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その12 僕に必要なもの(前編)

 会社帰りの横断歩道。

 信号待ちしている僕のとなりにやって来て、

「森田くん、久しぶり」

と声をかける男性がいた。

「あ!もしかして茜崎あかねざきさん?」

「もしかしなくても茜崎だよ(^_^;)そんなに俺、風貌変わったように見える?」

「いえ…やっぱ変わってないですね(^^ゞ」

「((ノ_ω_)ノバタッ」

「茜崎さんとは何年ぶりでしょう?それにしても偶然ですねぇ」

 茜崎さんが苦笑いをしている。なんか僕、マズイことでも言ったかな?^_^;

「いや、偶然じゃないんだ。君の勤務が終わって出てくるのを待ってたんだ」

「なんだ。そうだったのか。偶然じゃないんだ。アハハハハ(⌒▽⌒)ノ彡」

「そんなに笑えることかい?(^_^;)」

「すみません。どうも僕最近、色々考えると感情がチグハグになっていまして」

「感情がチグハグねぇ…君らしい表現だね」

「言いません?チグハグって」

「言わないね」

「標準語じゃないのかなぁ…?」

「そんなことより、君に話があって来たんだけどね」

「あー、すみません。僕としたことが…」

「いや、君だからだと思うが^_^;」

 なかなか話が噛み合わなかった。まぁ僕のせいなんだけれど。


 信号が青になり、僕たち二人は並びながら歩き出した。茜崎さんが話しかけてくる。

「森田くん、これからヒマ?」

「ええ。特に予定はないですけど」

「じゃあちょっと付き合ってくれる?晩メシおごるから」

「( ̄□ ̄;)ええっ!…それってどういう意味の“付き合い”ですか?」

「あのね、無理な方向に持って行かないようにしてくれる?そんなんじゃないから」

「すみません。そうですよね(⌒-⌒;やっぱ僕変なんですよ」

「色々考えるから?」

「はい、そうです。すごい!よくわかりましたね?」

「さっき君が言っただろε-(ーдー)」

「そうでした( ̄┰ ̄;)ゞ」

「・・・・」

 僕は明らかに浮足立っていた。その理由は自分でわかっているのに。。


 茜崎さんとの夕食は、自然食バイキングの店だった。

「森田くん、ひと通り食事を運んで来たらゆっくり話そう」

「そうですね。そうしましょう」

 僕たちは一旦席に着いたテーブルを離れ、各種料理の調達に向かう。

 食いしん坊の僕。見るもの全てが食べたくなり、テーブルを何往復もしていると、

「森田くん、そろそろ食べない?食べたりなかったらまた取ってくればいいんだよ」

と茜崎さんが教えてくれた。

「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lええっ?そんなことできるんですか?」

「できるよ。まさかバイキング初めて?」

 僕はコックリうなづく。

「僕はてっきり、一度席に着いたらもう取りに行ってはダメかと(^^ゞ」

「こりゃ驚いたな^_^; まぁ、そういうことだから、とにかく座って」

「すみません。でもあと一つだけ」

「ん?なんかウマそうなのあった?」

「えとですね、向こうにある有精卵で作ったオムレツってのを持って来たいんですよ」

「じゃあさっさと行って来て」

「すいません。ダッシュで行きますんで」

「こぼすからゆっくりでいいよ( ̄ー ̄;」


 茜崎さんが僕を呆れ顔で見ているのも仕方ない。それは充分承知している。

 僕はあえて今の自分の精神状態隠を隠すつもりはなかった。

 明らかに今の僕は過食症に陥っている。心に持っている不安や迷いを、食欲を満たすことで気を紛らわそうとしている。


 やっと席に落ち着いて食べ始めたとき、茜崎さんが待っていたかのようにしゃべり出す。

「ゆりかのことだけど…事情は色々聞いて知ってる。で、君はどう思ってるんだ?」

 いきなり核心をついてきた茜崎さん。

「誰から聞いたんですか?」

 僕は炊き立ての五穀米を口いっぱいにかき込みながら返答する。

「質問の答えになってない。俺は探偵だよ。情報網はいくつもある。君はゆりかをどう思ってる?」

 僕は無添加みそで作った出来たての味噌汁を啜り、口の中の食物を胃に流し込んだ。

「ゆりかさんは…大事な人だとは思います」

「だったら決まりじゃないのか?」

「何がです?」

「だから、再婚すればいんじゃないのか?」

「…そんな口で言うほど簡単には。。」

 僕がオムレツに手を伸ばそうとする所を茜崎さんが制止した。

「森田くん、逃げるな。食べることで大切なことから気をそらそうとするな。楽になろうとするな!」


 『・・・。』( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)


 図星を指摘されて声が出なかった。

 茜崎さんとは数年ぶりに会ったというのに、僕の内面を見抜いている。

 それほど僕が単純だとも言えるけど。。(⌒-⌒;


「森田くん、タイミングを誤るな。俺は思うんだ。今は君に風がなびいていると」

「はたしてそうでしょうか?」

「それを君自身が打ち消そうとしてるのがわからないのか?」

「はぁ…なんとなくわかります。。」

「それがわかってるんなら、俺はもうクドクド言わない」

「言ってもいいですよ?(⌒-⌒;いえ…もう少し僕に…何か説教して下さい」

「は?(・_・)」


 自分でも不自然なことを言ってるのはわかっていた。

 でも、今の僕にはそれが必要だった。絶対に必要だった。

                (続く) 

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