【五日目】 邂逅
四階フロアーへ入ると、まだ、早いかな、と思っていたのだが、セリカさんが既に居るようだった。
ちょっと見え辛いけど。
(うん、居る。モニターが透けて動いている)
その後ろに、セリカさんがうっすらと見える。
作業に集中しているのか、ちょっと声をかけ辛いが、とりあえず、挨拶をした。
「お疲れ様です。セリカさん」
「……………………………………………………」
聞こえなかったのか、気付かなかったのか、いや、多分、作業に集中しているんだろう。
(まだ、始業前なのに…………)
ここのモニターは、基本、何も無いところに浮かび上がる。
だから、モニターを消すと、そこは、何も無くなる。
ただ、資料室の物は、浮き上がる物でなく、透明な板が置いてあり、そこに画面が映し出される。
モニターの位置を動かす為には、その透明な板を動かさないといけない。
しかし、ここのモニターなら、動かそうとすれば、簡単に、動かせるのかもしれない。やり方は分からないが。
プランさんが、腕に着けている物も、そう。何も無い所に、画面が浮かび上がる。
そして、その腕のブレスレットみたいな所から浮かび上がるから、腕を動かすと、モニターもそれについて行く。
(そう言えば、あれって、どうやって文字を入れてるんだろ?)
自分の席に行き、端末を立ち上げながら思う。目の前にモニターが浮かび上がる。
それから、メモ帳を見る。
今日の予定。
”アンカ室長と、セリカさんから講義。ここの事に関して。時間未定”
そうだ。これから色々教えてもらうのだ。
(ここに着てから、もう、五日…………けれども、その間に、初めて疑問に思った事、これまでは考えもしなかった事……)
聞きたい事は、沢山出来ていた。
知りたいと、思い始めていた。
もう少ししたら、始業時間になる。
私とセリカさん以外は、まだ誰も来ない。
少し、早かった。
そして、これからの、いや、今後の、聞くことを、知りたい事を、頭の中で整理していった。
皆が来てから、始業の鐘がなった。
ミランダさんは、今日は遅刻しなかった。ぎりぎりだったけど。
そして、アンカ室長が入ってくる。
これも、ようやく、いつもこうなのだろう、と分かってきた。
始業の鐘が鳴って、しばらくした後に入ってくる。
そして、巡回のミーティングをする。
「メイさん、セリカさん、あと、ミランダ」
「うっへー、私ー?」
ミランダさんは、ちょっと嫌だなー、と言う風に、アンカ室長の元に行った。
それから、ちょっとしてから、私も呼ばれた。
「じゃあ、ミランダ、頼むわ」
そう、セリカさんが言っていた。
もしかして、と気がついた。
本来は今日はセリカさんであったのが、ミランダさんに代わったのだろう。
「はー。………………メイちゃん、出来るだけ、美味しいのよろしくー…………」
(………………そっちですか)
あの携帯食料の事だろう。
それから、ミランダさんは、準備を始めるのだろう席に戻り、メイちゃんも席に戻る。席に戻る前にメイちゃんが、こちらをチラッと見たようだった。
「じゃあ、アカリ、行くわよ」
「あ、は、はい」
セリカさんに促され、アンカ室長について行く。そして、行った先は、室長室。椅子が用意されていた。
これから、始まる。
「それでは、アカリさん、そちらの席に」
いつもと少し違う空気。張り詰めた空気、と言うのか。
そして、アンカ室長が話し始める。
「少し、前置きを、お話します。これから、お話しする事、これは前と同じように、決して記録はしないで下さい」
「は、はい」
私は、背筋を伸ばす。
セリカさんは立ったまま、アンカ室長の側に居る。
「あなたが、今疑問に思っていこと、ここで今、分かっている事、ここの事、私達の事。少し早いけれど、全部、話すわ。」
セリカさんの声も、どこか緊張感がある。
「まだ、アカリさんには期間の猶予はあります。けれども、これからお話しする事、どちらかと言うと、他の支社でも、これを話してから、辞退する人が多いと聞いています」
「ここでも、数名居たわ。わずか、ではあるけれど…………」
「…………ここに、来た人自体が、少ない、と言う理由もあります。しかし、アカリさんのように、他の事も知らなかった、それが故に、聞いた人は、ここを辞退する、そう、それは、分かります」
息を呑む。
これから、説明してもらえる事。
記録する事は出来ない。
自分の頭で覚えるしかない。
そして、説明が、始まった。




