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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
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【二日目】 朝の日課

 食堂を出て、少し歩くと、昨日初めて、この城に入った時に、嗅いだ香りが、強くなっていることに気付く。

 お香のような、甘く、良い香りだ。


「ねえ、メイちゃん。なんだか、良い香りがするんだけど……」

「あ、うん。ユウカさんが、食後にいつも、お香を炊いて回ってるんだ」


 ユウカさんとは、誰だったか。食事の時に、聞いたような気もするが。

 誰だっけ、と悩んでいると、メイちゃんが教えてくれた。


「……えっと、あの髪がおしゃれな人だよ。ほら、食前と食後に、お祈りをしてた人……」


 そう言われて、思い出す。


 確かに、食前食後に、本格的なお祈りをしてた人が居た。

 あの、ソバージュの髪の人。確かアンカ室長をびっくりさせた人だ。


「……へー。そんな事をしてくれる人も居るんだね……」


 まだ、会話をした事がある訳でもないので、そう答える。


「……うん……」


 何故か、メイちゃんは、どこか申し訳なさそうだった。


 そんな話をしていると、メイちゃんの部屋の前に着く。メイちゃんが、ドアの鍵を開けて、部屋に入り、私を招き入れてくれた。


「じゃあ、おじゃましまーす……」


 そう言い、部屋に入ると、目に飛び込んできたのは、大量の棚だった。

 雑多においてある訳でなくそれ自体は綺麗に並べられている。……のだけれど、多い。

 棚が、沢山置いてある。

 そして、棚の中には、これまた沢山の食器がある。それは、大量のカップ、……だった。

 とても、綺麗に並べられている。

 メイちゃんの性格からして、もっと可愛らしい部屋かと思っていたので、少し意外だった。


「うわー。……すごいねー……これ、全部メイちゃんの?」

「……うん、……いつの間にか、こうなっちゃって……」


 見渡すと、ほとんどがカップ類。

 こんなに大量の棚なのに、……マグカップ類、コーヒーカップ類、コップ類、湯のみ類、あとスプーン。それが、所狭しと大量に並べられていて、私と同じ大きさの部屋のはずなのに、手狭に見えてしまう。


「……えっと、マグカップの方が良いよね……マグカップはこっちだから……」


(………………………………カップ置き場…………………………?)


 いや、しかし、全部メイちゃんの物だと言っていたはず。………………自分で集めたのだろうか。


 私は、こういう収集癖みたいなのは、無い。いや、そもそもこの時代、そんな事が出来るのは、富裕層のごく一部だろう。ただ、こういうのを見ると、面白いのかもしれないと思ってしまう。

 資金的にできれば、だが。


「……アカリちゃん、こういうのどうかな?」


 そう言って、取り出して見せてくれたマグカップは、手持ちがついた、少し大きめのカップだ。可愛らしい、ネコのシルエットが印刷されている。


「わ、かわいい。ネコちゃんだー」

「あ、他にも色々あるけれど。……好きなのを選んで良いよ」


 無地で色が綺麗な物や、文字が印刷されている物、柄のような模様が入っている物、形も様々あるし、綺麗な物もたくさんある。

 だが、正直これだけあると、迷ってしまう。

 沢山あるので、もっと見て回りたいけれど、今は時間もあまり無いので、私は直感に従う事にする。


「うーん、どれも良いけど、私はこれがいいかな……」


 それは、最初に見せて貰った、ネコちゃんシルエットのマグカップだ。


「じゃあ、それにしよう。他にも、プライベートで使うカップとかも、無ければ言ってね」


 メイちゃんは、笑いながらそう言ってくれる。


(うーん……集めたいのか、使ってほしいのか……)


 メイちゃんの、意外な一面が見れた瞬間だった。

 

 時間を見ると、《9:15》頃だ。そろそろ行かないといけない。

 ちなみに、メイちゃんのところの時計は、レトロな木で作られたような時計で、雰囲気がこの城と合っている。


「じゃあ、大フロアーで使うのはそれでいいかな。……あ、もうそろそろ、行かないといけないかな」


 そう、語りかけてくる。


「うん、そうだね。でも、他にも見てみたいし、また、見せて貰ってもいいかな?」

「うん。もちろんだよ」


 そう言って、メイちゃんと一緒に部屋を出て、そしてそのまま四階フロアーに向かう。

 私は、借り受けたマグカップを大事に手に持って、エレベーターの方に歩いていく。

 そこで、階段の方でソバージュの髪の人の後姿が見えた。


(あの人は、……確かさっき聞いた”ユウカさん”だ)


 ユウカさんは、なにやらゆっくり歩き、立ち止まり、そしてゆっくり歩いて、と、なにやら普通に階段を上ってはいない。


 ユウカさんは、手に何か持っている。そこからは煙が出ていた。

 先程、聞いたばかりなので、あ、あれがそうなんだ、とすぐに分かった。

 この城の、香りの元の、お香だろう。


 ユウカさんは、ゆっくりと階段を上っているので、すぐに追いついてしまう。そうすると、ユウカさんはこちらに気が付いた。


「あ、メイ、と、……アカリ、だったね」


 そう言われ、先程顔合わせはしたのだが、こうして話をするのは初めてである。


「あ、はい。えと、ユウカさん、ですよね」


 私も聞き返す。


「うん、そう。あれ? もう上がるの? もうそんな時間?」


 お香片手に、そう聞いてくる。

 階段を上りながら、メイちゃんが答える。


「……はい、先程部屋を出た時は、15分過ぎてました」

「そっか。じゃあ、ぎりぎり間に合うかな」


 (……ん? まだ十五分あるけれど……)

 

 そう思い、ユウカさんを見ていると、なんとなく、その理由分かった。ユウカさんは、お香を満遍なく、城中に行くように炊いて回っているのだ。

 だから、ゆっくりと歩いているし、所々でお香を上げたり、下げたりして移動している。


 それを見ていると、マントでも着ていたら、何かそういう呪い師の様に、見えなくも無い。そんな事を考えていると、ユウカさんが私に言う。


「アカリ、このお香の香り、どうかな?」


 そう聞かれて、私は即答する。


「はい、とっても良い香りです。ここのお城にぴったりというか」


 実際、良い香りだと思っていた。何故、ここの城は、こんなにも良い香りがするんだろうか、と思っていたから、謎が一つ解けた感じだった。


「……そっか。それなら、良いんだけど」


 そう言いながら、ユウカさんは、同じように動きながら、階段を上りきる。


「あ、私、後、ここやってから行くから。メイとアカリは、先行っといて」


 ユウカさんが通った後は、お香の香りが強い。

 だがそれは、先程言ったように、とてもいい香りなのは、間違いない。


 しかし、それを、毎日こうしてやっているとは……。

 ユウカさんは、三階の通路でも同じように、お香を持ち歩きしている。

 私は、メイちゃんと一緒に、階段で四階に上がりながら聞く。


「ねえ、メイちゃん。あれも、ここの皆で当番とかでやるの?」

「ううん。あれは、ユウカさんが、……自分から、やりだした事らしいの…………」

「ふーん。でも、そのおかげで、このお城はこんなに良い香りがするんだねー」


 そう明るく言うが、メイちゃんはどこか複雑そうに答える。


「…………………………うん。…………そうだね……」


(…………もしかして、メイちゃん…………)


 私は、恐る恐る聞く。


「…………もしかして、メイちゃんは嫌いなの? この香り……」


 メイちゃんは、即答する。


「ううん。私もこの香りは、大好きなんだ。…………でも、ユウカさんには、申し訳ないな……って」

「…………そっか」


 確かに、この広いお城を、ああやって全部回っているなら、大変なのかもしれない、と考える。


(手伝っても、良いのだけれど……)


 そう思いつつ、四階へ向かった。



お読みいただき、ありがとうございます。

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