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その13 僕にできること

僕にできること


「ねぇ、何で卓くんが“あやとり”なんてできたの?」

「なんでって聞かれてもねぇ…でも結構覚えてるもんだなぁ(^^ゞ」

「子供の頃って女の子としか遊ばなかったとか?」

「まさか」

「だよね」

「納得するの早っ(^_^;)」

「だって想像できないんだもん」


 いずみとひなたちゃんを家まで送って行く車の中。

 僕はいずみの疑問に答えた。 

「それはね、僕が子供の頃にばあちゃんから教えてもらったんだよ」

「へぇ、そうなんだ。卓くんのおばあちゃんはもう死んだの?」

「ちゃんと生きてるよ。田舎で畑仕事もまだしてるらしい」

「すごい元気なんだね。おじいちゃんは死んだの?」

「(⌒-⌒;あのねいずみ、その尋ね方が変だよ。死んだの?って聞くんじゃなくて、元気なの?とか長生きしてるの?とか言わないとね(^_^;)」

「はーい( ̄┰ ̄;)ゞ」


 さっきまでいた僕の家であやとりをしていたのは、ひなたちゃんに教えるため。

 幸い、僕たちのやってる姿に興味を示したようで、じっとあやとりの行方を楽しそうに眺めていた。

「やってみる?」

と僕がジェスチャーで示すと喜んであやとりに手をかけた。

 うまくいかなくてもかんしゃくも起こさないで何度もチャレンジするひなたちゃん。

 すっかりあやとりに夢中になり、この帰り道の車の中でもひとりで自分の手に引っ掛けて遊んでいる。

「手のかからない子だね。ひなたちゃんは」

 それに対していずみの意外な反応。

「それがびっくりなの。うちでは大声出すし、すぐキレるし、物は投げるし大変なんだよ」

「ええっ?(゜〇゜;)そうなの?全然想像つかないなそんなの」

「私だってこんな楽しそうなひなた、想像できなかったよ」


 なぜだろう?こんな無邪気な女の子が自分の家ではそんな状態だなんて・・・

 むろん、耳が聞こえないハンデは大きい。ストレスも人の数倍かもしれない。

 僕は思いついた率直な疑問をいずみに問いただしてみた。

「家ではひなたちゃんと遊んであげてないのかい?」

「いつもは無理だよ。私だって学校があるし、ひなたと遊んであげられるのは夜の1時間くらいかな」

「あやとりはしてた?」

「ううん全然。ひなたには今日が初めて」

「じゃ何してたの?」

「お絵かきとかぬりえをさせたり、たまにママごとしたり…」

「おとなしくできそうな遊びなのにね。ひなたちゃんの性格に合わないのかな?」

「そうかも。うまく絵が描けないとスケッチブックもぬりえもグチャグチャにするし、クレヨンも放り投げちゃうし」

「そっかぁ…でもゆりかママは遊んであげてるんだよね?」

 この質問への答えはいずみの口が重かった。

「…う〜ん、それがあんまり。。ママ、ちょっと体調が悪くて…」

「え?まさか入院してるとか?」

「入院してるのはおじいちゃん。ママは毎日おじいちゃんのとこに付き添ってるの」

「おじいちゃんが入院?それって源一郎おじいちゃんのこと?」

「うん。。だからママ、疲れきっちゃって…」

「是枝くんはどうしてるの?」

「英之?あんなの全然ダメ。日曜でも接待とかでいつもいないし、ひなたと遊ぶのは5分か10分で、飽きたらおしまい。あと書斎にこもって出てこないんだ」

「そうだったんだ…それじゃひなたちゃんはストレス溜まるだろうなぁ」

「やっぱり卓くんもそう思う?」

「うん。ろうあ学校みたいなとこには行ってないの?」

「そのつもりだったんだけど、ひなたがもう泣いて泣いて行かないの」

「うーん…人見知りが激しいのかな?」

「そうそう。それなのに卓くんには平気なんだから不思議でしょうがなかったよ。同類か同じレベルだと思ったのかもねw」

「さっきは僕の笑える顔がひなたにウケのかもって言ってたくせに(⌒-⌒;」

「泣かれるよりはいいでしょ!」

「まあねw」


 しかしながら、こんな事情を小刻みに聞かされると、いずみの家庭が決して円満ではないことがよくわかる。

 僕にとって、元義父・須藤源一郎氏の入院。ひなたちゃんの聴覚障害。是枝くんの家庭放置。そしてゆりかさんの疲労と体調不良。

 でも僕がこの家庭に関わることはできない。ゆりかさんには何もしてやれない。

 ただ、少しだけれど、間接的に何か手助けはできるかもしれない。

 幸い僕のところにいずみとひなたちゃんがこれからも来てくれるようだし。


 僕がこの子たちにしてあげられること…

 特に障害を持つひなたちゃんをこのままにしてはいけない。

 

 今の僕にできること。。。それは。。


 

 いずみたちの家の近くに着いた。以前のように玄関の正面までは行かない。万が一、ゆりかさんか是枝くんが帰宅していたら大変なことになるからだ。

「卓くん、ありがとう。はい、ひなたもお礼を言って」

 ひなたちゃんはいずみに促されるようにわずかなおじぎをして、あやとりのひもが引っ掛かったままの両手でバイバイをしてくれた。


 僕は二人を降ろしたあと、即効で本屋さんに向かい、お目当ての本を物色し、それに関するDVDも手に取った。

「よしっ!今夜から頑張らないと!」


 そう、僕が手にしたのは手話の本。どこまでできるかわからない。

 けど、僕はひなたちゃんのために頑張る!

 人と対等に…人と意思の疎通ができるようにしてあげるんだ。。

                     (続く)


●現時点での今後の予定。

最終第3章は「その30」をメドにしております。

「その20」までのプロセスは決まっていますが、

その後は僕の心理的状況で、エピローグも変化する可能性あり(笑)

毎日更新できなくて申し訳ありませんが、どうか長い目で見てやって下さいませ。

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