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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
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【二日目】 初めての作業


 私たちは、四階に着いてフロアーに入っていく。


 何人かは、もう既に席に座っていた。

 チュンさんもいる。チュンさんは、既になにやら作業をしているようだ。


 私も、昨日案内された自分の席に行く。

 私の席は、昨日案内してもらった時のままで、新品のメモ帳や筆記用具等が、並べられている。私は、そこの横に、メイちゃんから借りたマグカップを置いた。

 それから、自分のポシェットを外し、中から自前のメモ帳も取り出す。


 前を見ると、味気ない時計が掛かっている。昨日は気がつかなかった。飾り気は無いが、時間は分かりやすい。今、時刻は《9:24》だった。


(……ユウカさんは、間に合うかな)


 隣のミランダさんも、まだ来ていない。メイちゃんは、私の前の右側の席だ。ミランダさんの前、と言う事だ。チュンさんは、それより前に座っている。

 エレナさんが、チュンさんの隣のようで、エレナさんは、何かを手にとって見ている。私は、座っていいのかどうかも分からないので、とりあえず立ったまま、ミランダさんを待つ。

 そして、ドアが開き、ようやくミランダさんがやって来た。


「ふいー、間に合ったー」


 そう言っているのが、聞き取れた。


(……何か、間に合わなさそうな事でもあったのかな……)


 ミランダさんは、私の隣に来て言う。


「あー、アカリちゃん、ごめんねー、もう来てたんだー。あれ? なんで立ってるの? 座ったらー?」


 そう言いながら、席に座る。私もそう言われたので、席に座ろうと椅子を引く。

 よく見ると、椅子は新品のようだった。ゆっくりと座る。座ってみると、椅子は中々にすわり心地が良い。


「お、そろそろ時間だねー」


 ミランダさんが、自分の電子端末を立ち上げながら言った所に、ドアが開く。


(あ、ユウカさんだ。良かった、間に合ったみたい)


 だが、ユウカさんは焦る感じも無く、こちらに歩いて来る。私の目の前の所で椅子を引いて座る。どうやら、私の前がユウカさんの席のようらしい。


「ユウカちん、ぎりだよー」

「うん、間に合った」


 ミランダさんの言葉に返答しつつ、ユウカさんは電子端末を立ち上げていた。そしてミランダさんは、次に私に言う。


「アカリちゃんも、これ立ち上げてー」

「あ、は、はい」


 電子端末の事だ。

 皆がやっていた、やり方を思い出しつつ、私も電子端末を立ち上げる。そして、目の前にモニターが浮かび上がった。何度か見た事のあるモニターではあるが、自分の物となると、初めてである。

 前にアルバイトしていた所で、少しやらせてもらっていたので、なんとなくは分かるのだが、いかんせん、この電子端末は、その時の物よりもずっと新しい物のようだ。


 ボーン……ボーン……


 鐘が鳴る。食堂の時の、時計の音に似ていた。その鐘が鳴り終わる頃、入り口からアンカ室長が入って来た。


「チュン、エレナさん、いいかしら」

「ええ」

「はぁい」


 二人は、それぞれ答えてから、フロアーに入って来た、アンカ室長の所に向う。

 そして、そこで何か話をし始めた。


「さて、仕事しますかー」


 ミランダさんは、椅子ごと私の方に来る。


「じゃあー、アカリちゃん、最初は、資料の修正と、整理から、やってもらうからー」

「はい!」


 いよいよ、初めての仕事が始まるようだ。メモ帳を片手に、私はミランダさんのほうを向く。


「じゃあー、まずはねー。端末情報の、この情報と資料を取ってきてねー。……あ、アカリちゃんはー、これ、どれくらい使えるのー?」

「あ、えと、多分、これより、少し、……いえ、結構、……古い物なら使った事はあります。あ、昨日資料室にあった、あれの……」


 それを聞いて、ミランダさんは、ふむふむ、と答える。


「なるほどねー。なら、基本的には大丈夫なのかなー。基本操作の仕方とか、そういうのは大体一緒だからー」


(うん、それなら、なんとなくは分かる。なんとなくは……)


 それから、ミランダさんは私の電子端末を触りながらゆっくりと説明してくれる。


「じゃあ、続きだけどー。ここを書き換えて欲しいんだー。ほら、ここ見て。日付と番号がばらばらになってるでしょ? だから、まずここを日付に沿ってー、番号を合わせてくんだよー」


 ふむふむ、と思いつつ、メモを取る。ちなみに、今メモしているのは自前のメモ帳だ。用意されていた新品の物は、まだ手につけてない。


「あ、アカリちゃん、今んとこはー、そっちのメモ帳に書いた方が良いよー。二階の情報とごっちゃになっちゃうとまずいしー。多分、ここの事は、基本そっちに書いた方が良いかもだけどー」


(わ! そうだったの?)


 私は、早速そのメモ帳を開封して、開く。当たり前だが何も書かれていない、まっさらなメモ帳だ。そちらに、先程教えて貰った事を、もう一度書く。


「メモ帳、足りなくなりそうだったら、その前にメイちゃんか、誰かにに言ってねー。用意してくれるからさー」


 なるほど、と思いつつその事もメモをした。


「それで、書き換えが終わった資料を、今度はこっちに入れてねー、それの情報の、ほら、ここ。ここに書かれてるキーワードを、こっちの資料に書いていくんだよー。順番は、番号通りに並べてねー」


(……ふむふむ、うん、これなら、多分、私にも出来そう)


 メモをしながら、そう考える。


「んじゃー早速やってみようかー」


 私はそれをメモし終えてから、電子端末を操作し始める。メモを見ながら、言われたように、情報と資料を取ってくる。


(えっと、……それから、……そうそう、番号を、日付にあわせて書き換えるんだっけ)


 先程、ミランダさんがやってくれた事も思い出しながら、作業を始めた。


 だがしかし、『言うは易く行うは難し』、とは誰が言ったのかわからないが、正にその状態だ。私は、まず、この情報端末の扱いに慣れていない、と言うのは、言い訳にはならないだろうが。


(ミランダさんがやって見せてくれた時は、とても、簡単そうに見えたんだけれど………………)


 先程、説明しながら、ミランダさんがやってくれた事と、同じ事をやってみるが、中々上手くいかない。かなり、時間がかかる。

 それでも、なんとか日付に併せて番号を書くが、次をやろうとすると、別の情報にその間の日付の物があったりする。それで、もう一度先程の情報を開いて、資料を書き換える。


 ミランダさんは、自分の作業に入っているようだ。隣の席で、なにやら作業をしている。

 私は、悪戦苦闘しながら、なんとかこうとか、資料の書き換えをしていく。だが、まだまだ書き換える資料はあるようだ。


(これは、……思っていたより、……結構、いや、……かなり、大変……)


 ふと他の人を見ると、皆、作業に没頭し始めている。先程、アンカ室長となにやら話をしていた、チュンさんとエレナさんは、話が終わったのであろうか、一度自分の席に戻り、その後またすぐに席を立って、部屋を出て行くようだった。


 少しだけ、そちらが気になったが、正直、今は、自分の作業で手一杯だ。私も、作業に集中し、なんとか書き換えを終えていく。情報はこれで全部だろうか、と考え、もう一度確認してみる、

 だが、……見ていない情報があった。

 漏れがあったようだった……。


 もう一度、書き換え作業に戻る。手馴れない手つきで、情報端末を操作して、今度こそ、となんとか書き換えが終わる。そしてもう一度確認してみた。


(……今度こそ、書き換えは終わった、かな……)


 ふー、っと一息つく、が思い出す。


(……あ、次があったんだっけ。……確か、次は、……そうそう、キーワードを入れてくんだ)


 メモを見てから、思い出す。キーワードを、別の資料に書く為に、今度は、別の資料を探す。

 だが、その資料が見つからない。

 どこだったかと、メモ帳を見るが、そこを書き忘れしていた。

 悪いとは思ったが、作業に没頭しているミランダさんに聞こうとすると、先にミランダさんが言う。


「アカリちゃん、そっちの資料は、もっと、右の方だよー」


 こちらを見ていないように、見えていたが、しっかりと、確認されていたようだった。


「あ、はい、有難うございます」


 そう言って、言われた所を探し出す。


(……あ、あった。これが、さっき聞いた資料)


 今度は忘れないように、メモする。メモをした後、今度はキーワードを入れていく、のだが。……またもや、そこで悪戦苦闘してしまう。


(えっと、……こちらがこれで、あ、その時はこれを操作して……)


 いちいち考えながら作業するので、非常に効率が悪い。はっきり言って、恐ろしく、遅い。そこでミランダさんは、自分の端末を見ながら言う。


「あー、ユウカちん。アカリちゃんに、キーワードの入れ方教えてやってー」

「ええ」


 そう返事をしつつ、前の席からユウカさんが来た。


「あ、…………すみません」

「いや、いいよ。ま、作業は初めは、皆そんなもんだよ。ちゃんと覚えてってくれれば、今は問題ないから」


 そうして、キーワードの入れ方を、ユウカさんに教えてもらう。


「で? アカリは、どんな風にやってたの?」


 そう聞かれたので、先程やろうとしていた事を、端末を操作しながら説明する。


「えっと。ここにキーワードを入れるんですよね。だから、……ここを――」


 それを見聞きしてから、ユウカさんは答える。


「ああ、そういうこと。ならアカリ、こっちからやってみなよ」


 効率の良いやり方なのだろうか、私が今まで知っていた方法とは、違うやり方を教えてくれる。


「――これを、っと、やって、そしたら……」


 教えてくれている、ユウカさんからは、あのお香の香りがする。ずっと、持って歩いていたからなのだろう。


「――で、こうしたら、どうかな? こっちのやり方、分かる?」

「えっと、なんとなく……」

「まあ、実際に自分でやってかないとね。見ただけじゃ、そんな感じだろうね」

「……はい、やってみます」


 今、聞いた方法でやってみる事にした。しかし、ユウカさんがやって見せたようには上手くいかない。だが、先程よりは良くなったようにも思う。必死に先程のユウカさんのようにやってみる。


「うん、そんな感じだよ。あとは、そのままやってみなよ」


 私の作業を見終え、そう言って、ユウカさんは自分の席に戻った。


「はい、有難うございます!」


 そう言って、自分も作業に戻る。


(えっと、こちらをこうやって、……そうやっていくと……)


 確かに、教えて貰ったやり方の方が早く感じる。


(えと、それで、これを、……と。……あ、出来た!)


 ようやく、一つ資料が終わった。そして、またもやこちらを見ていないはずのミランダさんが言う。


「あー、出来たっぽいねー。じゃあ、それを、さっき言った場所に入れてー」

「あ、はい!」


 資料を入れる。そこは、何とか間違えずに出来たようだ。


「あー、うん、問題ないかなー」


 あっと言う間に、ミランダさんは確認し終える。


「さてー、ちと休憩しますかー。アカリちゃんも休憩しよー」


 ミランダさんが言った時には、作業を始めて、既に1時間と少しを経過していた。



(たった、……あれだけの、作業だったんだけれど……)



お読みいただき、ありがとうございます。

私も初めて仕事をした時を思い出します。

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