【六日目】 宣言
その日、私は室長室に居た。
今日は、朝、それを、ミランダさんに伝え、
そして、アンカ室長の所に、来ていた。
今日の朝は、目覚まし時計の時間で起きた。
《5:50》。
これくらいが良いだろう、と思って、初日から、セットしている時間である。
また、今日も、食事当番の手伝いをしたほうが、良いだろうか、と思って、窓から食堂を見ると、既に、人が居るようだった。
三人、人影が見えた。
(あれ? じゃあ、もう誰か、手伝いが入ったんだ……)
後から知った。
それはユウカさんだったらしい。
少々、意外だった。
その後、普通に朝の支度をするが、そうすると、結構、朝食までの時間が、出来てしまった。
だから、私は、その間にメモ帳をまとめた。
持って来ていた、自前のメモ帳。
少しずつ、書いていた。
まだ、上手くまとめられてはいない。
けれど、伝えたい事は、なんとなく見えてきていた。
みんなで朝食を取る。
その後に、ミランダさんに伝えた。
アンカ室長や、ミランダさんと、話がしたい、と。
そこに、セリカさんも入った。
今日の巡回は、メイちゃんと、チュンさんだった。
ミーティングを、少し早めに、切り上げてくれたようだった。
昨日、”ひずみ”が発生した事もあり、もしかしたら、今日も大変なのかもしれない。
けれど、もう、私は、伝えないといけないと思った。
申し訳なく思うが、そうしていると、時間も過ぎてしまう。
私には、着々と、その時間は、迫っている。
ミランダさんも、セリカさんも、そしてアンカ室長も、察してくれたのか、私が話し始めるのを、待ってくれていた。
そして、私は宣言した。
「……あの。私、決めました! ここで、働き続ける事を!」
それを聞いてから、分かっていた、と言う風にセリカさんが聞く。
「そう。でもいいの? まだ時間はあるわよ?」
「ええ、アカリさんは今日で六日目。……まだ、……八日間あります。まだ……」
アンカ室長は、神妙に言ってくる。
「アカリちゃん……」
ミランダさんは、心配そうに呼んでくる。
「多分、……八日間過ぎても、変わらないと、思います」
「まあ、そうなのかもね」
「ですが……」
「私は、……アカリちゃんがそう決めたのなら、……何も言えないけど」
「早く決めれれば、今後の展開も早くなるわ。それに、本部への連絡や、手続きもあるし」
「本当に、……いいのですか?」
「……はい!」
「けれど、……少し疑問もあるわ。……聞いても、良い、かしら?」
多分、それを、聞かれるのではないか、そう考えていた。
だから、ここで、働く決意をする事対して、それを、自分で、ちゃんと整理して、考えたかった。
「何故、こんな早くに、そう決めれたの? ここでのリスクや、ここの事は、もう話したけれど……」
そう。まさに、それだ。
何故。
ここでは、リスクがある。
”何かを失う”。
そして、”与えられる”。
それが故に、研究されてしまう立場にもなる。
だが、私には、理由は、いくつかあった。
「ここで、みんなと、……まだ、五日、……今日で、六日目ですね。……一緒に、過ごさせてもらって、色んな事を、経験させてもらって。色んな事を、やってもらって。でも、そんな中でも、私も、みんなの仲間に、……ちゃんと、……入りたい」
「……そう、思ってもらえたら、……嬉しいけど。……アカリちゃん、でも……」
ミランダさんは、これまで、いつも通りなのか、それとも気を使ってなのか。それは、大変な事もあるだろう、とは思う。
けれども、楽しそうだった。
楽しんでいた。
他のみんなも、……辛い事は、……あると思う。
ユウカさんが、……言ってくれた事。
あれが、本当の、本音なのだと思う。
(けれども、……私には――――)
「……それだけ?」
セリカさんは、察しているようだ。多分ユウカさんも。
「私は――――――――」
そして、私は、訥々と、話始めた。……まだ、上手くは、まとめられていない。
うまく、整理できてなかったので、少し、時間がかかった。だが、三人共、黙って聞いてくれていた。そして、しばらく話し続けた。
最後の言葉を言い、こう繋げた。
「――――――だから、……私は……」
「…………だから、そう、決断したのね」
私の話をした時、皆、少し驚いていた。ミランダさんも、アンカ室長も、そして、セリカさんも。そして、ゆっくりと、セリカさんが言う。
「……あなたも、……ユウカのような、経験をしていたのね」
「やっぱり、……ユウカさんも……?」
「……そうね。……でも、詳しくは、……本人に聞いてみて」
少しの静寂。
初めて、
ようやく、
私は、
自分の事を、話す事ができた。
「……だから、私は、……このまま、みんなと、ここで……」
それを聞いて、一旦、間を置いてから、アンカ室長が、宣言してくれた。
「……では、アカリさん。……本当に、良いのですね?」
「はい! よろしくお願いします!」
そう言って、お辞儀をする。
「分かりました。なら、本採用の連絡を、本部に行います。その後、手続きが色々ありますので。
あと、本部から、辞令も来るでしょう。その辞令が来た時、決定します。あなたが、ここで本格的に採用になる事が」
「はい! 分かりました!」
「アカリ」
セリカさんに呼ばれる。
「今の事、みんなにも、話すの?」
「…………どうでしょう。…………その、必要が、あるのであれば……」
「そう。……その方が良いわ。その事は、あまり、言い回る様な内容では無いわ」
「でも、……私は、アカリちゃんが、そう、自分から、説明してくれて、んー、うん。ありがとうって言いたいかな」
「じゃあ、どうせ本部からは、採用の通知は、来ると思うし。ああ、アンカ、じゃあ、忘れずに通達してね。」
一度目を閉じて、アンカ室長が言う。
「……ええ。それでは早速、その通達の書類を作って、本部に送ります」
「ええ、頼むわ。……あ、それとアンカ」
「はい、どうしましたか?」
「この事は、どうする? みんなには……」
「そうですね。……皆が集まった時に、話した方が良いかもしれませんね。実際は通達が来てから、とは、なりますが」
「じゃー、それまで、アカリちゃんはー?」
「ま、それまでは、試験期間のままで良いんじゃない? ただ、仕事の方は、これまで以上に、しっかり入ってもらうけれど」
(……………………う。………………そ、それは変わるんだ。………………いや、でも、うん、そうだ。私は、そう、宣言したんだ。……だから、ちゃんと足を引っ張らないように頑張らないと)
「ま、他のみんなも、最初は苦労したみたいだし。ユウカや、チュンなんて、大変だったんだから」
「そーだっけ?」
「そうよ。本人たちも、そこは、気にしてるみたいよ」
どういう事だろうか。しかし、それは、今後、ゆっくり聞いていけば良い。
「ああ、それとアンカ」
「どうしました?」
「……あなた。……この子にまだ、……カタログ、……渡してないでしょう?」
「…………………………………………あら?」
(…………カタログ? あ、前に、言われたような。……………………………………あ。………………忘れられてたっぽい)
「ご、ごめんなさい! アカリさん! あ、み、ミランダ、アカリさんに、カタログを……」
「……室長ー。……渡してなかったんー?」
「え、えーっと、み、ミランダ、頼みましたよ!」
ミランダさんに突っ込まれたが、アンカ室長は話を進めてしまった。
「わ、私は、これから、本部の手続きと、あと、昨日の”ひずみ”の報告書も、まとめますので」
そうして、私は、室長室を後にした。セリカさんは、残るようだったので、ミランダさんと、二人で通路を歩く。
「ねえ、アカリちゃん」
四階フロアーに戻る途中に、ミランダさんに言われる。
「仕事終わったらさ、ちょっとお茶しない?」
「……え? あ、はい」
「んー、おっけー?」
「はい」
それを聞いて、ミランダさんは少し背伸びする。
「ん、よーし! ならー、今日は、本気出して、やりますかねー。」
それを聞いて思う。ミランダさんは、何かを話をしてくれるようだ。
(で……今日は、本気を出す、という事は、………………これまで本気でやってなかった………………?)
お読みいただき、ありがとうございます。
ようやく、本当の日々が始まります。




