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その14 拓真の目的

拓真たくまの目的


 森田卓の車を追跡していたテツは、少し離れた路肩に自分の車を停車した。

「もしもし兄貴、例のアホづら男がガキらを車から降ろしました」

「そうか、家の前まで送り届けたんだな?」

「いえ、それが道端なんスよ」

「…ん?どういうことだ?」

「わかりません。でも家は近くに間違いないス!ここ結構すげぇ家ばっかで…」

「すげぇ家?」

「なんつかそのぉ…あちこちデカイ家ばっかで金持ちの溜まり場みたいなとこっスよ」

「つまり閑静な住宅街ってことか」

「そう、それっス!閑静閑静。それ言いたかったんスよ」

「ウソつけ」

「さすが兄貴。語学も達者で」

「それ語学って言わねぇから」

「で、兄貴どうします?ガキらの家を確かめますか?」

「そうだな。どんな家か見ておけ」

「はいっ!男の方はどうします?」

「ほっとけ。奴の家はもうわかってるから意味がない」

「わかりました。またあとで連絡します」


 仲間とゲームセンターからカラオケルームへと移動して指示を出す世良拓真。

 歌うつもりなど毛頭なかった。ただ、第三者に会話を聞かれたくないことから個室のあるカラオケにしたのだ。

「兄貴、一曲どうです?」

「俺は飲んでるだけでいい。お前ら適当に歌っとけ」

「しかし、兄貴を差し置いて俺達が先に歌うってのはちょっと…」

 拓真はグラスを置いてスゴみのきいた口調で言った。

「お前ら、俺がオンチなのを知っててバカにするつもりなのかっ!」

 とたんにビビる弟分たち。

「すすす、すんませんっ。じゃ先に歌わせてもらいますっ!」

 少年グループには絶対的な権力を誇る拓真だった。


 10分後、拓真のケータイに再びテツから着信があった。

「もしもし兄貴、ガキらの家がわかりました。どうやら他の家族は…」

「テツ、ちょっと待て」

 拓真は持っていたグラスをテーブルに叩きつけて一喝した。

「マサ、静かにしねぇかバカヤロー!いつまでも歌ってんじゃねぇ!」

「す、すんませんっ!」

 歌うのをやめ、慌てて演奏を解除するマサ。

「よし、話していいぞテツ。どんな家だ?」

「思った通りデカイ家っス。金持ちには間違いないと思いますね」

「そうか。他の家族の姿は見たのか?」

「いえ、どうやらまだ帰って来てないようですね」

「どうしてわかる?」

「ガキ二人が家に入るまで、明かりがついてなかったんスよ」

「なるほど。さすがだなテツ。お前が一番観察力があるぜ」

「そりゃどうも(^^ゞ じゃあ兄貴、俺そろそろここから離れていいっスかね?」

「いや、親が帰って来るまで見張っとけ。その時間も忘れるな」

「( ̄▽ ̄;)ええ〜〜っ?」

「なんだイヤなのか?一生見張れって言ってんじゃねぇんだぞっ!」

 拓真の機嫌が明らかに悪いと悟ったテツもケータイの向こうで平謝り状態。

「申し訳ありません!全力でやりますっ!一晩くらい徹夜になろうと頑張りますっ!」

「1週間だ」

「…は?( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)」

「1週間、そこの家族の出入りする時間を全部調べろ」

「は、はぁ…わかりました…」

 弟分たちにはその理由さえも聞くことができなかった。

 もちろん誰もが薄々は気づいているが、口に出す者はいなかった。


「面白くなって来そうだぜ。一石二鳥かもしれん」

 拓真の機嫌が少し良くなったと判断したマサが、丁重に話しかける。

「兄貴、もう1杯おかわり頼みましょうか?」

 拓真は謎めいた笑みで答える。

「いや、歌おう」

「え?…ええっ?」

「なんだ?俺が歌ったらダメか?」

「いえいえいえいえ、どうぞお好きなのを。すぐに検索しますっ!」

「おーし!」


 どう聴いても拓真のオンチはひどかった。

 それでも少年たちはお世辞とヨイショのオンパレードだった。

「兄貴っ!サイコー!」

「しびれちゃいますっ!」

「満点満点!」

「アンコールっ!」etc…


 歌い終えて、すっかりご機嫌の拓真。そしてホッとする弟分たち。

と、そこで大画面のモニターから採点評価の出る賑やかな音響が。。。

「バカ!誰だ?採点設定したの」

 そうマサが小声で言ってみても遅すぎた。


“只今の得点29点”


 固まる一同。

 10秒ほど静まり返った後、マサが重い口を開いた。

「兄貴、すごいですね!30点満点のうちの29点ですよ!」

 もちろんそんな白々しいウソが通じるはずもない。

「ヤカマシイッ!!」

 拓真はイスを思いきり蹴とばして部屋を出て行った。


 嵐の去ったカラオケ部屋に残された少年グループ。

「29点なんて、出せっても俺は出せないぜ(⌒-⌒;」

「ある意味そうだなw」

「なぁ、俺達兄貴をチヤホヤしすぎじゃねぇか?ナニサマのつもりなんだよありゃ」

 その言葉を受けて、マサはゆっくりとうなづきながら同調した。

「だな…たしかに」

                 (続く)


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