……)


「あとは、オーブンに入れて、焼けば良いんだね。えっと、時間は、…………大体、……20分くらいって、何なんだろう? ……しっかりと、秒数まで、書いてて欲しいな…………」


(いや、多分、……それくらいで、良い感じに焼けますよ、……って事だと)


 時間を見るともうすぐ6時。これから焼くと、少し早いのかもしれない。


「じゃあ、20分ちょうどで。じゃあ、あと9分は時間があるね」


 多分、焼いて準備する時間を入れて、25分くらいを見ているのだろう。


「それにしても、なんでこう、料理の資料には、ちょくちょく幅があるのか。……直系24センチから26センチくらいとか、じゃあ、どっちってならない? アカリさん」

「えーっと、……真ん中くらいで、良いんじゃないでしょうか……」

「でも、それだと、味が変わるんじゃないのかな? 大さじ一杯って、書いてあっても、一杯がどこまでなのか。……数値で、書いてて欲しいよね」

「……ど、どうでしょう。……人の好みとかで、……た、多分、分量とかも……」

「うーん。分からないから、ちゃんと書いて欲しい」


 リーゼさんの言う数値は、一体、どれぐらいの細かさまでを、言っているのだろうか。


「あのー、私、これ、初めてなんですけど。……ぴざ、……って言うんですね」

「うん、そう。前に、……セリカさんが作ってくれたんだ。美味しかったから、是非作ろう、って思ってたんだ」

「へー、……わー、じゃ、楽しみです」


 沢山のチーズや材料が乗ったそれを見る。

 私は、これまで、この食べ物は食べた事が無い。

 昔は、そう、家では、お米、それからお味噌汁、そして、お野菜の煮物。

 たまに、お祖母ちゃんの知り合いから、卵や、お魚を貰う事があった。

 何度かだけ、お肉を分けて貰った事もあった。

 そして、スープやパンは、ベーシックの時に食べていた。


 それ以外の、シチューやカレー、スープ、パスタ、あと、それ以外にも揚げ物や、湯で物、他にも色々。そういう物は、アルバイト先で教えてもらった。


 その時は、こんな素材や料理があるんだ、と色々驚いたものだ。

 けれど、結局私がそこで覚えれたのは、数品だけ。


 その中で、メイちゃんと一緒に作った、シチューは、その中の一つ。カレーも、似た感じなので作れるけど、アルバイト先では、たまにしか無かった。


 それでも、ここでは、その時よりも、材料が豊富にあるようだ。

 あの時は、本当なら、こういう材料を使うのだけれど、無いから、代用で、という事も多かった。


 そんな事を、ふと思い出していると、時間になったようだ。

 焼く時間。と言っても、プランさんが、それをオーブンに入れて、それで、後は待つだけらしい。

 プランさんが、オーブンを見てくれるようなので、その間に、お皿の準備をする。

 そして、また少し時間が出来る。


「ねえ、アカリさん。今日って、社長が来たんだよね?」


 唐突にリーゼさんに聞かれる。


「あ、はい」


 ああ、そうだ、と、気が付く。

 この二人は、会っていないし、来た事もちゃんと聞いていない。


(…………そして、あのセリカさんの状態も…………)


「何しに、来たの?」

「…………ええーっと。私にも、分かりません…………」

「うん、やっぱり、そうだよね。私も、後から聞いたから、そうだったのか、って思ったけど。唐突だね」

「……アンカ室長も、驚いていたみたいです。……皆も」

「ああ、それで、何かあったのかな? アンカ室長」

「……え?」

「いや、何か、こう考え込んでたような、悩んでいたみたいだった」

「あ、そうです、確か、アンカ室長と、セリカさんとお話してたみたいです」

「何、話したんだろう?」

「そうですね……?」


 あの後の、セリカさんを思い出す。


(とても、…………怒っていた。…………何故か…………)


「…………あのー、……あの後、セリカさん」

「そう言えば、セリカさん、お昼来なかった」

「……そ、そうなんですね。……何か、……こう……」

「ああ、みんな、お昼の時、どうしたの? あれ?」

「…………なんだか、セリカさんが、…………その、………………鬼に、なってました」

「………………どういう事?」


 それを聞いたプランさんは、それが分かったのか、こちらに来て、フルフルと顔を振った。そして、腕に着けた、あの機械で、教えてくれる。


[セリカさんが、それになったら、しばらくそっとしておいた方がいいわ]


 プランさんは、知っているようだ。あの、激怒状態のセリカさんを。


 それから、料理が出来る頃、みんなやって来る。だが、二人居ない。アンカ室長と、セリカさん。


「なーんかね。ずっと話してるみたいだよー? 聞いたらー、食事は取っておいてー、だって。多分ー、今は、来ないんじゃないかなー?」


 ミランダさんが、説明してくれたが、何を話しているのか、それを分かる人は、居ないようであった。

 そして、二人を残して、食事が始まった。


 食事は美味しかった。

 初めてのピザ。


(ああ、これ、パンみたいに、このまま食べるんだ。……わ! これ、すっごく美味しい! で、でもちょっと、熱い)


 私の作った、ちょっと形の悪いものも、味は問題ないようであった。そして、みんな大好きなのか、あっと言う間に、無くなった。もちろん、二人分は残して。


「これー、いっつも食べちゃうとー、太っちゃうねー」

「だいじょぅぶ! お風呂で消化ー!」

「ん、たまにはこう、ちゃんと運動もしないとな」

「でも、結構、体は動かしていると思うけれど……」

「じゃー! これからー! みんなでー! ごら――」


 ミランダさんが、その言葉を言う前に、アリスさんが言葉を被せる。


「夜間、…………行かないと…………」

「ぷらんさう、りさ、おねあいー」

「ああ、今日は、ちょっと早いんだ。うん、じゃあ、先に準備してて」


 プランさんも、コクコク、と頷く。


「――くー! って、今日、早くないー!?」

「はぅ! なんか、きょう、せりかさうが、きになうこと、あるかあ、って」

「…………うん。………………そう、……………………聞いてる。……………………だから、ちょっと、早く出発…………」


 そんな事を話していたところに、アンカ室長と、セリカさんがやって来た。そして、その話が聞こえていたのか、入ってきながらセリカさんが言う。


「ああ、……二人とも、……悪いわ。……今日、……もう良いわ。……うん、大丈夫、大丈夫……」


 怒りつかれた様子のセリカさん。


「あ、ご、ごめんなさい、ふ、二人とも。そ、その、今日はもう、夜間巡回はいいので。お、お休みして頂いて、……結構、ですよ」


 アンカ室長も、そう話すが、どうもアンカ室長も、いつもと口調が違い、歯切れが悪い。


「はえ? そうなんえすか? じゃあ、あたしと、アリス、おやすみ?」

「………………………………………………あれ?」

「え、ええ。あちらは、また明日、……にでも。……あ、も、もう、お食事、皆済んだのですね。ああ、私達も、……い、今から頂きます。あ、あら、これは?」

「…………ああ。…………うん。ピザ作ったのね。……今日は、……それ良いかも。…………疲れたし」


 よくは、分からないが、夜間の二人は、今日はお休みになり、カレー女王のセリカさんも、ピザで納得している。


「えーっと……?」


「「「「「……お、おつかれさまです……」」」」」


 よく分からない、他のメンバー。

 だが、今日、あの、激怒プンプンしていた、セリカさん。そして、何か、まだ、何かを飲み込めていない状態の、アンカ室長。


(……………………そっとしておこう………………)


 多分、今思った事は、皆、シンクロした。

 そして、二人を残し、部屋を出た。


 珍しく、今日は、食後、ほぼ全員が、一緒に食堂を出た。

 夜間の、アリスさんとマイヤさんも、お休みになった。

 だが、じゃあ、これから、と言う事が、結局、みんな別れた。


 ミランダさんは、当然娯楽室!と言う。

 エレナさんは、お風呂!と言う。

 ユウカさんは、モニター室、と言う。

 そして、チュンさんが、運動したい、と言う。

 だが、そのチュンさんの発言に、ミランダさんが言う。


「うんどーって、言ってもさー、ここだとー、娯楽室かー、あそこかー、正門前しか無いじゃんー」

「いや、娯楽室のは、まぁ、無くもないが、本格的に体を動かすなら、正門の所か、あそこだ」


 そして、初めはモニター室と言っていた、ユウカさんも言う。


「まあ、そうですね。たまには、それも良いかも」

「えー、あそこだと、皆はじゃー、無理じゃんー」

「いや、別に、皆そうしろ、とは強制してないぞ?」

「えー、でもー、折角夜間の二人も居るしー」


 そんなやり取りをしている、チュンさんとミランダさんの中に、メイちゃんも入る。


「……あ、あの折角ですし、みんなで、正門の所で」

「メイちゃんー、それきっつい! まだあっちの方がマシー」

「体動かしてからのほうがー、お風呂の消化もいいかもぉー」

「じゃあ、正門に行くか。ミランダ以外で」

「ああぁー!! それえぇーー、ちょーぉぉお! 行くよぉぉー。行きますぅぅー!」


 正門、とは言われるが、私には何か分からない。


「あのー、……正門って、……何があるんですか?」

「いや、何も無い」

「けど、広いわ」

「ちゃーんと灯りもあるしねぇ。あ、アカリちゃんじゃないよぉ?」

「なあ、ミランダ、あそこ。何台、カメラつけたぁ……?」

「……うぅぅー、……たしかー。30台くらいぃー……」

「じゃあ、たまぁーには、使ってやらんとなぁー?」


 ミランダさんは、少し嫌そうだ。だが、30台カメラを付けていると言う。それが多いのか少ないのかは、全体数からは、分からない。そして、そこを突いている、チュンさん。使用頻度は低いようだ。


「メイちゃん、何やるの……?」

「うーん、……体を動かすような事。走ったり……」


(なるほど。……そういえば、ここの通路。急いでいても、誰も走ったりはしない。しかし、正門……?何処だろう?)


 チュンさんに、汗をかくから、着替えるか、着替えを持ってきたほうが良い、と言われ、部屋に戻り、着替えを持っていく。


 その後、皆で、一階に降りる。ちなみに、ミランダさんと数名はエレベーター。

 そして、一階。エレベーターから真っ直ぐ。階段から見ても真っ直ぐ。

 左が、あの船着場。右が、あの巡回艇準備室等への通路。そして、真っ直ぐは、大きな扉。

 だが、実際に開けるのは、その隣にちょこんとある、小さなドア。そこから、皆が外に出る。

 そこは、広い地面。何かあるわけでは無い。


「じゃ、点けるぞ?」


 チュンさんが、そう言って、灯りをつける。

 すると、そこが照らし出された。


(確かに、……何も無い。何も無いけど、……すごく、広い)


「じゃぁ、まらそん、しよぉー」

「一着からで、今度、何か買う時に、優先権、というのはどうですか?」

「いいな、それ」

「……え? ええー……そ、それだとー……」

「ま、メイは、……ま、がんばれ」

「ペース配分、そして、……持久力をつけるには、良い」

「……………………………………うん………………」

「はぅ、あたし、にがて、はぅ……」


 何人かは、運動するための服だろう。着替えてきていた。


(そして、……え? マラソン!? ここを、……走るの?)


 メイちゃん、マイヤさんは、苦手な様子。ミランダさんも、ううーっと言っている。


(けれど、……カメラ。……何処にあるんですか? 30台も…………)


 皆で、準備体操をする。運動するなら、確かに大事。

 ユウカさんとチュンさんは、自信満々、といった感じだ。リーゼさんは気合を入れている。アリスさんと、プランさんは、……よく分からない。


「じゃあ、ここ、10週くらいで良いか?」

「それ、長いぃー。せめてー、2週ー」

「それだと、ちょっと短いわ。6週くらいで、良いんじゃないですか?」


「じゃあ、6週な。さて、じゃあスタートは……。ふむ、じゃあ、これを投げて落とすから、落ちたらそれが合図」


 スタートラインは、ちゃんとある様子だ。そして、そこがゴールにもなる、という事だ。


(私は、……どうだろ? 多少、体力は、自信あるけれど……)


 だが、ここは広い。確かに広い。そんな、ここを6週。


(どれくらいあるのかな…………?)


 皆でスタートラインに並ぶ。


 チュンさんが取り出したるは、何かのコイン。それを投げる。


(落ちたら、……あ、い、今!)


 そうして始まった。食後の運動。と言うには、ちょっとハードだ。1週でも、結構あるようだった。


(た、確かに、……良い運動、……なの、……かも、……しれないけれど、……もうちょっと、……食後、……時間ほしいーー……)


 強制とは言われなかったけれど、結局、皆で、それをやる。あの二人以外。


 そして、一週目。


(まだ、大丈夫)


 それなりに、体力には自信がある。まだ、皆も、大丈夫そうだ。


 二週目。


(……ああ、メイちゃん、マイヤさん。……大分遅れてきた。エレナさん、チュンさん、ユウカさん、……は、はやいー……)


 三週目。


(……つ、疲れてきたー、……汗かいてきたー、あ、……ミランダさんも、……大分遅れてきてる)


 四週目。


(ああ、……なんか少し、……走るの、……気持ちよくなってきたかもー……って! リーゼさん! そこで飛ばしちゃうの!?)


 五週目。

(……んー、……風が、……気持ち良いー。……ああ、……メイちゃん、マイヤさん、ミランダさんは、……が、頑張ってー。……で、……チュンさん、ユウカさん、そしてプランさん! 早い! あ、あれ? アリスさん!?)


6週目。

(こ、これで、……さいごー、……ああ、……たまには、……良いけど、……もう、ちょっとー、……あ、……ゴールー……)


 どれぐらい、走っていただろうか。ようやく、ゴールする。ゴールした先には、ユウカさん、チュンさん、プランさん、アリスさんが居た。私は、五着のようだった。そして、途中で飛ばしてしまった、リーゼさん、エレナさんが同時で六着くらい。いつの間にか、抜いてしまっていた。

 後から、ミランダさん、メイちゃん、マイヤさんが並んで戻ってきた。


「はぁ、はぁ、……はぁー、……ひ、久しぶりに、走りましたー…………」

「く、……まだ、……走れたのに、……足が」


 リーゼさんは、途中飛ばして、足に来たのだろうか。


(で、……一着は、……誰……?)


「一着、……アリス」

「…………………………ん。…………………………余裕……………………」


 チュンさんが、発表し始める。

 アリスさんは、息もそんなに切れていない。


(って、い、意外!)


「…………はひー、……ふひー。……に、二着はー……?」


 息を切らして、ミランダさんが聞く。


「ああ、……二着、プランさん」


 少し息を切らしているが、相変わらずのニコニコ顔。


「で、三着、私」


 チュンさんは、もう息は整っている。


「四着、ユウカ」

「残念ね、でも、良い運動になったわ」


 ユウカさんは、運動出来た事に満足しているようだ。


「で、五着、アカリ」

「結構早いわね、アカリ」

「も、もう少し……頑張れたかも……」


 そんなユウカさんに言われるが、まだ少し、余裕があった。


「同時六着、リーゼとエレナ」

「く、………………な、何故」

「はひぃー、ふひぃー。みんなぁー。はやいぃー」


 少し、意外な組み合わせだった。どちらも、運動は出来そうなイメージだったのだが。


「で、同時最下位、ミランダ、メイ、マイヤ……」

「み、みなさん。……早いですー」

「はぅ、はやいー……」

「きっつー。……私ー、……インドア派ー……」


 その三人は息も切れ切れ。しかし、イメージ通りであった。

 そして、皆、ゴール付近で、休憩している。


「と言うわけで、今度の優先権は、アリス」

「…………………………………………………………何にしよう?」


 走った後は気持ちが良かった。


(で、…………優先権って、……………………何?)


 その後、皆、汗をかいたという事で、皆で、軽く体操をして、お風呂に向かった。


 そして、メイちゃんと一緒にお風呂に向かっていた際に、アンカ室長と、セリカさんに会った。

 ずいぶん、長く食堂に居たんだな、と考える。


「あら……? もしかして運動してきたんですか?」

「あ、……はい、みんなで、正門のところで……」

「マラソン?」

「はい、一着は、アリスちゃんでした」


 二人は、私達を見て、気が付いたようだ。


「そう、それは良いですね……」

「ねえ、……アンカ。……私達も、……走った方が、良いのかも……」

「…………確かに…………」


 走って、すっきりしたおかげか、ちょっと忘れていた。この二人、今日は何やら、大変というか、悩んでいるというのか、悶々としているようである。


「走ったら、……ちょっと、紛れるかも…………これ」

「そ、そうですね…………」

「ああ、悪かったわ。お風呂だったわね?」

「あ、そうですね。それでは、いってらっしゃい」


 まだ、悶々としているのか、しかし、私達も、早くお風呂に入ったほうが良い。


 結局、メイちゃんも分からないので、二人と別れて、お風呂に行く。

 脱衣所に入ると、既にもう何人か居る。そして気がつく。


(……あ。チュンさんも、ユウカさんも居る)


 ここのメンバーで、まだ一緒していなかった二人。今日は、さすがに居た。そして、チュンさんがこう言った。


「アカリ。私、寝かけたら、殴ってくれ」

「…………え? ……い、いえ、それはさすがに…………」


 そして、みんなでお風呂に入る。すぐ後に、プランさんや、リーゼさんも来た。エレナさんは、一番に着たのか、既に飛び込んだ後なのか、浴槽の中に居た。


「……はぁ。……良いわねー。……たまにはこういうのも」

「つかれちったー。……はあー、気持ち良いわー」

「……何故、……あそこで」

「………………………………………………眠くなっちゃう」


 ユウカさんは本当に、気持ちが良さそうで、ミランダさんも、文句を言っていた割には、声は明るい。そして、リーゼさんは、先程の分析だろうか、呟いている。

 アリスさんは、もう寝そう。それを、ゆさゆさ、と揺らして、マイヤさんが起こす。


「はぅ! さっき、おきたの! まだ、ねたあ、だめ、アリス! はぅ」

「……はぁ。……気持ちいいですぅー……」

「アリスちゃん、なんでぇー……それで一着とれるのぉー?」


 メイちゃんも、エレナさんも、気持ちが良いようである。私も、運動の後のお風呂は、すごく、気持ちが良い。


「………………はぁー。……………………あれ?」


チュンさんを見る。目が、閉じかけていた。


「……………………………………」


(…………あ、寝た。…………って! ど、どうしよう!?)


そこに、ベシンッ、と、そのチュンさんに、ユウカさんが、逆水平チョップを首に当てた。


「……起きました?」

「…………ぬ、…………うむ」

「アカリ、こんな感じで」

「………………う………………………………む………………………………………………っ………………」


 ベシンッ、と再び、ユウカさんがチョップする。


「まだ、お風呂です」

「…………………………ぬ、………………うむ…………」


(………………ああ、………………チュンさん。………………本当に、………………寝ちゃうんだ)


 そして、あっちはあっちで、ゆっさゆっさとアリスさんを起こしている。


「はぅ! アリス! だめぇ!」

「…………………………………………………………………ぉ……………ぉきてる…………」

「め、メイちゃん、…………あれ、出来る?」

「わ、私も、………………ちょっと、無理かも」


 チュンさんとユウカさんを見ながら、メイちゃんに聞く。


 こっちでは、ちょいちょいユウカさんが、チュンさんを、ベシン、と肩の辺りにチョップ。

 あっちでは、ゆっさゆっさと、マイヤさんとエレナさんが、アリスさんを揺らしている。


 リーゼさんはリーゼさんで、何か分析している。

 プランさんは、ニコニコ見ている。

 ミランダさんは、我関せず、と言った感じで、「ぬっはー」とか言いながらオンセンを楽しんでいる。


 メイちゃんも気持ち良さそう。

 私も気持ちが良い。


 多分、これが皆の日常。


 きっとこれからも見る事が出来る。


(セリカさんは、…………こ、怖かったけど……………………)


 アンカ室長は、多分、アヒルさんと、またここに来るのだろう。

 気持ちが良すぎて、私もチュンさんや、アリスさんみたいに寝てしまいそうだった。


 そんな、夜だった。



お読みいただき、ありがとうございます。


斜め45度くらいで、丁度良い強さで、お祖母ちゃんチョップをすると、チュンが点きます。


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