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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
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【七日目】 あの人が来る


 その日まで、こんな風に動くのを見た事が無かった。

 すごく、焦っているようで、すごく緊張しているようで、更には――――


 今日、いつものように、朝に起き、いつものように、朝の支度をし、いつものように、お洗濯物を出して、そして、いつものように、朝御飯を頂いた。


 今日は、朝は、どうやらアリスさんと、マイヤさんが手伝いをしたと聞いた。

 朝、帰ってきてから、リーゼさんのお手伝いをしたんだなぁ、と、思いつつ食事を取った。

 だが、四人でやったせいなのか、それとも、リーゼさんの、こだわりだったのか、朝食は、結構なボリュームだった。


(朝御飯…………なのに…………)


 何かのパスタ、サンドイッチ、サラダ、そして、スープ。


(いやこれ、……なんとも、ボリュームが…………)


 しかし、リーゼさん、エレナさんが主体で、結局、全部食べてしまった。


(うん、美味しかったですよ! 本当! ……ただ、…………多い)


 そして、お洗濯物を持って、部屋に戻り、そろそろかな、と思って、四階フロアーに入った。

 それから、今日は、と、朝、ミランダさんに聞いた事をまとめる。


 今日は、あの作業が少し。後は、練習していていい、と言われた。ただ、本部から、もう、そろそろ連絡が欲しい、とも嘆いていた。


 それから、セリカさんにも聞いた。

 だが、今日は、多分起こらないだろう、と言われた。

 それは、”ひずみ”が出るかどうか、と言う事。それは、多分、今日は起こらない。これまでの経験上では、一回も無いような日、と言う事である。

 そして、セリカさんも、ミランダさんと同じように、”本部は遅い!”と言っていた。


 そんな感じだったので、予想通り、ミランダさんは、ちょっと遅刻した。

 結局、それを、チュンさんに叱られていた。


 ならば、そろそろ、アンカ室長が来る、と言う時間になった頃だった。あの巡回のミーティングの時間、なのだが、中々来ない。

 それを、他の皆も感じたようであった。


「……遅いわね。……アンカ」

「今日は、私と、エレナですけど」


 今日は、ユウカさんとエレナさんなんだ、と思っていた所に、アンカ室長がやって来た。いや、飛んできた、と言っていいくらい、何か焦ってきた。


「セ! セリカさん!」

「……ど、どうしたの? アンカ」

「な、なんかあったのか? 室長!?」


 そんな感じなので、みんな驚いていた。


「まー、まー、室長ー、落ち着いてー。…………でー、”ひずみ”は感じないけどー……?」


 そんなアンカ室長を、ミランダさんが宥めてから、聞き始める。


「…………え、……はぁ、はぁ。…………えーっと」

「あれぇー? ミーティングはー?」


 エレナさんは、自分の仕事が、優先のようである。


「…………あ、そ、そうですね。………………ええっと。……………………だ、誰でしたっけ? …………今日」

「私とー、ユウカさんだよぉー?」

「……あ! そ、そうでした! で、では、ミーティング! あ、せ、セリカさん! その後、ちょっと…………」

「…………なーんか、あったのかねー?」


 ミランダさんに聞かれるが、まだ、ここに来て、日が浅い私には、全く分からない。


「……あの。……”ひずみ”は、……感じませんし」

「ああ、セリカさんも、今日は無いって、言っていたしな……」


 他のみんなにも、分からないようだ。

 そして、巡回のミーティングは、すぐに終わったようだった。その後、セリカさんが、アンカ室長の所へ行く。


 そして、アンカ室長は、小声で何かを、セリカさんに伝える。

 それを聞いた、セリカさんが声を上げた。


「………………………………はあ!?」

「……あ、あの、……ですから……」

「…………それ。……本当?」

「…………い、いえ」

「…………何、それ!?」


 こちらから見たら、内容も分からないので、更に、ナニソレ、である。それは、他の人も同じようである。


「なーんか、…………あったんかねー?」

「……で、でも、”ひずみ”は……」

「違うっぽいな……」


 ユウカさんと、エレナさんは、既に巡回の準備中。

 だが、それが終わる前に言われる。


「……はぁ。………………聞いてみないと。……アカリ! ちょっと来て!」


 そう、セリカさんに呼ばれた。


「え? え!? わ、私ですか?」

「……えーっと、……説明、……し辛いわ。……多分、……変な事じゃない、はず、…………だけれどね」


 何か、セリカさんも言い辛そうである。だが、それを、皆に聞こえる声で言われる。


「……アカリちゃん、……何か、……した?」

「え? い、いえ。……え? ……したんで、しょうか……?」

「そんなんじゃないわ。…………ただ、あいつが……」

「「「「「…………?…………」」」」」


(よ、よく分からない。…………そして、皆も、分かっていないです。…………な、何!?)


そして、アンカ室長と、セリカさんの所に行った時に、アンカ室長が、ようやく落ち着いたのかこう言う。


「……えーっと、これから、本部から人が着ます!」

「んー? ミカさんー?」

「……え? でも、それなら……」

「それじゃあ、もう?」


 ミカさんが、来ると言うのか。しかし、ならば、先程の、二人のあの反応は、何なのか。


「えー、そ、それが、……ですね……」

「あいつが、来るそうよ。…………社長…………」


「「「「……は!?」」」」


 驚いていた、皆を見ながら、四階フロアーを、セリカさんと、アンカ室長に、連れられ出てしまった。

 そして、よく分からないまま、一階に、そのままエレベーターで降りた。


「……えーっと、あのー……」

「は、はい!?」


(あ、アンカ室長は、…………緊張しているのかな。…………そして、セリカさんは、……何やら、……頭を抱えている。……と言うか、……悩んでいる?)


「………………何しに? …………わざわざ…………?」

「も、もしかして、……私、……その、……ここで、………………駄目、だとか、ですか?」


 恐る恐る、聞いてみる。


「い! いえ!? そういう事は、聞いてませんよ!?」

「…………何しに来るの……? …………あいつ」


 先程から、セリカさんは、社長を、”あいつ”呼ばわりしている。


「そ、それが、…………私にも…………」

「……ミカから、連絡あったの?」

「れ、連絡は、……そう、……なんですが」

「…………じゃあ、……何?」

「……会って、話がしたい、とだけ」

「…………えと、……じゃあ、これから……」

「……ええ、迎えに行っているのよ。……けど、……なんで?」


 どうやら、このお二人も、何故、社長が来るのかは、分かっていない様子だ。そして、今、迎えの為に、下へ向かっている事だけは、理解した。


「あ、アカリさんは、少し、話がしたい、だけだそうで……」

「は、はあ……」

「そ、その後、えぇっと、わ、私と、セリカさんは、何か話があるそうで……」

「は、はい……」

「せ、正式な辞令は、……ワタリ部長から、……貰えるそうなんですが……」

「……え?」

「……じゃ、じゃあ、……何しに来るのよ。…………ほんと」


 話が見えない。だが、今、重大な事を聞いた。


(私に、正式な辞令が、…………届く)


 そして、そこに出る。私が、初めてここに来た時に、初めて、足を踏み入れた、この場所。

 一階から出て、中庭。


(そういえば、……ここに来るのも……)


 そして、そのまま、そこを出る。

 あの、初めて来た、最初の場所。

 ここの、船着場。

 ここに来て、数日。

 そして、思う。


(ああ、ここって、…………本当に、これだけしか、無いんだ)


 ただの、コンクリートなのか、扉の向こうは、足場があるだけ。

 初めて来た時は、こんな所ですら、初めてだった。

 上を見る。

 上には、黒い穴。

 本当に、この城の、真上。


 アンカ室長と、セリカさんはその先に進む。

 私も、それについていく。


「…………それで、もう来るの?」

「……あ、……もう少し、……時間はあるかも、しれなかったです」


 どうやら、アンカ室長は、相当焦っていたのか、慌てたのか。少し、早めに着いたようだ。


「あの、……ここで、……お出迎えするんですよね?」

「ええ、一応……」

「ちょ、ちょっと早かったかもしれません……」


 二人は、その、先端。私が、初めて降りた所。その少し後ろに立っている。私は、その少し後ろに立つ。


 周りを見る。青い、青い、風景。その青は、全て、海。いや、水なのか。


 少し、後ろを見る。白い、大きな、城。私が、数日間居た、あの、お城。


 そして、上を見る。遠くに、黒い穴。確かに、遠くではある。だが、はっきりと見える。


(……あれが、……ここの、出入り口。唯一の、自由に出入り出来る、場所。……私も、あそこから……)


 そう思っていた私に、セリカさんから声がかかる。


「……船は、見えないわよ。ここからじゃ」


 前に、ミランダさんに聞いた、ここの高さ。ここは、あそこまで、”Y400”。

 ”1”が約”200メートル”。

 ならば、あそこまでは、大体80000メートル。80キロ。小さな船など、見えるはずは、無い距離だ。


「今、……何処にいるんでしょうか?」

「もう、中に入っていると、思われます」


 そして、少し待つ。

 すると、セリカさんが呟いた。


「……来たわ」


 二人が見る先。そこには、白い何か。


(いや、あれは…………)


 どんどん近づいてくる。


(み、水しぶき!?)


 あっと言う間に近くに来る。だが、もちろん、近づいてくるにつれ、スピードが落ちている。そして、白い、水しぶきの中に、それが見える。


(あ、……あれは――――)


 思い当たる。

 そう。それに乗っていた。

 私は、それに乗って、ここに来た。


 大きな、船。いや、潜水艦。大きな、深海潜水艇。

 白を基調とした船。所々に、赤い箇所、黒い箇所がある。


 二人が、少し後ろへ下がる。私も、ついて下がる。


 猛スピードで来ていた船は、こちらへ近づくにつれて、ゆっくりとした速度になりつつ、この船着場に来た。

 そして、船着場に、それが着く。

 私は、ここに来た時、見ていた。

 扉は、外から見ると、一つだが、実際には、中は、三重の扉になっている。それが開いているのだろう、音だけは聞こえる。そして最後に開くのが、一番外の扉。そこが開く。


 そして、出てきた。それは、ミカさんだった。


「ああ、お疲れ様、二人とも」

「お疲れ様です、ワタリ部長」

「前は会わなかったわね。ミカ」


 そして、ミカさんが私を見て言う。


「アカリちゃん、お久しぶり」


 実際には、そんなに久しぶりでもない。だが、昔の事のようにも思える。


「あ、お、お久しぶりです、ミカさん」


 そして、ミカさんは、潜水艇の扉を見る。いや、その中から出てきた人を見ていた。


(――――――あの人だ。私を、面接してくれた、ここを、説明してくれた。やっぱり、この人が、ここの社長だったんだ……)


「お、お久しぶりです! ヤマト社長!」

「……何しに来たの? トシオ……」


 アンカ室長は直立不動、と言った感じで迎え、セリカさんは腰に手を当てて、そちらを見ている。


「……ああ」


ゆっくりと、その人は出てきた。


「話は、中で」

「そんな時間あるの? あなた」

「で、では、中で!」


そう言って、中へ行こうとしたアンカ室長を、ミカさんが止める。


「ああ、ちょっと待って、アンカ」


 その人は、私のところに来る。


「……ここで、働き続けてくれるそうだな」

「…………え? ……あ、は、はい!」


 そして、私を、目を細めて見る。

 波音が、聞こえる。それから、言う。


「……そうか。それなら、良い」

「………………え?」

「ここで、頑張ってくれ。アオノ・アカリ君」

「……え、あ、はい!」


そして、歩き出しながら言う。


「アンカ、セリカ、少し、話がある」

「じゃ、行きましょ」


 ミカさんに促され、皆で、城に向かう。


 だが、アンカ室長は緊張している様子であり、セリカさんは怪訝な顔をしている。ミカさんは、前に見たような雰囲気と変わらない。


 私も、少し遅れて、皆の後を追った。


 エレベーターに、全員で乗るが、ミカさんに、私は、四階に戻るよう言われた。その時に、言われた。


「辞令はまた、今度持ってくるから。ええ、アンカと、セリカが良いと言えば、もう試験期間は終わりだからね」


 ミカさんは、別れ間際、それじゃあまた、と言ってくれた。



 そして、エレベーターには、4人が去り、私だけ、残された。



お読み頂き、有難うございます。


やつが出て来ました。

もちろん、名前は……、やめておきます…………。


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