その3 マンツーマン
その3
マンツーマン
次の日もいずみはやって来た。本当に僕の家に毎日通うつもりなんだろうか?
昨日と今日は土日だから僕も時間があるけど、平日はどうするつもりなんだろう?
「卓くんすごい!」
「なにが?」
「だって、今日部屋臭くないもん♪」
「はは…(~▽~;)“ほのかに薫るファブリーズ”っていうのを買って来たんだ」
「ほのかにしては随分いい香りするよ?」
「なんか全部スプレーしちゃったみたいなんだ」
「(ノ__)ノコケッ!す…卓くんそれやりすぎ(^_^;)」
いずみはしっかりと教材を持って来ていた。
本当に目的は僕に勉強を教わるためだけなのかな?
いや、そうじゃない。何か別にある。きっとある。
昨日は僕から聞いてもうまくはぐらかされた。いずみの方から話してくれるまで待とう。うん、そうしよう。
「こんなに早く来るとは思わなかったよ。まだ10時だし」
「卓くんが空き缶拾いに行っちゃったら困るもん」
「あはは、そういうことか」
「わかんないんだけど、何であんなことしてるの?」
「ん?それは…何て言えばいいのかなぁ。いずみに言うのもなぁ。。」
「あのホームレスのゲンさんと友達なの?」
「トメさんだよ(^_^;)」
「( ̄┰ ̄;)ゞあ、そうだった?私の中ではゲンさんもトメさんも同じだからw」
「アハハハ。なんとなくわかるよ」
「で、どうしてなの?」
「たいした理由じゃないんだ。人のために何かをしてたら、自分に運がついてくるんじゃないかと思ってね」
「ふうん。それって風水?何かの占いに書いてあったとか?」
「何かにテレビで観たんだ。独りよがりな人間より、世の中や人のために尽くす心のある人に健康運や金運もついてくるって」
「へぇ…じゃあ私も卓くんが公園に行くとき手伝おっかな」
「それはいいよ。いずみは受験生だろ」
「そうれもそうだね。じゃヤメたw」
「はやっ(ノ__)ノコケッ!」
いずみは小学生の頃からハキハキしてるところは変わらない。
物おじしないところは、将来社会人になったら有望かもしれない。
でも何より嬉しいことは、別々に暮らして何年も経つのに僕を頼って来てくれたこと。そして対等に話してくれること。
理由はどうであれ、そんないずみがとても可愛く思える。勉強くらいいつでもわかる範囲で教えたくなる。
そんな思いから僕は、テキストを開いて準備をしているいずみの顔を見つめていた。
さすがゆりかの子だけに、輪郭の整った顔立ちで色も白い。
でも顔の部分的なパーツは、探偵の茜崎さんにどことなく似ているような気もする。
どうやらそんな僕の視線にいずみも気づいたようだ。
「ちょっと卓くん何見つめてるの?キモチワルイ!」
ぐはっ!言われてしまった(^□^;A
「いや、しばらく見ないうちにいずみも大きくなったなぁと思ってさ」
「あぁ、大人がよく言うセリフだね。私どうリアクションすればいいかわかんない」
「いや別にリアクションはいらないよ」
「卓くんは昔と全然変わらないよね。公園で見たときすぐわかったもん」
「そうかい?若さを保てて良かったよ」
「てか卓くん、最初から老け顔だし。今も一緒だよ」
「((ノ_ω_)ノバタッ…そういうことか。。」
しばしの間、僕たち二人は勉学に勤しんだ。
人に勉強を教えるのはいずみが小学3年生以来だ。
少し心配だったけど、中学生の問題までなら、なんとか記憶を呼び覚ましながら教えることができた。
「あれ?知らないうちにもう昼になってたのか。いずみお腹空いたろ?」
「うん」
と言ったものの、うちにはラーメンのストックしかない。いずみに評判を落とされないためにも、ここは喜ばれることをしなくては!
「ピザ食べる?」
「えっ?(゜〇゜;)そんなのあるの?」
「宅配ピザだよ。好きなもの頼んでいいよ」
「ヽ(´▽`)/わ〜い♪やったぁぁぁ♪」
( ・ー・)むふふ♪たまんないわwいずみに喜ばれるこの優越感。
よしっ!いずみを目標の高校に絶対受からしてやるぞっ!
(続く)