【七日目】 マラソン
仕事が終わり、セリカさんの、あの事の為か、少し遅くなっていたので、そのまま皆で、掃除に移った。
今日は、私は二階のモニター室だった。
ここは、掃除用具室も近い上、あまり物も無いので、一人で十分である。掃除をしながら、考える。
(一体、……セリカさんは、……何をそんなに怒っているのだろうか。知りたいけど、…………聞ける自信、無い)
掃除が終わり、掃除用具を戻して、通路に出ると、リーゼさんとプランさんが来ていた。
「あ、アカリさん。掃除、終わった?」
「あ、はい。今、終わりました」
「じゃあ、今日の夜の食事の準備、手伝ってもらえないかな?」
「……あ、分かりました」
そのまま三人で、食堂に向かって、調理室のところで、何を作るのか聞く。
「これから、何を作るんですか?」
「うん。今日は、これ! これを、完璧に作る!」
リーゼさんは調理の時は、いつも持ってきているのか、印刷した、透明板。
そこに、料理する物の内容が書かれている。そして、完成時の料理の写真も見る事が出来る。
(で、…………これは、何でしょうか……?)
それを、よく、読んでみる。
(えーっと、……ぴ……っつあ?)
「ピザ! 完璧に! 作るよ! 本格的に!」
そうして始まった。リーゼさんの、完璧を目指す、お料理教室。
(まず、……えっと、……これかな? 強力粉)
すっ、と、プランさんが、材料を準備してくれる。
「薄力粉、あと、塩、ドライイーストは、こっちだね」
それを、皆の分を計算して、と言っても、結局は、16人分だが。誰の分かは、もう分かる。
「あ、アカリさん、待って! ちゃんと計るから!」
リーゼさんは、しっかりと、一ミリグラムも間違えないように、計量をして、それを混ぜ合わせる。
「えーっと、次は……」
すっ、とプランさんが次の物を渡してくれる。
(……これ、……なんだろ?)
「オリーブオイル。……これがそうなんだ。で、これを、………………………………量が! し、しっかり書いてくれよ!」
ちゃんとした量が、書いてない様子である。
「あ、ここに書いてあります。えっと、……大さじ一杯、……だから、四杯ですね」
「大さじ一杯って、どれくらい? 全部!? どの大さじ!?」
リーゼさんは、そのような感じで、料理を進めて行く。
「ぬるま湯!? 温度は!? 量は!?」
などと、リーゼさんは言いつつも、そこらへんは、プランさんが、さくさく、と、それを入れてくれる。
(プランさん、…………計ってませんけど?)
「で、こねる。……ふ! ……は! ……ぬん!」
「あ、あの、……多分、もうちょっとこう……」
しばらくこねつつ、リーゼさんが聞く。
「これ! いつまで!?」
そう言っていた、リーゼさんの肩を、プランさんがポンポンと叩く。
「もう! いいんですか?」
コクコクと、頷くプランさん。
「……で、……ん? 打ち付ける? ふむ。……こうか!?」
リーゼさんは、ベッチーン、と、それを強く打ち付ける。
(ああ、……リーゼさん。……それ、多分、力入れすぎ…………)
「な、何回!?」
聞きつつ、ベッチーン、ベッチーン、と叩きつける。
(いや、……打ち付けるって、……多分、ちょっと違う…………)
結局、それも、プランさんの肩ポンポンで、終わりになる。それから、プランさんが、軽やかな手捌きで、それを練りこむ。そして、はい、っとリーゼさんに変わる。
「また、打ち付けるんですね!? ……ふん! やあっ!!」
それを何回か繰り返した。最後に、プランさんが、それに後処理なのか、何かをしてから、それをオーブンに入れた。
「で、……この後は。……ああ、乗せる物の準備を、この間にすればいいのか」
既にプランさんが、それの材料だろう物を、準備してくれていた。
それをみんなで切っていく。けれど、やはり、リーゼさんは、そこも几帳面だった。
「ふむ、いや、ちょっとバランスが、こうすれば……」
そんな事を言いつつ、切った物のサイズを測っていた。
プランさんは、何故だかそんな事をしなくても、全部、同じくらいに見える。
そして、先程の生地になるのであろう、オーブンに入れたものを取り出し、それを引き伸ばす作業になる。
(ああ、さっき、……いつの間にやらプランさん、分けてくれていたんだ……)
三人とも、ほとんど、同じ分量。そして、引き伸ばすのだが、中々上手くいかない。リーゼさんも、同じのようである。
「…………っく、………………なんで、……………………丸くならない」
私も綺麗ではないが、大体、これくらいの、厚みと直径だろうか、と自分がやった物を見る。
そして、リーゼさんは、それを計っていた。
「厚み! 違う! 直径! あと数ミリ!」
プランさんは、いつの間にか、あっと言う間に、綺麗に引き伸ばし作業も、終えていた。
そんな訳で、いつの間にか終わっていた、プランさん。大体、これくらいで良いかな、と私。そして、リーゼさん。
(……………………あ、…………切ってる、…………わざわざ)
それから、材料を、上に載せていく。それもプランさんはさくさくと進めてしまう。
私は、そのプランさんがやっているのを見て、これくらいなのかな、と似た感じでやってみた。
リーゼさんは、しっかりと、乗せる位置も決めているのだろうか。
(って、…………ああ、そんな、…………ほんのちょっとズレただけ。…………あ、…………納得いかなかったみたい。…………乗せなおしてる……)
そして、ようやく終わる。
一番早く終わったのに、一番綺麗に出来ているプランさんの物。
時間と手間をかけつつも、しっかりと、形や、材料の配置にこだわった、綺麗なリーゼさんの物。
そして、私も自分のやった物を見る。
(……うーん、…………比べると、…………ちょっと雑だったかなぁ……)
「あとは、オーブンに入れて、焼けば良いんだね。えっと、時間は、…………大体、……20分くらいって、何なんだろう? ……しっかりと、秒数まで、書いてて欲しいな…………」
(いや、多分、……それくらいで、良い感じに焼けますよ、……って事だと)
時間を見るともうすぐ6時。これから焼くと、少し早いのかもしれない。
「じゃあ、20分ちょうどで。じゃあ、あと9分は時間があるね」
多分、焼いて準備する時間を入れて、25分くらいを見ているのだろう。
「それにしても、なんでこう、料理の資料には、ちょくちょく幅があるのか。……直系24センチから26センチくらいとか、じゃあ、どっちってならない? アカリさん」
「えーっと、……真ん中くらいで、良いんじゃないでしょうか……」
「でも、それだと、味が変わるんじゃないのかな? 大さじ一杯って、書いてあっても、一杯がどこまでなのか。……数値で、書いてて欲しいよね」
「……ど、どうでしょう。……人の好みとかで、……た、多分、分量とかも……」
「うーん。分からないから、ちゃんと書いて欲しい」
リーゼさんの言う数値は、一体、どれぐらいの細かさまでを、言っているのだろうか。
「あのー、私、これ、初めてなんですけど。……ぴざ、……って言うんですね」
「うん、そう。前に、……セリカさんが作ってくれたんだ。美味しかったから、是非作ろう、って思ってたんだ」
「へー、……わー、じゃ、楽しみです」
沢山のチーズや材料が乗ったそれを見る。
私は、これまで、この食べ物は食べた事が無い。
昔は、そう、家では、お米、それからお味噌汁、そして、お野菜の煮物。
たまに、お祖母ちゃんの知り合いから、卵や、お魚を貰う事があった。
何度かだけ、お肉を分けて貰った事もあった。
そして、スープやパンは、ベーシックの時に食べていた。
それ以外の、シチューやカレー、スープ、パスタ、あと、それ以外にも揚げ物や、湯で物、他にも色々。そういう物は、アルバイト先で教えてもらった。
その時は、こんな素材や料理があるんだ、と色々驚いたものだ。
けれど、結局私がそこで覚えれたのは、数品だけ。
その中で、メイちゃんと一緒に作った、シチューは、その中の一つ。カレーも、似た感じなので作れるけど、アルバイト先では、たまにしか無かった。
それでも、ここでは、その時よりも、材料が豊富にあるようだ。
あの時は、本当なら、こういう材料を使うのだけれど、無いから、代用で、という事も多かった。
そんな事を、ふと思い出していると、時間になったようだ。
焼く時間。と言っても、プランさんが、それをオーブンに入れて、それで、後は待つだけらしい。
プランさんが、オーブンを見てくれるようなので、その間に、お皿の準備をする。
そして、また少し時間が出来る。
「ねえ、アカリさん。今日って、社長が来たんだよね?」
唐突にリーゼさんに聞かれる。
「あ、はい」
ああ、そうだ、と、気が付く。
この二人は、会っていないし、来た事もちゃんと聞いていない。
(…………そして、あのセリカさんの状態も…………)
「何しに、来たの?」
「…………ええーっと。私にも、分かりません…………」
「うん、やっぱり、そうだよね。私も、後から聞いたから、そうだったのか、って思ったけど。唐突だね」
「……アンカ室長も、驚いていたみたいです。……皆も」
「ああ、それで、何かあったのかな? アンカ室長」
「……え?」
「いや、何か、こう考え込んでたような、悩んでいたみたいだった」
「あ、そうです、確か、アンカ室長と、セリカさんとお話してたみたいです」
「何、話したんだろう?」
「そうですね……?」
あの後の、セリカさんを思い出す。
(とても、…………怒っていた。…………何故か…………)
「…………あのー、……あの後、セリカさん」
「そう言えば、セリカさん、お昼来なかった」
「……そ、そうなんですね。……何か、……こう……」
「ああ、みんな、お昼の時、どうしたの? あれ?」
「…………なんだか、セリカさんが、…………その、………………鬼に、なってました」
「………………どういう事?」
それを聞いたプランさんは、それが分かったのか、こちらに来て、フルフルと顔を振った。そして、腕に着けた、あの機械で、教えてくれる。
[セリカさんが、それになったら、しばらくそっとしておいた方がいいわ]
プランさんは、知っているようだ。あの、激怒状態のセリカさんを。
それから、料理が出来る頃、みんなやって来る。だが、二人居ない。アンカ室長と、セリカさん。
「なーんかね。ずっと話してるみたいだよー? 聞いたらー、食事は取っておいてー、だって。多分ー、今は、来ないんじゃないかなー?」
ミランダさんが、説明してくれたが、何を話しているのか、それを分かる人は、居ないようであった。
そして、二人を残して、食事が始まった。
食事は美味しかった。
初めてのピザ。
(ああ、これ、パンみたいに、このまま食べるんだ。……わ! これ、すっごく美味しい! で、でもちょっと、熱い)
私の作った、ちょっと形の悪いものも、味は問題ないようであった。そして、みんな大好きなのか、あっと言う間に、無くなった。もちろん、二人分は残して。
「これー、いっつも食べちゃうとー、太っちゃうねー」
「だいじょぅぶ! お風呂で消化ー!」
「ん、たまにはこう、ちゃんと運動もしないとな」
「でも、結構、体は動かしていると思うけれど……」
「じゃー! これからー! みんなでー! ごら――」
ミランダさんが、その言葉を言う前に、アリスさんが言葉を被せる。
「夜間、…………行かないと…………」
「ぷらんさう、りさ、おねあいー」
「ああ、今日は、ちょっと早いんだ。うん、じゃあ、先に準備してて」
プランさんも、コクコク、と頷く。
「――くー! って、今日、早くないー!?」
「はぅ! なんか、きょう、せりかさうが、きになうこと、あるかあ、って」
「…………うん。………………そう、……………………聞いてる。……………………だから、ちょっと、早く出発…………」
そんな事を話していたところに、アンカ室長と、セリカさんがやって来た。そして、その話が聞こえていたのか、入ってきながらセリカさんが言う。
「ああ、……二人とも、……悪いわ。……今日、……もう良いわ。……うん、大丈夫、大丈夫……」
怒りつかれた様子のセリカさん。
「あ、ご、ごめんなさい、ふ、二人とも。そ、その、今日はもう、夜間巡回はいいので。お、お休みして頂いて、……結構、ですよ」
アンカ室長も、そう話すが、どうもアンカ室長も、いつもと口調が違い、歯切れが悪い。
「はえ? そうなんえすか? じゃあ、あたしと、アリス、おやすみ?」
「………………………………………………あれ?」
「え、ええ。あちらは、また明日、……にでも。……あ、も、もう、お食事、皆済んだのですね。ああ、私達も、……い、今から頂きます。あ、あら、これは?」
「…………ああ。…………うん。ピザ作ったのね。……今日は、……それ良いかも。…………疲れたし」
よくは、分からないが、夜間の二人は、今日はお休みになり、カレー女王のセリカさんも、ピザで納得している。
「えーっと……?」
「「「「「……お、おつかれさまです……」」」」」
よく分からない、他のメンバー。
だが、今日、あの、激怒プンプンしていた、セリカさん。そして、何か、まだ、何かを飲み込めていない状態の、アンカ室長。
(……………………そっとしておこう………………)
多分、今思った事は、皆、シンクロした。
そして、二人を残し、部屋を出た。
珍しく、今日は、食後、ほぼ全員が、一緒に食堂を出た。
夜間の、アリスさんとマイヤさんも、お休みになった。
だが、じゃあ、これから、と言う事が、結局、みんな別れた。
ミランダさんは、当然娯楽室!と言う。
エレナさんは、お風呂!と言う。
ユウカさんは、モニター室、と言う。
そして、チュンさんが、運動したい、と言う。
だが、そのチュンさんの発言に、ミランダさんが言う。
「うんどーって、言ってもさー、ここだとー、娯楽室かー、あそこかー、正門前しか無いじゃんー」
「いや、娯楽室のは、まぁ、無くもないが、本格的に体を動かすなら、正門の所か、あそこだ」
そして、初めはモニター室と言っていた、ユウカさんも言う。
「まあ、そうですね。たまには、それも良いかも」
「えー、あそこだと、皆はじゃー、無理じゃんー」
「いや、別に、皆そうしろ、とは強制してないぞ?」
「えー、でもー、折角夜間の二人も居るしー」
そんなやり取りをしている、チュンさんとミランダさんの中に、メイちゃんも入る。
「……あ、あの折角ですし、みんなで、正門の所で」
「メイちゃんー、それきっつい! まだあっちの方がマシー」
「体動かしてからのほうがー、お風呂の消化もいいかもぉー」
「じゃあ、正門に行くか。ミランダ以外で」
「ああぁー!! それえぇーー、ちょーぉぉお! 行くよぉぉー。行きますぅぅー!」
正門、とは言われるが、私には何か分からない。
「あのー、……正門って、……何があるんですか?」
「いや、何も無い」
「けど、広いわ」
「ちゃーんと灯りもあるしねぇ。あ、アカリちゃんじゃないよぉ?」
「なあ、ミランダ、あそこ。何台、カメラつけたぁ……?」
「……うぅぅー、……たしかー。30台くらいぃー……」
「じゃあ、たまぁーには、使ってやらんとなぁー?」
ミランダさんは、少し嫌そうだ。だが、30台カメラを付けていると言う。それが多いのか少ないのかは、全体数からは、分からない。そして、そこを突いている、チュンさん。使用頻度は低いようだ。
「メイちゃん、何やるの……?」
「うーん、……体を動かすような事。走ったり……」
(なるほど。……そういえば、ここの通路。急いでいても、誰も走ったりはしない。しかし、正門……?何処だろう?)
チュンさんに、汗をかくから、着替えるか、着替えを持ってきたほうが良い、と言われ、部屋に戻り、着替えを持っていく。
その後、皆で、一階に降りる。ちなみに、ミランダさんと数名はエレベーター。
そして、一階。エレベーターから真っ直ぐ。階段から見ても真っ直ぐ。
左が、あの船着場。右が、あの巡回艇準備室等への通路。そして、真っ直ぐは、大きな扉。
だが、実際に開けるのは、その隣にちょこんとある、小さなドア。そこから、皆が外に出る。
そこは、広い地面。何かあるわけでは無い。
「じゃ、点けるぞ?」
チュンさんが、そう言って、灯りをつける。
すると、そこが照らし出された。
(確かに、……何も無い。何も無いけど、……すごく、広い)
「じゃぁ、まらそん、しよぉー」
「一着からで、今度、何か買う時に、優先権、というのはどうですか?」
「いいな、それ」
「……え? ええー……そ、それだとー……」
「ま、メイは、……ま、がんばれ」
「ペース配分、そして、……持久力をつけるには、良い」
「……………………………………うん………………」
「はぅ、あたし、にがて、はぅ……」
何人かは、運動するための服だろう。着替えてきていた。
(そして、……え? マラソン!? ここを、……走るの?)
メイちゃん、マイヤさんは、苦手な様子。ミランダさんも、ううーっと言っている。
(けれど、……カメラ。……何処にあるんですか? 30台も…………)
皆で、準備体操をする。運動するなら、確かに大事。
ユウカさんとチュンさんは、自信満々、といった感じだ。リーゼさんは気合を入れている。アリスさんと、プランさんは、……よく分からない。
「じゃあ、ここ、10週くらいで良いか?」
「それ、長いぃー。せめてー、2週ー」
「それだと、ちょっと短いわ。6週くらいで、良いんじゃないですか?」
「じゃあ、6週な。さて、じゃあスタートは……。ふむ、じゃあ、これを投げて落とすから、落ちたらそれが合図」
スタートラインは、ちゃんとある様子だ。そして、そこがゴールにもなる、という事だ。
(私は、……どうだろ? 多少、体力は、自信あるけれど……)
だが、ここは広い。確かに広い。そんな、ここを6週。
(どれくらいあるのかな…………?)
皆でスタートラインに並ぶ。
チュンさんが取り出したるは、何かのコイン。それを投げる。
(落ちたら、……あ、い、今!)
そうして始まった。食後の運動。と言うには、ちょっとハードだ。1週でも、結構あるようだった。
(た、確かに、……良い運動、……なの、……かも、……しれないけれど、……もうちょっと、……食後、……時間ほしいーー……)
強制とは言われなかったけれど、結局、皆で、それをやる。あの二人以外。
そして、一週目。
(まだ、大丈夫)
それなりに、体力には自信がある。まだ、皆も、大丈夫そうだ。
二週目。
(……ああ、メイちゃん、マイヤさん。……大分遅れてきた。エレナさん、チュンさん、ユウカさん、……は、はやいー……)
三週目。
(……つ、疲れてきたー、……汗かいてきたー、あ、……ミランダさんも、……大分遅れてきてる)
四週目。
(ああ、……なんか少し、……走るの、……気持ちよくなってきたかもー……って! リーゼさん! そこで飛ばしちゃうの!?)
五週目。
(……んー、……風が、……気持ち良いー。……ああ、……メイちゃん、マイヤさん、ミランダさんは、……が、頑張ってー。……で、……チュンさん、ユウカさん、そしてプランさん! 早い! あ、あれ? アリスさん!?)
6週目。
(こ、これで、……さいごー、……ああ、……たまには、……良いけど、……もう、ちょっとー、……あ、……ゴールー……)
どれぐらい、走っていただろうか。ようやく、ゴールする。ゴールした先には、ユウカさん、チュンさん、プランさん、アリスさんが居た。私は、五着のようだった。そして、途中で飛ばしてしまった、リーゼさん、エレナさんが同時で六着くらい。いつの間にか、抜いてしまっていた。
後から、ミランダさん、メイちゃん、マイヤさんが並んで戻ってきた。
「はぁ、はぁ、……はぁー、……ひ、久しぶりに、走りましたー…………」
「く、……まだ、……走れたのに、……足が」
リーゼさんは、途中飛ばして、足に来たのだろうか。
(で、……一着は、……誰……?)
「一着、……アリス」
「…………………………ん。…………………………余裕……………………」
チュンさんが、発表し始める。
アリスさんは、息もそんなに切れていない。
(って、い、意外!)
「…………はひー、……ふひー。……に、二着はー……?」
息を切らして、ミランダさんが聞く。
「ああ、……二着、プランさん」
少し息を切らしているが、相変わらずのニコニコ顔。
「で、三着、私」
チュンさんは、もう息は整っている。
「四着、ユウカ」
「残念ね、でも、良い運動になったわ」
ユウカさんは、運動出来た事に満足しているようだ。
「で、五着、アカリ」
「結構早いわね、アカリ」
「も、もう少し……頑張れたかも……」
そんなユウカさんに言われるが、まだ少し、余裕があった。
「同時六着、リーゼとエレナ」
「く、………………な、何故」
「はひぃー、ふひぃー。みんなぁー。はやいぃー」
少し、意外な組み合わせだった。どちらも、運動は出来そうなイメージだったのだが。
「で、同時最下位、ミランダ、メイ、マイヤ……」
「み、みなさん。……早いですー」
「はぅ、はやいー……」
「きっつー。……私ー、……インドア派ー……」
その三人は息も切れ切れ。しかし、イメージ通りであった。
そして、皆、ゴール付近で、休憩している。
「と言うわけで、今度の優先権は、アリス」
「…………………………………………………………何にしよう?」
走った後は気持ちが良かった。
(で、…………優先権って、……………………何?)
その後、皆、汗をかいたという事で、皆で、軽く体操をして、お風呂に向かった。
そして、メイちゃんと一緒にお風呂に向かっていた際に、アンカ室長と、セリカさんに会った。
ずいぶん、長く食堂に居たんだな、と考える。
「あら……? もしかして運動してきたんですか?」
「あ、……はい、みんなで、正門のところで……」
「マラソン?」
「はい、一着は、アリスちゃんでした」
二人は、私達を見て、気が付いたようだ。
「そう、それは良いですね……」
「ねえ、……アンカ。……私達も、……走った方が、良いのかも……」
「…………確かに…………」
走って、すっきりしたおかげか、ちょっと忘れていた。この二人、今日は何やら、大変というか、悩んでいるというのか、悶々としているようである。
「走ったら、……ちょっと、紛れるかも…………これ」
「そ、そうですね…………」
「ああ、悪かったわ。お風呂だったわね?」
「あ、そうですね。それでは、いってらっしゃい」
まだ、悶々としているのか、しかし、私達も、早くお風呂に入ったほうが良い。
結局、メイちゃんも分からないので、二人と別れて、お風呂に行く。
脱衣所に入ると、既にもう何人か居る。そして気がつく。
(……あ。チュンさんも、ユウカさんも居る)
ここのメンバーで、まだ一緒していなかった二人。今日は、さすがに居た。そして、チュンさんがこう言った。
「アカリ。私、寝かけたら、殴ってくれ」
「…………え? ……い、いえ、それはさすがに…………」
そして、みんなでお風呂に入る。すぐ後に、プランさんや、リーゼさんも来た。エレナさんは、一番に着たのか、既に飛び込んだ後なのか、浴槽の中に居た。
「……はぁ。……良いわねー。……たまにはこういうのも」
「つかれちったー。……はあー、気持ち良いわー」
「……何故、……あそこで」
「………………………………………………眠くなっちゃう」
ユウカさんは本当に、気持ちが良さそうで、ミランダさんも、文句を言っていた割には、声は明るい。そして、リーゼさんは、先程の分析だろうか、呟いている。
アリスさんは、もう寝そう。それを、ゆさゆさ、と揺らして、マイヤさんが起こす。
「はぅ! さっき、おきたの! まだ、ねたあ、だめ、アリス! はぅ」
「……はぁ。……気持ちいいですぅー……」
「アリスちゃん、なんでぇー……それで一着とれるのぉー?」
メイちゃんも、エレナさんも、気持ちが良いようである。私も、運動の後のお風呂は、すごく、気持ちが良い。
「………………はぁー。……………………あれ?」
チュンさんを見る。目が、閉じかけていた。
「……………………………………」
(…………あ、寝た。…………って! ど、どうしよう!?)
そこに、ベシンッ、と、そのチュンさんに、ユウカさんが、逆水平チョップを首に当てた。
「……起きました?」
「…………ぬ、…………うむ」
「アカリ、こんな感じで」
「………………う………………………………む………………………………………………っ………………」
ベシンッ、と再び、ユウカさんがチョップする。
「まだ、お風呂です」
「…………………………ぬ、………………うむ…………」
(………………ああ、………………チュンさん。………………本当に、………………寝ちゃうんだ)
そして、あっちはあっちで、ゆっさゆっさとアリスさんを起こしている。
「はぅ! アリス! だめぇ!」
「…………………………………………………………………ぉ……………ぉきてる…………」
「め、メイちゃん、…………あれ、出来る?」
「わ、私も、………………ちょっと、無理かも」
チュンさんとユウカさんを見ながら、メイちゃんに聞く。
こっちでは、ちょいちょいユウカさんが、チュンさんを、ベシン、と肩の辺りにチョップ。
あっちでは、ゆっさゆっさと、マイヤさんとエレナさんが、アリスさんを揺らしている。
リーゼさんはリーゼさんで、何か分析している。
プランさんは、ニコニコ見ている。
ミランダさんは、我関せず、と言った感じで、「ぬっはー」とか言いながらオンセンを楽しんでいる。
メイちゃんも気持ち良さそう。
私も気持ちが良い。
多分、これが皆の日常。
きっとこれからも見る事が出来る。
(セリカさんは、…………こ、怖かったけど……………………)
アンカ室長は、多分、アヒルさんと、またここに来るのだろう。
気持ちが良すぎて、私もチュンさんや、アリスさんみたいに寝てしまいそうだった。
そんな、夜だった。
お読みいただき、ありがとうございます。
斜め45度くらいで、丁度良い強さで、お祖母ちゃんチョップをすると、チュンが点きます。




