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ブルーデイズ  作者: fujito
第一章 蒼い日々の始まり
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【二日目】 初めての朝

 ザザーン……。


 波の音が聞こえる。

 波が襲ってくる。

 私は、逃げる。

 けれども、波はしつこく私を追ってくる。


 ザザーン……。


 一旦、引いたような感じがしたので、後ろを見る。

 すると、先程よりも大きな波が、私を襲ってくる。

 また私は逃げる。


 ピピピピピ……。


 前から電子音がする。

 目の前には、電子端末が置いてある。


(早く押さなければ……)


 そう思って、電子端末から変形した時計に向かって走る。


 いや、走っていたのでは遅い。

 だから、私は、空を飛ぶ事にした。


 ピピピピピピ……。


 電子端末は、煩くなり続ける。


 ザザーン……。


 今度は、空から波が追って来た。

 絶体絶命!

 そう思って、はっと目を開ける。


(…………………………)


 ピピピピピピピ……。


 一瞬、波は? と思い、周りを見渡す。

 棚に置いていた、目覚まし時計が、鳴り続けているのに気づく。


「……あっ」


 そう、言葉が漏れつつ、目覚まし時計を止める。


 ザザーン……。


 波音が聞こえる。

 周りを見渡すと、広い部屋の、少し窓際に寄せてあるベッドに、自分が居ることに理解してくる。


(……あ、そうか)


 昨日、私の部屋だと言われた、広い部屋。そこにあるベッドで、私は寝ていた。

 枕元に、寝坊しないように、と設置した、自前の目覚まし時計を置いたのだった。


 時計は、《5:45》を表示している。ちょっと早めに設定していた。

 少し、べッドでぼーっと周りを見る。外は明るくなっている。


 ザザーン……。


 波音が聞こえる。海が、すぐそこにあるからだ。

 私はベッドから、のそりと出て、カーテンを開ける。

 今日も、外が綺麗な青だ。海が広がっている。


(この海の波音で、あんな変な夢を見てしまったんだ……)


 ようやく、私は現実の世界に帰ってくる。

 ゆっくりと、背伸びをした。


「んんんーーー……」


 よし、今日も体調は良さそうだ。


 窓を開ける。

 ふわりと、風が吹いていて気持ちがいい。


 窓から、食堂が見える。

 少し見え辛いが、私の部屋からは食堂が見える位置のようだ。

 中で、人が動いているのが見えた。


(……あ、メイちゃんだ)


 遠目ながら、はっきりと、そう分かる。


(もう、……食事の準備を始めてるんだ……)


 確か、メイちゃんは、今週は食事当番だ、と言っていた。後は、確か、セリカさんと言う人だ。先日の事を考える。


(んー……)


 少し、不安になる。

 私はベッドの側に戻り、少ない(と思うのは部屋が広いせいだ)荷物が入った、キャリーバックを開ける。


(えっと……)


 一応、がんばれば、一週間分くらいは持つくらいには、衣服も準備していた。

 まずは、髪を梳かすブラシを取り出し、歯ブラシ等も取り出す。その後に、今日着る服を選んで取り出す。


(んー……えと、これにしようかな……)


 服は、基本どんな服でも良いと言われていた。

 とは言え、まだ私はここに入ったばかり。そう思い、出来るだけ無難な服をチョイスする。

 服をベッドに置いて、これで良いかな、と思った後、朝の身支度を始める。


 鏡は棚の側にもあったが、洗面室の中に入ると、そこにはもっと大きな鏡がついた洗面台があった。


(……そういえば、ここの洗面室に入るのは初めてだっけ……)


 私は、今更気づく。昨日は、そんな事も考えず、寝てしまっていた。


 そこには、水周りが集約されているようで、洗面室の中には、ドアで仕切られたお手洗いも、そこにあり、 洗面室には化粧台や、さらに別の箇所にも水道がある。

 簡単な料理等なら、コンロでもあれば、ここで出来そうなくらいに広い。

 その洗面室の中にも、私が使えるよう、生活用品が準備されていた。それに綺麗に掃除もされている。


(そういえば、ここの部屋の準備やら、何やらは、誰がやってくれたんだろ?)


 ふと、疑問に思う。


(後で、メイちゃんか、ミランダさんに聞いて、お礼を言わないと)


 そう考えながら、私は身支度を整え、着替えを済ませる。


(……うん、大丈夫かな)


 何度か鏡の前で、くるくる回り、大丈夫かどうか確かめてから、そう考える。

 それから、使うかもしれない、メモ帳とペンをポシェットに入れ、肩に掛ける。


 準備が整った。

 時刻は《6:30》を過ぎようとしていた。

 予想より、少し時間がかかってしまった。

 部屋を出ようとして、鍵を忘れた事に気づく。


(あ、何処に置いたっけ……?)


 物を探すには、広すぎる室内を見渡す。


(えっと、昨日確か……)


 メイちゃんと別れてから、この部屋に入った時の事を思い出す。

 何処に置いたか、忘れてしまっていた。だから、こういう時は、自分がその時に何処をどう歩いてきたかを思い出す。本当は覚えていれば、何も問題ないのだが、時々こういう忘れ物をしてしまう私は、そうやって思い出すようにしている。

 だが、ここは今までの部屋ではない。そして広い。物が散らかっているわけでは無いのだが。


(えと……メイちゃんと別れて持っていた物を、……あ、そうだ、昨日は、お風呂セットを持っていたっけ)


 思い出してきた。

 お風呂の道具を確か持っていた。そして、それは机の上に置きっぱなしだ。

 机を見ると、案の定そこに、ここの鍵も置いていた。


(あ、……お風呂セット。そのままだった……)


 そう思ったが、とりあえずそこは置いておいて、鍵をとり、部屋を後にする。

 少し、静かにドアを開け閉めする。


(まだ、寝てる人も居るかもだし……)


 鍵を閉め、通路を食堂の方へ歩いていく。周りは静かだ。

 鍵はポシェットの中に入れておく。


(今度は、忘れないようにしよう……)


 そう考えるが、そう思った事を忘れた時に、同じ事をしてしまう。

 今後は、ポシェットの中を、鍵の定位置にした方が良いかもしれない。そう思いながら、通路を曲がる。


 自分の部屋から、食堂は見えるのだが、いかんせん遠い。

 通路がこんなに曲がりくねってなければ、直進距離は近いのだが……。

 そう思いながら、角をいくつか曲がる。そして食堂の前にやってくる。


(良かった。迷わずに来れた)


 食堂までの道順は、ちゃんと覚えれていたようだ。

 扉をゆっくりと開ける。見るとテーブルには、まだ誰も居ない、そして、何も置いていない。

 ゆっくりと食堂に入りながら、調理室を見る。やはり、メイちゃんが朝食の準備をしている。そして、もう一人居るはずの人は見えない。


(昨日、メイちゃんは、六時半頃には支度を始めるって、言ってたけど……)


 初め、部屋から見た時は、その時間より大分早かった。

そして今は《6:45》頃。だけど、もう一人の居るはずの人影は無い。


(ああ、……やっぱり……)


 そう思いながら、調理室に歩いていく。

 メイちゃんは、食事の支度をしながらこちらに気付く。


「……あれ? アカリちゃん! おはよう。……もう、朝の支度終わったんだ」


 初めは驚いて、その後、笑いかけながら話しかけてきた。


「うん。おはよう、メイちゃん」


(きっと、私より、もっと早くに起きて、朝の支度をしてたはずなのに……)


 そう思いつつも、とりあえず私は挨拶をする。


「……あ、ごめんね、まだ、朝ごはん出来てなくて……」


 メイちゃんは、申し訳なさそうに言う。


「ううん。……あの、今日って、セリカさん……は……?」


 まだ見ぬ、セリカさんと言う人の事を聞く。


「……あ、……うん。……その、……今日も駄目みたいで……」


 やはり、と私は思う。何が駄目かは分からないけれど。

 しかし、そう思ったからこそ、早めにここに来た訳なのだが。


「……そっか。えと、じゃあ、私、手伝うよ」


 そう、メイちゃんに伝える。私は、元々そのつもりだった。


「え? いいの? アカリちゃん……でも……」


 メイちゃんは、申し訳なさそうに言うが、私は明るく答える。


「ううん。だって、そのつもりで早めに来たんだし」

「……ん。……有難う、アカリちゃん。……じゃあ、お願いしても良いかな?」


 そう、言ってくれた。

 先日、私が料理好きなのは、メイちゃんには話し終えていた。それもあってか、メイちゃんは私の手伝いを了承してくれた。


「うん!」


 私は、メイちゃんが一人で調理していた調理場に入り、エプロンを着け、三角巾を被る。

 まだ、昨日会ったばかりだが、メイちゃんは、とても気の優しい子だと思う。

 そして、少し控えめな子だとも思う。だから、また昨日みたいにもう一人の当番が居ないと、自分一人で、何とかしよう、としてしまうのだろう。

 私は、食堂を部屋から見た時に、なんとなく考えていた。


(もし、今日も、もう一人の人が居なかったら……)


 もし、もう一人の人が居た場合は、挨拶だけして、「早く目が覚めたから」、とでも言うつもりだった。

 だが、予想は悪い方に当たっていたようだ。やはり、もう一人が今日も居なかった。

 しかし、昨日はそのおかげで、このメイちゃんと仲良くなれたのである。

 自分が料理が好きな事と、メイちゃんと昨日、これで仲良くなれた事で、朝眠い、と言う感覚よりも手伝いたい、という感覚の方が、勝っていたと言ってもいい。


(それにしても……)


 私が起きた時には、もうメイちゃんは、食堂で朝の準備を始めていた。

 私も、今日はかなり早く起きたつもり、なのだが……。


(一体、メイちゃんは、何時に起きたんだろうか……)


 私は、エプロンを着用し、調理の準備を整え、メイちゃんに聞く。


「メイちゃん、今は、何作ってたの?」


 メイちゃんは食器を出しながら答える。


「うん、野菜を煮込んだ、コンソメスープと、後は、ジャムを作ってるの」


 なんだか、メイちゃんにぴったりの朝食のチョイスだ、と思いながら答える。


「へー。って、え? メイちゃん、ジャムも作るんだー。」

「……うん、ここだと、自分で作れるから。」


(すごいなー。……ジャムも、自家製だなんて)


「私、作り方知らないやー。どうやって作るの?」


 私は、ジャムの作り方なんて知らない。


「うん、初めは下ごしらえがあって、それは昨日に終わってたの。それで、これから鍋で煮込んでいくんだけど」


 そうして、話が弾んでいく。

 メイちゃんは、料理の話になると、楽しそうに話す。きっと料理が大好きなのだろう。

 昨日、私は話したが、メイちゃんからは、直接料理が好き、と言う言葉は無かったものの、話していて、なんとなくそれは分かっていた。

 ジャムの作り方を話しながら、コンソメスープも仕上げていく。

 私はパンを焼きながら、話を続ける。

 今作っているジャムは、どうやら今日の朝ごはんには出ないようで、前に作った物を使うらしい。

 今の物は、冷やしてから使うそうだ。だから、今作っているのは、明日以降に使うものだという。


 そして、時刻が《7:15》になろうとする頃には、すっかり朝食の準備も終えようとしていた。



お読み下さり、ありがとうございます。

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