表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
18/135

【二日目】 お昼ご飯


 私とメイちゃんは早歩きして階段の所へ行き、遠く離れた二階の食堂へ向かう。


「急がなくっちゃ」


 メイちゃんも今は結構焦っているようだ。私も食堂に急ぎながら聞く。


「ねえ、お昼の時間て……」

「うん、12時からなの、少しだけ、作ってた物は、あるんだけど、ちょっと、遅れちゃうかも」


 そう言いながら、急いで食堂に向かい、中に入る。


 すると、良い匂いがした。誰かが食事を準備しているようだった。

 メイちゃんはそこで気付く。


「……あ、セリカさん」


 私も気付く。セリカさんがエプロンを着けて食事の準備をしていた。


「あら、メイ、遅かったわね。あら、あなた、お昼ご飯は12時からよ?」


 急いできたので二人とも少し息が切れていた。


「……あ、その……」


 先程の事を思い出し、どう話をしたらいいかと思案する。


「さっきは悪かったわ。確かに、間違いではなかったわ。メイ、後はもう並べるだけよ」


 どうやら、先程の私の検索の方は、間違いではなかったようだ。

 そして食事の準備もセリカさんがほとんど済ましてくれているようだった。私とメイちゃんはセリカさんの方に歩いて行き、メイちゃんが答える。


「セリカさん、すみません、一人でやっていただいていたんですね……」

「構わないわ。それに昨日の晩も、今日の朝も、メイが一人でやったんじゃないの?」

「いえ、アカリちゃんが……」

「……あら、そうなの? 私も頂いたけれど、良く出来ていたから、てっきりメイが一人やったのだと思っていたわ」

「あ、その……」


 どう返したら良いのか分からないが、少なくとも責めているようでは無い。むしろ褒めてくれているようだ。


「じゃあ、もしかして、今も私の代わりに来てくれていたのかしら? だとしたら悪かったわ。もうメイも遅れてくると思っていたから」

「あ、いえ、有難うございます、やっていただいて」


 とりあえず、私はそう答える。


「構わないわ。元々今週の当番は私も入っていたし」

「……あ、でも。……もう、いいんですか…………?」

「ええ、大丈夫よ。この後は出るわ。じゃあ悪いけれど並べてくれる? あなたも。」


 セリカさんは初めにメイちゃんを見て、次に私を見る。


「「あ、はい」」


 私とメイちゃんの声が被る。


「…………どこかでみたような風景ね」


 セリカさんまで朝アンカ室長が言っていたことと同じような発言をする。


(…………で……………………何に似てるんだろ……………………?)


 それはともかく、昼食の準備を始める。だが、後は、ほぼ並べるだけのようだ。

 どうやら、セリカさんは昼食にカレーを作っていたようだった。それからお米も炊いていた。

 カレーのルーは、ソースポットに入れて並べ、中央にパンを入れたかごをいくつか置く。

 お米で食べたい人は自分で盛りつけるらしく、おひつに入れてテーブルの前の方と後ろの方に置いておく。


 そして、それが終わる頃に食堂の時計の音がした。


 -ボーン……ボーン……ボーン……-


 その音と同じくらいのタイミングで、ドアが開き、そしてミランダさんが入って来ながらこちらを見て言った。


「あー、ここに居たよー、セリカっちー。何処行ったかと思ったらー」


 どうやら、ミランダさんはセリカさんを探していたようだった。ミランダさんの後に続いて、ユウカさん、エレナさんがやって来る。


「私、今週の食事当番なんだけれど」


 ミランダさんを見ながらセリカさんが言う。


「あー……そっかー。セリカっち朝いなかったもんねー」

(うん、確かに、居なかった)

「あら、でも、じゃあ室長には聞いてなかったの?」


 途中から話を聞いていたユウカさんがそう言ってくる。


「何をかしら? この子が食事当番を私の代わりにやってくれていたのは今聞いたけれど」

「あー、じゃあ室長、言い忘れてるねー。セリカっちが今日も明日も休むかもーって、室長言ってたからー。その間の変わりはアカリちゃんがやってくれる事になってたんだよー」


 三人のやり取りを聞きながら、あ、そう言う事か、と私も理解する。


「あら、そうだったの。でも、もうお昼の方はやってしまったわ」

「あー、なるほどねー。さっきはメイちゃんも一緒だったからねー」

「だから本格的なんだねぇ。私は好きだよぉ。カレー」


 エレナさんが、そう、横から話しかけてきた。


「カレーは良いものよ」


 当然、と言うようにセリカさんは言う。


「なーんか、昔そういう人がいたようなー……」


 ミランダさん呟いて少し考え込んだ。

 そしてセリカさんは自問自答するように呟く。


「今日の夜間はアリスと…………マイヤ、だったかしら……」

「……あ、はい、そうです」


 それにメイちゃんが答える。


「カレー、カレー」


 エレナさんは、もう既に目の前のカレーの事で頭がいっぱいのようだ。

 そんな話を聞いているとニコニコしながらプランさんが、その後にリーゼさんが入ってくる。

 だが、プランさんはセリカさんを見止めてから、ニコニコしていた顔が一瞬戸惑ったような顔になる。


「ちゃんと甘口もあるわよ」


 プランさんは何も聞いていないが、セリカさんがそう答える。

 プランさんはそれを聞く少し頷いて、またニコニコ顔に戻って席に座る。


(……あ、もしかして、……辛い物、駄目なんだ……)

「じゃあ準備も整ったし、皆揃ったようだから、メイと、あなた、後頼むわ」


 食堂をちらっと見てセリカさんが言った。


「…………え?」

「はい、分かりました。よろしくお願いします」


 私は言われた事がよく分からなかったが、メイちゃんは分かっているようだ。


「それから、ミランダ」


 入り口に歩いていく途中、チラッとミランダさんを見て言う。


「………………あー、うんー…………………………分かってるよー……………………」

(何だろう………………?)


 そしてセリカさんは部屋を出て行ってしまった。


「え? あれ? ……セリカさん、ご飯は食べないの?」


 私はメイちゃんに話しかけながら、食堂を見渡す。

 セリカさんは居なくなり、アンカ室長もチュンさんもまだ来ていない。

 それに、アリスさんも居ないし、今朝見たヘアバンドの子も居ない。


「カレー♪ カレー♪ かれぇー♪」


 横でエレナさんはお構いなしに同じ事を連呼している。


「……あ、うん、セリカさんは――」


 そうメイちゃんが言いかけた所に、ミランダさんが声をかけてくる。


「ねー二人とも早く座ってー。早く食事始めよー」

「あ、はい。ごめんアカリちゃん、後で……」


 メイちゃんは先程言いかけた事を途中で止め、席のほうに行ってしまう。


(まだ、皆集まっていないようだけど……)


 空いている席の方へ行き、座ろうとした所で、ふと思う。

 目の前の席には、リーゼさんが座っている。隣はプランさん。席が今朝とは違うようだ。


(ここでは、席は好きな所に座って良いのかな?)


 そう思いつつ席に着く。


「よーし、じゃあ皆いいかなー?」


 どうやら今回はミランダさんが食前の言葉を言うようだ。

 皆が手を合わせ、目を瞑る。

 ミランダさんが皆を見渡していた様なので、私も慌てて、同じように手を合わせ、目を瞑る。


「地球の全てに感謝とー祈りを。良い食事を致しましょー。それじゃー、いただきまーす」


「「「いただきます」」」


(……あれ?……隣のプランさんからは声が聞こえなかったような……)


 そう思って、隣のプランさんを見ると、まだお祈りしていた。”いただきます”、とは言わない主義なのだろうか。そう考えつつ、プランさん見つめてしまう。


 可愛らしい眼鏡に綺麗な顔立ち。

 同姓の私から見ても魅力的な人だ。

 祈っている姿がとても様に合う。

 どこか神々しくも見え、天使やシスターと言われても納得してしまいそうだ。


 プランさんは目をすっと開けてこちらを見る。

 私はプランさんに見とれてしまっていたので、目が合ってしまう。


(わわっ)


 私は少し驚くが、プランさんは少し首をかしげてニコっと笑った後、前を向きなおして食事を始めた。


(なんて素敵な人なんだろう……)


 そう思いながら食事に移ろうとしたところで、先程の疑問を思い出す。

 プランさんに聞こうかな、と思うが、そういえばプランさんは、食事中に会話はしてなかったかな、と思い出し、私は逡巡してしまう。

 そこにお米を乗せた皿を持って来ていたリーゼさんに声をかけられた。


「ん? アカリさん食べないの? もしかしてカレーは嫌いだった?」

「…………あ、いえ、そう言う訳ではないんですが……」


 見るとリーゼさんは山のようにお米をよそってきている。


(あ、あんなに食べるんだ……………………)


 驚きながら先程の疑問を投げようとする。


「あの…………」

「ん?」


 山盛りのお米にソースポットのルーを、これまた山盛りかけながらリーゼさんはこちらを見る。


(もはや、ルーが零れそう…………)


 いや、聞きたいのはそこじゃない、と思い直して質問する。


「その、まだ、皆さん集まってないんじゃ……それにセリカさんは……?」

「そうだっけ?」


 リーゼさんは周りを見てから答える。


「皆いるよ?」

(ああ、ちゃんと伝わってない……)


 そう思って別の言い方で同じ事を聞く。


「えと、アンカ室長や、チュンさんや、アリスさんとか……」


 リーゼさんは山盛りのカレーを一口食べてから答える。


「ん…………んー。はは、ほへへ……むぐむぐ…………」


 リーゼさんは喋ろうとしたが、口にカレーでいっぱいのようで、ちょっと待って、と言う風に手を平をこちらに軽く向けた後、口元に手をかざす。


(山盛りに口に入れすぎ………………)


 そう思いながらちょっと待つ。


「……………………ング……それね」


 ようやく飲み込んでから、リーゼさんは話し出す。


「室長達は仕事中、アリスさん達は就寝中」


 非常に簡潔だった。もうちょっと詳しく、と聞きたかったのだが、リーゼさんはまた山盛りにカレーをすくってから口に入れていた。

 リーゼさんがまたリス状態になってしまったので、さすがに悪いかな、と思い、私はとりあえず納得する。


(そっか、まだお仕事してるんだ……………………あっ!)


 私は、自分が食事をまだ始めていなかった事に気付く。

 私もお米でカレーを食べようと思っていたので、お皿を持って、先程置いた、後ろの方のおひつの所に行き蓋を開けるが既に空になっていた。

 ほとんどリーゼさんが取ってしまっていたようだった…………。


(…………………………とりすぎ…………)


 結局私はパンとルーでカレーを食べた。前の方のおひつも空のようだった。

 どうやらそちらはエレナさんがほとんど食べてしまったようだった。

 ユウカさんがミランダさんに「もう無いよ?」と言っていた。出遅れたらしいミランダさんは「えーーー!?エレナちん、とりすぎーーー!」と文句を言っていた。ちなみにメイちゃん、プランさんはお米は食べず、ユウカさんは半々で食べていたようだった。あと、先程セリカさんが言っていた”甘口”はプランさんと、ユウカさんで使ったようだった。


 食事が終わると皆お皿を洗いに、ミランダさんはいつものように席に座ったまま、「ぷふー、食べた食べたー」とお腹を押さえていた。


 どうやら文句を言っていた割には、その事はあまり気にしていないようだった。

 私もお皿を洗い、その後、空いたおひつ等を洗っていると、今、食べ終わったのか、メイちゃんがお皿を持って、隣の洗い場に来る。

 私は先程リーゼさんに聞いた事を、自分なりの解釈で考えていた事を聞く。


「……ねえ、メイちゃん」

「ん? なあに?」

「セリカさんて、食事の用意が終わった後お仕事に行ったのかな?」

「……あ、そうだよ。お昼は皆では食事出来ないの……。今日は、アンカ室長と、チュンさんとセリカさんがお昼中の当番なの。皆がお昼休みが終わってお仕事に戻ってから、お昼ご飯を食べるんだよ」


 メイちゃんが丁寧に説明してくれた。


「だから、ほら」


 そう促してくれた方を見ると、何かに白い布が被せられている。


(ああ……)


 多分これが今来てない人の分の食事なのだろう。セリカさんがきちんと用意してくれていたようだった。

 だが、そこでもう一つの疑問に思い当たる。


「…………あ、じゃあアリスさんや――」


 そう、もう一人の人の名を言おうとして気がつく。


(――あ、名前を知らない…………)

「あ、マイヤさんとアリスちゃんは今お休みしてるから……」


 ようやく名前が判明した。


(あ、昨日アリスさんと初めて合った時に、聞いた気がする……)


「……あ、そういえば、昨日合った時におはようって……?」

「……あ、まだ、聞いてないんだっけ……?」

「……?」

「あのね、二人は今日夜間の当番なの。……だから今お休みしてるんだよ。」

「え? 夜もお仕事があるの?」

「……うん」

「じゃあ私も、そのうちやるのかな……? 夜も今日みたいな事務作業をやるの?」

「…………え……っと。…………ごめんなさい。…………それは私からは…………」


 また、会社の規定とやらに引っかかるのだろうか。


「……そっか」

「……うん」


 メイちゃんを困らせたくは無いのでそこでその話題は切り上げ、おしつを洗い流した。


「んー。そうだよね。ちゃんと教えた方がいいよね。」


 うわっ、と驚いてしまった。

 他の人はもう部屋を出て行ってしまっていたのだが、ミランダさんは残っていたようで、調理室の側まで来ていた。

 メイちゃんはちょうどお皿を拭き終わった所のようで、お皿を持ったまま言う。


「……じゃあ、ミランダさん」

「んー。セリカっちも出てきたしー。……そうだね。セリカっちも気付いたみたいだし。うん、アカリちゃん。……そういう訳だから、午後は自室に戻っておいて」


 どういう訳かはわからないが、ミランダさんはいつに無く真剣そうに言う。


「あ、はい。…………え? 自室に、ですか?」


 つい答えるが四階フロアーで無く、自室だと言われたことに気付く。


「うん。後で準備が出来たら呼びに行く」

「はぁ……」

「多分、午後の2時過ぎ頃になるだろうから」


2時、《14:00》までは自室に居なければならないのだろうか。


「あ、そうだ。アカリちゃんメモ帳は今持ってる?」

「え? は、はい」

「自分の持ってたんだよね。どっちもある?」

「はい。今、持ってますけど」


 そう答えつつ、ポシェットの中から出そうとする。


「他に、そういう記録できるのものか持ってる?」


 だが、先にミランダさんに、聞かれる。


「……え? いえ、これと、あとここで貰ったメモ帳だけ……ですけど」

「じゃあ、それは持っていくように準備してて。呼びに行くまでは、部屋でゆっくりしてていいからね」

「……はい、あ、あの、何をするんですか……?」

「…………後で、ね」


 私の問いには答えてくれず、ミランダさんは、そのまま食堂を後にしようとした。


 そして、メイちゃんも何か心配そうに私を見ている。

 メイちゃんに声をかけようとした時に、扉の前に居たミランダさんがくるりとこちらを向いて言う。


「アカリちゃん」

「は、はい」

「どうかな……? ……ここの生活、楽しい?」

「え?」


 そう聞かれて、ここに着てからの事を少し思い出す。

 まだ、私はここに着てから、2日も経っていない。

 けれども、昨日や今日の事を思うと、楽しかった、という事ははっきりと思い出せる。

 もちろん、分からない事や、初めて経験する事が多すぎて、大変だな、と思う事はあった。


 けれどここでの生活は楽しい。

 多分楽しくやっていけそうだ。

 それだけは実感している。


「はい。すごく!」


 だから私はそう答えていた。

 それを聞いて、ミランダさんは呟くように言う。


「……………………そっか。うん。それなら、いいんだ」


 少し笑ってから部屋を後にした。


 そして、結局その後、私はすぐに自室に戻っていた。

 食事当番なので、残りのおひつを洗おうとしたのだが、メイちゃんに、後は自分がやるから部屋に戻って良い、と言われてしまったのだった。


 何かを聞こうにも、何故だか、そのような雰囲気が無かった。


(……一体、これから何を教わるんだろう……?)


 メイちゃんが私を見送るときに、少し心配そうにしていたのを思い出す。

 メモ帳はどちらも既に持っていたし、他の記録媒体などは何も持っていない。

 私には、正直準備はすることなど他に無い。


 私は手持ち無沙汰になってしまって、ベッドの隅にちょこんと座っていた。

 何が行われるのか心配になる。


(……ミランダさんは、何かの説明をしてくれるような事を、言っていたようだけれど……)


 だが、あのような真剣な声は初めて聞いた。

 仕事中もマイペース、と言った感じでずっと喋っていた。


(……そしてあの時のミランダさんの顔……)


 真剣そうに、少し心配そうに、そしてここの生活は楽しいと答えた時の、あの少し嬉しそうな、ほっとしたような表情。


 《14:00》はまだ一時間以上ある。やる事が無いので、ベッドから立ち上がり、窓の方へ歩き、白いカーテンを開ける。



 外には海が広がっている。


 どこまでも青い海。


 遥か遠くも海。


 遠くの海を見ながらゆっくりと上を見上げる。


 見上げた上も海。


 ここには空は無い。


 下も上も遠くも全部が海。



 ここは、そういう空間だった。



お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ