【四日目】 携帯食料
フロアーを出て、皆でエレベーターに乗る。そして、一階に下りる。
私は、そう、ここに来た初日しか一階に行っていない。見てすらいない。
「あの、このまま、その、巡回に出られるんですか?」
「いや、もう少し準備がある」
「ええ、今日は何味にしようかしら……」
(何味…………? ああ、もしかしたら、前に聞いた、あれかな? セリカさんがカレー味が無いから嫌いと言っていた…………)
「ああ、そうだわ。アカリ、今日、食事当番手伝ってあげて」
「あ、はい」
セリカさんが巡回に出る、という事は、今日のお昼はメイちゃん一人になってしまう、と言う事に気付く。
ポンと音がして一階に着く。久しぶりに見たような気がする、一階。
特に変わりは無い、と思う。
だが、私はどこから入ってきたのか、などと細かい事までは分からなくなっていた。
(確か…………あっちからだったような…………)
そんな事を思っていた私を尻目に、逆の方に皆歩き出す。
「アカリちゃん、こっちだよー」
そう、ミランダさんに呼ばれた。
一階は、他の階と違って、あのエレベータがあった所以外は、むき出しの石作りで、絨毯などは敷かれて居ない。
そういえば、リーゼさんが一階の掃除をしてたと聞いた。
(ここをやっていたのかな?)
そう思いつつ、通路を歩いていく。
「プラン達は、もう終わってるかしら?」
「うーむ、…………リーゼが納得していれば…………」
何の事だろうか。と考えていると、チュンさん達が、一階の人気の無さそうな扉の前で止まる。
ガチャっと扉を開け、灯りを点け、中に入る。私も後ろから部屋を見る。
そこには、棚、棚、箱、箱、箱、棚、棚、箱、箱。
飾りつけも、窓も無い。
あるのは、それだけ。
「ここに巡回時の携帯食料を置いているんだ」
そう、説明される。
セリカさんとチュンさんは、思い思いになのか、箱を選んでいく。
「これは………………この前食べたわね。じゃあこっちかしら」
「私は決まっているから」
多分チュンさんは食感か、香りかで選んでいるのだろう。選択肢はあまり無いようだ。
「これにするわ。………………やっぱり、……………………カレー味が欲しいわね……………………」
(…………………………やはりですか…………………………)
それは、保存食と言っていいだろう。簡素な食料だった。
ただ、これに関しては、私も前に、何度かお世話になったことがあったので知っている。開けて、食べるだけ。開けて飲むだけ。そんな食べ物。
「わたしはー、ここ嫌いー。カメラつけてよー」
あっ、と感づく。どうやら、ここの部屋はミランダさんは見えないのだろうか。しかし、それならば、どうやって選んでいるのか。
「あなた、あまり来ないから仕方ないわ。それに、どうせ付けても誰かに持ってきてもらうんでしょ?」
そう言って、自分の分をかばんに入れているセリカさん。
(……ああ、なるほど。誰かもう一人の人にお願いしているんだ……)
「食堂の食材がもし切れても、一応、ここので非常食にはなるわね」
そんなことを言いながら、セリカさんはかばんを担ぐ。
待っていた、チュンさんと、ミランダさんと共に、その場所を後にする。その後はそのどこまであるのか分からない、この城の一階の通路を歩いていく。
「あの、どこまで行くんですか?」
「あー、うん。ここの突き当りまでだねー」
そう言われて通路の先を見る。
(…………えと………………突き当たり。………………うわっ!…………まだ大分先…………)
先は見えたが、正直、遠い。
どうやら、一階は二階よりもさらに広いようだ。
「あの、一階ってどれぐらいの広さなんですか?」
「んー単純に二階の二倍くらいだねー」
(げ! あそこの二倍!…………覚えきれるかな)
「まー、正直一階はねー、使ってる所はあんま無いからねー」
「中央の、あそこ。あの広い部屋は何かに使えないかしら」
「でも窓も無いしな…………あそこは…………」
何やら中央には広い部屋があるようだ。
他にも何の部屋なのか分からない、扉がいくつもある。
「一階は…………広いからな。………………ま、使う所はそんなに無いから、使う所だけ覚えればいいよ」
そうチュンさんが言ってくれる。
そして突き当たりに、大きな扉。
(あ、四階のフロアーの扉と同じのよう)
だから、自動で開く。そして、扉が開いた先。
(……………………工場………………? 造船所……………………?)
そんな感じの所、としか、思えない。
天井も高い。そして広さも半端無く広い。
そして本来なら壁があると思われる部分、そこから外が見える。
どうやら、ここの一部は、ここから直接海に通じているようだ。
ここの部屋は、この広いお城でも、私が今まで見た中でも、一番広い空間だった。
「ここで、巡回艇のメンテナンスなんかをやっているんだ」
そして、薄々というか、リーゼさんは自己紹介の時に言ってくれた、その気付いていた事を質問する。
「ここで、リーゼさんと、…………プランさんもお仕事を?」
「ん、そうだな。大体は。ま、一階はその二人が主に他の部屋も使っている。っと、何処行ったかな?」
辺りを見回りながらチュンさんが答える。
「プランさーん! リーゼー!!」
広いので大声でチュンさんは二人を呼ぶ。
「本当なら、もう私達が行く頃にはもうそこにいるはずなんだけれど、……ね」
セリカさんが指す、そこ、と言う場所には、ボート、だと思う、乗り物がいくつか並んでいる。
(あれで、巡回を行うのかな?)
「ここもー、この辺しかカメラ付いて無いんだよねー。…………んな訳で私も二人が何処いるか分かんないやー」
どうやら、ミランダさんはこの広い空間の、この付近しか見えないらしい。私はふと周りを見回す。
(カメラは…………)
「あーアカリちゃん、こっちこっち。あ、そっちじゃないよー。もっと右、じゃない左向いてー、そのちょっと下向いてー」
そこから見えているのだろう、ミランダさんは場所を教えてくれた。
(あ、あった。前にフロアーで見たカメラ)
「よっほー」
ミランダさんとこれで視線が合っているのだろうか。
隣からそう呼ばれる。
その後に、少し離れた、どうもこの空間の中で、さらに部屋になっている所から、プランさんとリーゼさんが出てくる。
「あ、すみませんー、ようやく完了しました!」
「遅いわ。もう出発よ」
出てきたプランさんと、リーゼさんは、作業着らしき服を着ている。
どうやら、ここではそれを着ているのか。
私は見るのは初めてだった。
「今度は何をやっていたんだ?」
「いえ、給水先の所がどうしても気になっていたので。いや、まだまだ改良の余地は…………」
「ま、効率が上がってくれるのはいいけれど……」
「今日は私とセリカさんだ。あ、そうだ、あと、アカリはここの見学。ミランダはその付き添いだ」
こくり、とプランさんが頷く。
「あ、よろしくお願いします」
「そーゆーことー」
と私とミランダさん。
「へー、もう、ここを見学ですかー。早いですねー。じゃあ巡回は…………?」
「それはまだ先の事よ。でも、ま、覚えておいて、もういいから。」
リーゼさんの問いにセリカさんが答える。
(……もういい…………? 先程も同じ事を言われてたような…………)
「今日のポイントは何処ですか?」
「えーっと。”X-265Y23Z-102”と、…………”X356Y21Z226”だ。ちと遠い」
チュンさんが先程の印刷版を取り出し、それを見ながら言う。
「ああ、それなら。あのブースターも、昨日最終調整終わって入れましたから」
「あら、そうなの? …………………………今度は……………………大丈夫よね?」
「もちろんですよ! ね、プラン主任!」
(うん? 何の事だか…………?)
少しセリカさんは不安そう。だけれどリーゼさんは自信満々。
そしてプランさんはそれに、ニコニコ笑いながらこくりと頷く。
「そ、じゃあ、上手くいけば、早く帰れるのかしら?」
「ま、前は! …………ば、バッテリーがあれで切れるなんて…………」
「使い方は、前のと同じなのか?」
チュンさんが聞く。
「…………あ、そうです。中を改良しただけなので、操作性は同じです」
またも、それにこくり、と笑顔で頷くプランさん。
「全部に入れたの?」
「いえ、まだその二台だけです」
「………………じゃあ、……………………私達で試験って事なのかしら………………」
やはりちょっと不安そうなセリカさん。
「それじゃあ、行くけれど。アカリはそこで見ておいて」
「は、はい!」
そう言って、セリカさんとチュンさんは、それに乗り込み始めた。
お読み頂き、ありがとうございます。
どこで切れば良いかが、中々、難しいです……




