その12 ターゲット発見
ターゲット発見
「兄貴、あそこでゴミ拾いしてるアホそうな男、やっちゃいますか?」
公園近くの路上でたむろしていた少年グループ4人とそのリーダー格の男。
少年4人は、この町内と隣接する3つの町内も含めて、俗に“あいつら”と呼ばれて敬遠される不良グループ。
その中の一人が言い出した言葉に、兄貴分であり、リーダーの世良拓真は苦笑した。
「おいおい、俺にまたすぐムショに戻れっていうのかよ」
「ハッ(゜〇゜;)すんませんっ!そんな意味じゃなかったっス」
「俺のせっかくの仮出所を台無しにすんなよ」
「申し訳ありませんっ!」
弟分は深々と頭を下げた。
「お前らまだホームレス狩りなんてやってんのか?ガキだなぁ。たかが腹いせに金にもならねぇオッサンをボコボコにしたところで何のメリットがある?」
「はいっ!その通りですっ」
弟分はリーダーの言葉に対して絶対に否定も言い訳もしない。
「わかったんならお前らもっと自分の目を養って頭を使え!」
「はいっ!」と一同。
「あいつを見てみろ!ゴミ拾いはしてるが、服装はボロボロじゃない」
「さすが兄貴。やつはホームレスじゃないってことで?」
「サラリーマンだろう。毎日食うに困るホームレスがあんなに小太りなはずは…」
突然、世良拓真の目がその男一点に注がれた。
「兄貴、どうかしましたか?」
「あいつめ…こんなとこにいやがったのか」
弟分が不思議そうに尋ねる。
「もしかして兄貴の知り合いで?」
「…知り合い?…フフ、まぁほんのちょっとな」
「はぁ?」
「お前ら先にゲーセンでもどこでも行ってろ。俺は少し寄り道する」
「はいっ!ではお先ですっ!」
世良拓真は公園内に入ろうとゆっくり歩き始めた。
「あいつに間違いない!俺をコケにしてくれた野郎!逃げ切れたはずの俺を自転車を倒して邪魔した野郎!こんなところにいやがった…」
拓真の形相が変わりつつあった。
ちょうどその時、路線バスが公園入り口前の停留所に停車して、中からいずみとひなたが降り立った。
彼女たちは、拓真の30メートルほど先を歩いて公園内に入って行く。
「卓くぅ〜ん♪」
不意に叫んだいずみに、少し遠くから見ていた拓真は驚いた。
「ん?顔見知り…か?」
拓真は立ち止まり、いずみとひなたが卓のそばまで行くのを木影から見届けた。
「親子?・・・じゃないよな?」
数分後、森田卓たちがこの公園から移動しようと歩き始めると、拓真も彼らのあとを気付かれないように尾行した。
そして卓のアパート前に来ると、3人が2階の真ん中の玄関に入るのを確認して、すかさずケータイを開く。
「おい、お前ら今どこにいる?ゲーセンに着いたとこだと??そんなとこで遊んでんじゃねぇ!一人だけすぐ俺んとこに来い!大至急だ!」
息を切らしながら弟分の“テツ”が息を切らしながら到着した。
「兄貴っ、どうしましたかっ?」
「おうテツか、お前さ、あのアパートの2階の真ん中見張っとけ」
「は、はいっ!」
「誰か出てきたらすぐに電話しろ。いいな」
「はいっ!兄貴は何か用事でも…?」
「俺?俺は近くのゲーセンにいる」
「(ノ__)ノコケッ!」
「じゃ頼むぞ」
こうして世良拓真は森田卓といずみ、ひなたをマークした。
「面白くなってきそうだといいんだが。。フフフ( ̄ー ̄)〜♪」
(続く)