第一話「突然」
二学期が始まって数ヶ月
突然だがはじめに俺の自己紹介といこうか・・・。
俺は北原飛小
高校一年生で年齢は15
このクラスではあだ名が絶対で、みんなからはヒーコ、ヒーなど呼ばれている。
ちなみに、名前の由来は小さくても羽ばたけられるように・・・と両親がつけてくれたそうだ。
小さい確定かよ・・・。
そりゃあ身長は165くらいしかないけどさ・・・。
因みに好きな食べ物はたまごやきで
嫌いな食べ物はグリンピース
なぜならグリンピースの食感が嫌いだからだ。
俺は教卓を見てふと思った。
ホームルームの時間が過ぎてるというのに、先生が来ない。
そう思っていたらガラッと扉が開き、
ガヤガヤと教室に響き渡っていた声が担任の先生の声によって掻き消された。
「おいお前ら~、席に着け~。突然だが、今日は転校生を紹介する!入ってこーい」
「はい」
透き通る声が聞こえ
転校生が入った瞬間、みんなの目が開きまくっていた。
微かに聞こえるローファーの音
ゆらゆらと綺麗な浅葱色っぽい髪の毛が揺れていた
聞こえてくるのは「ハーフかな?」だの「髪の色綺麗~」だの・・・。
まぁ、俺は女の子には興味ないけど・・・。
俺は興味無さげに外を眺めた
「じゃあ自己紹介してもらおうかなー」
先生がそう言ったあと
急に辺りが静まり返った
「どうした?」
先生が問う
ヒソヒソと1-Dの連中は話し出す
転校生はニコニコと黙ったまま・・・。
「まさか・・・。」
いや、まさかとは思いたくもないが・・・。
何分かした後、彼女の口が開いた。
「自己紹介って・・・なんですか?」
マジか・・・。
「えーーーー!?」
みんな驚いて唖然としたヤツ、呆然としたヤツがいた。・・・馬鹿みたいで面白い。
まぁ、そりゃ驚きますよね・・・。
「あ~、そうだった。両親からこの子は何も知らずに育ってきたからなんとかかんとかで~って言われてたんだった。テヘペロ☆」
テヘペロってアンタいくつだよ
てか転校生、どういう教育してきたか知りてぇわ。
「先生、自己紹介って?」
転校生が問う
「自己紹介とは~・・・。」
先生が答える
何も知らないとは・・・赤ん坊か・・・。
「分かりました!私は浅葱法華です!私はハーフ?というやつでお父様がフランス人でお母様が日本人です。小さい頃から何も教育を受けていない為、この通り、自己紹介の意味も分かりませんでした。なので皆さんの知識をください!これから宜しくおねがいします!」
みんなは「わーわー」嬉しそうに転校生を歓迎した
てか髪色と同じ苗字も浅葱なんだな・・・。
また軽く外を眺めながら俺はため息をつきこう呟いた
「・・・面倒臭いことにならねぇといいけど。」
俺は俺だけのことだけを考えていた
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なんやかんやでホームルームは終わり、一段落。今は昼休み
いつものように俺はコイツ・・・キョーこと西文兢英と弁当を食べる
「可愛いなぁ・・・♪アサちゃん♡」
デヘデヘとキモイ顔で転校生をみるキョー
「なぁなぁ、ヒーコはアサちゃんのことも興味ないのかー?」
箸をクイクイっと向けながら俺に問う
「女の子全般、きょーみないって言ったろ?」
「でもなぁー、意外と女の子からお前はモテるんだぜー?」
転校生を見て二ヒヒ、と笑いながら次は俺を見るキョー。
「モテるかどーかは知らねーけど・・・俺はどーでもいい。」
「もったいねーなぁ・・・。この学校でマスコットキャラ系な南美ゆうみちゃんなんかお前のこと・・・おっと、これは秘密だった♪」
大体話は分かったけど実にどうでもいい話だ・・・。
なぜ俺がこんなにも女の子に興味がないのかはキョーも少し関係していて・・・そうだな、遡ること5年前ーー。
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当時・10歳
「さようなら!」
「はい、さようなら~♪お掃除当番の子達~、後はよろしくね?先生は職員室でお仕事してるから、何かあったら来てねー。」
「はーい!」
「はーい・・・。」
ったく、何で俺が掃除当番なんだよ。
でも・・・♪大好きな朝乃ちゃんと二人きりになれたから良しとしよう♡
あの子は日野山朝乃ちゃん(ひのやまあさの)
俺の好きな人。
「・・・」
さっきから朝乃ちゃんは黙ってばかり
どうしたんだろう・・・?
「朝乃ちゃん、ずっと黙っちゃってどうしたの?」
「えっ、あっ・・・いや・・・!どうもしてないよ!ほんとに!」
動揺しまくってる・・・。
何かあったのかな?
「そう?」
あれ、よく考えたら今が告白のチャンスなんじゃないか!?
いや、でも迷惑かも・・・えぇい!そんなこと気にするな!よーし・・・!
大きく深呼吸をして朝乃ちゃんの方を見た
「へっ、な、何・・・?」
「初めて会った時から好きでした!付き合ってください!」
教室中に俺だけの声が響いた
ちなみに始めてあったのは小学二年生の時。
しばらく沈黙が続いたその時
「・・・ごめんなさい!」
「えっ・・・。」
俺は呆然としていた
頭の中は真っ白になっていた
あんなに仲良く話していたし二人きりで遊んだこともあるのにどうして・・・!
「・・・」
またもや黙ったまま
黙っているだけじゃ分からないよ・・・!
「ど、どうしてか聞いていい・・・かな?」
俺の頬に汗がタラりと垂れる
すると朝乃ちゃんが口を開いた
「実は・・・私、西文くんのことが好きなの。ほ、ほら、北原くんって・・・西文くんと仲良しじゃない?だ、だから・・・北原くんと仲良くなれたら西文くんとも仲良くなれると思って・・・えへへ・・・。」
それってただ俺を利用してたってこと!?
えへへ、じゃないよ!!
「じゃ、じゃあ・・・二人きりで遊んでたあれはなんなの・・・?」
「西文くんのことを色々知りたかったから・・・でも、直接聞くのが恥ずかしかったから北原くんと二人きりで遊んで西文くんのことを聞き出そうとしてたの。忘れたの?」
・・・あ。そういえば、そんなことがあった。
俺は立ちくらみがしそうなほどボーッとしながらも
一つ決意をした
・・・俺はもう絶対女なんか好きになれねぇ・・・
と。
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「・・・コ・・・ヒーコ!」
「はっ・・・。」
「夢心地みたいな顔してたぞ(笑)」
「この顔のどこが夢心地に見えるだい?えー?キョーくんよぉ・・・。」
相変わらずコイツは好きになれねぇ
「おーこわ(笑)」
俺はあの頃からずっとコイツとあの女にイライラしていた
俺の気持ちを知らず、振られたことの話を目の前で笑われたから。
本気で縁切ろうとしたけれど、それは無理な話だった。
なぜなら、コイツと俺の両親が同じ会社に勤めていてそれに凄く仲が良いから・・・。
そして家が隣同士で同じ幼稚園や学校・・・所謂幼馴染み。
「はぁ・・・・・・。」
深いため息をついたのはいつぶりだろうか
「ため息をつくと幸せが逃げるぞぅ♪」
ツンツン、と俺の頬をつつく馬鹿。
「誰の所為だと思ってんだよ」
俺は鋭くキョーを睨んだ
八つ当たりとか性格悪いな、と少し反省。
「えー、俺の所為ー?(笑)」
ケラケラと笑い出すキョー
やっぱり反省したことは取り消すわ
「俺がいい娘紹介しよっか?♪」
「だからいらねぇっつの・・・。」
「そう言わずにぃー♡」
オカマ要素入ってんじゃねぇか、と疑うくらいコイツ
気持ち悪ぃ・・・。
この時、誰かの視線に気づかなかった。
「・・・」
そしてチラッと転校生が俺を見ていることを俺は知らない
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「じゃあまた明日な!」
キョーは激しく手を振り・・・
「おう」
俺は軽く手を振った
正反対の俺にはあんな元気にまたねーとか言えなi...いや、餓鬼の頃はよくしてたっけ・・・。
「何でこんなんなっちまったんだろうな・・・。」
スマホのカメラを内側にして自分の顔を見た
まぁ、俺がこんな風にしたのか・・・。
俺は頭の中であの子を思い出していた。
「浅葱・・・法華ちゃん・・・か。」
って、何柄でもないことを・・・!
ちゃんって・・・。
・・・でも・・・。
「確かに可愛かったな・・・。」
「誰が可愛かったのー?」
「ほわ!!!?」
バッと勢いよく後ろを振り返ったその先には、俺の弟と妹が立っていた。
「お前らか・・・。ビックリさせんなよ」
「で、何が可愛かったの?」
次は弟が俺に問う
「べ、別に何でもねーよ。」
俺は若干照れながら弟にそう言った
「早く鍵開けてー」
と、次は妹が俺に求む。
妹の名前がふゆで弟の方は晴瀬。
こいつらは双子で年齢は14歳
妹の髪の毛の色は金と黒が混ざっていて、弟の方は綺麗な金髪。
そして俺は父親譲りの黒い髪の毛。
ちなみに、母さんの髪の毛の色は金髪。
双子達の名前の由来は冬に生まれたからふゆ、で春に生まれたから晴瀬とつけたらしい。
「あ、おう・・・。ってか、お前も鍵持ってんだろー?」
「開けるのめんどいの~・・・ただいま~♪」
ふゆ、は俺が扉を開けた瞬間靴を乱暴に脱ぎ捨てた。
「ったく・・・ねーちゃんはお嫁に行けないな。」
ブツブツ言いながらも整理整頓が得意な晴瀬は靴を並べた
それを見ていて和んでいた俺は晴瀬とリビングへ向かった
「飯・・・何がいい?」
俺が二人に問い、リビングでのんびりしてるふゆが最初に口を開いた。
「オムライス」
「オムライスか。晴瀬は?」
「僕もオムライスでお願い」
「分かった」
「風呂掃除と洗濯してくる」
「ありがと、晴瀬。」
俺は料理をして、晴瀬がその他の家事。
妹のふゆは食べることが仕事で後は何も出来ない。何が出来るかと言えば・・・コイツは歌が上手いから
手伝ってもらう代わりにたまに歌を聞かせてもらっている。
「おにーちゃーん」
「なんだー?」
「さっき晴瀬と帰ってる途中ねー、綺麗な人に会ったよ。」
足をブラブラさせ、漫画を読みながら俺に伝えた。
「あっそ」
「・・・その様子じゃ、まだ女の子に興味ないんだねー。まっ、どうでもいいけど♪」
「そういうお前こそ男性恐怖症は直ったのかよ?」
そう、弟以外・・・俺と妹は二人揃って女・男が嫌い。
妹の場合、ナンパ男にあれやこれややられちゃってそれを見つけた俺がボコボコに片付けてやったけどあの頃の穴は埋まらないまま。
相当怖かったんだろうな・・・。
「・・・直ったよ。」
「へ?」
よく聞こえなかった
「直ったって言ってんの・・・。」
嘘だ
コイツは嘘をつく時、目をそらして髪を触るクセがある。
でも、あまり触れない方がよさそうな気がした。
「そうか・・・よかったな。」
複雑な気持ちになってしまった
「うん・・・。」
「掃除と洗濯終わったよー」
ふゆとの話が終わったら、晴瀬が戻って来た。
「サンキュー。こっちも終わりそうだ」
「オッケー」
皿に盛り付けみんなで食べていると
両親が帰って来た
「ただいま~♪」
やけにご機嫌だな・・・?
「ただいま・・・。」
こっちはやけに不機嫌なご様子で
何があったかは聞かんが・・・とりあえず、
「おかえり」
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翌日
PM6:30
両親はとっくに仕事に行っていて
飯を食べる前に少しスマホをいじっていた
学校に行く準備が終え
いつも通りの時間に起きて、いつも通りの同じ道を通りながらいつもの曲を聴いていた。
「はよ!ヒーコ!」
「おう、はよ。」
朝っぱらから馬鹿みたいにテンションが高いキョーと遭遇。
俺達は家は隣同士だが、一緒に登校はしない。
いつも一緒にいたら俺が爆発しそうになる
「昨日のテレビさー(笑)」
楽しく話すキョーだけど俺は半分聞いてない
「そっかそっか」
「ちゃんと聞いてるのかー?(笑)」
「おー、聞いてるぞ~。」
・・・あ、転校生だ。
「あははっ」
可愛い笑顔・・・って、俺はあの時女は嫌いになったのに何で転校生のことを見ると俺は変になるんだ・・・?
その感情の名前すら忘れてしまった
・・・てか、もう友達出来たのかよ!
しかも可愛いし!
いやいや、興味はないけどさ!
俺なんかキョーがいなかったらずっとボッチだったぞ!?
一人焦っていた俺を見つけた転校生がこっちを見ていたのにまた気づかなかった
「ん?」
「どうしたの?法華?」
「えっと・・・少し話してみたい人が居たから紗枝香、先に教室行ってて!」
「分かった!ホームルームに遅れないようにね!」
「うん!分かった!・・・よし!」
「なぁに百面相してるんだよー(笑)・・・お!おぉ!?」
キョーが何かに驚く
「なんだy・・・ぬぉ!?」
なっ、何で浅葱さんが俺達の方に向かって走ってるんだ!?
「おはよう!えっと、確か北原くんと西文くん!」
「お、おは・・・。」
ぎこちない笑顔を見せ目をそらした
お、俺の名前覚えてたんだ・・・馬鹿っぽいからすぐ忘れてるかと・・・。
「おっはよー!アサちゃん!今日も可愛いね!」
キョーは馴れ馴れしく転校生の肩に触れた。
何かムカつく
「あはは(笑)ありがとう♪ねぇ・・・、北原くん♪」
突然、浅葱さんの顔がドアップに。
「うわぁ!?」
俺は突然のことだから驚いた
「何でそんなに驚いてるの?可愛いね(笑)あのね、北原くんにお願いがあるの。」
と、照れながら俺に問う転校生。
俺にお願い・・・?てか、何で俺が・・・。
仕方なく聞くことにした
「何?」
「おぉ!まさかのデートの誘い!?」
「お前は黙ってろ」
キョーの顔を俺のカバンでどついた
「いったぁ~・・・。」
「で、何?」
「きょ、今日・・・もし良かったら私と帰らない・・・?」
またもや赤面で話し出す転校生
「って、ええぇ!?いっ、今なんて!?おっ、俺と帰りたいって何!?」
転校生の言動にタジタジの俺とニヤケまくってる気持ち悪ぃキョーの顔が見えた
「北原くんと仲良くなりたいから!これが理由・・・ってやつ!」
美しい笑顔を見せた転校生・・・。
そんな可愛い笑顔見せられたら俺・・・!
あまりの恥ずかしさに俺はその願いを・・・
「ごめんなさぁぁぁあああぁああい!」
断った。
「はぁ!?」
キョーが大声で声を荒げ、転校生は下を俯いて教室へ向かっていたらしい。
「うぉおおおおぉおおおおぉお!!あれは仕方ないだろ!?今まで女子とまともに話せなかったし一緒に下校なんてしたことなかったし!?てか何で俺なんだよ!」
転校生とキョーを後にして無我夢中に走った俺。
出会いは突然にやって来て俺はもう長年恋人や好きな人が出来なかった為、あの笑顔には少し刺激が強すぎた・・・。
そして・・・、恋を知らない二人の物語の幕が開けた____