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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
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【三日目】 〝PDCAサイクル〟

会社での概念がつらつらと……

関係ない方は……飛ばしていただいても……


 15分ほど休憩して、再び大会議室に、私達4人は来ていた。


(ミランダさんは……うん、少ししょんぼりしているというか、反省しているよう…………)


「うううーー、やりますよーーー、わかってますよーー」


 あの後結局、ミランダさんはそう言っていた。

 確かに、分かっていたけれど、単に面倒だからやってなかった、と言う事みたいである。


 少しして、アンカ室長も戻ってきた。


「お待たせしました。皆さん」

「室長、あの、何か情報はありましたか?」


 ユウカさんがアンカ室長に訊ねる。


「いいえ、そういった事は何も」


 そう言う訳なのか、先程の講義の続きが始まるようだった。

 先程アンカ室長は何かを言いかけていた。

 私のメモ帳には”ピーデ”と書かれている。


(……昔、そんな名前のお姫様が居たと聞いたような…………)


 そこにミランダさんが突っ込む。


「あれー? アカリちゃん、なにーその”ピーデ”ってー。なんか昔そんなお姫様が居たゲームがあるって聞いたようなー……」

(う!私と同じ事考えてる……………………じゃない!ていうか、見えてるの? どこから見てるの?)


 そうは思うが、回りを見渡すには、皆もいるし、もうアンカ室長も、説明のをしようとしている。


「では、先程お話しようとしていた所からですね。」

「ミランダさん、多分それは”ピーディーシーエー”の最初の方かと……」

ユウカさんが小声でそれに突っ込む。


 そうだった。ディーと言いかけた所であの音が鳴ったのだ。だから、私も”ピーデ”までで書き終わっていたのだ。


「どうしましたか?もしかして、もう教えられたのですか?」


「「「「いえいえいえ」」」


 ユウカさん、チュンさん、ミランダさんが声を揃えて言う。


「は、はぁ……? まぁ、では続きからですね。確か………………………………? …………?」


「「「「…………………………………………? …………………………」」」」


(……アンカ室長…………どうしたんだろう?)

「え、えーっと……ど、何処までお話ししましたっけ?」


(……アンカ室長…………あなたもですか…………)


「た、確か”ピーディーシーエー”からだったよ、室長」


 チュンさんがそう発言する。


(そうそう………………で………………何? …………”ピーディーシーエー”って………………)


「……ああ、そうでしたね、はい、そうでした。えー、では、アカリさん、”ピーディーシーエー”について説明しますね。

……コホン、アカリさんはこの言葉は聞いたことはありますか?」

「え……い、いえ……初めて聞く言葉……です」

「そうですね。確かにこの言葉は、こうして会社に入らないと、中々聞くことは無いかもしれません。ですが、会社に入ると、基本の概念の一つとして知っておいて欲しい事です」


(ふむふむ…………基本概念と。……あれ?確か”相・連・報”も、”5S”も基本だったような……?)


「少し前置きをしますが、何をするにも、基本は大事です。例え、他が秀でていても、その基本が全く出来ていない、分かっていないのでは会社で働く者としては、特に、そうですね、古参の方達からはよく思われません。それに確かに、私にも大事であると思えることです。それでは、その基本概念の一つの”ピーディーシーエー”ですが、これはかつてのアメリカ合衆国、今で言う、北アメリカ共和国と、南州合衆国での言葉の頭文字をとった物です。」


(……え? じゃあ……)


「一つずつ説明しますね。まず”ピー”。かつて英語と呼ばれていた言葉の”P”です。アカリさんアルファベットは分かりますか?」

「え……あ、はいそれに関してなら……えと、”エー、ビー、シー、ディー、と続く物ですよね」

「はい、そのアルファベットです」


 よくできました、と言う感じで言われる。


(…………なんだか………………アンカ室長が本物の先生に見えてきた……………………)


「その中の”P”、これはプラン、つまりは、計画、を意味します」


(プラン……さん? じゃなくて!)


 一瞬プランさんのあの魅力的な笑顔が飛び込んできた。が多分そっちじゃない。


「では先にその後も物も説明しますね。次に”ディー”先程アカリさんが言った”D”ですね。こちらはドゥー、実行、と言う意味です。そして”シー”。これはチェック、評価、と呼ばれる事が一般的です。最後に”エー”、これはアクト。本来の意味は少し違いますが、ここでは、改善、と言う意味で使われています。ここまではよろしいですね?」

「は、はい!」


 しかしまだ理解しきれない。


「では、それらを詳しく説明していきます。まず、”P”、計画ですが、これは、このPDCAサイクルの中で最も重要であると捉えられる事が非常に多いです。

たとえば……そうですね、アカリさん、あなたが、自分のお部屋の掃除をしようと、したとします。ではまずあなたは、そのお部屋を掃除するために何を行いますか?」

「え……?」


 答えながら、考える。


(えっとお部屋をお掃除する……あの広いお部屋を…………でもじゃあ、まず掃除道具が要るから……)


「はい、もういいですよ」


 少し私が考える素振りを見ていたアンカ室長がそう答える。


「……え?」


 だが、私はまだ何も答えていない。


「今、何を考えましたか?」

「え……? ……えと、お部屋をお掃除する為に……まず掃除道具を準備して……それから……」

「はい、そうですね」


 またも、そう答えた私に、よくできました、と言う感じで室長が言う。


(いやもう、アンカ先生でもいいかもしれない…………)


「アカリさん、今それを行うために、まず何をするか、を考えましたよね。つまりは、”P”とはそういう事なのです。掃除をする為に、まず初めに掃除道具を準備する。今、アカリさんはそういう計画を頭の中で立てた、ということです。そして、会社ではそれをもっと具体化して行います。たとえば、今日業務を行う。その業務は資料作成である。資料作成をする為に、まず誰々に情報を聞く。資料作成をする為に、何を準備する。そして、それをどういった順番で、何をどのようにしていくか。そして最終的にどういった状態を完成として、その完成した物を誰に出すのか。そして、そう、例えばアカリさんのそのメモ帳にそれを書いていくのです。

まず、朝に、今日は何をやるのか、どういった手法でやるのか、誰にそのやった物を渡すのか。ここまでは、分かりますか?」

「えっと、つまりは……その日の計画を立てて……それをメモ帳に書いて……ということですか?」

「ええ、そんな所ですね」

「でも、それだけじゃ足りないよ。アカリ」


 それまで聞いていたユウカさんが発言する。


「え? 足りない……ですか……?」

「そう。じゃあ、アカリ、あなたは今日ここでこうやって、室長にこんな講義を受けることは、計画できてた?」

「……え」

「できてなかったよね。今日ミランダさんに、何をやるか聞こう、って思ってた。違う?」

「……え……あ、はい」

「つまりは、そう言う事」

「……え?」


 どういうことか分からない。


「まーでもさー、そういうのってある程度経験しないとねー。」


 ミランダさんが言う。


「うむ、今日は確かに仕方がない、がアカリ、明日から、いや、この後からは違うぞ?」

「え?え?」


 私にはまだ分からない。


「皆さんが言いたい事は、そうですね。簡単なようで難しい、でも、ちゃんとやれればそれは簡単に思えることなのですよ。それは、つまりは、不測の事態も考慮した計画を立てる、と言う事です」


 そしてユウカさんがさらに言う。


「まぁ、チュンさんが言うように、今日はまだいいよ。けどさ、アカリ、分からない事はちゃんと聞くって、さっきの”相・連・報”でも聞いたよね。アカリはさ、その相談がちゃんとできてないんだよ。だから、計画もちゃんと立てれない。そう言う事」


 それをアンカ室長が引き継ぐ。


「ええ、少し厳しいようですが、それはとても大事な事です。計画を立てる事は重要です。ですが、その計画を立てるには、ミランダが言うようにある程度、経験は必要かもしれません。しかし、ではその経験をするまでは、アカリさんは何も計画を立てなくていいのか。それは、違いますよね?」

「……あ、はい。」

「では何をしますか? いえ、それは今ユウカさんが言いましたね。”誰かに相談する事”。たとえ経験が無くとも、相談する事は出来るはずです。僅かにでも分かってくれば、それは可能な事のはずです。そして、計画を立てる。相談相手が経験豊富なら、もしかしたら、こうなるかもしれない、というアドバイスも貰える筈です。その点、ミランダはそういった経験は豊富です。だからミランダ、あなたは今日もしかしたらこうなるかも、という、予測を立ててましたね?」


 アンカ室長が最後の方で、ミランダさんに聞く。


「んー……そうかもねー。もしかしたら今日は暇かもねーって。だから、その分アカリちゃんになにかしらの話があるんかなーくらいには思ってたかなー?」

「で遅刻もしたわけだ」

「うっ!? いやーそ、それはー……」


(……確かに……そう……かもしれない……今日、朝、ミランダさんに聞けるタイミングはあったと思う。……他にも、チュンさんや、ユウカさん……)


「まぁ、ミランダのそれは悪い実行のしかたですが……、予測自体は、ある程度正確な物だったのでしょう。だから少し遅れても……と言うのは、まぁ怒られても仕方ないことですが……ともあれ、ミランダの場合はこれまでの経験から、そのように予測を立て、計画をしました。さて、では最初の方に戻ります。”P”は計画を立てることです。しかし計画を立てるにはある程度、予測が必要です。ですが、まだ経験が浅いアカリさんには、そちらは難しい事です。ではどうするか。それならば誰かにそれを相談し、計画を立てる。そして、それをメモであったり、資料であったりにまとめる。先程言った、何を、どのように、誰にと言う事も含めてですね。どうですか? 少しは理解が出来ましたか?」


(……確かに……少しは。……じゃあ……朝、チュンさんや……後もしかして……エレナさんも……?)


「ここのメンバーで計画を最も分かりやすくまとめているのは、エレナさんがそうですね」

「エレナが朝何かを見ているのを、アカリは見てないか?」


 そう、チュンさんに聞かれる。私はそれを思い出していた。


「はい……朝、何かを熱心に見ているな……って」

「はい、そうです。エレナさんが見ているのは、おそらく、今日の計画をまとめたものでしょう。そして、その中には不測の事態の事も書いてあるのかもしれません」


(………………なるほど)


「そしてその”P”の計画をしっかりやれて入れば、後は割と簡単です。なにせ、その計画には不測の時のことも書いてありますから。”D”の実行する。これは簡単ですね。先程の立てた計画、その通りにやればいいのですから。そして”C”、評価、チェックする。実行した物が、計画通りかどうかを確認する事です」

「あー、そっちはアカリちゃん、割としっかりできてるねー」


 それを聞いてアンカせんせ……じゃないアンカ室長は頷く。


「ちゃんと実行した物、それが出来ていたかをしっかりチェックする。大事な事ではありますが、それも、計画に入っていれば、計画通りにチェックをするだけです。そして最後に”A”改善ですね。最初はこの”A”に囚われがちですが、それは実は最初の計画がしっかり立てれていない事の証明なんですね。改善する事を最後に見つける。そして次につなげる。でも計画がしっかり出来ていないと、それこそ、実行も上手くいかず、チェックにも時間がかかり、そして改善点が山のようにできてしまう。そうして、業務効率が下がってしまいます。

ただ逆に、この”PDCA”、特に”P”がしっかり出来ていれば、……どうですか?」


 そう聞かれ、そのまま私は口にする。


「は、はい。全部計画通りなら……確かに後は……そんなに難しくない……かも……です……」


 それを聞いて、ゆっくりとアンカ室長は頷いた。


「はい、そしてそれは毎日の業務に当てはまります。いえ、細かく分ければ、業務毎でそれを行っても良いです。ただ、そうすると、さすがにちょっと計画に時間がかかりすぎますが。そして、そういうサイクルで業務をやっていく。だからこれは”PDCAサイクル”と呼ばれています」

「PDCAサイクル……」

「はい。ですので、業務を行うにあたっては、その事を常日頃から考え、そして実行するようにしてください。そうすると、いつの間にか出来るようになっていますから。ま、ただ、ミランダのように実際の意味を忘れてしまっても困りますが……」

「えーいやーでもー、そこはちゃんとやってますよー」


 ミランダさんは講義の声を上げる。


「その割には……”5S”が……ねえ………………」

「うううう、もうそれはいわんといてー…………アンカせんせー…………」


(………………あ、とうとう先生といってしまった。……ミランダさんが)


「先生は悲しいですよ……。ミランダはやれば出来る子だと思うんですけど……」


(ああ……目の前で…………先生とやれば出来る子の……会話が始まってしまった…………)


「でもーせんせー――」


 ミランダさんはそういいつつ席を立ってアンカ室長の所に行く。


「――いつもやっている事をちゃんと意識してやればいいんですよ? ミランダ。」


 そんな事を聞きつつも、今日はとても大事な事を教えて貰ったのだ、それをしっかりと頭に入れ、これからやっていこう、と考える。

 チュンさんも席を立ってミランダさんとアンカせんせ、じゃない、アンカ室長の会話の中に入っていく。


「まったく、お前はやれば出来るはずなんだから――」

「うー――」


 そんな中、ユウカさんはこちらを見ていた。

 その視線に気付く。


「アカリはさ、今言われた事も、大事だけどさ。……でも、その前の、もっと大事な事も出来てないんじゃないかな?」


 皆に聞こえないようになのか、小声で……しかしはっきりと、そう言われる。


(………………その…………………………前の、もっと大事な事………………?)


「……自分で、よく考えてみなよ。自分に本当は何が足りていないのか…………これまで、そうだったのか……」


 そう言ってユウカさんも席を立ち、アンカ室長たちのところへ行く。


「あの、皆さん、そろそろお昼の時間じゃないですか?」



「「「………………あ」」」



 皆で時計を見る。



 時刻はもうすぐ《12:00》を迎えようとしていた。



お読みいただきありがとうございます。

そんな私もまだまだなのです……

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