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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
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【三日目】 洗濯


 その後、私は部屋に戻った。

 時間はまだ《5:30》。メイちゃんが部屋から出てくる所は見ていなかった。


 机の所の椅子に座る。

 ベッドだとまた昨日みたいに寝てしまったらいけないから、と思ったからだ。


 先程のユウカさんの言葉を思い出す。


(ユウカさんは何を伝えたかったんだろうか……)


〈私は、あなたから、まだ何も聞けていない〉


 その言葉が頭の中で木霊する。


(………………どういうこと……なのだろう。…………でも、もしかしたら……言いたかった事は、……私の――)


 そう思いかけた時だった。隣からドアを開け閉めする音がした。


(……あ、今度こそメイちゃんだ)


 足音はほとんど聞こえない。部屋を出ようかどうか迷ったが、その間にメイちゃんは行ってしまったようだ。


 時間はまだ《6:00》にもなっていない。けれど、私の日数、いや時間は残り少ない。ここの人たちから、これからどうするかを、考えるためにも、色々聞いていかないといけない。


 だが、ユウカさんは何もそう言う事については話してくれなかった。


〈じゃないと、結局苦しむのは、あなた自身よ〉


 だが、ユウカさんは、私の事を邪険にして、話さないのではないのかもしれない。


(…………もしかしたら。でも…………ユウカさんは……何を……失ったのだろう…………?)


 多分、今のままでは、それは聞けないのかもしれない。

 椅子から立ち上がり、もう一度窓から食堂を見る。

 人影が見える。

 メイちゃん、それからセリカさんらしき人影である。


 今日は、ちゃんとセリカさんもいる様子だ。

 ならば、食事当番を代わる必要も無くなった。


 時間を見ても、まだ朝御飯には時間がある。

 私は、のろのろと、朝の支度を始める。

 先程は簡潔に済ませていたのだけれど、やる事も無いので、昨日と同じように丁寧に朝の支度をする。


 これまでは、こんな朝では無かった。

 そんな余裕など無かったのだ。


 だが、小さい頃はそうでもなかった。

 お祖母ちゃんに朝起こされてから、お祖母ちゃんが用意した朝御飯を食べて、それからベーシックに通う。


(あの頃はあの頃で、私がよく朝寝坊してたから、朝は時間が無かったっけ……)


 私のお祖母ちゃんは、厳しくも優しい人だった。

 ふとそんな事を思い出しながら、朝の支度を済ませた頃に、ドアからノックする音が聞こえた。


 -コンコンコンコン-


「……あ、はーい」


 洗面室からドアへ行き開ける。

 そこにはチュンさんが立っていた。


「……おはよう。アカリ」

「あ、おはようございます、チュンさん」

「入っても……?」

「あ、はい、どうぞ。」


 チュンさんは中に入り、ドアが閉まってから話し始める。


「朝の支度はもう済んでいるみたいだな。昨日の事は、室長から聞いた。もう少し、考えたいそうだって」

「……はい。まだ、しっかりと答えが出せてないので……」

「……うん。大事な事だから。それでいいと思う。……それはそうと、昨日は晩御飯に来なかったからな。

ちょっと心配してたんだけど……」

「……あ、ごめんなさい、昨日はつい……考え事をしてたらそのまま……」


 ふむ、と腕を組んでチュンさんが答える。


「ま、夜だったからまだいいがな。ただ、やっていくのなら、例え試験期間でも、寝坊はいかんぞ?」

「…………あ………………ぅ。………………気をつけます………………」

「………………まぁ、正式に入社しているやつでも、寝坊してしまうやつはいるが…………………………」


 少し頭を抱えている。


(誰…………だろう…………?)


「…………あれの真似はしないようにな…………」

「は、はぁ…………」

「ここの朝御飯は7時半だから、それにまぁ、間に合えばいいんだが、朝の支度などを考えると、6時半頃には起きたほうがいい。それに当番があるともっと早くなる。そういえば、アカリは今日は何時に起きたんだ?」

「あ、今日は5時ごろに……」

「ん!? そうなのか? いつもそうだったのか?」

「あ、いえ、えっと、今日はたまたま……」

「ん……ま、まぁ早く起きれるのなら、それでいいが……室長やユウカもそれぐらいのようだしな」


 ユウカさんを思い出す。

 確かにいつもこの時間、と言っていた。


(そして、アンカ室長も……そんなに早いんだ……)


「ユウカさんには今朝…………その……ちょっと会いました」


 話の内容は、あまり話せない。


「ふむ、そうか。ユウカはどうも、それくらいの時間に起きるのが、ここに来る前から当たり前だったようだな。……っと、あまり詳しくは私からは駄目だった。ちなみに室長は、朝早く起きて、風呂に行っている。」

「え?……あ、そんなことを聞いたような……」

「室長も、いつも、だな。私も何度か一緒に行ったが、気持ちがいいもんだった。………………ただ、気持ちが良すぎて、寝てしまいそうになったから、私はあまり行かないな…………行けないな……………………」

「……いつか行ってみたいです……ね」

「うむ、その代わり、その後は寝てしまわないようにな」

「……あ、アンカ室長は、大丈夫なんでしょうか…………?」

「慣れた、と言っていた。それに関しては私も少し、羨ましい…………」

「ふふ……そうですね」

「うむ。……っとそろそろ行ったほうがいいな」


 時計を見ると、《7:00》前頃だった。


「あ、もう行かれるんですか?」

「ん? ああ、そうだった、こっちを言いに来たんだった。アカリ、ベッドのシーツと、あと使ったタオルとかを、持って行く準備をしよう」

「……え?」

「食堂に向かう前に洗濯物を持っていかないとな」


 そう言われ気が付く。

 掃除、洗濯、料理のうちの、洗濯に関してはまだ何もしていなかった。


(今は、……誰がやっているのだろう)


 ともかく、私はベッドのシーツと、初日に使ったまま、机に置きっぱなしだったタオルを纏める。その間にチュンさんがそれを入れるらしき籠を準備してくれていた。どうやら、大きいので、通路に置いていたようだ。


「この中に入れていくんだ」


 籠は大きかった。シーツとタオルだけだと、まだ余裕で他にも入りそうだ。


「自分の服などは、仕事が終わってからでも、好きな時にやればいいが、シーツやタオル、あとカーテン等は朝こうして皆の分を一斉に洗濯するんだ。それから、籠は終わったら自分の部屋に置いておくようにな」


 なるほど、と私は自分が着ていた服を見た。

 脱いだ後、畳んで置いておいた服。

 まだ、着た後に洗濯をしていない。


「じゃあ、行こう」

「あ、はい」


 そして、私はチュンさんと一緒にその大きな籠を持って食堂方面へ向かう。

 洗濯場は、お風呂場の先にあるらしい。

 ちなみにチュンさんも自分の分は通路に置いていた。


(……だから最初は、チュンさんの分は? って思ったのだけれど……)


 お風呂場を通ろうとした時に、アンカ室長がそこから出てきた。


「あら、おはよう。チュンさん、アカリさん」

「ああ、室長、おはよう」

「おはようございます、アンカ室長」


 どうやらアンカ室長は、今、お風呂上がりのようだった。


「あら……そういえば、洗濯の事はまだちゃんとお話してませんでした…………」

「ああ、だから今、私が教えてる。室長の分は?」

「先に置いてありますので」

「了解。じゃあまた後で」

「ええ、よろしくお願いしますね」


 そう言ってアンカ室長は去っていった。


「アンカ室長、今お風呂上がりなんですね……」

「ああ、あの人長湯もするから。あ、ここだよ」


 お風呂場の入り口からすぐ進んだ所にそれはあった。

 扉は無い。


 そして、大きな洗濯機らしき物。


(1、2、3、4…………………………何個あるの? これ……………………)


 それが…………いっぱいあった。


「全部使うから。あ、でもないか」


(これを…………全部…………??)


 見ると私とチュンさんが持ってきた大きな籠がいくつか並べられている。

 その中にはシーツやタオル、あとカーテンだと思う物も入っていた。


「アカリもこれから自分の服なんかを洗うときにも使うだろうから。やり方も覚えてってくれ」

「あ、はい」


 お互い籠を下ろしながら話す。


「よっと。ああ、アカリの籠はそっち。その一番奥だ」

「え? あ、はい」


 そう言われ、籠を一番奥に置きなおす。


「よーし、じゃあさっとやってしまうか。アカリ、これの使い方は分かるか?」

「え……いえ……」


 こんな大きな洗濯機は使った事ない。


「まぁ、これのやり方は簡単だよ。すぐ覚えれるはずだ。あ、ちなみにこの一番大きいのは…………あんまり使わんから………………今はいいか。他は、全部同じやり方の物だ」

「は、はぁ……」


 一番奥に、他よりも更に大きな洗濯機がある。


(…………誰が使うんだろう……?…………これ)


「で、だ。皆この時間までに、それぞれここにシーツやタオルが入ったこの籠を持ってくる。……っと、やはり今日もあいつのは無いか。…………まったく」


 誰かのが無い様子だ。


「……ま、それはいい。で、籠はちゃんと自分の定位置が決まっている。だからアカリも今後はそこに籠を置くようにしてくれ。それをこれから洗濯していく」


「…………はい。…………………………え!?」


(これ…………全部今から…………? ………………………………お食事……間に合うのかな?)


「ま、すぐ終わるよ。じゃあ見ててな。まず、籠の前にある、この洗濯機に……よっと、まぁ、こんな感じで適当に入れてくれればいい。でかいから簡単に入る。で、この入れた口を閉じて、このボタンを押す。っと。以上だ」

「………………へ? こ、これで、終わり……ですか?」

「うむ。簡単だろ?」

「あの、中に入れたものは……?」

「うむ、それは皆好きな時間に勝手に取りに来る。洗濯当番がやるのは、この時間に来て、今の事を

全員分するだけだ。だからすぐ終わる」

「……え? じゃあ乾燥とかは……?」

「ん? ああ、それは、……ん。その前にまず全部の籠の物を入れてから説明しよう」


 そして、今日も無い誰かの籠を除いた、皆の籠の、シーツやタオルをポンッと入れて、ポチっとスイッチを入れていく。


(………………なんというお手軽……)


 籠自体はでかいけれど、すぐに終わってしまった。入れてボタンを押した洗濯機は、中はよく見えないが、一生懸命がんばっているようである。

 そんな訳でその作業はすぐに終わる。

 それからチュンさんが先程の続きを教えてくれる。


「じゃあ、その後の事なんだが。アカリ、こっちの洗濯機のここを見てみな」

「……?」


 見ると何やら示す物が見える。青く光っていた。


「これが青く光っている物は、もう洗濯が終わっている物だ」

「…………………………ん…………………………え!?」

(さっき入れてから、5分も経っていないですけど………………)

「でだ、今度はこっちの……これがちょうどいいな。ここを見てみな」


 その別の洗濯機は同じところが赤く点滅していた。


「これが赤く点滅中なのは、今、洗濯中ってことだ。……ああ、もう変わるよ」


 赤の点滅が一瞬途切れ、青にポンッと変わる。


「これで、中の物が洗濯が終わった。後は取り出して、畳んで部屋に持って帰ればいい。ま、それは各々でやってくれるんだが」


(………………え…………ちょっと……あれ? ……洗濯ってそんなに早かったっけ…………?)


 チュンさんはその中を開けてシーツを少し引っ張り見せる。


「ほら、綺麗になって乾いてるだろ?」


 そう言われて、私もシーツに触ってみる。シーツは暖かかった。


「………………えと、でも……………………すごく早くありませんか……………………?」


 しかもその洗濯機は、全員分の数がある。いやもっと多いか。


「うむ。最新の物を皆で買ったんだ。おかげでずいぶん早くなったよ」


 えっへん。そんな感じのチュンさん。


「だから、アカリも自分の物を洗うときは、ほら、さっきアカリのシーツを入れた洗濯機。あれを使って洗濯してくれ。じゃないと、忘れっぱなしのやつもいたりするからな…………」

「………………………………はぁ」


 もう、すごすぎて、何と言ったらいいのやら。


(で、ちょっと気になってる事が……)

「…………あのー」

「ん? どうした? 今のでも何か分からなかったか?」

「……いえ、それは理解できたんですが……」

「ん?」

「……その……ちなみに、今持って来てない人って…………」

「……………………………………………………ミランダ」

「……………………………………………………………………」


(……………………やっぱり………………なんか、……そんな気がしてた………………あ、でも、……昨日の聞いた、……あの事もあるし……)


「…………あの、もしかして持ってくるのが大変……だとか……?」

「…………………………いや。……………………………………あいつの籠は……………………………………自動だ」

「「…………………………………………………………」」

(……ごめんなさい、ミランダさん。フォローできないや……)


 少し補足説明してもらったところによると、ミランダさんの籠は、入れて操作すると、オートで洗濯場まで来て、終わったら、その洗濯した人がその籠を操作して、後はオートで部屋の前まで行ってくれるという。操作自体は至極簡単だそうだ……。

 そして、それは会社持ち。

 それで、買った最初は、それでちゃんと出来ていたそうなのだが、今はこうやってちょいちょい忘れるらしい。

 理由は、今朝チュンさんが話してくれた、寝坊……………………。


(私………………気をつけよう……………………うん)


 だが更に、チュンさんが付け加えた。



 実はそれが無くても、ミランダさんはちゃんと自分で出来るらしい。



(………………じゃあ……………………何で買った……………………………………………………………………)



お読み頂き、ありがとうございます。


こんな洗濯機が欲しいです。

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