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その11 新たな顔合わせ

新たな顔合わせ


 英之の帰りが毎晩遅くなっていた。いつも帰りは酔って帰宅する。

 お酒飲まなきゃ仕事できないなんてバカみたい。

 卓くんがラーメンを食べないと仕事ができないと言ってるのと同じだ。


 でも私にとってみれば好都合。英之が1分でも家にいない方が気が休まる。

 日曜も毎週接待ゴルフだの何だのって理由をつけて家にはいない。

 だから本来なら私は家でも外でも伸び伸びできるはずだった。

 でも…その状況が少し変わってしまうことになった。

 原因はおじいちゃんの入院。

 

  ママの父親のおじいちゃんが入院したのは2月。

 そのとき私はまだ受験生だっかたら、ひなたの面倒はママがみていた。

 でもママの疲れもピーク。手のかかるひなたを連れて、ほぼ毎日おじいちゃんのところへお世話をしながらひなたの相手もするのは体力的にも無理。

 だから受験も終わって落ち着いた頃、私自身からママに申し出た。

「ママ、土日だけでもひなたの面倒は私がみるよ。ママはおじいちゃんに専念して」

「ありがとういずみ。そうしてもらえると助かるわ。じゃあひなたをお願いね」

 か細い声のママ。相当疲れてるのがよくわかる。

 それ以来、学校のない週末は毎週ひなたと家で二人。友達と遊びにも行けない。

 でもそれは私が言い出したことだから納得はしている。


 そうだ!こういうときこそ卓くんとこに行こう!


 本当はもっと早く行くつもりで、3月に送った卓くんへのメールにはそれとなく匂わせておいたのに、私自身が高校に慣れるまではと躊躇していた。


 そうだよ。夕方までには帰って来ればいいんだもん。そうしよう!


 私はひなたの手を引いて、ママと英之が外出した1時間後に家を出た。

 ひなたは外が大好き。すごくはしゃいで機嫌がいいから手をやかない。

 ただ、ひなたはほとんど耳が聞こえないから、車にはもちろん、近づいて来る自転車やバイク、ジョギングしている人にも十分気をつけて私が守ってやらなければならない。


 バスに30分の道のりを揺られながら無事に到着。

 あとはすぐ前の公園を歩いて通過するとまもなく卓くんのいるアパート。

 ふと公園の茂みにかがんでいたずんぐりむっくりのおっさんを発見。一目で誰かわかってしまうのがなぜか可笑しかった。

「卓くぅ〜ん♪」

 私はまだ少し遠くにいる卓くんに手を振って叫んだ。

「ひなた、あのおじちゃんと一緒に遊ぼうね」

 私が卓くんを指さすと、ひなたはポカンとした顔で卓くんを見つめていた。


 

「急に来るなんてびっくりしたよ。前もって言ってくれたら良かったのに」

「ごめんね。今日思いついたの。この子が妹のひなただよ」

「そうか、この子がゆりかさんと是枝くんの…」

「言ってなかったけど、ひなたに話すときは身振り手振りもつけてしゃべって。耳が聞こえないの」

「ええっ!(゜〇゜;)」

「だからそんなにびっくりしないで。ひなたが敏感に感じちゃうから」

「あ…ごめん。。」

「ほら、ひなただってびっくりした顔しちゃ・・・あれ?」

 びっくりしたのは私だった。人見知りの激しいひなたが初対面の卓くんを見て笑っている。こんなの普通あり得ない」

「はじめまして。ひなたちゃん。おじちゃんと一緒にゴミ拾う?」

「卓くん、変なこと言わないで(^_^;)でも今のジェスチャー良かったよ。そんな感じで話してあげて。勘のいい子だから4歳でもわかるの」

「うん、わかった」

「で、何でゴミ拾ってるの?前はペットボトルだったじゃない?」

「これはただのボランティアさ。ゴミの分別が厳しくなってから、みんなちゃんとペットボトルの回収容器の中に入れるようになったんだ。それは勝手に持って行けないからね」

「じゃあゲンさんの収入がなくなるじゃない?」

「トメさんだよ(^_^;)」

「そうだったっけ?私にはどっちでもいいんだけど、その本人はどこにいるの?」

「今日はいないよ。駅の構内に行って、捨てられた雑誌とか集めてるようだよ」

「ふうん。いろいろやることあるんだね」

「ところで今日は何の用で来たの?ママに言って来たの?

「言うわけないでしょ」

「わけないでしょってことはないでしょ?(⌒-⌒;」

「秘密だからしっかり守ってね!これから」

「これからって…まさか・・; ̄_ ̄)」

「毎週来ることにしたの。ひなたと」

「えええええ?( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)」

「いやなの?」

「そうじゃなくてさ、いずみが受験勉強しに来てたときもいつバレルるかってヒヤヒヤだっただろ?」

「私は全然」

「僕はそうだったんだよ。やっといずみが合格してホッとしたところなのにさ。また秘密を作るのはちょっとねぇ」

「だって、卓くんとこ行って来るなんて言えるはずないじゃん。ママも英之もいいよって言うと思う?」

「言わないだろうねぇ^_^;」

「でしょ?そういうことだからお願いね。そろそろ卓くんの家行こうよ」

「う、うん…仕方ないしねぇ。でもさ、何も御もてなしできないよ?」

「そんなの期待してないから安心して。ひなたのおやつも持って来てるし」

 私は片手に持っていたおやつの袋を軽く叩いた。

「あぁ、それなら良かったよ。なんせ何もないからさあぁ 」

「しみじみ言わないでよ」

「ハハ…じゃあとりあえず僕の家に行こうか。それにしてもひなたちゃんは人見知りしないんだね?」

「するよ。激しく。でも不思議なんだ。卓くん見て笑うなんて」

「純粋な子供は心の優しい大人がわかるのかもよ?w」

「自分で言わないのっ!きっと子供でもツボにハマるほど笑える顔ってあるんだよ」

「僕はどんな顔に見えてるんだい?(⌒-⌒;」

「きっとアニメキャラだよw」

「まぁ嫌われるよりいっか。ハハ。。さぁひなたちゃん、おじちゃんちで遊ぼうね」


 ひなたが卓くんを見てまた笑った。

 ちょっと強引だったけど、卓くんならきっと大丈夫だと思っていた。

 私の直感というほど大げさなものじゃないけれど、私やひなたを守ってくれるのは卓くんしかいないとこのとき思った。

 根拠も何もないのに…

                   (続く)


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