【六日目】 冒頭
朝の準備をする。
私は他の人より、ずいぶんと早く起きているようだ。
日課として、朝、テラスでコーヒーを飲んで、それから、部屋でお祈りをする。
ここに来るまで、そんな習慣は無かった。
その事は、ここに来て、しばらく後に聞いた。
そんな事を、していてくれていたなんて、その頃は、思ってもいなかった。
だから、お祈りは、そのお礼でもある。
そのおかげで、私は、ここに居るのかもしれない。
それが、無かったら、居なかったのかもしれない。
少し高かったけれど、小さな十字架を買った。
今はそれを持っている。
昔を考えると、今の暮らしは、本当に、何不自由なく暮らせている。
この事以外は。
そして、準備をする。
今日はどれにしようか。
種類はいくつかある。
と言っても、今の私には、色しか違いが分からない。
これを始めてから、どれぐらい経つのか。
こんな日課になるとは思ってなかったけれど。
そういえば、あの子。
あの子もこれを気に入ってくれてるみたいで良かった。
そして、多分、もう……。
楽しみである。
しかし、心配でもある。
あの子は、多分、私と似ている。
なんとなく、それだけは分かる。
だから、私は、先輩としても、ちゃんとしなくてはいけない。
もう、私は、昔とは違うのだ。
ここに来て学んだ事を、今度は私が、教える番。
でも、少し羨ましくもある。
私は最初、ずいぶんと、作業にも、苦労したのに。
まあ、それでも、今は教えれる。
そうして、いつもの準備を始めた。




