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その18 どうするつもり?

「良かった。ゆりかが比較的元気そうで」

 父の葬儀も一通り終えた数日後、美智代が私のことを気にかけて来てくれた。

 本当に有難い親友。会うたびいつも元気をくれる。


「パパのことは、ある程度覚悟はしてたから…それに正直、あまり泣けなかったし…」

「どうして?ケンカでもしてたの?」

 私は迷った。こんなこと…美智代に話すべきことじゃないけれど…

「美智代あのね・・・前の事件のことなんだけど、パパが…」

と、その時、部屋で遊んでいたいずみとひなたが現れた。すぐに話題をそらした私。

「私より母の方が心配。今も一人ぼっちで家にいるから」

「…そうね。そうよね」

と美智代も相槌。

「近いうち、母をここに呼んで一緒に暮らそうかと思ってるの」

「・・・・」

 

 いずみが美智代に挨拶すると、それに習ってひなたもお辞儀をした。

「あらー、ひなたちゃんこんにちは」

「…こんにちはぁ〜」

「(*'‐'*)ウフ♪可愛いわね。ちゃんと補聴器してるから聴こえたのね」

「ええ。自分からするようになったから助かってるの。以前は嫌がってすぐ外したり、投げて壊したりしてたから」

 不意にいずみが会話に加わる。

「ひなたがこうなったのは、卓くんのおかげだよ」

 それを聞いた美智代がニヤニヤ笑っている。

「何?美智代。その意味深な笑い?」

「え?だってさ、気になるもん。ゆりかと森田が今どうなってるかって」

「そんなこと…別にどうもなってないわよ」

「フゥ…(;-_-) =3 タイミングが少しズレちゃったかもねぇ…」

「何の話?タイミングって何よ?」

 ここでいずみがズバッとストレートな物言い。

「ママの再婚のことに決まってるでしょ!」

「!!!」

 いずみは冷蔵庫からパピコを取り出すと、ひなたに与え、私に向かって更に言う。

「ママは卓くんが好きなんでしょ?卓くんだって、ママのことが大好きなんだよ!」

「いずみちゃん、よく言ったわw」

 美智代がいずみを絶賛するような目で見ている。

 私は自信のない物言いしかできない。

「卓さんは…昔の責任を重く感じてるだけよ。私のことなんか別に…」

「違うよママ。私、卓くんを見ててわかるもん」

「・・・」

「英之がこの家からいなくなったときから、卓くんはずっとママが病院から帰って来るまで、ここで待ってたじゃない」

「あれは…あなたたちを守ってくれてたんじゃないの」

「それもあるけど、1番の理由はね、ママの顔を見たかったからなの。ママの顔を見てから帰りたかったのよ!」

「そんなことは…」

「そうなんだってば!卓くんは単純だから表情見ればすぐにわかるもん。ママが帰宅するとすごく嬉しそうにしてた。でもそれを悟られたくないから、入れ替わりのようにすぐ帰ったのよ」

 私は返す言葉もなかった。いずみの説明にただ、困惑していた。

「そしてママもだよ。ママが1番幸せそうな顔をしてたのは、やっぱり卓くんと一緒に暮らしてたときかなぁって、最近思うの」

「…いずみったら。。」

「ママ。私が言いたかったのはここまで。あとはヨロシク」

「え?ちょっとヨロシクって一体…」

「これからひなたと一緒におばあちゃんの家に行くね。夕方には帰るから」

「え、ええ…わかったわ。気をつけてね」

 私がいずみに対してまともな言葉で返せたのは、こんなことだけだった。



 リビングに残った私と美智代。少しの沈黙の後、美智代が切り出した。

「ゆりか、どうするつもり?」

「どうするって、今はまだそんな。。パパも亡くなったばかりだし」

「それはわかるわよ。行動としては今は自重の時期かもしれない。でもね、ゆりかの決意は今のうちハッキリさせておいた方がいいと思うの」

「私の決意…」

「そう、むやみにダラダラした時を過ごしてはダメ! アタシね、さっきゆりかが言いかけた言葉の続きがわかるの」

「…え?」

「ゆりかが言いづらそうにしてたから、アタシが言ってあげる」

「ちょ、ちょっと待って!本当にわかるの?それに何で美智代がわかるの?」

「事件とゆりかのパパの関係を言おうとしてたんでしょ?」

「Σ( ̄□ ̄;!!」

「是枝さんや三木綾乃を裏で操っていたのは、ゆりかのパパ」

 今日の私は驚きの連続。開いた口がふさがらない。

「だからゆりかは余計に苦しんでる。でもね、あなたが苦しんだところで、もう結果論でしかないのよ。それにゆりか自身に罪は全くないんだからね!あなたの悪いクセで、深く考え込むのはもうやめて!やめるべきよ」

 図星を言われて私はまた言葉を失った。それと同時に美智代に対する新たな信頼感も生まれつつあった。

「ゆりか。あなたは素直な気持ちの自分をさらけ出すべきよ。もうそういう時期に来ているとアタシは思うわ」

 美智代の言葉にはいつも勇気づけられる。でも。。。

「私、卓さんに申し訳なくて…うちのパパが卓さんにした仕打ちを考えると…また再婚を願う私って、ただ都合がいいだけのような気がして…それにこのことを知ったら卓さんだってきっと…」

 美智代が私の言葉を途中で遮る。

「それは違う!違うわゆりか。いい?よく聞いて。森田はね、全て知ってるの」

「えっ?(゜〇゜;)す…全て?」

「ええ。昔の仕組まれた離婚劇の演出も。そしてその裏にはパパがいたこともね。森田は全てのからくりを知っているの。その上で森田は、あなたやいずみちゃん、そしてひなたちゃんと接して来たの」

「そ…そんなこと。。全然知らなかった。。」

「それなのに、なぜ森田がここまでしてきたのか意味がわかる?」

「それは・・・」

「さっきいずみちゃんも言ったじゃない。ゆりかが大好きだからよ!森田は心底あなたが大好きなの!もうその一点しかないのよ!」

 

 じんわりと涙が込み上げて来た。恥ずかしい…私、最近泣いてばかり。。

 私はそんなにも彼に好かれていたんだ。。

 私って、いつからこんな鈍感になったんだろう?人に言われて気づくなんて…


 美智代がなぜここまで知っているのか不思議だった疑問は、このあと聞かされた。

 あの茜崎涼が全て調べ上げたなんて、これも驚き。

 彼は私のパパの病室にも足を運んで、卓さんの事情をあれこれ話している。

 それはなぜなんだろう?愛のキューピット役でもしたいわけ?それとも私への償いのつもりなんだろうか?

 そして、涼と美智代がなぜ知り合いなのかも尋ねると、それは軽く流された。

 まぁ、いいわ。今の私は自分のことで精いっぱいだもの。。



 美智代が帰った後、私は決意を新たにした。

 これからは自分の人生に前向きに生きよう。今までは維持するのに必死だった。壊れかけの家庭をこれ以上被害が広がらないように食い止めていただけ。

 でもこれからは違う。壊れた個所はちゃんと修復していこうと思う。新しいものを取り入れて、新しい感覚をつかみ、未来を考えていこう。


 その前に…

 私にはあとひとつだけ、確認したいことがあった。それは以前から気がかりだったこと。

 早速明日、それを実行することにしよう。

                            (続く)


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