【四日目】 モニター室、そして……
もうすぐ、《14:30》だと言う頃。
私達の後に、昼休みを取っていた、アンカ室長も戻って来ているそうだった。
(巡回に行った、セリカさん達も、もうすぐ……)
ミランダさんが戻ってきたのは、そんな事を考えていた所であった。アンカ室長の所に行って、話を聞いてきたミランダさんが、私にこう言った。
「アカリちゃん、さっきの質問の事なんだけど、やっぱねー、室長と、セリカさんでそれ説明するってー。んだからー、明日は、みっちりとそれの説明ー、………………だと…………思う」
それを言ったミランダさんは、どこか複雑そうな顔をしてる。と思ったら、一転して、言い始める。
「んじゃー! もー今日は上がっちゃおー! んでー! この後にー、ごら――」
「駄目です」
ユウカさんに声を被られるミランダさん。
「くーーー!?? って!! え!?」
(うん、言おうとした所は、あそこですね…………)
「今日は、ほら…………それに、そう言う事もあるのなら…………」
「…………あ、あの………………そこだと…………」
作業をしていたメイちゃんも参加する。
「あ、あー、 ………………そだねー。………………って、え? でも、じゃあさ?」
「ほら、あそこだと」
「………………うー………………じゃーその後ならー?」
「それなら、良いかと」
ユウカさんが答える。
「じゃー、そーしましょー、ってじゃあそれまではーーー!?」
「モニター室に行きましょう」
「あー、なるほど、その手があったかー」
(…………………………何? さっぱり分かりませんが……………………)
三人が話をしているが、私には何の事だか、分からない。
「んじゃー、アカリちゃん! これからモニター室いこー! …………で、いいよね? メイちゃん?」
「…………は、はい。」
苦笑いしながらメイちゃんが了承する。
「あ、私もー、今日はメイちゃんのおってつだいー♪」
「え、エレナさん!」
(………………? 何の事だろう……………………?)
「…………じゃ、じゃあ、私とエレナさんは、………………そ、その、ま、まだお仕事が残ってるので! み、ミランダさんと、ユウカさんと、…………あ、アカリちゃんは、も、モニター室に…………」
「うん、そうする」
「いこーいこー、さー、いこー、すぐいこー。ほらほら、アカリちゃん、端末消して、準備してー!」
(な、何やら皆さん不自然なんですけれど………………って、昨日も同じような事言ってませんでしたかあーーーーー!?)
私は、ミランダさんとユウカさんに、連行されるように部屋から出されてしまった。
(ま、まだ…………皆さんお仕事中では………………? あーーーーれーーーーーー?)
そんな事を思いながら、エレベーターに乗る。
「アカリはさ、モニター室はまだだよね」
ユウカさんに聞かれるが、そうではあるけれども、仕事もまだ終わってないような、終わってたような、と考える。
「え? そ、そうですけれど…………お、お仕事は…………?」
「もー、今日はだいじょーぶ。さっきのでお終いー」
「そ。気にしなくて良いわ。今日は」
二人にそう言われる。
「は、はぁ…………」
まぁ、そう言われると、確かに私が今日やる予定だった事は、端末の練習、突発的に入った、巡回の見学。そして、”ブルー”の事を聞こうとした事。
けれど最後のほうは、また、明日、と言うことなので、じゃあ、後やるべき事は…………。
(……………………端末の練習………………まだ………………してませんけど…………いいんでしょうか………………?)
「良いから、今日は」
心を読まれて、ユウカさんにそう言われる。
(そ、それならば……………? ……………?)
私と、ミランダさん、ユウカさんは、そのままモニター室に直行した。
「ここはね、娯楽室と同じような所なんだよ」
モニター室の扉の前でユウカさんに説明される。
「でもー、中にあるのは全くの別物ー」
「私は、結構好きで来るんだけどさ」
そう、ユウカさんが、確か、昨日もここに入る所を見た。
「昨日言ったばかりなのにね。もう、今日来ちゃうなんてさ」
クスッっとユウカさんは笑う。
お楽しみに。
そう言われていた場所。
食堂や、お風呂等、色々な場所に行く際に通っていた場所ではある。しかし、中は初めて入る。
「んー? なーにー? なんかあったー?」
昨日の、私とユウカさんとの事を知らない、ミランダさんに聞かれる。
「いいえ。ただ、ここも面白い場所って教えていたから」
にこやかに、ユウカさんが答える。
「でーもー、それって中身によるよねー」
「ちゃんと私が選ぶから」
そう言ってユウカさんが扉を開ける。
中は、暗い。
よく見えない。
ユウカさんが灯りを点ける。灯りが点いて、中が見える。
そこにあるのは、ソファーと、テーブル。そして、小さめの棚。
それだけ。
娯楽室とは印象が全く違う。
「さ、そこに座って」
ユウカさんに促される。
「ねー、ここのカメラ増やしちゃ駄目なのー?」
「駄目」
ミランダさんは、やや、見え辛いのか、ゆっくりと、ソファーに座る。
「だって、ミランダさん、ここを増やしたら…………」
「うー! 不正はしないってー」
「それでも、やっぱりここだけは駄目です」
(何のことやら………………)
そして、ユウカさんが説明し始める。
「ここはね、娯楽室みたいにさ、皆で使う事も多いんだよね」
「今日は、なーにー?」
「ええっと、ミランダさん、最近入れたのはあんまり見て無いですよね?」
「そーだけどー。んー、ここ半年くらいはそーかなー……」
「じゃあ、結構あるけれど……」
「がっつがつ、動くのがいいなー」
「それじゃあ、アクション物、…………あ、これは私もまだね」
ユウカさんは何やら悩んでから、棚から選び出す。
ユウカさんが選び、取り出した物。
(あれは…………何と言ったっけ? 確か、昔の…………記録媒体…………)
「ええっと、じゃあこれで、……あ、飲み物とか、忘れてたわ」
「あー、長いんなら欲しいねー」
私はこれから何が始まるのか分からない。
ユウカさんとミランダさんはそんなやり取りをしている。そしてそんな中、ドアが開かれる。
「あ、居た居た」
リーゼさんだった。
「あれー? リーゼちゃんじゃんー。あれー? 大丈夫なんー?」
前を向いたまま、ミランダさんが言う。
「巡回組の二人、もう戻ってきましたよ」
「え! もう!?」
答えたリーゼさんの回答に、ユウカさんが驚く。
「あー、もしかしてー、あのブースター?」
「ええ、上手くいきました」
満足そうなリーゼさん。
「…………え? あ、あれ……また入れたの…………?」
「今度は大丈夫ですって、ユウカさん。ね、主任」
リーゼさんの後ろからプランさんも来ていた。
プランさんはこちらに入りながら、ニコニコとコクンと頷いている。
「ああ、プランさん。……じゃあ。………………いいえ。……で、でも、あんまり使いたくは無いわね…………」
そうユウカさんが呟く。あのブースターとやらだろう。使いたくは無いのか、何か前にあったのか。
そして、あのスピードで走って行った巡回艇を思い出す。
(……で、もしかして、…………ブースターとやらを使うと…………あれより…………早いの………………?)
「あ、これ、飲み物です。私と主任も同席して良いですか?」
あまり、気にしていないのか、リーゼさんは先に進める。そして、飲み物だろうか、大きなポットらしき物をリーゼさんが持っている。プランさんは、その入れ物であろう物を持っていた。
「ええ。あ、ちょうど良かった、飲み物を、取りに行こうとしてたの」
コクコクとプランさん。そして二人も入ってくる。
「あ、あれ? でも、良いのかしら? 時間……」
「今日はセリカさんも良いって言ってましたよ」
「……そう、まぁ、あの人がそう言うのなら……」
そして、二人を迎え入れた。
ソファーは大きい。そしてそれが三つあった。
一つが私とミランダさん、もう一つにユウカさんが座るのかな、空きソファー、もう一つにプランさんとリーゼさんが座る。
真ん中にテーブル。
だが、入り口から向かって真っ直ぐの、壁側にはソファーは無い。
そして、ソファーは、多少、真ん中のテーブルの方へ向いてはいるが、基本、全部のソファーが、その先の壁を向いている。
ユウカさんが、何か機械を取り出し、準備しながら、あっ、と気付いたように言う。
「そうだった、説明の途中だったね。アカリ。ここはね、皆で、昔の映画を見たりする所なんだけど」
「それ以外もねー」
「そう、特にトランプをやる時とかね」
コクコクと、プランさんも頷く。
「ここだと、ミランダさんも不正できないし」
リーゼさんが話しに参加する。
「いや、だってー。って不正してないってー」
「えと、どういうこと、…………なんですか?」
「そうね、ここは皆で映画を見たりするんだけれど、…………良いですよね? ミランダさん」
「んー、かまわんよー」
ミランダさんに承認を得て、ユウカさんが説明し始める。
「ここは他と違って、ミランダさんの見れるカメラもね、二つしかないから」
「そー、入り口んとことー、このソファーのここー」
見ると、確かに、ミランダさんが座っている、ソファーのすぐ横に小さめのカメラがある。
「ほら、トランプとかって、相手に手札とか見せれないルールの物が多いでしょ? でも娯楽室だと、ありすぎて…………。だから、ミランダさんには、ばれちゃうから」
「初めは指摘されるまで気付きませんでしたよ」
リーゼさんが嘆く。
(って事は………………ミランダさん、最初はしていたのか………………)
「ま、そんな時にも使うけれど、基本は皆でこうやって、映画を見たりする場所。それがここ」
「じゃー始めてー、ユウカちんー」
そしてユウカさんが機械を操作する。
(あれで写すのかな?)
その機械を見ながらそう、思っていると、ユウカさんから注意された。
「あ、アカリ、あんまりこれ見ないほうがいいよ。光が強いから」
「うん、見るのはあっちだよ、アカリさん」
リーゼさんに言われ、見た先は何も無い壁。
そこに映像が写しだされる。
そして、四方八方から音が出始める。
「音がいいのよ、ここ」
そう言いながら、ユウカさんもソファーに座る。
それを見てからテーブルを見ると、いつの間にやらお茶が皆の分用意されている。
ミランダさんの分はちゃんと蓋付き。
一体誰が? と見たら、どうやらプランさんが、いつの間にやらやったようである。
(……………………気配り達人、プラン様)
プランさんを見るとニコッと笑って、壁に映し出された映像を見始める。
実は、私は、こういう、映画、いや、映像そのものを、ちゃんと見るのは、初めてかもしれない。
わくわくする。
そして、始まった、映像。
「これー、何処の映画ー?」
「さあ? 私も見て無いし、見れば分かるかも」
(あ、アバウトな…………)
そう思いつつ、画面を見続ける。
「あ、これ、確か、カンフー映画じゃないですか?」
「あれー? リーゼちゃん、もー見てたー?」
「いえ、これは多分、初めてです。ただ似たようなのは見た気が…………」
そして、映画が始まったようだった。
どうやら、昔の海外の映画のようだ。口の動きと、言う事が異なっている。多分、他の誰かが声を入れているのだろう。
だが、冒頭は正直よく分からない。
(多分この人が主人公なのかな。えーっと、…………あ、あれ?)
その映像の人が、人間業とは思えない動きで、動きだしていた。
「あー、これ、確か、映像加工とかしてないんですよ」
(加工? …………ん? え、じゃあ……)
「え? これって、ちゃんと、人がこういう動きしてるんですか?」
「そーみたいだねー。いやー、すごいねー」
私は、言いながら、聞きながら、映画を見続ける。
(って! え? え!? そ、そんな動き出来るの!? …………え!? 何それ! い、今そこ飛んだの!?)
私には到底出来ないだろう、動き、そして高い壁をジャンプして飛び越えている。
「え、こ、これ、本当に自分で動いてるんですか……? この人」
「おー! すっごいわー! 人ってこんな動き出来るんだねー!」
「い、いや、毎日修練をすれば、し、しかし、これは……」
ミランダさんとリーゼさんの二人は既に熱中していた。
いや、多分他の人も。
そして、私もだんだんと、その映画にのめり込んでいく。
(うわっ! あ、危ない!! きゃっ! あ! よ、避けた!よかったー………………って、あ、危ないいいいい!! て、えええぇぇぇー!! そこ上っちゃうの!? ……………………え!?そこ飛び降りちゃうの!? …………う、うそ!? 昔の人ってナニコレ!! こんな事出来るの!?)
そのまま、映画は格闘シーンへ移行していた。
ユウカさんはじっくりと見ているようで、プランさんも和やかに見ているようだ。
ミランダさんとリーゼさんは白熱している。
「おお! あんな攻撃があるのか!」
「おおー、相手もよく避けるねー! お! 倒し……ってー、今度はそうくるかー!」
映像の中は、いや、もう、私には、その人が沢山の人と戦って、倒して、で、また別の人がその人と戦って、で、その人が人間業とは思えない事やって倒して、の繰り返しに見える。
えー!? で、でもこの人、一人で全員倒しちゃうのー!?…………で、多分、この人が最後の敵。あ、つ、強い! この人! あ、あ、やられちゃうっ! が、頑張れーーー!!!)
私も、途中から完全に白熱してしまいました………………。そして、映画の中。
(主人公が! ぜ、絶体絶命!!? ああっ! ぶ、武器持ったあの敵の人! ていうか今更!? と、トドメ! って・・・ええええええええええええええ!!? 何!?その動き!?? ってええええ!?)
映像が何度か違うアングルで繰り返される。そして、スローモーションで、もう一度。
(主人公が…………勝ったー!)
「うわーっ! すごいーーー!!」
私もいつの間にか、口に出していた。
「おー! そうやって倒すんだー! って最初からやればいいのにねー!」
感嘆しながら、突っ込みを入れるミランダさん。
「いやっ! でも! もうあれは人間業じゃないですよ!」
リーゼさんも関心したように言う。
そうして、エンディングが流れ始めた。
「ふはー。いやー! 結構面白かったねー、これ当たりだったかもー」
ミランダさんがエンディングを見ながら言う。
「…………はー、中々、これは……………………良い」
ユウカさんがようやく声を出す。
(ああ………………すごい熱中してたんだ……………………)
プランさんはそんな二人に対してコクコクと頷いている。そして、リーゼさんを見ると…………。
「…………あの動きをやる為には、……毎日、筋力トレーニング、……そしてストレッチ、……何より度胸が……、
いや、しかし、……あの瞬発力はどうしたら……」
(…………………………や、やる、おつもりですか………………?)
だが、私も途中から、完全にその映画に釘付けになっていた。
(うん。すごかった。それに面白かったー)
「いやー、こういうのって、ストーリーはよく分からんけどー、面白いわー」
「いや、ストーリーも中々――――」
ユウカさんとミランダさんが議論し始める。
プランさんは私を見て、どうだった? と言うような顔をしている。
「すごいですねー。面白かったですー」
そんな感想を言う私に気付かず、リーゼさんは――
「…………まずは、…………筋肉をつけ、……それでいてナチュラルな動きが自然に出来、……かつすばやく…………」
(………………………………………………や、やる気………………ですか…………………………?)
どうやら、映画を見ていて、時間はあっと言う間に過ぎていたようであった。二時間くらいはもう過ぎただろうか。ここには時計が無いので、今の時間が分からない。
「さーてー! じゃあそろそろー、時間だねー」
「あ、そうですね。そろそろ…………」
(ああ、確か、もうそろそろ、お掃除しないと…………)
「じゃあー、行こっかー。ねー、アカリちゃん」
「あ、はい、そろそろお掃除を」
そんな私の言葉を聞いて、クスっと笑いながら、ユウカさんが言う。
「アカリ、今日はちょっと特別。だから、掃除はその後よ」
コクコクと、プランさんもニコニコと笑いながら同意する。
「じゃあ、こっち片付けておきますから、先行っててください」
リーゼさんは私達を先に、促す。
(あ、とりあえず、筋肉を付ける算段は終わったのかな…………じゃない! ん? じゃあもう、お食事? ………………特別?)
「さーさー、もう、そろそろ、皆待ってるよー」
ニヒーっと笑ってミランダさんに促される。
(皆? …………じゃあ先にお食事? ………………あれ?)
時間的には、これまで経験した時より、まだ早い。
(映画を見ていた時間を差し引いても…………)
そう思いつつ、部屋を出る。
ミランダさん、私、ユウカさん、ユウカさんの順に、通路を歩いていく。
掃除用具室を通り過ぎるので、やっぱりお食事かな、と思いつつついて行く。
(十字路に来たから、じゃあ食堂…………って、あれ?)
ミランダさんは真っ直ぐ進む。
「アカリ、真っ直ぐね」
そう、後ろからユウカさんに促される。
(あ、あれ? 真っ直ぐ行くと、お風呂場と、娯楽室と、洗濯場と、あと………………)
その場所へ、ミランダさんが入っていく。いや、出て行くと言ったほうが良いか。
大テラス。
昨日、そう、ユウカさんとお話をした場所。
大テラスに出ると、メイちゃん、エレナさん、もう戻って来ていた、チュンさん、セリカさんが居る。
(あ、あれ? もう起きてる)
アリスさん、マイヤさんの夜間巡回の二人も居る。これまでだと、まだ寝ていたはずの二人。
そして、明るい時間には初めて見る、大テラス。
そこは、昨日ユウカさんと会ったときとは違う。
テーブルの位置が昨日見た時と違うようだった。
そして、それに合わせて椅子も、もちろん、配置が違う。
そして並べられたテーブルには、色々な、食事が置かれていた。
先に来ていた皆で準備しているようだった。
「準備おっけー?」
「はい、もう大丈夫ですよ」
にこやかにメイちゃんが答える。
(まるで、これ…………)
「…………あ、あの…………これ…………」
そう言いながらユウカさんを見る。
「ん。……アカリのさ、歓迎会。まだ、だったでしょ?」
(………………え? …………え?…………ま、前に、メイちゃんが言ってた………………え? わ、私の…………?)
「ほら、今日の主役はあなたよ」
そう、ユウカさんに促される。
「そーそー。アカリちゃんがー、今日の主役ー」
こちらを体ごと向きながら、私を促すミランダさん。
「…………え? ……え?」
「アッカリちゃーん、ここの席だよぅー」
お誕生席。
そういう場所。
そこにエレナさんが居て、私を呼ぶ。
プランさんにそっと背中を押される。見ると、ニコッと笑って、そこへ促している。
私は、ゆっくりとそこへ向かう。
色取り取りの食事。
食器も既に並べられている。
外は少し暗くなり始めている。
チュンさんがこちらを見て笑う。
アリスさんはちょっと眠そう。
マイヤさんは楽しそうにこちらを見ている。
エレナさんの元へ辿り着き、周りをもう一度見渡す。
皆は笑って、こちらを見ている。
そして、そこに、モニター室の片付けが終わったのか、リーゼさんもやって来る。
もう、私はどう反応したらいいのか分からない。
(けれど、とても………………)
「…………あ…………え……?」
椅子に座りつつ、戸惑っている私。
そこにアンカ室長が来る。
「…………はぁ、よかった、間に合ったみたいね。」
急いで、きたのだろうか、少し息がきれていた。
「室長ー、ぎりだよー、今からだよー」
「ふふ、運も良いわね。今日は、…………いえ、なんでもないわ」
セリカさんが少し笑いながら言う。
「これで皆揃ったね」
リーゼさんがテーブルに近づいてきて言う。
そして、そのまま皆がテーブルを囲う。
私が戸惑っている際に、いつの間にか、グラスに飲み物が入れられていた。
「ほら、アカリも、ちゃんと持って」
皆、既にグラスを持っている。
何故だろうか。
時間が早く感じるけれど、すごくゆっくりにも感じる。
まだ、私は、映画を見ているのだろうか。
「…………アカリちゃん」
メイちゃんにそう声を掛けられ、私も、遅れてグラスを手に取る。
皆が揃うのを待って、アンカ室長が一度、間を置いて言う。
「では。ここに来ていただいた、アカリさんに――」
「「「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」」」」
皆がそう叫ぶ
「………………え? …………え?」
まだ、現状が理解しきれない。
これは。
夢なのだろうか。
「ほらほらー、アカリちゃんー、かんぱいー!」
「アカリ、乾杯」
「ほら、せっかくメイが作った、食事、エレナとリリーゼに食べられるわよ」
「私もやってたよー。いーっぱい作ったからーだいじょぶー。モグモグ」
「あ…………え、エレナさん、早すぎ…………あ、アカリちゃんいっぱいあるから」
「…………………………ん………………かんぱぃ………………」
ゆさゆさ…………
「アリス、すあってからー。アカリさう、ごはんだよー」
「ほら、アカリ、食べましょ」
ニコニコ、コクコク。
「これだけあれば、あの筋肉も……」
「アカリさん、今日はあなたの歓迎会ですよ。さ」
皆から、次々に言われて、ようやく、分かってくる。
(………………これ…………こんな事を………………私の………………為に………………?)
「ほら、今日は、楽しい日、なんだから」
そう、ユウカさんから言われる。
嬉しい。
こんなに、その言葉がぴったりな事は今まであっただろうか。
ありがとう。
そう心から、言いたい。
けれど、中々、口に出せない。
「あ、アカリちゃん、食べてみて。上手に出来たと思うの」
「ふんー、ほいひーほー。はふ」
そう言われて、誰かが置いてくれた食事を、ゆっくりと口に運ぶ。
とても良い食感。
とても美味しい。
そして暖かい。
「どう、かな?」
「……………………………………ん……………………おぃし……………………」
ゆさゆさ……
「おきうのー」
アリスさんとマイヤさんの、そんな風景も見える。
ゆっくりとその一口を飲み込み、もう一度、皆を見渡す。
もう食事に夢中な人。
まだ、こちらを見ている人。
そして、ようやく私は、その言葉を口に出来た。
「…………うん…………とっても、…………美味しい。……メイちゃん……皆さん………………ありがとう…………ございます…………」
とてもゆっくりと。
そして、とても賑やかな食事。
いや、私の、為の、そう。
…………歓迎会。
それが、本格的に始まった。
お読みいただき、ありがとうございます。




