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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
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【初日】 初めての食事当番

 二階は、先に、ミランダさんに案内してもらった、四階や、三階と比べても、かなり広そうだ。自室に案内された時も、まだ通路が他にも続いていて、十字路になっていた通路もあったりで、どれだけ先があるのかも、分からなかったし、チュンさんが言ってたように、部屋も沢山あるようだった。


 ここを覚えるのは、ちょっと大変そうだな、と思う。メイさんは当然分かっているのだろう、迷わずに先に進む。


「あの、メイさん、お聞きしても良いですか?」


 歩きながら、メイさんに話しかける。


「あ、……はい」


 先導していたメイさんは、ゆっくり私の隣に並ぶ。


「すみません、食事当番の事とか、まだちゃんとお話されてないんですよね。すみません……」


 メイさんは、申し訳なさそうに言う。


「いえ、えと、そうじゃないんです」


 そう言うと、メイさんは不思議そうにこちらを見る。


「あ、その、それもお聞きはしてないので、出来れば、そこも知りたいんですが。……えと、この二階って、どれぐらいの広さがあるんですか?」


 聞きたい事は、山ほどある。が、まず、最初に感じていた事を聞く。


「あぁ、なるほどです。……確か、二階の案内はまだって、ミランダさんも言っていましたね」


 メイさんは、少し考えてから、話始める。


「えっと、まず広さですね。……二階は、四階フロアーと比べると、すごく広くなっていまして、生活できる空間が、ほとんどここに揃っているんです。多分、四階フロアーの五、六倍くらいの、広さはあるかと……」


 私は驚く。思っていたよりも、ずっと広い。三階も広かったが、その倍以上ありそうだ。


「……あ、テラス等も含めると、もっとあるかも……」


 思い出したように、メイさんが言う。

 私は、あんぐりとなってしまった。そして同時に、少しワクワクする。

 まだ見ぬ部屋が、ここには沢山ある。その事実だけで、楽しみが増える。それに、一階や、地下までもがある。どれだけ広いんだろう、と思うが、やはりその分、楽しみでもある。


「娯楽室は、……ミランダさんが連れていく、と言ってました。とても楽しい所ですよ。後、私はテラスを見てもらうのが、楽しみです。あ、こちらです」


 メイさんは説明しながら、案内してくれる。十字路を横に曲がると、突き当たりに、少し大きめの扉がある。


「あそこが、食堂です。調理室もそこなんです」


 ついていきながら、道順だけは覚えるようにしたが、ちゃんと、自分の部屋に行けるかどうか、不安だ。


 最初に来た時は、すごく緊張していたので、自分の部屋が何処だったか、分からなくなってしまっていた。

 ミランダさんに、案内してもらえると思っていたが、こうなると、もう分からない。

 後で、メイさんに聞こう。そう思った頃には、もう食堂は目の前のようだった。


「ここです」


 メイさんが、扉を開ける。開けられた扉の中を見ると、そこには長いテーブルが2脚置いてあり、椅子が並べられている。12人では、埋まる事は無いであろう人数が、座れそうだ。そこは、端の場所なのだろうか、壁に大きな窓が、いくつもある。窓からは、外が見える。外は、だいぶ暗くなってきている。


「ふわー……、広いですねー……」


 右奥には、おそらく調理場であろう場所も見える。

 色々と、飾りつけもされており、レストラン、とまではいかないが、それぐらい立派な食堂だ。暖炉らしき物も見える。そして窓の外には、海。


「全部は使わないんです。ちょっと、私達だけだと広すぎですね……」


 少し、申し訳なさそうに言う。メイさんも、広いと思っているようだ。


「調理室は、こちらです」


 メイさんに促される。やはり、先程思った箇所が、厨房のようだ。仕切られてはいるが、扉は無い。だから、そこに調理器具等があるのが見えていた。


「あの、全員分の食事を、作るんですよね?」

「はい、基本的には」

「……これから、何を、作るんですか?」


 メイさんは、やんわりと笑いながら、答える。


「はい、今日は、シチューにする予定なんです。本当は、アカリさんの歓迎会も兼ねて、別の物にするつもりだったんですが……。緊急の業務が入ってしまって、遅くなる人もいるので、……ごめんないさい、アカリさん」


 後の方は、少し申し訳なさそうに言う。


(あぁ、そんな事も考えてくれていたのか。……だから、チュンさんも、あんなに、申し訳なさげだったんだろう)


「いえ、でも、お料理は楽しみだったので」


 自分から言い出した事でもある。それに、そこは本当に、そう思っている。それから、歓迎会までされると、ちょっと、気恥ずかしい気持ちもあった。多分、シチューなのは、遅くなった人でも温めるだけで、食事ができるからだろう。

 メイさんは、横でエプロンと三角巾を取りだした。


「では、これを……」


 差し出された、エプロンと三角巾を受け取り、メイさんと同じように身につける。


「どんなシチューにするんですか?」


 エプロンを結びながら、メイさんに聞く。


「え? あ、はい、野菜を多めにした、クリームシチューにするつもりです。後は、パンとつけあわせを少し。……あ、アカリさん、何か苦手な食材とか、ありますか?」

「いえ、苦手な物は、特に無いです。クリームシチューって、美味しいですよねー」


 私は、昔を思い出しながら、そう言う。


「……あ、そうですね。私も好きなんです。シチュー。それにシチューだと、多少苦手な食材が入っていても、皆よく食べてくれるんです」


 メイさんが笑う。


「でも、……ちょっと、アカリさんが羨ましいです。……私は、海鮮類がちょっと苦手で」


 苦笑しながら、メイさんは調理の準備を始める。調理器具類は、見慣れた物もあるが、鍋がとても大きい。12人分と考えれば、そうでもないかもしれないが。

 それに調理場が広い。これなら4、5人で、作業も出来そうだ。まぁ、集団で料理をするとなると、必要な広さかもしれない。そこで、ふと思った事を口にする。


「あの、……ちょっと、お聞きしたいんですけど……」


 私は、少し前置きする。メイさんは、食材を取りだしながら答る。


「はい、なんでしょう……?」

「えっと、今日って、本当はセリカさんて言う人が、メイさんと、当番をやる予定、だったんですよね?」

「はい。そうだったんですが……」


 少し、顔を曇らせながら、メイさんは答える。


「えと、ミランダさんが代わりに、だと、駄目だったんですか?」


 セリカさんについては、分からない事が多い。チュンさんは、何か今日は出来ない事情があるのだろう、とは察していた。

 いや、多分、だけれども。だが、ミランダさんなら、手伝って欲しいと言えば、ここの職場も長そうだし、やってくれそうな感じもしていた。

 それに何かは分からないが、ミランダさんは、「終わってる」とも言っていた。


「……あ、それは……」


 メイさんは口篭る。

 言ってはいけないような、質問だっただろうかと思う。


「……その、……ミランダさんは、調理では刃物が、うまく扱えないんです。……他にも、調理器具は基本的に、ダメだそうで。……だから、ミランダさんが当番の時は、もっと簡単な物を作る時か、3人で当番をやるか、になってしまうんです」


 ミランダさんは料理が苦手、と、そう頭に入れながら、じゃあ、と別の事を問う。


「あの、それじゃ、メイさんと、私と、ミランダさんの、3人でも良かったんじゃないですか?」


 実は、そこが一番聞きたかった事だ。

 メイさんは、手を止めて言う。


「……あ、……ん、……そうですね。…………あ、でも、……それだと……」


 メイさんは、手を口元に当てて悩む。その間、私は、そうなると、シチューより簡単な物とはなんだろう? とか、刃物は、なんとなく分からないでもないが、他の調理器具も駄目、とはどういうことなのか? とか考えていた。

 なにせ、主任、と言うくらいだ。ここの生活も、それなりに長くやっていそうだ。それに、ミランダさんは、不器用そうには、見えなかった。きっと、とても器用なんだろうと。

 まぁ、人は見かけに寄らないのだろう。

 そもそも、第一印象からして、想像していた性格とは違ったし。ただ、いくら不器用でも、3人でなら、なんとかやれない事はないのではないか、と考えていた。

 そして、メイさんが答えてくれる。


「……そうですね。確かに、アカリさんの言う通り、なんでしょうけど、ちょっとそれだと、……その、今は、……会社の規定に違反する可能性がある、というか……」


(あれ? 会社の規定?)


 そんな事は、思っていなかった。だが、そこまで、会社が規制するんだ、とも思う。確か、ミカさんは料理は業務では無い、と言っていたはずだが。食材を賄っている分、何か規定でもあるのだろうか。

 まぁ、実際のところは、分からないでもない。


「……その、ごめんなさい……」


 メイさんが謝ってくる。何故なのか、全く分からない。メイさんは、何も悪くないはずだ。やはり何か、言ってはいけない事だったんだ、と少し後悔する。

 3人で料理はやっては駄目だとか、何か、そういう事が決まってるのだろう。会社の規定、と言う事であれば、彼女達も守らざるを得ない。だが、それなら、私も、その何かの規定を守らなければいけない。


「あ、すみません、こちらこそ。……えと、何か会社で決められた事があるんですね。3人で料理しちゃいけないとか。出来る人しかやっちゃ駄目だとか。ごめんなさい。出すぎた事を言ってしまって……」 


 二人しか居ない調理場で、二人ともがお互いに謝り合う。

 中々に、シュールな光景になってしまった。


 だが、メイさんはさらに分からない事を告げてくる。


「あ、いえ、3人で料理しちゃいけないとか言う訳ではないんです……」


(あれ? じゃあなんだろう?) 


 そう思いながら、さらに聞く。


「えっと、それじゃ会社の規定って……」

「……すみません、それも……今は……私から、というのは…………」

「…………ぁ…………」


 一瞬、時が止まったような気がした。


 もはや、何を聞けばよくて、何を聞いたら駄目なのかも分からない上、じゃあどうしたら良いかも聞けない。


「……えと、じゃあ、その、……お料理、しましょう」


 私はそれだけを言った。

 メイさんは「そうですね」と言って作業に戻る。楽しみにしていた調理作業だったが、どこかぎこちなく二人は作業する。

 料理自体は、これまでの自分の経験からも問題なく出来ていたと思うが、先程の質問のせいか、あまり会話が弾まず調理作業が進んでいく。


 もちろん、要所要所では、メイさんは的確に指示をくれた。

あの調理器具はどこで、食材はどこにあって、どれだけ使うか。調味料の場所や、食器の場所、どこにあって、この順番で作業をして等々、丁寧に教えてくれる。

 そして、料理自体はスムーズに進んでいく。

 使った調理器具を洗い流し、後は煮込むだけ、と言う頃合には、すっかり話す事が無くなってしまった。


 私は、メイさんが鍋を見ながら時折かき回すのを、見つめながら、時計を見る。食堂には、大きな置時計が置いてあった。

 古めかしくも、中々に雄大な時計だな、と思った。昔お祖母ちゃんに教わった、昔の歌に、そんなのがあった気がする。


(……確か大きな……)


 ふと思い出すが、まぁ、今は関係ない事だ。


 その時計は、六時を過ぎた所を指している。シチューは、美味しく煮込むには、もう少し時間がかかるかな、と思う。


「……あの、ごめんなさい」


 鍋に蓋を置きながら、メイさんが言った。

 何かを謝ってくるが、おそらくさっきの事だろう。


「いえ、会社の規定、……なんですよね」


 多分、何か大事な規定があるんだろう。まだ聞けていないけれど。だが、それにはメイさんは答える。


「……その、お喋りしながら、料理しちゃいけないとか、3人でやっちゃいけないとか、そう言うのじゃないんですよ……」


 メイさんも手が空いて、こちらを向く。


「……そのアカリさんが、試験期間を終了して、それでもここで働いてもらえるのであれば、色々その辺りもお話できるんです。……いえ、ここで働く事を決断されれば……ですね……」

「はぁ……」


 何か、含みのある言い方ではあるが、何か気を使って言ってくれている感もある。

 私は、ここで頑張っていくつもりだ。この会社に向いていないとか、要らないとか、言われなければ。


「アカリさんの指導員はミランダさんですし、……ミランダさんや、アンカ室長、それからセリカさんからなら、大丈夫だと思います。……でも私は、まだ、どちらかというと、ここに来て日も浅い方なので。……今、お話できる事は限られてて……」


 分からない事は多いが、その三人なら聞いていいのかもしれない。だが、そういう事なら仕方が無い。しかし、受け答えしないのも悪い。


「えと、メイさんは、ここにどれくらい居るんですか?」


 だから、私は、当たり障りの無いであろうと思う事を聞いてみる。


「……あ、私は、ここに来て、もうすぐ一年が経つくらい、かなぁ」


どうやら、そこは聞いても大丈夫な事のようで安心する。


「早くも感じるし、色々あったようにも感じますね。……あ、アカリさんは、ここに来る前は何をしてらしたんですか? あ、聞いてもよかったですか?」

「あ、大丈夫……だと、思います。えと、私はここに来る前は、……そ、その、ミ、ミドルスクールとアルバイトを、……だ、だから、ちゃんと就職できたのは、ここが初めてなんです。」


 私の事を話していけない、とは聞いていない。しかし、ここに着てから、聞いてないことの連続でもあるが。だから、……私は言える範囲内で答える。


「……え? ミドルスクール? それに、アルバイトなんですか? そうだったんですね。あ、じゃあもしかして、私よりお歳は……。あ、私、少し前に16歳になったんですけど」


 メイさんは、少し鍋を見ながら話を続ける。

 それを聞いて、私は少し嬉しくなって言う。


「あ! 私と同じ歳なんですね!」

「え? じゃあアカリさんも16歳なんですね。……え? じゃあ、ミドルスクールも全部卒業して、ここに?」


 ようやく、会話が弾んできた、と思うけれど……。


「あ、……いいえ、残念ながら、そ、その卒業までは、……そ、その、もう少し、だったんですけれど、……えへへ。……わ、私を育ててくれた人が、その、せめて、ミドルスクールまでは、って言ってくれてたんですけど。……で、でも、途中、……までは、ちゃんと通わせてもらえたから、……その、それで、途中から、就職先を探していたんですけど……」


 そう、私はミドルスクールに行かせてもらえていた。

 他の人は、ベーシックを終えたら、どんどん就職していくから、ミドルスクールまで全部受ける人は少ない。

 特に、最近は就職氷河期で、先に就職した人のほうが、有利だと言われてもいる。

 だから、ミドルスクールも、前より人が減っていると聞いたことがある。


 私を、そこまで育ててくれた人は、祖母だった。

 祖母は、自分が子供の頃は、カレッジまで行く人がほとんどだったと、よく言っていた。

 それが、いつの間にか、ミドルスクールで就職するのが、普通になってしまった、と嘆いていた。

 しかし、時代は、ミドルスクールも不要であるように、進んでいる。

 事実、近年では、ミドルスクールを出るよりも、ベーシックを終え、すぐに就職活動をした人のほうが、就職率が高いそうだ。

 そして、ミドルスクールと、しばらくして、アルバイトの日々を送っていた。


(――そう、送っていた……)


 メイさんは、多分、ベーシックから、そのまま就職できた人なんだろう。

 そこで、メイさんが言う。


「わぁ。アルバイトもした事あるんですね。私の周りじゃ、アルバイトも、ほとんど募集も無かったから……」


 そうなのだろう。いや、事実そうだ。アルバイト先も、祖母の口利きで世話をして貰ったようなものだ。


「どんな、アルバイトをしていたんですか?」


「……えっと、ここよりも、もっと、ずっと、小さかったんだけど、お料理のお手伝いで。あ、おばあちゃんから、紹介されたようなところだったんです。でも、”オルオーダ”が無い所だったから、自分でお料理出来たのは、嬉しかったかなぁ」


 アルバイトは楽しかった。本当なら、もっとやっていたかった。

 それでも、色々な料理を自分でやる事が出来た。そこで、自分で料理をやる楽しみを覚えたのだ。

 そこで覚えた料理は、何も取り柄など無かった私が、唯一出来ると言える事にもなっていた。


「わぁ。昔ながらのお店だったんですね。どんなお店だったの?」


 メイさんは、楽しそうにそう聞いてくる。


「本当に、小さなお店で。えと、おばあちゃんの昔の同僚、って言ってたかな? 半分は、趣味でやってるような物だったみたい。店長が、今の人にも”オルオーダ”以外の本当の料理の味を教えるんだって。だから、色々お料理も教えて貰えたんだ」


 そう話すと、メイさんは納得しながら答える。


「そうなんだー。だから、手際がすごく良かったんだね」


 調理の間、メイさんは懇切丁寧に、私の作業を教えてくれていた。

 それこそ、蛇口の水の出し方から、包丁の使い方、火の出し方、この食材はこう調理する、この調味料はこんな物だから等々。

 きっと、私が料理は出来ると言っても、知識がある、程度に思っていたのだろう。


「でも、ここも”オルオーダ”は無いんですね。こう言うと、悪い気もするんですけど、ちょっと、嬉しいです」


 私は苦笑する。


「それは、私もそう思ったの。初めは、大変だったんだけれど……」


 メイさんは、笑いながら続ける。


「”オルオーダ”が無くって、初めは、えっ、って思っちゃったんだけど。……でも、ちゃんと教えて貰って、やってたら、どんどん楽しくなってきて」

「うんうん、どんどんアレンジしたくなっちゃうよね」


 私は答えながら、一度アレンジをしすぎて怒られた事を思い出す。

 怒られたけれど、楽しかった思い出。


「うん、それで美味しいって言って貰えると、今度はどんな風にしようとか、考えてると作りたくなって、時々失敗もしちゃうんだけど……」


 メイさんは、煮込んでいるシチューを見ながら言う。

 私も、煮込んでいる鍋を見ながら答える。


「シチューは、色々アレンジしても美味しくなってくれるよね」

「うん! 色々入れてみても、ちゃんと食べれちゃう。なんでこんなに美味しく出来ちゃったのかなっ、て思う時もあるもの」

「あはは。でも味見する時は、ドキドキするよね」

「そうそう。失敗しちゃって、おかしな味になってたらどうしようって」


 先程のぎこちない風は、今はもう飛んで行ってくれていた。


 二人で、料理の話で盛り上がってくる。

 いつの間にか、お互いに敬語で話すのも無くなっている。


「ここの人たちも、ここに来るまでは、”オルオーダ”で食事をしていた人がほとんどで、初めは苦労したんだって」

「あはは。今は”オルオーダ”で食事する事がほとんどだもんね」

「うん。あ、でも、ここじゃ”オルオーダ”はないから、ほとんどの人は、料理は出来るようになっているんだよ」

「あ、じゃあ、だから、当番制で食事を作る事になってるんだね。あ、でもじゃあミランダさんは……」

「あ……ミランダさんは、ちょっと別の理由で……」


 おっと、そこは話せないと言われていた所だ。

 せっかく、楽しく会話が出来ているのに、水を差すと悪い。すぐに私は会話を変える。


「食事当番って、どういう風に決まってるの?」

「えーと、基本的には、順番制なんだけれど、今日みたいに入れない人が居ると、本当は、その当番の人が、他の誰かにお願いするの。ただ、セリカさんは、ちょっとそういった事を伝え忘れる事も多くて……」


(……ふむ、今日は、それを伝え忘れた、と言う事なのかな……?)


「それに、今日はちょっと特別で。……だから、こういう事は、普段はほとんど無いと思うよ」

「ふーん、そうなんだ。あ、でもその時は、私、代わりにできるといいなー」


 それは、本心からの言葉だった。


「うん、私もこういう時は、代わりにやらせて貰う事も多いよ」


 笑い合い、なるほどと思う。食事当番の事は少しだけ分かってきた。

 だが、今日はなにやら特別にこうなってしまったらしい。

 おそらくだが、何度か聞いている、”緊急の仕事”とやらが今日の原因ではあるようだ。


「あ、そろそろいいかな……」


 そう言って、メイさんは鍋の蓋を開けて、シチューを確認する。

 少しだけすくって、味見をする。メイさんは「うん」と言っている。

 どうやら、メイさん的には良くできたようだ。


「あ、アカリちゃんも味見してみて」

「うん!」


 私は、どう出来たのかわくわくしながら、メイさんが少しすくったシチューを味見する。


「わ! 美味しい!」


 それを聞いて、メイさんもにっこり笑う。


「良かった。アカリちゃんも喜んでくれて。あ、でも、半分はアカリちゃんのおかげだね」


 メイさんと私は再び笑い合う。そこでふと、メイさんは気がついたようだ。


「あ、……ごめんなさい。いつの間にか私アカリさんの事を……」


 分かっていた。


「ううん。私もそう呼んで貰えたほうが嬉しいかな」


 そう、いつの間にか話に盛り上がっているうちに、メイさんは私の事を”アカリちゃん”と呼んでくれていた。

 純粋に、それは嬉しかった。


「えと、じゃあ、私の事ももっと気軽に呼んでもらえると……」

「……うん。じゃあ、……メイちゃん、でいいかな?」

「うん、……アカリちゃん。よろしくね」


 改めて、というか何というか。ただ、ずいぶんと、仲良くなれてきた気はしている。


「うん。これからよろしくだね。メイちゃん」


 何となくだが、これからメイちゃんとは、仲良く出来そうな気がしていた。

 初めはぎこちないような、気の弱そうな感じで話をしていたが、今はそれはもう無い。


 少しずつ、お互いに打ち解けてきたと、私は感じていた。

 そして、その頃には、今日の晩御飯の支度がほぼ整っていた。


「でも、晩御飯の支度は、もう大体出来たけど、何時ぐらいが晩御飯の時間なのかな」

「んー、今日は、業務が遅くなりそうだったけど。……でも、もうそろそろ、……皆、終わる頃だと思うんだけれど……」


 そう言って時計を見る。八時過ぎ、正確には、時刻は《20:00》を過ぎようとしている。


「皆、ばらばらに晩御飯を食べるのかな?」

「うーん、……普段は、ちゃんと皆揃ってから、一緒に食事するんだけど。今日みたいに仕事で遅くなっちゃうと、ばらばらなっちゃう事もあるの。アカリちゃんは、ミランダさんが来たら、一緒に食事をとってもらっていいと思うよ。多分、その後は、ミランダさんが娯楽室を案内したいだろうし……」


「でも、じゃあ、メイちゃんは、皆が食事が終わるまで、ここにいるの?」

「ううん。もう少ししたら、多分、セリカさんも来ると思うし。……多分、そうじゃなくても、他の人が来て引き継いでくれるから、……それまで、かな……」

「そうなんだ……」


 メイちゃんとは、一緒に食事出来るのだろうかと考えていたが、ミランダさんの事も、無視できない。残念だが、そこは成り行きに任せる事にした。

 そんな事を話していたところに、ドアが開いて、チュンさんと、ミランダさんがやってくる。


「ああーお腹空いたよー。おおー今日はシチューなんだねー」

「メイはシチューが多いからな。私は構わないが」


 二人は、それぞれそう言いながら入ってくる。


「ああ、アカリさん、すまなかったな。いきなりで。メイにちゃんと教えて貰えたか?」


 そうチュンさんが私に聞く。


「はい! 色々と!」


 私はそのように答えたが、メイちゃんが私にフォローを入れてくる。


「いえ、でもアカリちゃんは、私よりお料理上手かも。ほとんど、教えずに出来ちゃうんです。すごいですよ」


 チュンさんは驚いた顔で言う。


「ほう、それは。そこまで、出来るのか。それはすごいな」

「いえ、でも、場所とかは、メイちゃんに教えて貰わないと、何も分からなかったですし。えと、でも、お力になれてたのなら……」


 そこまで褒められるとは、思っていなかったので、私は照れてしまう。


「メイちゃんは、今じゃ、ここじゃ一番料理は上手なんだよー。これは今後も期待が持てるねー。楽しみだねー」


 ミランダさんは、照れている私に、更にそう言う。

 悪い気はしない、というか嬉しい。だがやっぱりちょっと恥ずかしい。


「いえ、でも、メイちゃんが、色々教えてくれましたし。……それに楽しかったですし……」


 照れ笑いしながら、そう言う。実際、メイちゃんの手際は見事だった。一人だと、こんなにちゃんと作れなかったと思う。


「いやー、私はちょっと無理だし。ちょっと、と言うか、かなり、と言うか、戦力外通告? だから、助かるよー」


 ミランダさんは、何故なのか、調理器具全般が苦手なのだと、聞いていた。

 それは自覚しているのか、自虐気味にそう言う。

 そこで、チュンさんが言う。


「ああ、あと他のメンバーなんだが。……やはりもう少しかかるみたいだった。アカリさんには悪いが、今日は4人で食事にしよう」

「……あの、じゃあやっぱり、……今日は全員では……」


 メイちゃんは、少し残念そうな顔をする。


「うん。……せっかく、新しい仲間の、初日だと言うのにな。……だが、遅くなると、アカリさんがこの後大変だしな。まぁ仕方ない。どうも、業務に手こずっているようだ。今日のは少し……」

「……そうですか。あの、セリカさんは……?」

「うむ。確認した。一応、食事は取れそうだった。他のメンバーが、業務が終わったら、そこで一緒に来るみたいだ。だから、メイも一緒に食事にしよう。後は着たら、誰かに任せればいい」


 メイちゃんは、少し考えてから言う。


「……じゃあ、そうさせて貰います。じゃあ、用意しますね」


 それを見て、私も言う。


「あ、手伝います!」


 メイちゃんは「ありがとう」と言って配膳を始めた。私もお手伝いして、4人分の晩御飯を用意する。作業をしながら、私はメイちゃんに小声で聞く。


「でも、他の人たちは、まだ業務中なんだよね。……なんだか、悪いな……」

「……うん。でも明日は、逆に私たちが、そうなっちゃうかもだし、その時は、他のメンバーが私たちみたいにお料理とかしてくれるから。……あ、今日は、この後は、先に終わった人たちは、ここの階のお掃除するの。他の皆は遅くなってるから、私たちだけでお掃除しなきゃだから、ちょっと大変かも……」


 早く終わったら終わったで、やる事があるようだ。

 なるほど、と思っていたところに、席に座っていたミランダさんが、声を上げて言う。


「そうそう、仕事が終わったら終わったで、その次があるんだー。だから気にしないで、ご飯食べよー」


 なんと。私もメイちゃんも小声で話していたのに、聞こえていたとは。私は一応納得して、食事の用意を整える。


 その間、チュンさんも、スプーンやらフォークやらを、用意してくれていた。ミランダさんは、椅子に座ったまま、見ているのか見ていないのか、顔はこちらを向いているようだが、何か考え事をしているようにも見える。

 そんなミランダさんの目の前に、シチューをの皿を置くと、気が付いたかのように言う。


「おおー、いい匂いだー。美味しそうだねー」


 全員、と言っても4人だけなのだが、の食事の用意を整え、椅子に座る。

 メイちゃんが、私の席なのだろう所に、シチューやパンの皿を置いてくれていた。メイちゃんの向かい側だ。

 隣にチュンさん、その向かいにミランダさん、という席になっていた。


(ここの席は、……決まってないのかな?)


 まぁ、実際、ずっと座っていたミランダさんの席の隣に、食事を並べただけである。


 そしてチュンさんが言う。


「じゃあ、今日は私でいいかな?」

「はいはいー。よろしくー」


 私が、よく分からない、と言う顔でメイちゃんを見ると、答えてくれた。


「……あ、お食事の前の、お祈りをするんだよ」


 そして、チュンさんが、そのやり方を教えてくれる。


「じゃあアカリさん、こうやって手を握って。私が言うから、最後に皆で”いただきます”と言うんだよ」


 教えられたその格好。


(あ、本当にお祈りだ)


 そう思う格好だった。言われたとおりに私はやる。

 他の人達も、同じように手を握り合わせる。

 そして、目を閉じる。


 隣から、チュンさんの声が聞こえる。


「地球の全てに感謝と祈りを。良い食事を致しましょう。いただきます」


「「いただきます」」


 皆が言った後、私も遅れながら言う。


「あ、いただきます!」


 ゆっくりと目を開けると、ミランダさんは、もう食事を始めていた。

 メイちゃんは、まだお祈りをしているのだろうか、その後も手を合わせ、目を閉じていた。チュンさんは「さーて」と言って食事を始めようとしていた。


 それを見て、私もスプーンを手に取りながら言う。


「私、こういうの初めてやりました……」


 チュンさんは、パンを手に取りながら言う。


「ん? アカリさんも今までは、食事前は何もしてなかった?」

「あ、いえ、私は手を合わせて”いただきます”とだけで」


 ふと気が付く。アカリさん”も”?


「あのね、ここでは、皆やり方が違ったみたいなの」


 祈り終えたらしきメイちゃんがこちらを見て言う。

 どう言う事なのだろう、と疑問に思う。


「私は、ここに来るまでは、こんな習慣なかったんだけどな」


 くすっと笑いながらチュンさんが言う。


「ハタヒハ、ハッッヘハホー。……んぐ、ちょっと違うけどー」


 食べながら、ミランダさんも参加してくる。


「その割りに早いがな」


 パンを千切りながら、チュンさんが言う。


「だって、言う事が違うもんー」


 ミランダさんの声を聞きつつ、思った事を口にする。


「てっきり、アーメン、とでも言うのかと……」

「私はそうしてるよ。心の中で、だけど。でも私よりも長い人もいるよ」


 メイちゃんは、まだスプーンも持たずに話してくる。


「まぁ、そんな訳で、皆がやり方が違うから、とりあえず、ここではこのやり方に統一したんだ。その後、自分のやり方をやっている人もいる」

「まー、好きにやれば良いんじゃないかなー。ふぁっつ!」


(あ、熱かったみたい……)


「気をつけろよ?」


 チュンさんは、ミランダさんを見遣る。


「ふーっ、ふーっ、……んんん!」


(味は、……どうだろ……)


 メイちゃんが味付けをしていた。私も、味見させて貰っていた。とても美味しく出来ていたと思う。


「んーーー! いいねーーこれ!」


 それを聞いて、ああ良かった、と思う。


 チュンさんは、静かに食事を始めていた。

 メイちゃんは、シチューを少し食べてからこちらを向いて笑う。

 私も、シチューをすくって口に入れる。やはり、美味しい。

 メイちゃんは、良く出来た、と言う顔でこちらを見て食事に戻った。


 ミランダさんは、「んーー!」と言いながら食事を続けている。

 美味しそうに食べてくれているので、嬉しく思った。


 基本的には、食事中はお喋りはしないのだろうか、ミランダさんの時折聞こえる、「んーー」と言う声以外は、聞こえなかった。

 まぁ、私も、お祖母ちゃんには、「物を口に入れて話してはいけない」と言われていたので、それが普通なのだろう、と思う。

 そして、ミランダさんのお皿は、あっと言う間に空になっていた。

 見るとチュンさんも、もう食べ終えていた。メイちゃんは、まだ半分以上残っている。


 チュンさんは、食べ終えると、手を合わせて「ごちそうさま」と言う。

 ミランダさんは、「ふぅー」っと言って満足そうな顔をしている。

 メイちゃんは、まだ黙々と静かに食事を続けていた。


 私も食事を終え、手を合わせて「ごちそうさまでした」と言う。

 とても美味しかった。

 それは、”オルオーダ”では、中々出ない味だった。


 それに、シチュー以外の、パンやサラダも美味しかった。

 添えられていた、ジャムも絶品だった。

 チュンさんは、空になった自分の食器と、ミランダさんの食器を片付けながら、気が付いたように言う。


「ああ、そうか。アカリさんは”いただきます”と”ごちそうさま”が習慣なんだ」

「はい。そういう風に教えられました、けど……」

「いや、いいんじゃないか? ミランダじゃないが、私も、本当は好きにやればいいと思っているし」


 別段、悪いと言っているわけでもない。

 むしろ、チュンさんがそう言う方が意外に思える。もっと食事作法など、厳格に考えているように思えていたからだ。


「私は、……正直それどころじゃなかったからな……」


 そう言いながら、食器を片付ける。


「チュン」


 少し真剣な声でミランダさんがチュンさんを呼ぶ。


「ああ、……分かっている」


 私は、何かは分からなかった。


 ミランダさんは、片付けはチュンさんに任せているのか、座ったままだ。

 まぁ、その時の格好は座ってお腹を押さえながら、椅子に背も垂れていたので真剣そうに思えたのは声だけなのだが。

 私も、食べ終えた自分の食器を重ねて、洗い場に持っていく。


「ああ、自分の食器は、自分で洗うように。な」


 チュンさんは、皿を洗いながらそう言う。

 ミランダさんの皿も含めて……。

 だから、じゃあミランダさんは? と聞きたかったが、その前にチュンさんは言う。


「あ、ミランダは食器洗いも駄目だから。ま、その分、別の事をしっかりやって貰うけどな。……あいつがやると、ここの食器が、全部割られてしまう……」


 苦虫を潰したような顔をしながら、チュンさんが言う。

 そこまで不器用だとは、見えないのになぁ、と思う。


「悪気がある訳じゃないんだ。仕方がない。だから、あいつの食器は出来れば洗ってやって欲しい」


 チュンさんは、食器を洗い終え、別の洗い場で私も食器を洗っていると、メイちゃんが自分の食器を持ってきた。チュンさんは私の食器洗いを見ている。

 メイちゃんも自分の食器を洗いつつ、私が食器を洗っているのを少し見てから言う。


「……あの、この後は、アカリちゃんはどうするのですか?」


 遠くに座っている、ミランダさんが声を出した。


「そりゃー、もちろん、ご――」


 と、言いかけたところにチュンさんが言葉を被せた。


「掃除だ」

「――ら……く、……」


(うん、今、あれを、言おうとしてた……?)


「掃除は、初日でも、試験期間でも、同様にある」


 チュンさんは更に言葉を被せる。


「くくく、……くきゃーもー! そうだったよー」


 ミランダさんが、言いかけたことは分かるが……


「この後は、ここの階、二階の掃除をやってもらう。今日は特に、人が少ないからな。少し大変だが……そこは、初日で申し訳ないが。メイは、食堂に他のメンバーが来るまでは、居なければならないしな。ミランダと一緒に、掃除に回ってくれ」

「そ、そうですよー。で、その後がー、ご――」

「風呂だ」

「――ご、ご、らああぁぁろですよぉぉぉーー!」


 またもや、チュンさんは、ミランダさんの言葉に被せて言う。


「まぁ、普段なら、掃除後は好きな時に入ってもらっていいんだが。今日はこんな、……だしな。多分、掃除も、時間がかかるだろう。風呂が終えたら、ミランダに部屋に案内して貰えばいい。明日、いきなり寝坊でもしても良くないしな。初日の疲れもあるだろう。今日は早く寝るといい」


 チュンさんは、さらさらと説明してくる。だが、そこでミランダさんが抗議の声を上げた。


「お風呂からは、プライベートアワーなんですけどーー。掃除もちゃちゃっと終わらせればいいんじゃないのかなー?」


 しかし、チュンさんはピシッと言う。


「おまえな、初日の疲れは分かるだろう? それとも新入社員をいきなり遅刻させたいのか?」

「うううううーーー……」


(……うん、ミランダさん、はグゥの音も出ないよう)


「今日は、実質三人で、いや、アカリさんが居なければ、私たち二人だけで掃除をやらなければいけなかったんだぞ?」

「ええええええーーー……おおおおぉぉぉぉー……」


 ミランダさんの”あ行呻き声”を、また聞いた……。


 そのやり取りを聞きながら、私は自分の食器を洗い終え、その横で、メイちゃんはまだ食器を洗っていた。食器を洗いながら、メイちゃんはチュンさんの援護をするように言う。


「今日は、仕方がありませんよ。……それに、まだ時間はありますし……」

「んんんー……」


 ミランダさんは納得したのか、してないのか、よく分からない声を上げた後に、諦めたように言った。


「……はぁー。仕方ないかー。残念だねー、アカリちゃん。今日はお風呂を楽しみとしますかー」


 まぁ、残念なのは分からないでもない。娯楽室と言う所が、どういうものなのか気にはなっていた。

 しかし、楽しみが先延ばしになっただけで、無くなった訳ではない。私は、そう考えながら発言する。


「はい。お風呂も楽しみです。後、お掃除もどんな事をするのか実は楽しみで……」

「えーー。掃除くらいは、自動でやって欲しいもんだよー。まー、文句言える立場じゃないけどさー……」


 ミランダさんは、ちょっと不服そうである。


「……お掃除も、楽しいですよ」


 洗った皿を拭きながら、メイちゃんが言う。


「私は、好きだが?」


 ミランダさんのほうを向いて、チュンさんもそう言った。


「はい、はいー。分かってますってー。じゃあアカリちゃん。ちゃちゃっと掃除しちゃおうかー」


 観念したのか、ミランダさんが掃除に誘ってきた。


「あ、はい! ……えと……」


 ミランダさんの所へ行こうとして、メイちゃんを見遣るが、チュンさんに促された。


「ああ、行こうか。メイ、後頼む」

「はい。すみません、よろしくお願いします」

「はいな、そっちもよろしくねー」


 そう言って、ミランダさんは立ち上がり、チュンさんは私を促して、メイちゃんは私たちを見送る。

 メイちゃんに「それじゃあ」と言って私はチュンさんと一緒に待っていたミランダさんの所に行った。


 食堂を出る時に、メイちゃんのほうをもう一度見ると、笑って私に手を振ってくれた。


 私も手を振って、食堂を後にした。



お読みいただき有難うございますm(__)m

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