【初日】 三階の案内
階段はとても大きい。
折り返しの箇所には、プランターが置かれている。そういえば、ここには所々に、プランターが飾ってあった。
階段は、石のような材質で作られているようだが、それを感じさせないほど、綺麗に作られ、手入れされている。木製の手すりも、とても綺麗に手入れがされているようだ。
ゆっくりと、階段を降りると、先ほどの四階より、広い通路に出た。
目の前にはエレベーター。
先程、アンカ室長の部屋に行った時に、通った通路だ。ただ、その時は緊張しすぎていて、あまり周りを見れていなかった。プランターが置かれた先に、通路がある。
確か、一番奥の扉が、アンカ室長が居た、”室長室”だ。
「三階のここはねー。室長室とか、会議室とか、資料室とかがあるんだー」
ミランダさんに言われて気が付く。確かに、いくつか扉があった。
ここに初めて来た時は、そんな事まで、気に出来なかった。けれど、まだ入った事があるのは、アンカ室長が居た、室長室のみだ。
ミカさんに連れられて、部屋へ行った時を思い出す。先程の事なのに、昔の事のように思える。
「室長室にはー、行ったんだよねー?」
思い出していた瞬間、ミランダさんに聞かれる。
「あ、は、はい。ミカさんに、案内して頂きました。あの一番奥の……」
そう答えると、ミランダさんは、にやり、と笑いながら言う。
「室長に用がある時はそこねー。まー、でも、あの人も忙しいからねー。私もー、普段はあんまり行く事はないかなー。あー、無くも無いかー」
そう言って、ミランダさんは室長室に向かって歩き出す。私も、ミランダさんについていく。
先程は、ミカさんに連れられて、キャリーバックを持って行った。
今更ながら、ミカさんが言っていたように、キャリーバックは部屋に置いていったほうが良かったかもしれない、と思ってしまう。
床には、綺麗に絨毯が敷かれていたからだ。
ミランダさんは、室長室の少し手前で止まって、こちらを向く。
「そこが、室長室ねー。入る時はー、ノックしてあげてねー」
確か、ミカさんも、ちゃんとノックをしてから、入っていた。
「それで、こっちからの部屋がー、私たちもよく使う部屋になるからねー」
室長室は、入り口も広い。そして、来た通路を見ると、いくつかのドアがある。ドアの大きさは、少し種類があるようだ。
「まず、あの一番大きな扉がねー、皆が集まる時の、大会議室ねー」
通路の中では、一番大きな扉を指差しながら、ミランダさんは言う。
「何か、皆でミーティングしたり、室長と話し合う事があるとー、あそこでやる事が多いねー。でも広いから、掃除するのは大変なんだけどねー」
私は感嘆しながら聞く。
「それで、向かいのドアの所はねー。一応部長とか、社長の部屋になるんだー」
えっと驚いてしまう。すぐそこに、社長部屋が……と思うと同時に、ミランダさんが続ける。
「でも、基本居ないからー。まぁ、普段は、ただの空き部屋ねー。大して何かあるわけでも無いしー。私も入るのは、掃除の時くらいだねー。て言うかー、来る事ほとんどないから、無くてもいいのにねー」
実際、ここに社長が居たら、なんて言われるか想像するのも恐ろしい発言を、ミランダさんは平然と言う。
私の動揺は気にならないのか、気にしないのか、ミランダさんは、その部屋の扉を歩いて行きながら言う。
「それで、こっちがねー――」
(……あ、もう次のお部屋の説明なんだ)
そう思うくらい、お偉方の部屋を、さくっと飛ばして、次の箇所の説明に移っている。
「――通信室。まぁー、ここも今はアカリちゃんには、そういうとこ、ってだけでいいかなー。たまーに私はここにいるからー。ただ、ここはねー、ここのメンバー内だと、私か、室長、あとセリカっちか、あと、プランさんだねー。それだけの人しか、入れないんだー」
見ると、この扉の横には、ちょこんとあの認証式の端末が、付いている。
他の扉には、付いていない。という事は、この部屋は、そういう重要な部屋だ、と言う事なのだろう。
「もし、私がここに居る時はー、悪いけど、基本終わるまで出られないからー。まぁ、アカリちゃんが二週間経つまでは無いように、室長に言っとくけどさー。ただ、緊急の時はどうしようも無いから、その時は、他の人に指示を仰いでねー」
だが、そこで、何をやるのか分からないし、そもそも、私が入れないので、私は「はぁ」としか答えられない。
それ以上は、どうも今は聞くのが憚られる。
”緊急”とは、どういう状態になるのだろうか。出来れば、あまり知りたくは無い。
そして、ミランダさんは次の扉へ歩いていく。
「それで、ここの部屋はよく使うからー、中も、今ちょっと見ていこうかー」
そう言われた部屋は、先程の会議室の、隣の部屋だ。
「ここは資料室ねー。資料を置きに来たりとかー、資料を取りに来たりとかー、調べ物とか、試験期間でも使うからー」
説明しながら、ミランダさんは扉を開ける。扉を開けると、中は沢山の、資料らしきものが、並べられている。そこは、ちょっとした図書館だ。
「ここに、資料が揃ってるんだよねー。で、あそこに検索できる所があるからー。」
指差された先には、端末が置いてある。
今は点いていないが、検索する時には、それを点けて調べるのだろう。
「まぁー、最初は、一人で来る事は、無いだろうからさー。今度来た時に、検索の仕方とかは、教えてもらえるよー。」
「は、はい……え、で、でも……」
こんな膨大な資料を、私がきちんと調べられるのであろうか。
多分、これは、そのうち、やる事になるのであろう。
その時に、教えるとは言われても……。
「あ、あの、出来れば今、検索の仕方だけでもっ!」
「んー、そうだねー。でもー、詳しくやると、私じゃ、ちょっと時間かかるしー。んー、じゃー、簡単に説明するけどー、そこの端末を立ち上げてから、情報ソースを入れる画面にして、それでキーワードとか入力するんだー。そうすると、そのキーワードの資料の場所が、何処にあるとかー、日付とか、そういう情報が出てくるから、その場所を探すみたい、なんだけどー。……んー、ここらへん、ちょっと見てみてー」
そう言って、資料棚の一部を指差す。
”ジ 2050-1001、2050-1231”と書いてあった。
その棚の中に、資料らしき書類が入っている。みたいだが。
「この中から、探すみたいなんだけどねー……」
ミランダさんも、怪訝そうに言う。
資料の棚は分かる。中身は分からないけれど。ただ、その棚に置かれた資料が、膨大な量がある。
しかも、その資料には、……表記が、……無い。
(こ、これは……)
「……よくねー、……分かり辛いって、聞くんだよねー」
確かに、時間がかかりそうだ。これでは、どの棚にその資料があるか分かっても、その棚から、目的の資料を探し出すのに、時間がかかりそうだ。
「もう少し、上手に整理してくれればねー」
ミランダさんは、ちょっと他人事のように言う。
「まぁ、多分ここに来るときは、私じゃなくて、メイちゃんか、セリカっちが、一緒になると思うから大丈夫だとは思うけどねー」
(……ん? どこかで聞いた名前。ああ、そう言えば、アンカ室長が、居ないと言っていた人が、そう言う名前だったような……)
「ここ一応、セリカっちが管理してるからさー」
(でも、さっきは、居なかったって、聞いたような……)
そう思いながら、メモだけはしておく。
(”資料室 セリカさんが管理者”っと)
いや、しかし、本当に大丈夫なのだろうか。
私は、不安になってしまった。
読んで頂き、本当に有難うございます。




