【三日目】 娯楽室
エレベーターを出て、そのまま食堂の所まで進む。そして、お風呂場の入り口の前で止まる。
ミランダさんがそこで私のほうを向いてから話始める。
「さあーさあー、遂にやってきましたー、こちらの扉がー。そう! 私達の天国の入り口、そう! 娯楽室でーす!」
「私は、テラス等も好きだが……?」
「じゃー入っちゃう? 入りますかー? アカリさんっ! もー」
「いや、そこまでもったぶらなくてもいいだろ。さ、入ろう」
「やーなのー! 私がここは紹介するんだからー!!」
「わ、わかったから、じゃあ開けてくれ……」
少し、わくわくする。さすがにこれだけ言われると、どんな所なのか気になる。
そして、ミランダさんがドアを開ける。
「さあさ、召し上がれー」
ミランダさんがドアを開け、先に私を通してくれるようだ。
どんな所ところなんだろ?そう思いながら、中に入る。中は――――
(もう…………なんて言えば、いいんだろ………………これ………………)
ここの城ではこれまで見た所とは全く違う、別の空間。広い部屋の中にいろんな物が置いてある。見た事のない物や、綺麗な物、よく分からない物、いろいろ光ってる物。広い部屋が狭く感じる。
「……………………………………ふわー…………」
「どおー? どうですかー、アカリちゃん。ここが娯楽室ー! いろいろあるよー! たっぷり楽しめるよー! さー! どれから説明しようかねー!」
「…………じゃあ、ミランダ、後頼む、って、ん?」
どうやら、説明はミランダさんに任せて、奥に進もうとしたチュンさんが、先に気付く。その後ミランダさんが気付き、私も気付く。
「あらー……リーゼちゃん居たの?」
「…………………………………………」
奥の何かに向かってリーゼさんは座って、ひたすら何かをやっている。返事もない。何やらピコピコと音がしている。
(あれって…………一度見た事があるような。…………………………なんだっけ?)
三人でその場で少し見ていると、リーゼさんが呻き声を上げた。
「うあうっ!! ………………そ! そんな…………あ、あとちょっと……………くぅーっ!!! …………って、あ、あれ?」
こちらに気がついたようだ。
「……………………………………来てたんですか?」
「……………………あー、うん、今、な」
「………………もしかしてー、邪魔しちゃった?」
「いえ、気がつきませんでした…………」
「リーゼちゃんそれ好きだねー」
「いえ、これで躓いているだけです。……これは…………なんで、こんな風に作ったんでしょうか。…………悪意すら感じますよ……」
「…………あのー、あれって……?」
「あー、あれねー。あ! んじゃー、せっかくだしー、アカリちゃんにもやってみてもらう?」
「………………私は読書をさせてもらう」
そそくさとその場から離れるチュンさん。
「ええ、私も今終わってしまいましたし。他の人がやるのを見るのも、参考になるかもしれませんし」
「じゃーじゃー、アカリちゃん、いこいこー」
チュンさんは本が並んでいる本棚の所に、そして、私とミランダさんは、リーゼさんの所に行く。そこに行く間にも周りを見るが、もうなんだか色々ありすぎて分からない。
リーゼさんの所に行くと、それは大きな機械だった。
一度見たような気がする、昔のモニターだと思う物が、点いてた。
「アカリちゃーん、これ知ってるー? 今時、珍しいんだよー」
「…………えと、…………一度…………見た事あるような無いような。……昔の……………………………………なんですか? これ?」
ムフフーと笑ってミランダさんが答える。
「これはねー、昔の人がやってたゲームなんだってさー。面白いでしょー?こんなおっきな機械を昔はいっぱい作ってたんだってさー」
その物は、一度、本当に、どこで見たのかも覚えていない。だがどこかで、見た事が気がする。だが、何の機械なのかなんて事は知らなかった。
「…………ゲーム……ですか?」
大きい。それに付いているのは、多分昔のモニター、
それと先程リーゼさんが操作していた、アナログなボタン。
なにやら、丸い玉のような物も取り付いている。
そして、その周りにも同じような物が数台置いてある。
「そーそー、昔はねー、これでお金稼いでる人も居たんだてさー。もー今じゃ、ほとんどないらしいけどねー。あ、ちょこっとだけ、改造してもらってるけどねー」
「…………………………その改造で、何か間違ったんじゃないのですか? これ………………」
リーゼさんは何やら怪訝そう。
「……んーー、設定とかはそのまんまのはずだけどねー? まー、まー、とりあえず座ってよー。やってみてよー」
「…………は、はぁ」
ミランダさんが説明している間に、リーゼさんが座っていた椅子に座る。
「あ、で、でも待ってください、いきなりこれは難しいんじゃ……」
「あー…………確かにー、ちょい、難しいねーこれ。ま、でも、慣れればそうでもないよー? 私結構好きだけどねー」
座った先にはモニター。何やら画面が出ている。
「ミランダさんのスコアー、もう少しで越せそうだったんですが…………」
「おーおー、じゃー、もちっと本気出してスコアー伸ばしとこうかねー?」
「…………あの、それでこれ。………………どうするんですか?」
座ったまま、二人を見上げる。ちなみにチュンさんは、既に我関せず、といった感じで、少し離れた所にあるソファーに座って、本を開いている。
「あー、そうだねー。これはねー、まずここの所をー、………………………………リーゼちゃん、………………最初の方、教えてあげて…………?」
「え? あ、はい。じゃあアカリさん、最初はここを、っと、こうやって押し込むんだ。その後に、ここのボタンを押す。そうすると始まる。そして、このレバーと、ボタンで操作するんだ」
モニターの下辺りにボタンがいくつかある。その横のレバー。
(これで……………………………………何を操作するんでしょう…………?)
そう思っていた所に、ミランダさんは何か横に回って、何かを入れている。
「ミランダさんは、あれを入れないとモニターがちゃんと見えないから。ただ、…………不正などしてませんよね? ミランダさん」
「えー? ちゃんとやってるよー? 後で見せたげるからー」
「じゃあ、アカリさん、このボタンを押して始めるんだけど、ルール等も初めてだよね」
「あ、はい。…………というか…………これが、ゲーム、なんですね」
「そーそー。っと感度良好! じゃーアカリちゃん! こんなのはー、まず何回かやっちゃってー、そしたら分かってくるからさー」
「いいんですか? それで。…………ま、じゃあ、とりあえず、このゲームは横スクロールだから。横に自分が動いていくんだよ」
(ヨコスクロール……? 横に動くって自分が…………? よく分からないけれど…………これを押せば始まるんだよね…………)
「とりあえず、始まったら、このレバーで動かして、このボタンでジャンプ、で、こっちのボタンがアタック。このボタンは必殺技だね」
「……………………えと…………………………全然、分かりません……………………」
「まーまー、何回でも出来るから、一回やっちゃいなよー。私も見てるからさー」
「えと、じゃ、じゃあ、お、押しますね。これ」
「うん、それ押さなきゃ始まらないよ?」
(えと、じゃあ、ポチっと…………あ、あれ? なんか画面が変わった! ってあれ? こ、これで動かす…………? で………………えと、こっちのボタンで…………え? ジャンプってこれ?? ああああ、なんか、か、勝手に横に動いてくーーー!)
「あー! アカリちゃん、そこ! そこでジャンプ! あ、それアタックだよ! あ、そこまずいよ! あ! あー…………」
『-ゲームオーバー-』
画面にそう表示される。
「……………………え? 終わり…………ですか………………?」
「そう。それでゲームオーバー。やはり、いきなりこれは難しいのでは?」
「だいじょぶ、大丈夫! アカリちゃんは物覚え良いしー。さーさー、次いってみよー」
「え? え?」
そう言ってミランダさんが勝手にボタンを押す。そしてまた始まった。
(え、えと、こ、これでジャンプ! え、えと、こ、これで動かして……)
「あ! そーそー! そうやって敵をよけてー、あ! それはアタック!」
(ここここ、これ!? えい!)
-ボーン-
何やら画面の中で繰り広げられている。
「そーそー! そんな感じ! あ! アカリちゃんそれ! それ取って!」
「ジャンプするんだ! アカリさん! そこ! 今!」
後ろで白熱しながら説明される。私は説明されるがまま、操作をする。
(えい! ジャンプ! …………え!? な、何? おおきくなちゃった!?)
「今のうちだよー!! どんどん進んじゃってー!!!」
「お!? いい感じ! あ! もうすぐ切れるよ! 気をつけ――」
-ドーン-
『-ゲームオーバー-』
何やらモニターの中で爆発がした。その後、モニターが暗くなって先程と同じ文字が出る。
「――あー。……今の惜しかったねー…………」
「あの効果は時間が決まってるんだよ」
(…………まだ。よく分からないけれど…………)
途中までは何かいい感じだったらしい。
「一度やっている所を見せてはどうですか?」
「そうだねー。…………じゃあアカリちゃんちょっち代わってー」
そう言われて、私は席を譲る。ミランダさんは席に座って指を屈伸する。
「んふっふっふっふ…………では、このミランダ様の実力を、見せる時が来たようですわね。ぬっふっふっふ」
(…………口調が………………変わった…………)
そしてポチっとゲームをスタートする。
(あ、始まった。ってえ? あれ? そんな風に動くの!? あれ!? え? い、今の何!?)
「え! ミランダさん、そこで必殺技使っちゃうんですか!?」
「…………ぬっふっふっふ!」
よく分からないが、私の時と画面の動きがまるで違う。そして、手元も恐ろしい速度で動いている。
「な! そ、そんなやりかたが!?」
「ぬっふー! なは!」
軽やかに進んでいる。そう見える。
「ば、馬鹿な…………そんな事をしたらその後のボスが!」
なにやらリーゼさんも白熱して観ている模様。しかも驚愕している。
(私には………………そこまで何が何やら分かりません………………)
「それはねー! っと! こーするんだよーーー!」
「えっ!? えええ! そ、それで倒せるんですかーーー!?」
画面には、私が進めれなかった先に大きな何かが表示されている。
(……あれは、敵?)
-チュボーン…………ティロリロリーン-
あっという間にその敵を倒してしまった。
「そ、そんな…………一面が、こんなに早く…………」
「ぬっふっふっふ。見たかね? リーゼ君。ここのボスには必殺技などいらんのだよ」
口調がかわったままのミランダさん。
「べ、勉強になります! なるほど……」
それを感嘆し、関心しているリーゼさん。
「……………………」
よく分からないので何も言えない私。ともあれ、ミランダさんはとても楽しそうだ。リーゼさんも、多分、楽しんでいる。
「ムホーッ!!」
「っな! それでいけるなんて!?」
どうやら、ゲームはどんどん先に進んでいる。が、もはやどこがどうなのか分からない。けれど、楽しそうだ。
「フッハーァァァ!」
「ああぁぁ! また! スコアがっ!」
――――――数十分後、どうやら、終わったようだ。
「ぬっふっふっふ。また、つまらぬスコアを出してしまった………………」
「っく! じ、自分は…………まだその前のスコアさえ………………」
二人はもうのめりこんでいた。というか、初めて挨拶した時のリーゼさんと印象が違う。
「ふひー。あー、面白かったー!」
「くっ…………先程の自分等…………まだまだミランダさんの足元にも…………」
「………………あ、あー。………………ごめん、アカリちゃん………………。つい……のめりこんじゃったー」
ようやく、ミランダさんの口調が元に戻る。
「………………あ………………そういえば………………」
そして二人して言われる。
「「今ので…………分かった?」」
(………………………………ま、まぁ面白そうな事だけは…………………………)
その後、ミランダさんは「まー、慣れれば面白いもんだよー」と言う。リーゼさんは「最初は一面クリアーからだよ」と言う。
見ると昔の大きな機械のモニターには、クレジットが流れていた。
「……あのー、ここにはこういうものが色々あるんですね」
「昔は無かった」
終わるのを見計らっていたのか、チュンさんがこちらに来ながら言う。
「ミランダや、エレナ、それに続いて他のメンバーまでもが色々買って、ここに置いているんだ」
「いやー、だって面白いじゃんー」
「私は正直こちらのゲームは向かん。だが、リーゼがハマっているのは、最初驚いたが…………」
「やりだすと、最後まで完璧にやりたくなってしまいまして……」
「でもー、最初に買ってきたのはセリカっちだよー?」
「ま、そうだな。おまけに室長までこんな物も買ってきたしな」
チュンさんが言いながら見るその先には、これまた何をやるのか分からない、丸い板が壁にかけられている。
黒と赤と白、そして数字が回りに書いてある。
「ま、これは私も割りと好きだが」
「私はー、ダーツ苦手ー……」
「これも、室長のスコアーを越せません………………」
口々にそういう。
「………………ダーツ?」
「ああ、これはそういうゲームだな。ルールは簡単。あの的の、ほら、あそこの床に線が書いてあるだろう? あそこから、矢を手で投げて、点数を競うゲームなんだ」
「なぜ室長達は、あそこまで正確に投げられるのか…………中々私は上手く出来ない」
「ダーツに関しては、室長と、後セリカさん、プランさん、そしてユウカでよく競っているな。リーゼは………………ま、がんばれ」
意外な面々だ。アンカ室長と、セリカさんと、プランさんと、ユウカさんが。
「残念ながら私もリーゼくらいか。あの四人は、上手すぎる…………私はここで本を読む事が多いな。ここには皆が薦めたい本を置いていく。メイなんかは料理の本をよく置いているな」
見ると先程チュンさんが見ていた大きな本棚。その横に、それを見るためだろう、大きなソファーと大きな木の机がある。
「あそこで、皆でボードゲームをやったりもするな」
「あー、あれは人数揃わないとねー。最近やれてないねー」
「…………私は、ミランダさんやセリカさんに、すぐ点数取られますが…………」
「リーゼちゃん、それはねー。戦略ってやつだよねー」
「それは私も好きだな。皆でやれるし。種類も多くなってきたしな」
「あー、まだやってないのが無かったけー?」
「ありましたね。確か、アリスさんが置いていった物では?」
「そうだったな。前はアリスが入れないから、また今度って事で、やってなかったな」
「…………へー、皆色々置いて言ってるんですねー」
アンカ室長や、セリカさん、アリスさんも、皆…………。
「そうだよー。そんで今ー、こんな感じー」
「まぁ、楽しい所ではあるよ。特に人が揃うとな」
「そうだね。…………アカリさんも――――あ、いや、なんでもないよ」
何かリーゼさんは言いかけてやめる。
「まー、人が居なくってもー、さっきのリーゼちゃんみたいに熱中してる子も居るしねー。仕事とかー、食事とかー、あとお風呂とかー、やること終わってればいつでもここで遊んでてもいいんだよー」
「あと掃除と洗濯もだ。なぁミランダー? んー?」
今日のミランダさんの洗濯の山を思い出す。
(普段あんまりやってないのかな………………)
「そ、そーんなわけでー、まだまだー、ここにはアカリちゃんの知らないもの、いーっぱい詰まってるよー」
スルーした。いや、だけれど、ミランダさんの言うとおりだ。ここにはまだまだ、私の知らない楽しそうな事が詰まっている。
「ま、それに関しては同意だ。っと、もうそろそろ、掃除を始めないとな」
そう言って時間を見る。チュンさんが見た先の時計は、とても奇抜な形をしていた。どうやら、今は《16:30》を過ぎた頃らしい。あの鐘の音は聞こえなかった。
らしい、と言うのは、私にはその時計が最初、読み取れなかったからだ。
(……………………い、いや、時計なんだから、もう少し分かりやすく……………………)
ともかく、食事の前までに、掃除をしないといけないようだ。
「ちぇー、まー、しゃーないかー、じゃーまた次ねー」
ミランダさんは、まだ説明不足の様子だった。
「そうですね…………次こそは!」
「で、掃除は…………あれ? 何処だったか? ミランダ」
チュンさんは忘れてしまった、と言う様子で、掃除場所は、ミランダさんが教えてくれた。
「アカリちゃんはー、この二階の通路ねー。こないだやった要領でねー。チュンはー、ありゃー、残念、大会議室だねー。エレナちんとだねー。そんでリーゼちゃんは一階通路でー、プランさんも一階だねー。
そんで私は通信室だねー」
「了解です」
「…………はぁ。大会議室か…………。まぁ、だが、今日は大体は入れそうだな」
「そだねー。あーアカリちゃん、今日は通路はユウカちんとだよー」
「はい! 分かりました」
そうして、四人は娯楽室を後にした。
お読みいただき有難うございます。
こんなゲームは私も知りません………………




