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その8 らしくない家庭教師

らしくない家庭教師


 家庭教師。聞こえはいいけど僕は人に教えるほど優秀でもない。

 そりゃ小3のときの勉強くらいは見てあげれたけど、中3の受験勉強となるとそんなに甘くはない。

 幸い、いずみは元々頭が悪いわけではないから、僕が何もかも教える必要はなく、その点では助かっている。

 それにしても先生でも何でもない僕に、いずみはよく毎日通って来てくれる。

 本当に不思議でならない。是枝くんの稼ぎを考えると、塾へ行くお金には不自由するはずがないのに。

 家庭に何か問題がでもあるのだろうか?僕がそう思ったところで余計なお節介だし、何かできるわけでもない。


 今日もいずみは途中のコンビニでおにぎりと飲み物を買って来ていた。どうやら毎日弁当代はもらってるらしい。

 いつも夕方4時頃から勉強を始めて、6時半になると食事タイムにしている。

 本当はそこで終わりにしてもいいのだけど、いずみがその後もまだ勉強したいと言うので、8時過ぎまで延長する。

 当然帰りは真っ暗で、そんな中を中学生の女の子ひとりを帰すわけにも行かず、僕が是枝家のすぐ近くまで車で送るのが日課になった。

 

 いずみがおにぎりを食べている間、僕は洗濯機に洗い物をぶち込んで回している。

「卓くんも一緒に何か食べたらいいのに」

「いいんだ。僕はやるべき作業を全て終えてからじゃないと、食べる気がしないんだ」

「夜遅く食べると太るよ。いつも何時に食べてるの?」

「んと、いずみを送って帰って来てからだから…9時半頃かな」

「・・・そうなんだ。ごめんね。。」

「いやいやいや、そんなの気にしなくていいから。普段でもそのくらいだから」

「おにぎり半分あげよっか?」

「いいってば。いずみは食べざかりなんだから遠慮しないで食べなさい。受験生は体力だって必要なんだよ」

「…うん」

「でもどうしても僕にくれるって言うんなら、その焼きたらこをもらおっかな?」

「焼きたらこだけは絶対やんないよーだ( ̄┰ ̄)」

 いずみが買ってくるおにぎりは毎日2個。そのうち1個は必ず焼きたらこ。もう1個の具は毎日バリエーションが違う。

「焼きたらこが大好きなのは小学生の頃から変わらないんだな(='m')ウププ」

「卓くんそんなこと覚えてたんだ?なんか恥ずかしいなぁ(*^ - ^*)ゞ」



 軽い食事タイムと延長授業が終わり、次なる時間はこれも定例になったいずみのシャワータイム。着替えも毎日準備良く持って来るのが習慣になっていた。

 僕はその間に、脱水が完了した洗濯物を干し、前日に干して乾いた衣類やタオルを取り込む。

 そのとき、ふと気づいた。

「あれ?バスタオルがない。脱衣室に置いてきちゃったのかな?」

 僕はいずみに気づかれないように、そっと風呂場のとなりにある脱衣室へ侵入する。でもいずみはガラス越しの僕に気づいてしまった(^□^;A

「ちょっと卓くん、何あやしいことしてるのっ!」

「あわわわ…(@@;))))〜〜(((((;@@)ウロウロ。。ごめんごめん」

「何してるの?」

「いやその…洗濯物を取りに来ただけだなんだ。びっくりさせてごめん。変なこと全然考えてないからホントに」

「もうっ!そんなこと言うからエロオヤジって言われるんだよ!言わなきゃいいのに」


 別に誰からもエロオヤジなんて言われてないんだけどな…(⌒-⌒;


 僕は慌てて取り残されたバスタオルを抱えて脱衣室を出た。

 あまりに慌てふためいたので、茶の間を走り抜けるときに蹴つまづいて前倒れに転び、いずみが飲みかけのペットボトルのお茶をひっくり返してしまった。

 フタの締め方も緩かったせいで、テーブルと床に全部お茶が注がれてしまった。

「またドジっちゃったぁ〜!(TOT)」

 嘆いててもしょうがないので、抱えていたバスタオルでこぼれたお茶を急いで拭きまくった。

とそのとき、またまたとんでもないことに気付いた僕。

「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lうわーっ!こりゃヤバい〜!」


 そう、僕はいずみのスカートでお茶を拭いていたのだ。

「しまった。いずみの脱いだものまで一緒に持って来てしまった(^□^;A」

 そしてちょうどそのとき、

「卓くーん、私のスカート見当たらないんだけどー?」


ガ━━ΣΣ(゜Д゜;)━━ン!! 


 これはごまかしきれない。話がこじれたら大変だ。正直に謝ろう。。

「ごめんいずみ。んと…その…いずみのスカートでこぼれたお茶拭いちゃったんだ」

「ええっ?(゜〇゜;)なんでぞうきんとかタオル使わないの?」

「うちのバスタオルといずみのスカートの柄が似てたんだよ(⌒-⌒;」

「(ノ__)ノコケッ!何でそんな柄のタオルなんてあるのっ!?」

「去年のお歳暮のもらい物なんだ。チェック柄のタオルでさ」

「(・T_T)うぅ…私、下着の替えしか持って来てないよぉ」

「ごめーん。僕のジャージ貸してあげるから間に合わせに履いてくれる?」

「いいけど…臭くない?」

「洗濯してるから大丈夫だよ(^_^;)」


 こうしてシャワーから上がったいずみのジャージ姿に驚いた。

「卓くん、ヤダこれ。ジャージの丈が短いよぉ( ̄ヘ ̄)」

「い…いずみの足が長すぎるんだよ(⌒-⌒;」


 さすがゆりかさんの血を引く娘。八頭身美人とはよく言ったもの。

「帰ったらママに何て言えばいい?」

「友達のジャージ借りたって言えば?」

「私の友達、こんなダサいジャージ持ってないもん」

「そりゃごめんよ(^_^;)」

「まぁ、なんとかするよ。たいしたことじゃないから」


 僕は内心ホッとした。最近、爽と鬱の日がはっきり分かれているいずみ。

 めちゃくちゃ怒られるかと思ったけど、案外ケロッとしてくれて本当に助かった。

 もうこんなドジは二度としたくないんだけど…


 やっぱし無理かもなぁ。。。(^□^;

                   (続く)


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