【四日目】 巡回艇の操作
それから、私は、残った巡回艇を見させてもらえることになった。ミランダさんは、先ほどの場所から動かない。
多分、こちら側は、カメラが無いのか、見えないのだろう。
「じゃ、リーゼちゃん、ついでにアカリちゃんに他の巡回艇でもー、見せてやってよー。私ここ居るからー」
そう言う訳で、今リーゼさんに残りの巡回艇を見せてもらっていた。
「で、アカリさん、こっちが夜間巡回用。基本アリスさんと、あと最近じゃ、マイヤさんがよく使う」
(ふむふむ)
巡回艇は6隻あった。うち、2隻は、先ほど、チュンさんとセリカさんが乗っていったもの。
そして残っている2隻は夜間用。
残りの2隻はメンテナンス中。
1隻づつ、夜間用、通常用の交換分という事だった。
「そう言う訳だから、基本は巡回は2隻でやる。けど、かなり緊急の時などの為に、一応いつでも全部出せるようにもしている。私はそんな経験ないから、3隻が出た時があるのが数回あるだけだね」
「えと、じゃあ、もし、私がこれに乗ることになったら………………」
「うん、基本は通常用のになると思う。ただ、今、これも増産してはもらっているから、しばらくすれば増えるだろうけど」
「な、中の操作とかも、えと……教えてもらえますか?」
「うーん、今だと実際には動かせないから、ここがどういう物か、ぐらいになるけど……」
「そ、それでも良いので……」
「うん、じゃあ、夜間用だと少し違うから、あっちだね」
そして、残っている、通常用、つまり朝、通常に勤務する人たちが使う巡回艇のところへ行く。
(あれ? プランさんはあの後見ていないけれど、何処行ったのかな?)
「じゃあ、アカリさん、これは今、メンテナンス中のものだけど」
「え、あ、はい」
プランさんの姿を探していた私に、リーゼさんが説明し始める。
「まず、ハッチ。ここのスイッチ。これを押すと開くから」
確か、そう、セリカさんもそこを押していた。リーゼさんがスイッチを押すと、ほとんど音も無く、そこが開く。
「ここから入る。で、入ったら、ここだね。これを押すと閉まる」
そのスイッチは分かりやすい位置にある。
(ふむふむ…………)
「で、実際にこれに乗ったら、これ、ここで操作するんだ」
そう言われ、見せられたそれは、見たことがある、と思う物。
(確か…………そう、”サウサー”)
ミランダさんに教えてもらった、あの、四階フロアーにあるそれと同じ。それが取り付いている。
「たしか、”認証式…………マス……サウサー”だったかな。それとほぼ同じ物。これで、ほら、そこにモニターが点くんだ。そこにポイントの数値を入れれば、勝手にその場所に行くよ」
(な、なるほど。じゃあ、ほとんど自動……って事なのかな?)
「で、普通なら、それだけで大丈夫。この”セーフティゾーン”を抜けるのも自動だから。行きたい所のポイントをこれで入れるだけ」
(ふむふ…………む? …………普通なら? ………………じゃあ普通じゃない時は?)
「……えと、普通ならって……どういう事ですか?」
「ん? ああ、うん。”ひずみ”が発生した時は、自分で操作する」
(え………………。むしろそっちを教えて欲しい)
「じ、自分で操作ってー…………」
「うん、車みたいな感じで」
そう言われるが、それも知らない。
「え、えっとー、わ、私……車……運転した事無いですけど……?」
「…………え? ……あー、そうか。じゃあ、そっちも…………は、…………………………時間…………かかるけど」
「………………えっと」
どうしようか、と思い、ミランダさんを見る。
ミランダさんは先ほどの場所から動いていない。こちらを見ているようで見ていない。リーゼさんもそれを察知したようである。
「……ねえ、アカリさん。………………アカリさんは…………」
「あ、はい」
「…………ミランダさんの事は、もう知ってるよね?」
「……………………はい」
ミランダさんの、目が、見えない事だろう。それは、すぐにリーゼさんの口調から分かった。
「……ミランダさん、あの後かららしいんだけど…………たまに、ああいう風になるみたいなんだよ…………私は、よくは知らないけど……後遺症……みたいな……物だと思う……」
ミランダさんを見る。
じっと立ったまま動かない。
体も、全て動いていない。
どこを見ているのか、何をしているのか、全く分からない。
そこに、先程まで見かけなかったプランさんがゆっくりと近づいていく。
プランさんは、ミランダさんの所まで行き、何かを話しているのか、少し遠くて分からない。
しかし、その後に、ミランダさんがこちらに気がついたように言う。
「あー、アカリちゃーん。何かあったー?」
「あ……」
「ここじゃ説明しにくいから、ミランダさんの所まで行こう」
そうリーゼさんに言われ、ミランダさんの元まで行く。そしてリーゼさんが説明をしてくれる。
「実は、巡回艇の緊急時、ひずみが発生した時の操作の仕方をアカリさんが、まだ分からないそうなので、教えようとしたのですけれど。車の運転も知らないそうなので、少し時間がかかりそうだと思いまして」
「ありゃー、そう言う事かー。じゃあ時間かかるかもねー。そうなんかねー? どうなのー?」
「多分、教えるだけなら、一日くらいかと。ただ、実際に覚えるとなると…………もっとかかるんじゃないですか?」
「んー、そっかー。……まー、じゃー、今日はそれは止めとこうかー。別の日にしよー。今日はー――」
そう言いかけた所に、プランさんがミランダさんの肩を叩く。
「あー、そうだねー。ちなみにー、あの二人はどれくらいかかりそーなのー?」
「あ、ブースターがあるので、多分ちゃんと時間には」
リーゼさんが答える。
「………………それー、ほんとに、だいじょぶなん………………?」
「だ、大丈夫ですって、今度は!」
「…………ならー、今日はここはこれくらいにしてー。戻ろっかー。アカリちゃんー」
「え、あ、はい」
「戻って、きゅーけーにしよー!」
そう、張り切って、ミランダさんが宣言した。
お読みいただき、ありがとうございます。
巡回艇操作練習のお話は、二章の一話で少し出てきます。




